著:ステイン・ミッツァー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
トルクメニスタンは様々な種類の新型戦闘機や輸送機の導入による空軍の近代化を目的として、野心的な再装備プログラムに乗り出しています。その新型機には、イタリアから発注した「M-346FA」軽戦闘攻撃機や「C-27J NG」輸送機が含まれています。
導入が見込まれていたもう一つの導入機が、これまでに世界中の15カ国以上で購入されたブラジルの「A-29B "スーパーツカノ"」ターボプロップ軽攻撃機です。トルクメニスタンは人気の高い攻撃機の獲得を視野に入れていると以前から噂されており、2019年の短期間に1機の「スーパーツカノ」が同国で試験されたことがありました。
5機のA-29Bの導入は、トルクメニスタンがアフガニスタンと接している長さ804kmの東部国境沿いにおける治安状況の悪化に直面していることに伴ったものです。
アメリカがアフガニスタンから撤退した後、この地域の諸国は国境を守ることを急いでいますが、トルクメニスタンはすでに2010年代の初頭から軍の戦力向上に重点を置いた投資を行っていました。
国内外の脅威に対処するために現代的な装備のストックを大幅に増やして訓練を強化したことを別として、その成果は、中国から数種類の無人戦闘航空機(UCAV)を導入したり、既存の「Su-25」飛行隊の大半をオーバーホールすることでも実現しました。
アフガニスタンの状況が近い将来にどのように展開し続けるのかを予測することについて、まだ今の時点では困難ですが(注:この記事の執筆はカブール陥落の前に執筆されたものです)、紛争がトルクメニスタン自体を台無しにする恐れがある場合に備えて大規模な国境防御部隊が待機しているなど、トルクメニスタンは現時点で国境沿いにおける紛争が激化する可能性に対処するための最善の準備をしていると言えるかもしれません。
最も注目すべきこととしては、トルクメニスタン軍は対反乱作戦(COIN)戦術に重点を置いていることと、この地域では数少ない地上目標に対して最新の精密誘導爆弾(PGM)を使用する能力を持つ国の一つであるということがあります。
さまざまなガンポッド、無誘導ロケット弾、汎用爆弾を使用できることに加えて、「A-29B」は幅広い種類のPGMを搭載することが可能なので、同機はこの分野におけるトルクメニスタンの将来の戦力をさらに強化することに貢献するでしょう。
トルクメニスタンに属する機体であることを示すラウンデルやマークは注意深くテープで隠されていました。しかし、マルタ島のルア空港に立ち寄った際に「A-29B」の尾翼にトルクメニスタン空軍のラウンデルがあることを、大型レンズ付きのデジタルカメラで「武装」した航空機スポッターによって明らかにされてしまいました。[3]
これらの5機は、フィリピン空軍の「A-29B」でも採用されているものをベースにしたように見える迷彩パターンが施されています。この国々では運用する地域の特性や気候が全く異なっていますが、トルクメニスタン空軍は大半の機体にカラフルな塗装を施していることで知られています。この傾向は、今や「A-29B」や同様に新たに導入したばかりの「M-346」M-346と「C-27J NG」にも引き継がれているようです。
5機のA-29Bは青色で「01」,「02」,「03」,「04」,「05」とシリアルナンバーが付与されており、これらは2021年8月1日にトルクメンバシ国際空港を訪れたトルクメニスタンのグルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領(当時)による視察ツアーの放送で初公開されました。
2019年6月、エンブラル社の「EMB314 "スーパーツカノ"」のデモンストレーション機「PT-ZTU」がトルクメニスタンでデモ飛行を実施しました。
当時、トルクメニスタン空軍は再装備プログラムのために多数の西側製航空機の導入を検討していたことから、同機や「M-346」、「C-27」、そして「C-295」がそれぞれのメーカーによって同国に売り込むために持ち込まれたのです。
持ち込まれた機種のうち、どうやら「C-295」だけは調達されていないようです。この機体の導入がまだ計画されているのか、あるいは最終的にイタリアの「C-27JNG」に敗れて頓挫したのかは不明のままです。
「A-29B」と共にさまざまな種類の搭載兵装も数多く導入されました。これには、主翼内に搭載された「M3」12.7mm 重機関銃2門、70mmロケット弾用の発射ポッド、「BDU-33」訓練爆弾用「SUU-20」ディスペンサー、「Mk-82」500lb 無誘導爆弾、増槽、チャフ・フレア用ディスペンサーが含まれています。
トルクメニスタン軍に就役した「A-29B」には、(精密誘導爆弾で)攻撃する前に自身の標的を発見・照準することを可能にする電子光学・赤外線センサー:FLIR装置も搭載されています。
今のところ「A-29B」用のPGMはトルクメニスタンの保有兵器リストには存在していないようですが、将来的には導入されるかもしれません – それはトルコから得る可能性があります。なぜならば、同国は幅広い種類のPGMを製造しており、過去に数多くの兵器をトルクメニスタンに供給してきたからです。
