2022年10月6日木曜日

バマコの子どもたち:マリの軍用車両・重火器(一覧)



著:トーマス・ナハトラブ in collaboration with ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 このリストの目的は、現在及び過去におけるマリ軍の(装甲戦闘)車両と重火器を包括的に一覧化することにあります。

 マリは歴史的にソ連による軍事援助の主要な受益者であり、1970年代から1980年代にかけての頻繁な兵器の引き渡しは、この国の軍隊を専用の駆逐戦車や「S-125(SA-3)」地対空ミサイルシステム、さらには「MiG-21bis」戦闘機などの高度な装備を運用する西アフリカで最強の軍隊の1つにさせました。

 1990年代と2000年代になると、マリ軍は治安情勢の変化とそれに伴う防衛支出が減少する最中にこれらの装備の大半を退役させました。

 ほかの多くのアフリカの軍隊と同様に2000年代後半から2010年代前半におけるマリ軍の戦闘効率は極めて低く、2012年のトゥアレグ族の反乱とそれに続くアルカイダの台頭に対処することができず、最終的にはマリの乗っ取りとほかの地域を大混乱に陥ることを阻止するためにフランスが介入することを余儀なくされました。

 それ以降、マリ軍はEUの支援を受けて再建され、ソ連製の重火器が最新のMRAPや歩兵機動車に置き換えられました。それでもなお、マリは(以前よりも極めて少ない数ではあるものの)T-54やPT-76などの装備を運用し続けています。

 興味深いことに、マリ軍は近年になって他のいくらかあるソ連時代のAFVを運用可能な状態に戻したようですが、これらのAFVは進行中の反乱との戦いには全く役に立たないため、ほとんど訓練を受けることなくバラックで埃をかぶって日々を過ごしているようです。

 それにもかかわらず、最終的には、その完全な多様性によって多くのベテランのアナリストを驚かせるかもしれない魅力的な装備で満ちた一覧が完成しました。

(装備名をクリックするとマリ軍で運用中の画像を見ることができます)


現時点でマリ軍で運用中の装備

戦車


装甲戦闘車両 (AFV)


耐地雷・伏撃防護車両 (MRAP)


歩兵機動車 (IMV)


全地形対応車両 (ATV)


汎用車両


牽引砲


(自走式を含む)対空機関砲
無人航空機 (UAV)


トラック


工兵装備


かつてマリ軍が運用していた装備

戦車
  • T-34/85
  • FT-17(植民地時代のフランス軍かマリ人部隊が使用したものと思われます)


装甲戦闘車両 (AFV)


牽引砲


多連装ロケット砲 (MRL)


対空機関砲


地対空ミサイルシステム (SAM)


レーダー


 ものです。



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2022年10月4日火曜日

ニューフェイス:トルクメニスタンが新たに導入した「バイラクタルTB2」を公開した


著:ステイン・ミッツァー と ヨースト・オリーマンズ編訳:Tarao Goo 

 トルクメニスタンが持つ軍事力の最新の公開は独立30周年を記念した軍事パレードという形で行われ、豪華な行進、乗馬隊や装甲戦闘車両の列など、中央アジアの隔絶された国として海外のウォッチャーに期待されるようになった特色が再び披露されました。

 また、2021年のパレードでは、新たに導入したトルコの無人戦闘航空機(UCAV)「バイラクタルTB2」も初公開されました。トルクメニスタンによるTB2の調達は、今や悪名高くなった相次ぐ兵器の導入の中でも最も新しいものです。

 実際、直近でTB2を導入したモロッコを含めると、「バイラクタルTB2」は現在までに運用国の数を踏まえると最も商業的に成功しているUCAVです。

 直接的な(中国の)競合機種である「翼竜Ⅰ/Ⅱ」と「CH」シリーズUCAVはその低いコストとアメリカや欧州諸国が一般的に課す利用制限がないため、すぐに国際的な人気を博し、結果的にトルクメニスタンも2016年と2017年に複数の中国製ドローンを導入しました。

 しかし、中国製UCAVの性能には不十分な点が多く、ヨルダンは「CH-4B」を購入してから2年足らずで全機を売りに出してしまいました。[1]

