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2024年1月13日土曜日

南アジアの稲妻:パキスタンのUAV飛行隊(一覧)


著:ファルーク・バヒー in collaboration with シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 パキスタンは1990年代後半から豊富なUAVの運用国であり続けています。

 2004年、パキスタン空軍(PAF)は「SATUMA( 偵察及び標的用無人航空機)」社「ジャスース(スパイ)Ⅱ"ブラボー+"」 を導入したことで、空軍がパキスタン軍内で最初にUAVの運用をした軍種となりました。

 PAFに続いて、パキスタン陸軍(PA)はすぐに「グローバル・インダストリアル&ディフェンス・ソリューションズ(GIDS)」社によって設計・開発された「ウカブ(鷲)P1」UAVを導入し、2007年には運用試験を始め、翌2008年に正式な運用に入りました。

 「GIDS」社は「ウカブP2」として知られている「ウカブP1」のさらなる能力向上型を開発し、同機は2010年にパキスタン海軍(PN)に採用されました。

 情報が極めて少ないパキスタンにおけるドイツ製「ルナ」UAVの物語は、2000年代にPAが主要戦術UAVとして「EMT(現ラインメタル)」社製「ルナX-2000」を調達した時点から始まりました。

 PNもこの機種に好印象を持ったようで、2010年ごろから独自の「ルナX-2000」採用計画に着手しましたが、この計画は(おそらく資金不足が原因で)先送りされたようで、その代わりに臨時の措置として国産の「ウカブP2」が採用されました。

 「ウカブP2」が現役から退いた2017年に、PNはついに「X-2000」より長い航続距離と能力が向上した高性能型である「ルナNG」を導入しました。

 まだ「ウカブP2」がPNで現役にあった2016年、長い滑走路なしで離陸可能な戦術UAVの需要は結果としてPNにアメリカから「スキャンイーグル」を導入するに至らせました。

 なぜならば、PNは2008年にオーストリアの「シーベル」社製「カムコプター S-100」のトライアルを実施したことがあったものの制式採用せず、海上での運用に適した無人機システムを長く探し求めていたからです。

 「ボーイング・インシツ」社製「スキャンイーグル」はカタパルトで射出され、スカイフック・システムで回収される仕組みとなっています。これらのシステムのコンパクトなサイズは、「スキャンイーグル」を海軍艦艇のヘリ甲板から運用させることを容易なものにさせていることを意味しています。


 パキスタンは国内に配備されたアメリカ軍の「MQ-1 "プレデター"」無人戦闘航空機(UCAV)によって、武装ドローンの破壊的な能力をダイレクトに目の当たりにしました。

 このUCAVの配備とその後の実戦投入は、PAに強烈な印象を与えたに違いなく、すぐにアメリカから武装ドローンの購入を試みました。特に意外なことでもないでしょうが、この努力が無駄に終わったことは今では周知のとおりです。

 アメリカからUCAVの導入を断られたPAは東の隣国に目を向け、中国製「CH-3A」UCAVの生産ライセンスを取得し、国内で生産された同機種は「ブラク(稲妻)」と呼称されるようになりました。より高性能な無人プラットフォームが登場しているにもかかわらず、「ブラク」は現在でもPAとPAFで現役の座に残り続けています。

 「ブラク」の設計からインスピレーションを受けて、「GIDS」社が設計した改良型が「シャパル-1」です。この無人機システムは情報収集・警戒監視・偵察(ISR)用として、2021年にPAFに採用されました。

 ただし、「シャパル-1」は2021年の共和制記念日における軍事パレードで初めて一般公開された、「シャパル-2」ISR用UAVに取って代わられることになるでしょう。

 この新型機については、その後の2021年半ばに実施されたPAFの演習に参加する姿が目撃されため、すでに運用段階に入ったことが確認されています。「シャパル-2」は主にISRの用途で使用されるものの、最近に発表された武装型はPAFで運用されている「ブラク」を補完したり、その後継機となる可能性が高いと思われます。

武装型「シャパル-2」は2発の誘導爆弾などが搭載可能

中国からの買い物

 2021年、PAは「ブラク」飛行隊を中国製の「CH-4B」UCAVで補完しました。

 その一方、PAFは2016年に「翼竜Ⅰ」UCAVの運用試験を行っていたことが知られていますが、その1機が墜落したことでメディアの注目を集めました。[2]

 しかし、PAFはさらなる「翼竜Ⅰ」を発注することはせずに代わりとして、より優れた打撃能力をもたらす、より重い「翼竜Ⅱ」UCAVを選択しました。その後、2021年にPAFの基地で最初の同型機が目撃されました。[1]

 PNは陸軍の先例に倣って「CH-4B」の採用に落ち着いたようで、大量の同型機が2021年後半にPNに引き渡されました。[1]

 PAFは、自軍で装備するための高高度長時間滞空(HALE)型UAV計画を推めていることが判明しています。

 PAFの傘下にある「パキスタン航空工業複合体(PAC)」は、「CH-4」や「翼竜Ⅰ」級の国産軽量中高度・長時間滞空(MALE)型UAVを開発していることが知られており、2021年に政府やPAFの関係者がPACを訪問した際にその1機が目撃されています。[3]

