著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
当記事は、2016年11月6日に本国版「Oryxブログ」(英語)に投稿されたものを翻訳した記事です。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。
当記事は、2016年11月6日に本国版「Oryxブログ」(英語)に投稿されたものを翻訳した記事です。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。
今回紹介する画像については、シリア全軍が参加した2012年の大規模演習を含む、過去数年間に実施されたシリア陸軍の演習を撮影したものです。2012年の演習は治安情勢の悪化がますます深刻化している最中に実施されました。この時期は国際社会からリビアに対するような介入の呼びかけにまで至っていたわけですが、シリアはこれに反応して軍に数日間の演習を実施させ、「外の世界」に自国軍の強さを見せつけて牽制したのでした。
下の画像は、ダマスカス郊外県での演習中に撮影された(シリアでは「T-82」としても知られている)「T-72AV」です。
シリアでは「T-82」群が対戦車ロケット(RPG)や対戦車ミサイル(ATGM)の大規模な拡散により大きく苦戦しているものの、いまだに相当の量が運用され続けています。下の画像に見られるような、爆発反応装甲(ERA)ブロックの全てを装着した完全無傷の「T-72AV」は今ではますます珍しい光景となりました。
下の画像は、「T-72AV」と共に運用されている「T-72 "ウラル"」が走っている様子です。同戦車は内戦の開始前にシリアが入手した最初かつ最も量が少ない「T-72」であり、画像の個体には主砲の上に訓練用のレーザー交戦装置が装備されています。
下の画像は、「T-72AV」と共に運用されている「T-72 "ウラル"」が走っている様子です。同戦車は内戦の開始前にシリアが入手した最初かつ最も量が少ない「T-72」であり、画像の個体には主砲の上に訓練用のレーザー交戦装置が装備されています。
「T-72 "ウラル"」は「TPD-2-49」ステレオ式測遠機が砲塔から突き出ているほか、サイドスカートも後の派生型がゴム製のサイドスカートであるのに対してヒレ型の装甲パネルを装備しているため、容易に識別可能です。
異なる形式の牽引砲が外国から届けられたり、内戦の間に保管状態から引き出されたとはいえ、「M-46」130mm野砲と「D-30」122mm榴弾砲はシリア軍の主要な牽引砲のままです。
一部の「M-46」はその機動性と有効性の向上を目的としたプログラムの下で、メルセデス・ベンツのトラックに搭載されています。そして、中国の「BEE4」130mmロケット補助推進弾(RAP)がこのプラットフォームで使用するために特別に調達され、この野砲の運用能力を大幅に向上させたのです。
このトラック搭載型については、多数の砲の改修が計画されていたにもかかわらず、内戦の開始が本格的な生産の開始を妨げてしまいました。それに従って、この車載型は比較的珍しい派生型のままにとどまっています。
シリア軍の膨大な戦車及びBMP群はかつてはイスラエルが占領していたゴラン高原上において共同で運用される予定ではあったものの、今ではその多くがシリアを平定すべく戦うさまざまな部隊や民兵に付随した運用をされています。
第4機甲師団及び共和国防衛隊の部隊だけが組織化されたやり方と、(時には)歩兵の支援を受けながらAFVを運用し続けているのが現状です。
「T-55(A)MV」は「コンタークト-1」爆発反応装甲(ERA)、「KTD-2」レーザーレンジファインダー、発煙弾発射機、アップグレードされたエンジン、そして「9M117M "バスチオン"」対戦車ミサイルを発射する能力を備えています。
(種類によっては)砲発車式対戦車ミサイルは「T-55」自体の価格より高いため、内戦での使用例はシリアのクネイトラ県での作戦中でしか見られていません。
現用の「AK(M)」と他の(外国の)派生型を大量の「AK-74M」の調達で更新する計画でしたが、内戦がこの大規模な再装備プログラムを中止に至らせました。
下の画像では、間違いなく現在の戦場で最も恐れられている対戦車兵器である「RPG-29」で兵士が照準を合わせています。
このRPGの「PG-29V」105mmタンデム弾頭はこれまでにシリア陸軍の戦車群、特に「T-72」に対して莫大な損失をもたらしています。
「T-55(A)MV」及び「T-72AV」の両方は、戦車自身の生存性を向上することを目的としたERAを装備していますが、このタンデム弾頭はそのような装甲に対抗するように特別に設計されているため、ERAの防御力を何ら支障なく突破してしまうのです。
