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2023年1月28日土曜日

見つけにくい戦車ハンター:マリ軍の「9P133」自走式対戦車ミサイルシステム(短編記事)



著:トーマス・ナハトラブ in collaboration with ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 マリ軍は、ソ連から受け取った大量の装甲戦闘車両(AFV)を運用していました。
 
 同軍はT-54B戦車、PT-76水陸両用戦車、BTR-60装甲兵員輸送車(APC)を大量に導入したことに加えて、さらにいくつかの重装備も、より多く存在するAFVの影で運用されていました。これらのうちの1つが、BRDM-2偵察車の対戦車型である9P133「マリュートカ」です。

 9P133は、本来の銃塔の代わりに9M14「マリュートカ」対戦車ミサイル(ATGM)を6発搭載した昇降式発射機を備えています。初期型である9P122「マリュートカ」と比較すると9P133は光学機器が改良されており、より高性能な9M14P及び9M14P1ミサイルを発射することが可能で、使用するミサイルの種類に応じて最大で18発を搭載することができます。また、9P133は操縦手と発射要員からなる2名の乗員によって運用されます。

 ワルシャワ条約機構の加盟国や中東諸国で大量に運用されたこの車両は、後に9M111「ファゴット」9M113「コンクールス」ATGMを5発搭載した9P148「コンクールス」に取って代わられましたが、現在ではこれらの車両も一部の国を除いて世界中で現役を退いています。

 マリに9P133が引き渡された正確な時期は不明のままですが、SIPRIの武器移転データベースによると、マリ軍は1975年にソ連から20台のBRDM-2を受領しています。[1]

 CIAが公開した機密情報によると、1985年までにマリに最大で128台のBRDM-2が引き渡されており、そのうちのいくつかは9P133であった可能性があります。[2]

 彼らの唯一知られている公に姿を現した機会は1991年3月のことであり、そのときには6台が大規模な軍事パレードに登場しました。この数は、マリにおける9P133の全保有数に相当すると思われます。[3]

 残念ながら、彼らの運用歴については1985年のブルキナファソとの国境紛争に参加したかどうかも含めて、これ以上は何も判明していません。

 9P133のキャリアは、治安情勢の変化と国防費の削減の渦中にマリ軍が重火器の大半を退役させた1990年代のどこかで終わったと考えられています。ニッチな役割を果たしていたことが、9P133を最初にスクラップされた車両の1つにして、マリで運用されていたこの把握し難い戦車ハンターのキャリアを終わらせたことは間違いないでしょう。



[1] SIPRI Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php
[2] THE SOVIET RESPONSE TO INSTABILITY IN WEST AFRICA https://www.cia.gov/readingroom/document/cia-rdp86t00591r000300440002-2
[3] "L'armée malienne sous Moussa Traoré : dernier défilé avant mars 1991" https://youtu.be/pHDTs-BA2XM?t=789

 ものです。


 

2022年9月13日火曜日

拡大が止まらない対地攻撃能力:アゼルバイジャンが保有する地対地・空対地戦力(一覧)


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2021年秋、アゼルバイジャンを経由してアルメニアに入国しようとするイラン人トラック運転手に課される道路税、アゼルバイジャンとイスラエルの関係やアゼルバイジャンの飛び地であるナフチバンと本国を結ぶ回廊の計画などをめぐり、テヘランとバクーの間で緊張が高まりました。回廊の計画が実現した場合、テヘランはアルメニアとのつながりを完全に失って輸出に支障をきたす可能性が想定されます。

 現時点におけるアゼルバイジャンとイランの緊張関係について、今までは舌戦と国境沿いでの軍事演習にとどまっていますが、いつの日か両国間の緊張が全面的な地域紛争にエスカレートする可能性があることを危惧する意見もあるようです。

 同年の10月上旬には、テヘランがアゼルバイジャンと接する北部の国境沿いで数々の軍事演習を開始しました。これらの演習については、おそらくバクーに強いメッセージを送ることを目的として実施されたと思われますが、1960年代の「チーフテン」戦車、「BMP-1」、「M577」移動指揮車や「M109」自走砲を「ZSU-23」自走対空砲がカバーしていた状況は、(旧式すぎて)海外のウォッチャーなどを感心させることは全くありませんでした(注:最終的にイランとの軍事衝突は起こらず、2022年9月12日にはアゼルバイジャン軍が再びアルメニア軍を攻撃する事態となっています)。

 しかし、その後の映像では短距離弾道ミサイル(SRBM)の展開も明らかにしているため、前述の見応えの無い兵器群による演習は、近年に(革命防衛隊を含む)イランの軍隊で就役した数多くの徘徊兵器や弾道ミサイルを正確に表していません。

 イランのミサイルや無人機などの豊富な兵器群は過去数年にわたって数多くの注目を集めてきましたが、アゼルバイジャンも誘導兵器の兵器庫を大量に維持し続けています。この兵器庫はイスラエル、トルコやベラルーシといった国々からの最新装備を組み合わせた、この地域で最も現代的で有能なものであることに加えて、最も急速成長しているものでもあります。

 近年、アゼルバイジャン自身も国産兵器の開発にも着手し始めており、これまでに数多くのミサイルや爆弾の開発に至らせています。

  1. このリストの目的はこれらの兵器をカタログ化する事にあります。
  2. 兵器の名前をクリックすると、アゼルバイジャンで運用中の当該兵器の画像を見ることができますが、現物が未確認のものは他国で運用中の画像などで代替しています。

対戦車ミサイル


徘徊兵器


牽引砲

自走砲


(無誘導式)多連装ロケット砲


(誘導式) 多連装ロケット砲


弾道ミサイル


巡航ミサイル
  • SOM-B1 [2021] [射程距離: 250+km] (「Su-25」用)


空対地兵装


電子戦システム
  • グローザ R-934UM2 [有効範囲: 最大で65km] (対「Su-25」用)
  • コラル (いくつかの情報で記録されているが、現物は未確認)

※ 当記事は2021年10月17日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。