2022年11月11日金曜日

同盟の要であり続けるために:オランダによるウクライナへの軍事支援(一覧)


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 オランダは(ロシアがウクライナとの国境沿いで戦力の増強を開始した時点で)ヨーロッパで最初にウクライナへの有意義な軍事支援を約束した国の一つです。

 2022年2月24日にロシアが侵攻を開始した数日後には、「FIM-92 "スティンガー"」携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)50基とミサイル200発、「パンツァーファウスト3」対戦車無反動砲50基と弾頭400発を含む追加の軍事支援が即座に公表されました。

 ほどなくして、オランダ国防省はウクライナへの武器供与の詳細について今後は公表しないことを宣言しました。[1]
 
 それにもかかわらず、無人偵察機や「AGM-84 "ハープーン"」対艦ミサイルさえも含む追加の武器供与の詳細が何度も明らかにされていることから、この国によるウクライナへの軍事援助の流れが継続していることは間違いありません。

 2022年4月になると、オランダのマルク・ルッテ首相によって「PzH 2000」自走砲榴弾砲8台と数量不明の「YPR-765」装甲兵員輸送車(APC)を含む重火器がウクライナへ供与されることが発表されました。
 
 その後、「YPR-765」はウクライナ軍に新設された機械化旅団に配備され、ロシアに占領されたウクライナ領土全域への反抗作戦に投入されたことが確認されています。この実戦投入は、2022年8月29日にウクライナ軍がヘルソン州の一部を奪還するための攻勢を開始した際に行われました。

 「YPR-765」はトルコから供与されたBMC製「キルピ」 MRAPなどと共に、現地で戦うウクライナ兵の主要な移動手段として活躍しています。

 広大な平原を横断しながら歩兵をロシア軍の陣地近くの地点まで運ぶという危険な任務を負ったこともあり、「YPR-765」は現時点までに2台の損失が確認されています(注:2023年8月6日現在では少なくとも33台まで増加)。[2]

ロシア軍の砲撃を受けながら、ヘルソン州で前進を試みるウクライナ兵とオランダが供与した「YPR-765」

 オランダ市民による取り組みもウクライナの窮状改善に大きく寄与しています。

 「ザイレン・ファン・ ヴライハイト (自由の帆)」 はウクライナ支援のためにクラウドファンディングを実施している民間組織の一つであり、彼らの尽力によって2022年9月初旬の時点ですでに救急車88台、「ウニモグ」2台、消防車1台、最大で2000台の自転車がウクライナへ送られています。[3] 

 寄贈されたこれらの車両は主に民生用ですが、救急車は負傷したウクライナ兵の搬送や治療に使用するために迷彩塗装が施されました。送られた物品の全てが、何らかの形でウクライナが抵抗を続けることに貢献しているのです。

ウクライナ到着後に迷彩塗装が施された「ザイレン・ファン・ ヴライハイト 」が納入した救急車

 ウクライナに譲渡された「YPR-765」の数にも左右されますが、オランダが有する不用重火器のストックはほぼ枯渇状態にあると思われます。それでも、将来的の供与対象にオランダ軍でまもなく退役が始まる「メルセデス・ベンツ "290GD"」 SUVが入る可能性はあります。

 同車は非装甲のソフトスキン車両ですが、それがフランスに同様の「プジョー "P4"」SUVをウクライナに大量に供与することを妨げなかったことを踏まえると、さほど問題にはならないでしょう。[4] 

 「290GD」は優れた全地形対応の機動性が特徴であり、兵器のプラットフォーム車や単純な輸送用としても使用できることから、急場しのぎで多く使用されている民生用の乗用車よりは確実に好ましいと言えます。
 
 また、「FH-70」155mm 牽引式榴弾砲の供与も可能です。もともと、この榴弾砲は旧式となった「M114」155mm榴弾砲の改修中にオランダの砲兵戦力を維持するため、1990年に15門を一気に導入されたたものです。これらは2001年まで運用された後に保管状態を経て売りに出されましたが、その当時ですでに比較的古い設計の牽引砲であったこともあって買い手が見つかることはありませんでした。