現用の「AK(M)」と他の(外国の)派生型を大量の「AK-74M」の調達で更新する計画でしたが、内戦がこの大規模な再装備プログラムを中止に至らせました。
伝えられるところによれば、「AK-74M」はトライアルでイランの「KH-2002」を含むいくつかの他の競争相手と競合して勝利を収めたとのことです。後者はトライアルで用いられた10挺のうちの8挺が故障したという話があります。
更新計画が頓挫した後、内戦が推移する間にシリアは(他の現代的なロシア製兵器とともに)一定数の「AK-74M」の供給を受けたようです。
内戦中に大きな損失を被っている「BMP-1」は、シリアの至る所に広がる各派閥で運用されている姿を見ることができます。この車両は多くのDIY改造のベースとして活用されており、最近になって第4機甲師団で「BMP-1」をベースにした多連装ロケット発射機が運用されている姿が目撃されました。
今日の戦場で「T-34/85」の実戦への再投入が期待されていましたが、この伝説的な戦車のシリアにおける最近の目撃はわずか5件に限られたままとなっています。そのうち2件は「T-34/85」を「D-30」122mm榴弾砲で武装した「T-34」122mm自走榴弾砲に改修されたものですが、いずれも内戦のはるか以前に退役したものでした。
今日の戦場で「T-34/85」の実戦への再投入が期待されていましたが、この伝説的な戦車のシリアにおける最近の目撃はわずか5件に限られたままとなっています。そのうち2件は「T-34/85」を「D-30」122mm榴弾砲で武装した「T-34」122mm自走榴弾砲に改修されたものですが、いずれも内戦のはるか以前に退役したものでした。
他の2両の「T-34/85」は、シリアのクネイトラ県にて(オリジナルの姿で)イスラエルに直面するトーチカとして配置・使用されている状態が見られました。様子からすると、これらの戦車はつい最近まで運用可能だったと思われます。
下の画像は、内戦の勃発直前に演習中に見られた「T-34/85の様子です。「T-34/85」または「T-34/76」について言えば、全世界にわたりその優れた作戦能力で使用され続けてはいますが、今日までに現存しているのはイエメンと北朝鮮に留まっています。
こうした迫撃砲は内戦初期の段階で大量に使用されました。人びとの抗議と武装蜂起がまだ都市に限定されていた時点で、これらと他の重迫撃砲は反乱を起こした地域を砲撃するため、たびたび都市郊外の周囲に配備されたのです。
近年になって、シリア陸軍は「M-160」のほかにロケット弾発射体を搭載した追加の「M-240」240mm迫撃砲が補充されたと考えられています。
下の画像では、最近の演習で、2台の「BMP-1」が歩兵と協同した敵陣地への襲撃を想定した訓練を実施している様子が映し出されています。これは素晴らしい宣伝映像としては役立つでしょうが、このように調整された襲撃は、今日の内戦では僅かな数の親アサドの部隊だけによって(正確に)実行されているのが実情です。
その反対陣営では、(最近になってタハリール・アル=シャームまたはレバント征服戦線と改名された)アル=ヌスラ戦線が、アレッポのアサド政権が維持する地域を襲撃する際に「T-72」と「BMP-1」での協同運用を多用しています。
下の画像では、シリア陸軍の兵士達が演習中に「BMP-1」の兵員区画の出入口に向かって駆け込んでいます。画像の兵士たちは、現在のごちゃ混ぜした軍服や装備をした同軍兵士と比較すると相対的に良好な装備をしているように見えます。
シリア陸軍は内戦の勃発直前にヘルメットや防弾ベストを含む中国で生産された戦闘装備を大量に入手しましたが、戦場での優位を獲得するためにますます多くの新兵が集まり始めると簡単に在庫が尽きてしまいました。
下の画像では、「BM-21」が40連装の122mmロケット弾のうちの1発を目標に向けて発射しています。
「BM-21」はシリア軍で最も多く運用されている多連装ロケット砲(MRL)です。以前にシリアが保管していた「T-54」及び古い「T-55」と共にレバノンへ供与されるまで、このMRLは相当数の北朝鮮製「BM-11」122mmMRLと一緒に運用されていました。
シリア軍は保有する「ボルケーノ(DIYロケット弾)」及び220mm、300mm、302mmといった口径の多連装ロケット砲の数を増加させ、質的な火力を相当に増加させることによって「BM-21」の多数の損失をいくらかカバーしているようです。
最近になってシリア北部で行動している反政府勢力が某湾岸諸国によって東欧から調達した「BM-21」を入手するなど、シリアにおける同MRLの拡散が敵対陣営にも普及が進んでいます。
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2025年前半に改訂・分冊版が発売予定です |
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