トルクメニスタンが保有する5機の「A-29B」は、マル市の北部に位置するマル-2空軍基地を拠点にしています。
同基地はマル市周辺に存在する3つの軍用飛行場のうちの1つです:もう1つのマル空軍基地・国際空港は「MiG-29」と「Su-25」の拠点であり、残りの1つは街の中にある、「Mi-17」や「Mi-24」によって使用されているヘリコプター基地です。
トルクメニスタンではさらに2つの空軍基地に作戦機が恒久的に配備されており、ほかの2つの基地にはSu-25が分遣されています。
隣接する多くの国々は老朽化した機体を使用し続けているためにひどく疲弊した空軍を抱えていますが、「A-29B」にM-346軽戦闘攻撃機、そして「C-27J」輸送機を導入したことはトルクメニスタン空軍をこの地域における現代的な空軍の中心に押し上げました。「A-29B」用PGMといった兵装のさらなる導入はこの地位を強化することに貢献し、トルクメニスタン空軍を必要と思われる種類の任務を遂行するための、比較的充実した装備を持つ空軍にさせるでしょう。
トルクメニスタンの空軍力を増強する動きについては、「A-29B」が私たちが最後に目にするものとならないことは間違いないでしょう。例えばトルコから「バイラクタルTB2」の導入を通じて別方面の戦力の拡大を図ることも考えられないことはありません(注:その後、トルクメニスタンは実際にTB2を導入しました)。
[1] Delivery flight Turkmenistan Super Tucanos https://www.scramble.nl/military-news/delivery-flight-turkmenistan-super-tucanos
[2] Three more Super Tucanos for Turkmenistan https://www.scramble.nl/military-news/three-more-super-tucanos-for-turkmenistan
[3] Turkmenistan Tucanos! https://milavreachout.org/2021/05/28/turkmenistan-tucanos/
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5機のA-29Bの導入は、トルクメニスタンがアフガニスタンと接している長さ804kmの東部国境沿いにおける治安状況の悪化に直面していることに伴ったものです。
アメリカがアフガニスタンから撤退した後、この地域の諸国は国境を守ることを急いでいますが、トルクメニスタンはすでに2010年代の初頭から軍の戦力向上に重点を置いた投資を行っていました。
国内外の脅威に対処するために現代的な装備のストックを大幅に増やして訓練を強化したことを別として、その成果は、中国から数種類の無人戦闘航空機(UCAV)を導入したり、既存の「Su-25」飛行隊の大半をオーバーホールすることでも実現しました。
アフガニスタンの状況が近い将来にどのように展開し続けるのかを予測することについて、まだ今の時点では困難ですが(注:この記事の執筆はカブール陥落の前に執筆されたものです)、紛争がトルクメニスタン自体を台無しにする恐れがある場合に備えて大規模な国境防御部隊が待機しているなど、トルクメニスタンは現時点で国境沿いにおける紛争が激化する可能性に対処するための最善の準備をしていると言えるかもしれません。
最も注目すべきこととしては、トルクメニスタン軍は対反乱作戦(COIN)戦術に重点を置いていることと、この地域では数少ない地上目標に対して最新の精密誘導爆弾(PGM)を使用する能力を持つ国の一つであるということがあります。
さまざまなガンポッド、無誘導ロケット弾、汎用爆弾を使用できることに加えて、「A-29B」は幅広い種類のPGMを搭載することが可能なので、同機はこの分野におけるトルクメニスタンの将来の戦力をさらに強化することに貢献するでしょう。
トルクメニスタンに到着する前の2021年5月から6月にかけて、カーボベルデ、スペイン領カナリア諸島、ポルトガル、マルタ、そしてトルコを経由して同国へ向かった際の5機が広範囲にわたって撮影されました。[1] [2]
トルクメニスタンに属する機体であることを示すラウンデルやマークは注意深くテープで隠されていました。しかし、マルタ島のルア空港に立ち寄った際に「A-29B」の尾翼にトルクメニスタン空軍のラウンデルがあることを、大型レンズ付きのデジタルカメラで「武装」した航空機スポッターによって明らかにされてしまいました。[3]
これらの5機は、フィリピン空軍の「A-29B」でも採用されているものをベースにしたように見える迷彩パターンが施されています。この国々では運用する地域の特性や気候が全く異なっていますが、トルクメニスタン空軍は大半の機体にカラフルな塗装を施していることで知られています。この傾向は、今や「A-29B」や同様に新たに導入したばかりの「M-346」M-346と「C-27J NG」にも引き継がれているようです。