 「FH-70」は欧米諸国が用いる全ての155mm砲弾を発射可能であり、すでにイタリアとエストニアによって少数がウクライナへ供与されているため、今後の有望な供与兵器となる可能性が残されているのです(注:両国では現在でも「FH-70」が運用中です)。

 そのほか、オランダがウクライナに代わって兵器類を調達したり、ウクライナが他国の防衛企業から兵器システムを購入可能にするための資金提供することによって、ウクライナ軍の支援を継続する選択肢を採用することもあり得ます。

 ウクライナの防衛力をさらに強化するために今後どのような措置が講じられていくにせよ、オランダがNATO加盟国として、あるいは自決権を守る主権国家としての責任を放棄しない決意を持っていることは誰から見ても明らかでしょう。

ウクライナで作戦に従事中の「PzH 2000」自走砲榴弾砲

  1. 以下に列挙した一覧は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の直前と最中にオランダがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事装備等の追跡調査を試みたものです。
  2. 一覧の項目は武器の種類ごとに分類されています(各装備名の前には原産国を示す国旗が表示されています)。
  3. 一部の武器供与は機密事項であるため、この一覧は供与された武器の総量の最低限の指標としてのみ活用できます。
  4. この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. 各兵器類の名称をクリックすると、当該兵器類などの画像を見ることができます。
 

戦闘機(42)
  • 42 F-16A/B [2024年以降に供与] (ウクライナ人パイロットの訓練用に一部はオランダ国内に配備)

艦艇(18)

対艦巡航ミサイル

地対空ミサイルシステム

(自走式を含む)対空砲(120)

自走砲(8)

戦車(85+)
  • 45 T-72EA [2023年1月から引き渡し] (オランダとアメリカがチェコから調達し、改修後にウクライナへ供与)
  •  33(100台中) レオパルト1A5 [予定] (ドイツ・デンマークと共同での実施)
  •  7(14台中) レオパルト2A4 [同上] (デンマークと共同での実施)

装甲戦闘車両

装甲兵員輸送車 (APC)(264+)

工兵・支援装備

車両(909)
  • ~300  DAF「YA-4442」 "4トン" トラック 及び DAF「YAZ-2300」 "10トン" トラック [2022年11月から供与] 
  • メルセデス・ベンツ290GD 救急車 [2022年/2023年]
  • フォルクスワーゲン "アマロク" SUV [同上]
  • 19 クレーン車 [同上]
  • 25 ローダー [同上]
  • 25 フォークリフト [同上]
  • 5 サイドフォークリフト [2023年]
  • オートバイ [2022年/2023年]

重迫撃砲(6)


携帯式地対空ミサイルシステム (MANPADS)

無人偵察機(164+)


無人艇(2)


レーダー

対戦車兵器

小火器


弾薬類

  •  400 DM72A1 (PzF 3-IT) 弾頭(「パンツァーファウスト3」用) [2022年3月]
  • 30,000 7.62mm弾及び12.7mm弾  (「AX308」及び「M82」狙撃銃用)[2022年3月]
  • 小火器用の弾薬 (「C7A1」アサルトライフル、グロック17拳銃, FN MAG, FN ミニミ, M2重機関銃用) [2022年]
  • 20,000 120mm戦車砲弾(「レオパルト2」用) [予定]
  • M982「エクスカリバー」誘導砲弾(「PzH 2000」用) [2022年/2023年]
  • ''ヘリコプター用の弾薬'' [同上]

個人装備
  • 3,000  M95 ヘルメット [2022年3月か4月]
  • 「STRONG」ヘルメット [2022年6月]
  • 2,000 防弾チョッキ [2022年3月か4月及び6月]
  •  爆発物処理 (EOD) 用個人装備 [2022年]
  • 暗視装置 [同上]
  •  30 携帯式地雷探知機 [2022年3月]

その他の装備品類
  • 12 野戦病院 [2022年/2023年] (エストニア・ノルウェーと協力して供与)
  • 31 野戦炊事用具 [同上]
  • 769 発電機 [同上]
  • 1,800 テント [同上]
  • 寝袋 [同上]
  •  燃料 [同上]
  •  各種装備の予備部品 [同上]
  •  MREレーション [同上]
  • 医療物資 [同上]
  • 2 爆発物処理 (EOD) 用トラック[2023年2月以前に供与]
  •  爆発物処理 (EOD) キット[2022年]

