2026年6月19日金曜日

隠れた参戦国: トルコ軍に導入されたドイツと連合国の兵器類(一覧)



著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2023年9月6日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

Ancak, ulusun hayatı tehlikeye girmedikçe, savaş bir cinayettir - 国家の存亡がかかっている場合を除けば、戦争は犯罪である (ムスタファ・ケマル・アタテュルク)


 第二次世界大戦中、中立を保ち続けることは一種の芸術であり、トルコは巧みな外交によってそれを見事に成し遂げました。トルコがようやくナチス・ドイツと日本に対して宣戦布告したのは1945年2月のことだったが、それでも大戦の残りの期間において、トルコ軍が実際に参戦することはありませんでした。実際、トルコの遅い参戦は、連合国が同国を国際連合に加盟させる条件として完全なる交戦国としての立場になりことを求めたためであり、要は形式的なものに過ぎなかったわけです。

 ただし、実戦への参不加は、イギリスの側にとって間違いなく大きな失望をもたらしました。というのも、イギリスは、イタリアがギリシャへの侵攻を開始した1940年10月28日の時点で、トルコがドイツに対して宣戦布告するものと期待していたからです。この期待は、1939年10月19日にトルコ、イギリス、フランスが締結した軍事同盟に端を発するものでした。[1]

 僅か一か月前に始まった第二次世界大戦へのトルコ参戦を確実なものにしたいと考えたイギリスとフランスは、旧式化が進んだトルコ軍を大幅に近代化するため、大量の兵器を供給することを約束しました。

 アンカラは、近隣諸国のいずれにも勝るか、少なくとも同等の戦力を有する500機の近代的な航空機からなる第一線部隊の整備に、特に強い意欲を示していたことが知られています。ただし、その半数すら購入する資金がなかったため、最終的に英仏はトルコへ300機以上の最新鋭戦闘機を供給することで合意しました。

 それでもなお、トルコがイタリアやドイツのような大国と、ほぼ単独で戦うことになるとは、ほとんど予想されていませんでした。海軍力が乏しく、陸軍の大半が依然として騎馬部隊であることを踏まえると、トルコ軍が新たな装備をすべて吸収し、それらを用いた戦術を練り上げ、他の軍種と連携して展開するには、相当の時間を要するであろうことは言うまでもありません。

 予想されるトルコの戦闘能力の不足を補うため、必要が生じた場合には将来的に英仏軍を同国に派遣することが構想されました。これもあって、英仏およびトルコ軍が使用するための仮設飛行場が約95か所もトルコ全土で建設が開始されたのです。[1]

 しかし、ヨーロッパで戦争が激化する中、トルコは要望した装備の一部しか受け取ることができませんでした。

 1939年10月、トルコ空軍は、「スピットファイア」や「ハリケーン」といった戦闘機、「ブレニム」や「バトル」といった軽爆撃機を含む、計159機のの供給をイギリスに要請しました。最終的に引き渡されたのは、要望(と注文)したうちのたった半分だけでした。おまけに、この中に含まれていた「スピットファイア Mk I」は僅か2機でというありさまだったのです。[1]

 1940年にイタリアが隣国であるギリシャへの侵攻を開始した時点で、トルコ軍は自国の国境を守るのがやっとの状態であり、その地域に展開していたイタリア軍(そして後にドイツ軍)に対して攻勢に出るなど、到底考えられない状況でした。

 トルコ軍のスピットファイアとハリケーンの列(1940年):トルコが1939年に発注した15機の「スピットファイア」のうち、引き渡された2機だけだったというのは上述のとおりであるが、1939年10月にポーランドが陥落した後に同国向けだった別の1機が引き渡されたものの、3機はスペアパーツの不足で1940年12月には退役に追い込まれた。

 フランスから供給された武器の量も、トルコの期待にはほど遠いものでした。1940年初頭には、36機の「MS.406C1」 戦闘機(ヘッダー画像参照)と100台の「R-35」戦車が納入されたものの、1940年5月のドイツフによるフランス侵攻以降は納入が途絶えてしまいました。

 イギリスもまた、ダンケルクやバトル・オブ・ブリテンで甚大な損害を被った後、1940年と1941年にトルコから繰り返し寄せられた要請(その数はその間に546機にまで膨れ上がていた)に応えることができなかったのです。

 1941年にドイツがアンカラに対して「He 111爆撃機」の予備部品の供給をこれ以上行えないと通告した後、バトル・オブ・ブリテンはトルコにとって同型機の部品を入手する絶好の機会となりました。詳しく説明すると、トルコはイギリスに対して、1940年のロンドン大空襲の際に不時着した「He 111」から回収された部品を供給できないかという異例の要請を行い、ロンドン側から肯定的な回答を得たわけです。[2][3]

 戦争に関連した、あまり知られていないもう一つの動きとして、ドイツ軍による地上侵攻からイスタンブールを守るため、マルマラ海から黒海へと続く大規模な掩蔽壕と地下トンネル網が建設されたことが挙げられます。考案者であるムスタファ・フェヴズィ・チャクマク元帥の名にちなんで「チャクマク線」として知られるこの防衛線は、1940年のフランス戦で簡単に突破された「マジノ線」を参考にして構築されたものです。このプロジェクトには莫大な資金とコンクリートが投入され、要塞の建設には(当時のトルコのセメント生産量に匹敵する)推定35万トンのセメントが使用されました。[4]