5機のA-29Bは青色で「01」,「02」,「03」,「04」,「05」とシリアルナンバーが付与されており、これらは2021年8月1日にトルクメンバシ国際空港を訪れたトルクメニスタンのグルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領(当時)による視察ツアーの放送で初公開されました。
A-29B「青色の02」の視察を終えたグルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領(当時) |
2019年6月、エンブラル社の「EMB314 "スーパーツカノ"」のデモンストレーション機「PT-ZTU」がトルクメニスタンでデモ飛行を実施しました。
当時、トルクメニスタン空軍は再装備プログラムのために多数の西側製航空機の導入を検討していたことから、同機や「M-346」、「C-27」、そして「C-295」がそれぞれのメーカーによって同国に売り込むために持ち込まれたのです。
持ち込まれた機種のうち、どうやら「C-295」だけは調達されていないようです。この機体の導入がまだ計画されているのか、あるいは最終的にイタリアの「C-27JNG」に敗れて頓挫したのかは不明のままです。
「A-29B」と共にさまざまな種類の搭載兵装も数多く導入されました。これには、主翼内に搭載された「M3」12.7mm 重機関銃2門、70mmロケット弾用の発射ポッド、「BDU-33」訓練爆弾用「SUU-20」ディスペンサー、「Mk-82」500lb 無誘導爆弾、増槽、チャフ・フレア用ディスペンサーが含まれています。
トルクメニスタン軍に就役した「A-29B」には、(精密誘導爆弾で)攻撃する前に自身の標的を発見・照準することを可能にする電子光学・赤外線センサー:FLIR装置も搭載されています。
今のところ「A-29B」用のPGMはトルクメニスタンの保有兵器リストには存在していないようですが、将来的には導入されるかもしれません – それはトルコから得る可能性があります。なぜならば、同国は幅広い種類のPGMを製造しており、過去に数多くの兵器をトルクメニスタンに供給してきたからです。
トルクメニスタンが保有する5機の「A-29B」は、マル市の北部に位置するマル-2空軍基地を拠点にしています。
同基地はマル市周辺に存在する3つの軍用飛行場のうちの1つです:もう1つのマル空軍基地・国際空港は「MiG-29」と「Su-25」の拠点であり、残りの1つは街の中にある、「Mi-17」や「Mi-24」によって使用されているヘリコプター基地です。
トルクメニスタンではさらに2つの空軍基地に作戦機が恒久的に配備されており、ほかの2つの基地にはSu-25が分遣されています。
さらにいくつかの空軍基地が運用可能な状態を維持しているため、必要に応じて作戦機を展開させることが可能となっています。アフガニスタンとの国境付近での治安情勢が悪化した場合、例えば、「A-29B」は現時点で2機の「Su-25」が配備されている南部のGalaýmor基地に配備されるかもしれません。
マル-2空軍基地で5機のEMB314「スーパーツカノ」が6機のSu-25と一緒に駐機しています。上に並んでいる退役したSu-17やMi-8ヘリコプター、La-17無人標的機にも注目。 |
上の画像を拡大図。5機のEMB314の形状がよりはっきりと示されています。 |
隣接する多くの国々は老朽化した機体を使用し続けているためにひどく疲弊した空軍を抱えていますが、「A-29B」にM-346軽戦闘攻撃機、そして「C-27J」輸送機を導入したことはトルクメニスタン空軍をこの地域における現代的な空軍の中心に押し上げました。「A-29B」用PGMといった兵装のさらなる導入はこの地位を強化することに貢献し、トルクメニスタン空軍を必要と思われる種類の任務を遂行するための、比較的充実した装備を持つ空軍にさせるでしょう。
トルクメニスタンの空軍力を増強する動きについては、「A-29B」が私たちが最後に目にするものとならないことは間違いないでしょう。例えばトルコから「バイラクタルTB2」の導入を通じて別方面の戦力の拡大を図ることも考えられないことはありません(注:その後、トルクメニスタンは実際にTB2を導入しました)。
[1] Delivery flight Turkmenistan Super Tucanos https://www.scramble.nl/military-news/delivery-flight-turkmenistan-super-tucanos
[2] Three more Super Tucanos for Turkmenistan https://www.scramble.nl/military-news/three-more-super-tucanos-for-turkmenistan
[3] Turkmenistan Tucanos! https://milavreachout.org/2021/05/28/turkmenistan-tucanos/
※ 当記事は、2021年8月9日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
です。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があ
ります。
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