[1] Beyond The Call - Dutch Arms Deliveries To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/beyond-call-dutch-arms-deliveries-to.html
[2] Wat doet Nederland? Van dag tot dag https://www.defensie.nl/onderwerpen/oostflank-navo-gebied/wat-doet-nederland
[3] Attack On Europe: Documenting Ukrainian Equipment Losses During The 2022 Russian Invasion Of Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/attack-on-europe-documenting-ukrainian.html
[4] Zeilen van Vrijheid | Амстердамська ТрО https://twitter.com/zeilen_vrijheid
[5] Arms For Ukraine: French Weapons Deliveries To Kyiv https://www.oryxspioenkop.com/2022/07/arms-for-ukraine-french-weapon.html
[6] Answering The Call: Heavy Weaponry Supplied To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/answering-call-heavy-weaponry-supplied.html


※  当記事は、2022年9月9日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
  です。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があ

2022年11月8日火曜日

創意工夫とDIYでの戦い:アルメニアの「N-2」多連装ロケット砲



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 アルメニアでは自国の現代史を通して、比較的少ないコストで新たな戦闘能力を軍隊に提供するべく独自兵器の設計が頻繁に考案されてきました。そのプロジェクトの1つである、塹壕内で使用するために設計されたリモート・ウエポン・システムについては、すでに当ブログで取り上げられています。

 もう1つの比較的あまり知られていないプロジェクトとして、12門の「RPG-7」対戦車擲弾発射器を牽引車やトラックに搭載した短射程のサーモバリック弾発射型多連装ロケット砲(MRL)があります。リモート・ウエポン・システムと同様に、このMRLもナゴルノ・カラバフ周辺のアゼルバイジャン軍との塹壕戦を念頭に置いて設計された可能性があります。

 「N-2」として知られるこのMRLは、おそらく1990年代から2000年代のどこかの時点で「Garni-ler・アームズ・カンパニー」によって設計・製造されました。[1]

 この発射機には12発の「TBG-7V」サーモバリック弾(またはアルメニアのコピー品である「TB-1」)を使用しますが、理論上は通常の「RPG-7」から発射できる弾頭であれば、どれでも使用可能です。12発の弾頭は、一度に単発か数発が遠隔操作で発射されます。ただし、「TB-1/BG-7V」の有効射程距離が短いため(数百メートルから1キロメートルと推定)、このシステムを有効に活用できる状況は比較的少ないと思われます。

 敵の陣地を狙うためには「N-2」を危険なほど近くに配置させる必要があるため、このシステムを防衛目的以外で適切に使用することは困難です。特に思い浮かぶシナリオの1つとしては、味方の陣地を敵の歩兵から防御する際での使用があります。敵兵に「N-2」の12発のサーモバリック弾頭を使えば、相当な効果を発揮するに違いありません。



 時々「N-2」MRLがアルメニア陸軍の装備リストに入ったと推測されることがありますが、これは2011年のアルメニアの独立記念日の軍事パレードに登場したことに由来しているようです。[2]

 (実際の運用を含めて)再び姿を見ることがなかったため、「N-2」がパレードに登場したのは一度限りの宣伝目的での使用にあったと思われます。実際、パレードに登場した4門のシステムは「N-2」の全生産量に相当する可能性すらあります。

 このシステムは安価で軽量なMRLとしてある程度の見込みがあるものの、問題はより正確に使用できる12門の「RPG-7」発射機と同量の弾頭を犠牲にすることが、「N-2」の控えめな接近阻止・領域拒否能力に値するかどうかです。



 「N-2」の性能は、どうやらアルメニア軍に大量生産を開始するには不十分なものと見なされたようです。

 とは言うものの、「N-2」はアルメニアの防衛部門に創造力が欠けているわけではないということを思い出させてくれます。らにある程度の財源が与えられるならば、「N-2」をベースにしたシステムが低レベルでの火力を増強する費用対効果の高い手段をもたらすかもしれません。



