2021年11月16日火曜日

ティグレ戦争:エチオピアが「翼竜Ⅰ」UCAV用に「TL-2」ミサイルを導入した



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 当ブログは以前に、エチオピアが中国製「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)を導入し、同機がティグレ州の州都であるメケレ市上空で目撃されたことを報じました。[1] [2]

 ティグレ戦争がエチオピア政府にとって徐々に手に負えない状況に陥っているように思える中で、エチオピア空軍(ETAF)は2021年9月中旬に3機調達した「翼竜Ⅰ」用の兵装を新たに入手したことが判明しました。50発の[TL-2」空対地ミサイルの第1陣が11月3日にエチオピアに到着したのです。[3] [4]

 「TL-2」に関する貨物の積荷目録と梱包明細書が実際にオンライン上で公開されているため、この情報がどのような方法で流出したのかについては、おそらくエチオピアで現在展開している状況を示していると思われます。その数日前に、(詳細不明の)エチオピア政府筋は同国が中国から「翼竜Ⅰ」用のミサイル50発を購入したことを明らかにしました。[4]

 ミサイルを搭載したエチオピア航空の「ボーイング777」は、航空機トラッカー:Gerjon氏によってすぐに特定されました。Gerjon氏の作業は、戦争で荒廃したエチオピアへ飛来する不審な航空機の動きを記録する上で極めて重要なものとなっています。[5]

 エチオピアは以前に「翼竜Ⅰ」UCAVを偵察用UAVとしてティグレ戦争に投入し、メケレ市上空から目標を確認するために使用されました。同機は西側諸国のUAVよりもはるかに低い高度を飛行するため、それが2021年10月28日にメケレ市民に飛行している1機の撮影を可能にさせました。[2]

 (1機のSu-25TKを除いて)現代的な精密誘導爆弾を運用できる作戦機を保有していないため、ETAFは後に無誘導爆弾で武装したSu-27戦闘機を使用して敵を空爆しました。しかし、そのことは実際には想定した戦果を全くもたらさずに多くの民間人の死傷者を出す原因となってしまいました。[6]

メケレ市上空を飛行する「翼竜Ⅰ」

 「TL-2」はUCAVやヘリコプターのみならず地上設置型のシステムからも発射可能な軽量の空対地ミサイル(AGM)です。[7]

 このミサイルは既存の携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)の胴体を用いて開発された安価なAGMと言われており、射程距離は約6キロメートルで、セミアクティブレーザー誘導方式によって標的に命中する仕組みとなっています。

 ただし、目標への命中精度は比較的低く、(用いられる誘導方式にも左右されますが)命中誤差は2~10メートル以内であると伝えられています。

 また、TL-2の弾頭の軽さ(約16キログラム)は狙った目標から1メートル離れた場所に着弾しても、その目標が損傷を受けずに生き残る可能性があることを意味します。



 「翼竜Ⅰ」は同サイズのUCAVの大半と異なって、ハードポイントは両翼の下に1つずつ、つまり合計で2つのハードポイントしか備えていません。このため、ペイロードが著しく制限されることから、1回の出撃でこのUCAVが攻撃できる目標の数も必然的に極めて少ないものとなります。

 「翼竜Ⅰ」のハードポイントの少なさについては、搭載できる幅広い種類の兵装でカバー可能であり、これには「TL-2」用の2連装または4連装発射機も含まれています。

 「翼竜Ⅰ」で4連装発射機が使用されていることはまだ確認されていませんが(装備可能なはずですが)、2連装発射機の装備でもエチオピアの「翼竜Ⅰ」が搭載可能な兵装の量をすでに2倍に増やすことができます。

 連装発射機の装備はドローンの有効性を大幅に向上させる一方、エチオピアが最初に入手した「TL-2」AGMの数がたった50発ということは、ミサイルが完全に枯渇する前にETAFの「翼竜Ⅰ」各機が(攻撃任務で)出撃できる数は僅か数回程度しかないことを意味します。




 ティグレ戦争が2年目に突入した中で一見して阻止できない(地上での)ティグレ軍の進撃は、敵に一撃を与えるため、エチオピアにますます空軍に頼ることを余儀なくさせています。

 完全武装した3機の「翼竜Ⅰ」の運用はこの点できっと役立つに違いないでしょう。首都アディスアベバに向けて進撃を続けるティグレ軍は、彼らにとって今や最優先の攻撃目標としか考えられません。

 しかし、入手した「TL-2」AGMの数が限られており、その射程距離の短さと(同世代のAGMよりも)比較的低い命中精度を考慮すると、「翼竜Ⅰ」と「TL-2」の組み合わせはエチオピア政府が必死に探し求めているゲームチェンジャーにはならないかもしれません。
[8] https://page.om.qq.com/page/OwrFgkWkmwLefiiUIlYQhWZA0

※  当記事は、2021年11月10日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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