 イラクでの同型機も同じようなもので、導入した20機のうちの8機は僅か数年の間に墜落し、残りの12機はスペアパーツが不足しているために現在も格納庫で放置され続けています(注:2022年8月に最初の「CH-4B」が運用に復帰したと報じられました)。 [2]

 トルクメニスタンが中国製の「CH-3A」「WJ-600A/D」 UCAVを運用している際に同じ問題に遭遇し、最終的にはよりコストパフォーマンスに優れた代替機としてトルコから「バイラクタルTB2」を導入するに至ったとは考えられないことではありません。


  トルクメニスタンのTB2には、カナダの「MX-15D」やトルコのアセルサン社の「CATS」FLIRシステムではなく、ドイツ・ヘンゾルト社の「アルゴス-II HDT」 電子光学/赤外線・FLIRシステムが装備されています。TB2が採用しているモジュラー方式はいくつかの異なる種類のFLIRシステムを搭載することを可能にしており、この特徴がTB2の商業的成功に大きく貢献した可能性があります。

 トルクメニスタンのTB2には以前のバージョンよりも多くの改良が加えられています。例えば、機体上部の対妨害装置と思われる物体や夜間運用のための2基目の尾翼搭載カメラの追加などがあります。

パレードに登場した3機のTB2のうちの1機。主翼に搭載されている「MAM-C」と「MAM-L」誘導爆弾に注目。

 トルクメニスタンは歴史的に中国やイタリアU(C)AVを首都アシガバート近郊にあるアク・テペ・ベズメイン空軍基地で運用してきましたが、「バイラクタルTB2」はUAVの運用を念頭に置いて新たに建設された空軍基地を拠点にするようです。 

 アシガバートの北に位置するこの小さな空軍基地は、2021年2月にグルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領がこの地を訪れた際にはまだ建設中でした。当時、この国を注意深く観察していたウォッチャー(どうやら私たちだけだったかもしれませんが)は、すでにこの空軍基地でまもなく運用されることになるドローンの種類を初めて垣間見ることができていたのです。

右下にある格納庫の内部図にある6機の「バイラクタルTB2」に注目。

 公式には「無人航空機センター」と呼ばれているこの基地は(この類のものでは)この地域では初めてのものであり、トルクメニスタンがUAVとその効果的な運用に高い価値を置いていることを明確に示しています。

 2015年8月にオープンしたこのセンターでは今までに数種類の小型ドローンの製造と組み立てに携わっており、最近の拡張事業ではUAV専用の滑走路を1本備えた小さな飛行場と共にに格納庫などUAVの運用に必要な全てのインフラが整備されました。

 名目上は「無人航空機センター」の工場部分は内務省の管理下にあるものの、「バイラクタルTB2」は内務省航空隊ではなく空軍の仲間入りをすることが予想されます。

 トルクメニスタン政府の多くの省庁は独自の航空アセットを保有しており、現在の内務省はロシア製「Mi-17」、ユーロコプター「AS365」と「EC145」ヘリコプターと数機のキャバロン・オートジャイロを運用しています。


 

 「バイラクタルTB2」の低コスト、高い稼働率、安全性に関する記録、そして優れたアフターサービスの確立は、国際的な成功に不可欠な手法であることがすぐに証明されています。そのような要素に実績のある戦闘ステータスと迅速に生産を増強できる能力を組み合わせたものが、実質的にTB2を同クラスのUCAVの世界市場を席捲する態勢を整えさせ、その過程でドローン戦がより広範囲にわたって展開される時代の到来を告げる大いなる嵐にしているのです。 

 トルクメニスタンの次にTB2を導入するのはどの国でしょうか?

[1] Jordan Sells Off Chinese UAVs https://www.uasvision.com/2019/06/06/jordan-sells-off-chinese-uavs/
[2] OPERATION INHERENT RESOLVE LEAD INSPECTOR GENERAL REPORT TO THE UNITED STATES CONGRESS https://media.defense.gov/2021/May/04/2002633829/-1/-1/1/LEAD%20INSPECTOR%20GENERAL%20FOR%20OPERATION%20INHERENT%20RESOLVE.PDF
[3] Iraq’s Air Force Is At A Crossroads https://www.forbes.com/sites/pauliddon/2021/05/11/iraqs-air-force-is-at-a-crossroads

※  当記事は2021年9月27日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもの         です。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。

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