[1] Light multiple grenade launcher developed in Armenia http://articles.janes.com/articles/Janes-Missiles-And-Rockets-2010/Light-multiple-grenade-launcher-developed-in-Armenia.html
[2] Independence Day. Armenia. Parade on September 21 https://youtu.be/ggGo-BzNBEw

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




おすすめの記事

2022年11月5日土曜日

エーゲのAFV:ギリシャ軍の「M1117 "ガーディアン"」


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 ギリシャ軍は、老朽化した装甲戦闘車両やその他の装備の更新面で大きな困難に直面し続けています。

 特に2007年から2008年にかけての金融危機とその後の政府債務危機(いわゆる「ギリシャ危機」)の打撃を受け、ギリシャが多くの調達計画の中止や延期を余儀なくされたことは今でも多くの方の記憶に残っているでしょう。

 トルコとの緊張が高まった結果としてギリシャ軍は大幅な予算削減を免れることができましたが、財源不足は毎年恒例の独立記念パレードを行うために必要とする燃料を一般市民が負担しなければならないという奇妙な事態を招きました。
 
 ギリシャの財政状況はここ数年で多少改善されたとはいえ、軍は依然として保有する装備品全体が広範囲にわたって陳腐化していることに直面している状況に変化はありません。

 ギリシャは「RM-70」多連装ロケット砲(MRL)用に射程40kmのセルビア製「G2000」ロケット弾を購入したり、「レオパルト1A5」「レオパルト2A4」 戦車の改良を検討するなどして旧式化しつつある兵器に関する問題に対処しようと試みてきました。[1] [2] 

 しかし、ほかの種類の装備は寿命が近づいているか、21世紀の戦いで通用することができなくなっているため、置き換える必要があります。

 軍事装備の陳腐化とそれらを更新不能というギリシャを苦しめる悪影響を軽減するため、アメリカは同国に大量の軍事装備を寄贈し、ギリシャ軍がトルコ軍と同等の軍事力を維持できるように手助けしています。

 近年の支援には、70機の「OH-58D "カイオア・ウォリア"」武装偵察ヘリコプター、4隻の「Mark V」特殊任務艇、約500台の「M113」装甲兵員輸送車と「M-901 ITV」 対戦車ミサイル車、数百台のトラック、そして1200台の「M1117 "ガーディアン"」 装甲警備車(ASV)の譲渡が含まれています。

 実際には(より現代的な)IFVやAPC、MRAPの方が必要としているものの、ギリシャが(トルコとの紛争で予想される正規戦に特に適していない)「M1117」を選ぶ決断をしたのは、余剰兵器援助(EDA)プログラムを通じて無料で入手可能であり、ギリシャは輸送と検査費用として1億200万ドル(約145億円)を支払うだけでよかったという事実だけでも説明できるしょう。[4] 

 ちなみに、1200台の「M1117」の本来の購入価格は合計で約9億7,000万ドル(約1,376.5億円)でした。つまり、ギリシャは超格安で大量のASVを導入できるメリットがあるわけです。[4]

鉄路でギリシャに到着した「M1117」 ASVの第1陣(2021年11月)

 ギリシャにおける運用で、「M1117」は主に3名の乗員(操縦手、車長、機銃手)に加えて最大で3名の兵士を乗せる偵察車や歩兵機動車(IMV)として配備されるものと思われます。なぜならば、同国陸軍は現時点で大量の装甲「ハンヴィー(及びそのギリシャ独自の派生型)」を運用していますが、IMVとMRAPは著しく不足しているからです。[5] 

 「M1117」はこうしたAFVの役割を果たすようには設計されていませんが、戦車を除くギリシャのすべてのAFVよりも優れた防御力を備えているほか、(前述のとおり)少数の歩兵を輸送することも可能なため、上記の目的で運用されるのは必然的と言えるかもしれません。この最大の原因は、ギリシャ陸軍がAFVについて依然としてほぼ例外なく旧式と化した「M113」ベースの車両群に頼っていることによるものです。

 「M1117」の第1陣である44台は2021年11月にドイツにあるアメリカ軍の備蓄施設からギリシャに到着し、2022年初頭にはさらに数百台がアメリカ本土から船でギリシャに到着しましたが、船便で届けられたASVについては到着時にはまだ砂漠迷彩が施されていました。