 国立工学科学委員会(NESCOM)は、2021年にトルコ航空宇宙産業(TAI)と国内で「アンカ-S」UCAVの部品を製造する契約に調印しました。[4]

 また、国境警備で運用している既存の僅かなUAV飛行隊を補完するために、パキスタン内務省(MOI)も新しいUAVを購入することを望んでいますが、現時点ではどうなるか不透明です。

パキスタン陸軍 (PA)の保有機

無人偵察機

無人戦闘航空機
  • CASC「CH-4B」 [2021] (少なくとも5機を導入しているが、追加発注がある模様)


パキスタン空軍(PAF)の保有機

無人偵察機

無人戦闘航空機


パキスタン海軍(PN)の保有機

無人偵察機

無人戦闘航空機

  • CASC「CH-4B」 [2021] (少なくとも4機が導入されたが、未確認)


[1] SIPRI Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php
[2] https://twitter.com/KhalilDewan/status/1465475715567169538
[3] Lifting The Veil - Pakistan’s Chinese UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/lifting-veil-pakistans-chinese-ucavs.html

※  この翻訳元の記事は、2022年1月5日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。



おすすめの記事

2023年12月23日土曜日

中央アジアの戦力:キルギスの軍用車両・重火器(一覧)


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo


 かつてキルギスにはソ連軍中央アジア軍管区の第17軍団の拠点があったものの、ソ連崩壊後に(近代的な)装備をほとんど受け継ぐことには至りませんでした。実際、ソ連から引き継いだ軍事装備に関して言うならば、キルギスが全ての旧ソ連諸国の中で最悪だったと言っても過言ではないでしょう。

 1991年以降、軍への投資はほとんど行われなかったこともあり、保有兵器の状況は1970年代後半のソ連軍と似たような構成となっています。

 2021年に国境警備隊向けに3機の「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)を導入したことはキルギスにとって史上最大の軍事面への投資であり、これらは2022年9月のタジキスタンとの国境を巡る小規模な武力衝突で多大な威力を発揮しました。[1]

 1990年代以降における新しい装備の導入について、キルギス軍はその大部分をロシアの善意に依存してきました。近年の2018年と2019年には、キルギスは「Mi-8」ヘリコプター4機と「P-18」対空レーダー2基を無償で提供されたほか、過去10年間に「L-39」ジェット練習機4機、「An-26」輸送機2機、「BTR-70M」装甲兵員輸送車及び「BRDM-2M」偵察車数十台も供与されています。 [2] [3] 

 さらに2020年には、キルギスへの「9K37 "ブーク"」地対空ミサイル(SAM)システムの譲渡がロシアと協議されていることが公表されました。[4] 

 その他の武器や装備の供給源には、2010年代後半からさまざまな小火器や装甲車両、「スマートハンター」移動式対空レーダー兼射撃統制システム、「TH-G701」(短距離防空用)野戦通信指揮システムを提供した中国が含まれているほか、アメリカもフォード「レンジャー」 ピックアップ・トラック45台、「ポラリス」全地形対応車(ATV)44台、ナビスター「7000」トラックを寄贈しています。[5]


  • 以下に列挙した一覧では、キルギスが保有しているAFVなどを掲載しています。
  • この一覧は、現時点でキルギス軍及び国境警備隊で運用されているあらゆるAFVなどをすることを試みて作成されたものです。
  • この一覧に掲載されているものは、画像などの視覚的なエビデンスに基づいて確認されたものだけに限定されています。
  • レーダー、対戦車ミサイル、携帯式地対空ミサイルシステム、トラック及びジープ類はこの一覧には含まれていません。
  • タジキスタンが保有しているものについては、ここで見ることができます。
  • 各兵器類の名称をクリックすると、キルギスで運用されている当該兵器類などの画像を見ることができます。



  • 戦車

    装甲兵員輸送車


    自走砲

    固定式地対空ミサイル(SAM)システム
    • S-75 (首都ビシュケク防空用に1つの陣地が存在)
    • S-125 (首都ビシュケク防空用に2つの陣地が存在)

    自走式地対空ミサイルシステム

    無人偵察機 (UAV)
    • オルラン-10E (未公開)
    • WJ-100

    無人戦闘航空機 (UCAV)

    この記事の作成にあたり、 Buschlaid と ファルーク・バヒー の両氏に感謝を申し上げます。

    [1] Documenting Losses During The September 2022 Kyrgyzstan–Tajikistan Border Clash https://www.oryxspioenkop.com/2022/10/documenting-losses-during-september.html
    [2] Russia donates two helicopters to Armed Forces of Kyrgyzstan https://24.kg/english/136240_Russia_donates_two_helicopters_to_Armed_Forces_of_Kyrgyzstan/
    [3] Sergei Shoigu: Kyrgyzstan can always count on support of Russia https://24.kg/english/116337_Sergei_Shoigu_Kyrgyzstan_can_always_count_on_support_of_Russia/
    [4] Russia and Kyrgyzstan discuss delivery of air defense systems, helicopters https://24.kg/english/153139_Russia_and_Kyrgyzstan_discuss_delivery_of_air_defense_systems_helicopters/
    [5] A Vehicles Handover Ceremony with U.S. Ambassador T.Gfoeller to Kyrgyzstan http://bishkek.usembassy.gov/2010_0825_vehicle_handover.html

    ※  当記事は、2022年10月10日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したも
      のです。