2023年3月22日水曜日

射程275kmの狙撃銃:「バイラクタル・アクンジュ」と「SOM」巡航ミサイル


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 新しいタイプの無人戦闘航空機(UCAV)が登場して以来、無人機戦の分野で完全に新しい能力が到来を告げるまでに驚くほど長い時間がかかりました。UCAVの一部には、従来型よりも搭載量や航続距離を増やしたり、センサー能力を向上させたタイプもありますが、近年のUCAVによる使用のために準備された兵装類にはほとんど革新性がありません。

 これを変えたのは、これまでに製造されたどのタイプのUCAVにも見られなかった数多くの特徴を誇る「バイラクタル・アクンジュ」の登場でした。

 その特徴の一つが、275km以上も離れた目標に向けて高精度の巡航ミサイルを発射できることです。この斬新な能力は、このUCAVにTÜBİTAK(トルコ科学技術研究会議)防衛産業研究開発機関が開発した「SOM」巡航ミサイルをインテグレートすることによって実現されました。

 サイズと重量に制約があるため、巡航ミサイルは1発しか「アクンジュ」の胴体に設けられたハードポイントに搭載できません。それでも、これは世界中のあらゆる無人機が運用できる巡航ミサイルの搭載能力を100%上回っています。

 「SOM」ミサイルを運用できる能力が、決して「アクンジュ」が持つ唯一の切り札ではありません。「アクンジュ」が持つ、間違いなく最も革新的な特徴は、将来的に付与される空対空ミサイル(AAM)の発射能力です。運用可能なAAMは、国産の「ボズドアン」赤外線誘導式AAM、「ゴクドアン」BVRAAM(目視外射程空対空ミサイル)、「スングル」近距離 AAM(FIM-92「スティンガー」MANPADSのトルコ版)で構成されています。

 「アクンジュ」のAESAレーダーは遠距離にいる目標を自律的に見つけ出し、低速で飛行している固定翼機やヘリコプター、その他の無人機を100km離れた位置から攻撃することを可能にします。



 素晴らしい空対空戦闘能力以外では、「アクンジュ」の広範囲にわたる空対地兵装がこの機体の主な(武装面での)最大のセールスポイントになるでしょう。この点では、敵の要塞・艦船や230kgの弾頭を正確に命中させる必要がある標的に使用するために設計された「SOM」巡航ミサイルの複数の派生型を搭載できる能力が、最終的に真のゲームチェンジャーになる可能性があります。

 彼らを搭載した「アクンジュ」はその運用国のUCAV飛行隊の戦力を向上させるだけではなく、ジェット戦闘機を対地攻撃任務から解放して制空任務に充てることも可能にさせます。この偉業は、F-35プログラムから除外された後にトルコにとっては特に貴重なものとなるはずです。



 トルコと「バイカル・テクノロジー」社はこれらの能力や利益をトルコ軍に提供することに加えて、「アクンジュ」を「SOM」のような兵装と一緒に友好国に販売することができるという、やや独特な立場にもあります。

 この点において、彼らは現時点で同じ能力を提供できる国との競争に少しも直面していません。ヨーロッパ、ロシア、中国やアメリカのどれもが同カテゴリーの兵器を外国に引き渡すことができないため、これらの能力は、今はトルコ製兵器の顧客ではない国々に「アクンジュ」の入手の試みをさせる可能性があります。

 当初からさまざまな種類の兵装と「アクンジュ」の互換性があることを考慮すると、パキスタンやブラジルのような国産の巡航ミサイルを運用または開発中の国は、これらの兵装を「アクンジュ」にもインテグレートできる可能性を秘めています。

 外国のシステムを「アクンジュ」にインテグレートできるという事実は大いに評価される見込みがあり、このことは特にアメリカや中国のような従来のサプライヤーの間では全く前例のないレベルの柔軟性を提供します。


 多くの国が新しく調達した西側製の航空機のために高度な兵装を入手しようと苦労している一方で、アメリカや欧州諸国は政治・財政的に妥当なコストでPGMを提供したがらないことが頻繁に証明されていますが、信頼できる代替手段が今や利用可能という事実は市場を大きく揺るがすことを確信しています。

 トルコの無人機プラットフォームと連携して使用される高度な誘導兵器の広範囲にわたる普及は、まだ始まったばかりです。当分の間、その範囲は主に各種PGMで成り立っていますが、現在は巡航ミサイル、近い将来を含めると空対空兵装にまで拡大しつつあります。

 手頃な価格で最終的には消耗品となるプラットホームにどのタスクをアウトソーシングできるかという点で絶え間なく限界に挑み続けている「バイラクタル・アクンジュ」については、間違いなく国際的な顧客が急速に列を作って並ぶでしょう。

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