2021年12月14日火曜日

メイド・イン・チャイナ: エチオピアの中国製小型UAV飛行隊



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピアがイスラエルイランから調達した多数のUAVを運用していることに加えて、近年では少なくとももう1つの国が同国に無人機(UAV)を納入しています。その国はもちろん中国のことであり、簡単に入手できる安価な中国製UAVがアフリカの大部分を征服しています。

 興味深いことに、アフリカに普及したこれらの無人機は、そのほとんどが軍用に特別に設計されたものではなく、軍民を問わない幅広い分野での用途に使用される商用モデルで占められていました。

 とは言え、中国製の「翼竜Ⅱ」無人戦闘機(UCAV)がティグレ戦争でエチオピア軍に代わって作戦を遂行したことについては、以前から多くの人から推測されていました。「アラブ首長国連邦が隣国エリトリアのアッサブ空軍基地から運用していた」や「エチオピアが入手して運用していた」などと推測されていますが、ティグレ戦争に中国のUCAVが関与していたことを示す証拠は今のところありません(注:2021年12月現在、エチオピア空軍が「翼竜Ⅰ」UCAVを導入し、UAE軍も同機種をエチオピア国内に配備していることが確認されました。)[1]

 エチオピアで使用されている中国製無人機の実際の保有状況は多くの異なる会社から調達した市販のモデルで構成されているため、僅かに壮観さに欠けるというよりも明らかにパッとしないものかもしれません。

 これらの無人機はエチオピア国防軍(ENDF)に就役するのではなく、実際にはエチオピア連邦警察(EPF)がその受取人だったようです。軍用の仲間と比較すれば間違いなく人目を引くものではありませんが、警察によって中型サイズのUAVが運用されることは注目すべきものであり、それがアフリカの部隊で行われた場合はよりいっそうその度合いが高いものとなります。

 エチオピアに無人機が納入される前に、同国の警察官は2018年後半に北京の航空学校で中国公安部によって企画された無人機操縦訓練課程に参加しました。参加者は無人機の操作やメンテナンスの方法を学ぶことに加え、訓練プログラムの一環として、救助、火災、偵察などの各想定に沿った無人機のデモンストレーションも見学しました。[2]

「ZT-3V VTOL」UASを説明する中国人の教官

 エチオピアの警察官が無人機用のインフラが全く整えられていない山間部で遭遇するであろう運用シナリオに対応するため、EPFが導入した機種は全てが垂直離着陸(VTOL)型です。飛行中の効率を高めるために、少なくとも2つのモデルは、垂直離陸した後に水平飛行モードへ切り替えることができます。[3]

 いくつかの小型VTOLタイプも購入されましたが、その後のエチオピア警察での運用については全く知られていません。

 おそらくティグレ戦争の初期段階で投入するのに適した無人機が不足していたため、2020年11月に数機の無人機がエチオピア空軍に譲渡されました。興味深いことに、ENDFはこのシステムを黙って受け入れて就役させるのではなく、これらを(中国の市販モデルではなく)独自に設計した無人機として報道陣の前で発表しました。[4]

 このようなチープなプロパガンダの背後にある正確な理由は不明ですが、政権が作り出したストーリーを疑う理由がほとんどない国内の視聴者を対象にしてエチオピアの軍事力を確信させるために用いた可能性があります。



 「国産モデル」や単なる中国の市販品にかかわらず、この種のドローンの大きな欠点はカメラの品質です。これは、軍用品の数分の1の価格であることから予想されるものであり、警察での使用にはほとんど問題はなかったのでしょうが、ENDFでの使用には支障をきたす可能性が高いと思われます。

 事実上、これらの機体は低高度の運用で(軍用モデルより)より狭い範囲しかカバーすることができないため、TPLF(ティグレ人民解放戦線)部隊からの砲火にさらされることになります。



 ティグレ上空で活動している中国の武装ドローンの存在は一部の人々の争点となっていますが、現実にはエチオピアの無人機飛行隊を構成する数種類の市販モデルが使われているだけなので、その実態は大きく異なっています。

 今やUCAVが決定的な役割を果たす可能性のある紛争に巻き込まれたエチオピアが、より攻撃的な用途のUAVを再び中国に求めることも考えられないことではありません。

 エチオピアの内戦の現状を考えると、新型UCAVを迅速に就役させるため、その入札がすでに進行中でも不思議ではないでしょう(注:最終的に空軍は「翼竜Ⅰ」を導入しました)。



[1] Are Emirati Armed Drones Supporting Ethiopia from an Eritrean Air Base? https://www.bellingcat.com/news/rest-of-world/2020/11/19/are-emirati-armed-drones-supporting-ethiopia-from-an-eritrean-air-base/
[2] Ethiopian police officers attend drone piloting training program in Beijing http://www.xinhuanet.com/english/2018-11/14/c_137606105_3.htm
[3] https://twitter.com/FeWoessner/status/1332068349598191616
[4] Chief Commander of the Ethiopian Air Force, Maj. Gen. Yilma Merda.#Ethiopia #Tigray(Courtesy of EBC) https://youtu.be/leUr8ZECQd0

 ※  この翻訳元の記事は、2021年6月19日に本家Oryxブログ投稿された記事を翻訳した
   ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なってい 
       る箇所があります。



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