 残りの「M1117」は2022年中下旬から2023年中にギリシャに届けられる見込みであり、同年中に納入が完了する予定です。[5]

 ギリシャに到着した各車両は、正式にギリシャ陸軍に加わる前に再塗装と整備を受けることになっています。

聖水で祝福を受けるギリシャ軍の「M1117」:こうした儀式は正教会の国では一般的な慣習となっています。

 1990年代にアメリカ陸軍憲兵隊の専用車両として「V-100/150」シリーズの装甲車をベースに開発された「M1117」は、予算の都合で2002年にプロジェクトが終了する前の1999年に運用が開始されました。

 2003年のイラク戦争以降、「M1117」計画に新たな勢いが与えられました。というのも、「ハンヴィー」が敵の銃撃や道端の即席爆発装置(IED)に非常に脆弱であることが判明したためです。それ以来、このASVは大量生産され、瞬く間に世界中の世界中のいくつかの軍隊の保有装備となったのでした。

 輸送部隊の護衛や後方地域での警戒といった任務に対応するために「M1117」の武装は歩兵や軽装甲車両との戦闘に最適化されたものであり、「Mk 19」40mm自動擲弾銃と「M2」12.7mm重機関銃付きの小型(有人)砲塔を備えています。

 これに加えて、砲塔の右側面にあるピントルマウントには、敵兵や低空飛行するヘリコプターに対して用いるために「FN MAG」「MG3」 7.62mm汎用機関銃を装備することが可能となっています。

 それに比べ、ギリシャの「M113」APCは装甲化されたキューポラに「M2」重機関銃1門だけしか装備されていません。
 
 「M1117」の装甲防御力は、小火器・IED・小型地雷から乗員を保護するのに十分なものであり、傾斜した装甲はRPGに対してもある程度の効果をもたらすと思われます(注:ただし、RPGに対して文字どおりの最小限度の防御力しか有していないことは言うまでもありません)。

 仮に「M1117」が待ち伏せ攻撃や自己の対処能力を超える状況に遭った場合、101km/hという最高速度によって危険な状況から素早く離脱することができます。また、操縦性とスピードが大幅に低下するものの、ASVは4本のタイヤがパンクしても走り続けることも可能です。

 ちなみに、「M1117」にはAFVでは必須とも言える発煙弾発射機が全く装備されていません。


 アメリカが気前の良い措置を講じていなかったら、「M1117」はギリシャ陸軍の兵器に入る可能性はなかったと言えるでしょう。

 ギリシャが必要とする要件に特に適合しているAFVではありませんが、「M1117」は他のAFVを調達するための十分な資金が確保されるまでの間、陸軍に少なくともある程度の猶予をもたらしてくれるに違いありません。


[1] Greek army buys Serbian missiles https://greekcitytimes.com/2021/07/16/greek-army-buys-serbian-missiles/
[2] KMW to possibly modernize Greek Army Leopard 1A5 and Leopard 2A4 MBTs to Leopard 2A7 standard https://www.armyrecognition.com/defense_news_april_2022_global_security_army_industry/rheinmetall_to_possibly_modernize_greek_army_leopard_1a5_and_leopard_2a4_mbts_to_leopard_2a7_standard.html
[3] Greece welcomes its first batch of surplus M1117s https://www.shephardmedia.com/news/landwarfareintl/greece-welcomes-its-first-batch-of-surplus-m1117s/
[4] Army receives first delivery of M1117 armored security vehicles https://www.ekathimerini.com/news/1172965/army-receives-first-delivery-of-m1117-armored-security-vehicles/
[5] Αποτρεπτική ασπίδα στις πολεμικές απειλές του Ερντογάν: Εξοπλίζονται σαν «αστακοί» και θωρακίζουν Έβρο και νησιά τα Μ-1117 Guardian https://newpost.gr/amyna/621292cb9ae2132c2d04009c/apotreptiki-aspida-stis-polemikes-apeiles-toy-erntogan-exoplizontai-san-astakoi-kai-thorakizoyn-evro-kai-nisia-ta-m-1117-guardian

※  当記事は、2022年7月11日に本国版「Oryx」ブログ(英語)に投稿された記事を翻訳
  したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した
  箇所があります。


おすすめの記事