2022年9月2日金曜日

影に覆われた全貌:モロッコのUAV飛行隊(一覧)


著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 モロッコによる無人航空機(UAV)の運用については、1980年代後半に初めて導入してからずっと秘密に包まれています。この国におけるほぼ全ての防衛関連の調達は秘匿されていますが、この国は特に調達したUAVの種類や配備先について可能な限り明らかにしないように十分に注意しているのです。
 
 しかし、ほとんどの人がカメラ付き携帯電話を所有し、衛星画像を手軽に入手できるようになった現在では、モロッコのドローン運用に関する情報は徐々に明らかになりつつあります。
 
 この王国が初めてUAVを運用したのは1980年代後半のことで、アメリカからいくつかのBAEシステムズ製「R4E "スカイアイ"」の導入から始まったと伝えられています。[1]

 しかし、その後のモロッコでの運用に関しては全く情報が伝わっていません。そのことから、同機の(低い)信頼性や初期世代のドローンの運用で発生した技術的問題のせいで早期退役に直面した可能性があります(同様の問題は、トルコによる米ゼネラルアトミクス社の「ナット」UAVの運用でも発生しました)。 [2]

 この次にモロッコのドローン購入に関する新たな報道がなされるようになったのは2013年になってからのことであり、最終的にはその翌年にイスラエルから3機のIAI「ヘロン」を導入することに至りました。[3] 
 
 モロッコは2020年までイスラエルを国家として承認していませんでしたが、両国は長い間にわたって安全保障問題に関して非公式な協力関係にありました。
 
 その数年後、モロッコがフランスから退役したばかりのEADS社製「アーファング」(「ヘロン」をフランス向けに特別開発したもの)3機の調達に関心を示していることが判明しました。長い交渉期間の後、2020年にモロッコはひそかにこれらのUAVを受け取ったようです。[4]
 

 その少し前から、モロッコはすでにアメリカから非武装の「MQ-1A "プレデター"」無人偵察機4機を入手したと云われていますが、同国での運用が目撃されたことは今までに一度もありません。[5] 
 
 その後の2020年6月になると、モロッコは新たに導入した「AH-64E"アパッチ・ガーディアン" 」攻撃ヘリコプターが、近くを飛ぶUAVが捉えた映像を受信してそれらと連携した作戦を遂行可能にするMUTK(manned-unmanned teaming kits)と共に、4機の「MQ-9B "シーガーディアン"」の導入プロセスも進めていると報じられました。[6] [7] 
 
 この記事を執筆している2021年10月の時点で、「MQ-9B」の導入が実現したのかについては不明です。

 モロッコが最初に無人戦闘航空機(UCAV)を導入したことが確認されたのは、中国製「翼竜Ⅰ」3~4機が引き渡された2020年のことです。 興味深いことに、これらの「翼竜Ⅰ」は中国から直接調達されたものではなく、どうやらUAEから贈り物として得たと思われます。[8] 

 モロッコが新たに入手したUCAVの力を活用するのにそれほど時間はかからず、早くも2021年4月に係争中の西サハラで「ポリサリオ戦線(サハラ・アラブ民主共和国)」のアッダーフ・エル=ベンディール憲兵隊長を暗殺するために「翼竜Ⅰ」を使用したようです。[9]

 UAEによる「翼竜Ⅰ」の供与は、最終的にはモロッコを中国から同型機の追加購入に至らせるだろうと予想されていました。

 しかし、モロッコ空軍は中国から「翼竜Ⅰ」の追加購入ではなく、トルコから13機の「バイラクタルTB2」を推定7,000万ドル(約80.1億円)で調達し、2021年9月に最初の機体の引き渡しを受けることに決めたのです。[10] 
 
 TB2の導入に続いて、モロッコはイスラエルとの間で「ヘルメス900」無人偵察機の導入と驚くべきことに未知のタイプの徘徊兵器を国内で生産するという契約を締結しました。[11] [12] [13] 
 
 これらの同種兵器は2020年のナゴルノ・カラバフ戦争でアゼルバイジャン側で使用されて大きな成功を収めています。これを踏まえると、モロッコは将来的に発生が予想される西サハラのポリサリオ戦線やアルジェリアとの紛争でこの成功の再現を目指しているのかもしれません。


無人偵察機(UAV)

  • IAI「ヘロン」 [2014] (3機が導入されたと思われ、 ベン・ゲリル空軍基地を拠点にしているが西サハラのダフラに前進配置されている)
  • EADS「アーファング」 [2020] (フランス向けのIAI「ヘロン」であり、2020年に3機の中古機をフランスから導入するも、現時点で目撃情報なし)
  •  エルビット「ヘルメス900」 [2021] (2021年に4機を導入するも、現時点で目撃情報なし)
  •  ブルーバード・エアロシステムズ「ワンダーB」 (2021年に導入したと報じられるも、 するも、現時点で目撃情報なし。 2019年にモロッコでトライアルを受けたとのこと)
  •  ブルーバード・エアロシステムズ「サンダーB」 (2021年に導入したと報じられるも、 するも、現時点で目撃情報なし)


無人戦闘航空機(UCAV)


徘徊兵器


記録化されているものの実際に運用が未確認のアメリカ製UAV

  • MQ-1A「プレデター」(複数の情報源で言及されるも、現時点で目撃情報なし)
  • MQ-9B「シーガーディアン」(同上)
 
[2] HALUK BAYRAKTAR İNGİLİZ DÜŞÜNCE KURULUŞU RUSI'NIN PANELİNDE KONUŞTU https://youtu.be/jKj-FOMQlNw?t=1205
[8] Marruecos también se ha dotado con UAVs armados chinos Wing Loong 1, captadas las primeras imágenes https://www.defensa.com/africa-asia-pacifico/marruecos-tambien-ha-dotado-uavs-armados-chinos-wing-loong-1
[9] First-time use of drone by Moroccan army highlights Polisario’s vulnerability https://thearabweekly.com/first-time-use-drone-moroccan-army-highlights-polisarios-vulnerability
[12] The “suicide” cement deal of Israel and Morocco https://middleeast.in-24.com/News/280923.html (注:現在はリンク切れ)
[13] Morocco Partners With Israel to Develop Local Loitering Munitions Industry https://www.moroccoworldnews.com/2021/09/344481/morocco-partners-with-israel-to-develop-local-loitering-munitions-industry 

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。


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