 1944年にドイツ軍がギリシャから撤退した後、チャクマク線はその唯一の存在意義を失い、すぐに放棄されてしまいました。

チャクマク線のトーチカは今でも多数が残っている(画像はイスタンブール西部の個体)

 1942年以降、戦況が連合国に有利に傾き始めると、イギリス(そして、その程度は低いもののアメリカも)は、トルコからの大規模な軍需物資の要請に初めて応えることができるようになりました。この時点で、連合国はトルコの防衛能力だけでなく、トルコにおけるドイツの影響力の拡大も懸念せざるを得なくなっていたのです。

 1941年1月、アンカラが依然としてイギリスと公式に軍事同盟を結んでいたにもかかわらず、ドイツとトルコは友好条約を締結しました。ドイツ軍がソ連深部へと進撃を続ける中、ベルリンはドイツのUボートがボスポラス海峡を通過して黒海へ入る許可と、クロム鉄鉱の供給についてトルコに要請しました。アンカラは最初要請は拒否したものの、ドイツの最新鋭の装備を有利な条件で入手できることを条件に、ベルリンへのクロム鉄鉱の供給にはより前向きな姿勢を示したわけです。

 アンカラが天才的手際でベルリンとの交渉の詳細を米英側にリークしたところ、彼らはドイツを凌ぐ条件を提示しようと、急いでアンカラへ赴きました。ベルリンがこの情報を耳にすると、直ちにアンカラの条件を受け入れ、その結果、1943年に「Fw 190 A-3」戦闘機72機、「III号戦車」と「IV号戦車」が35台ずつ発注されるという結果に至っています。[5]

 ロンドンとワシントンが再びトルコを同盟に引き入れようとしていたため、連合国による大規模な武器供与も継続されました。

 1943年12月、チャーチル、ルーズベルト、そしてムスタファ・イスメト・イノニュ大統領がカイロで会談したものの、合意には至りませんでした。結果として、1944年初頭に、連合国は、アンカラがドイツへのクロム鉄鉱の輸出を停止し、空軍基地を提供するまで、武器の供給を大幅に削減し、トルコへの石油輸出を事実上すべて停止すると発表したのです。

 1944年4月にドイツへのクロム鉄鉱の出荷を停止するという要求には応じた一方で、トルコの空軍基地は依然として外部の軍隊には開放されませんでした。

 鉄鋼生産に用いられるクロム鉄鉱の輸出停止に続き、1944年8月にはドイツとの外交・通商関係が完全に断絶され、1945年2月にはベルリンに対して宣戦布告が行われました。興味深いことに、ベルリンはトルコがいずれ宣戦布告を行うことをすでに予期しており、その場合に備えてイスタンブールへの戦略爆撃を計画していました。結局のところ、トルコがどちらかの側につくという決断を下したのは、そのような報復措置が実行可能となるには遅すぎたようです(つまり、1945年2月の時点でドイツにそのような能力が残されていなかったということ)。[5]

 もしドイツが当初の計画を実行していたならば、トルコ空軍に配備されていたドイツ製「Fw 190 A-3」が、ドイツ空軍の「He 111」を迎撃したかもしれません。

 明らかに、トルコが第二次世界大戦に参加しなかったからといって、その戦時中の功績が研究対象として興味深いものではないとは限りません。このテーマに関する資料が全般的に不足していることからそう思われがちではありますが、そうではないのです。

トルコ空軍の「スピットファイアMk. Vb(左)」と「フォッケウルフ Fw 190 A-3(右)」

  1. 以下の一覧は、第二次世界大戦直前、戦中、および終戦直後にトルコへ納入された重装備を網羅することを目的としています。
  2. 以下の項目は兵器の種類ごとに分類されています(納入国を示す国旗が付いています)。
  3. 牽引砲及び対空砲はこの一覧には含まれていません。
  4. この一覧の目的は、大戦中におけるトルコの戦力を概観することではなく、1933年から1949年の間に受け入れた第二次世界大戦時代の装備という、トルコ軍のユニークな装備を紹介することにあります。
  5. 兵器の名前をクリックするとトルコで使われた当該装備の画像が表示されます。

陸軍

戦車

装甲車

自走砲
  • 49 ビショップ [1943-194?]
  • ディーコン AEC マークI ガンキャリアー [194?-194?]

空軍

戦闘機

攻撃機

爆撃機

練習機

汎用機

輸送機
  •  5 Ju-52 [1944-194?] (トルコ航空で運用)
  • ~110 C-47/DC-3 [1947-1998]

飛行艇

海軍

潜水艦
  • 1 ギュル級 [1934-1947]
  •  3 サルディライ級 [1939-1958] (1隻がナチス・ドイツ軍に接収)
  • 3 オルチュ・レイス級 [1942-1958] (WWIIで1隻が英軍に拿捕後、海没処分)

駆逐艦

掃海艦・機雷敷設艦

魚雷艇
[1] The Turkish Air Force, 1939-45: The Rise of a Minor Power https://www.jstor.org/stable/4283380?origin=JSTOR-pdf
[2] Bye Bye Berlin: Türkiye’s He 111 Bombers https://www.oryxspioenkop.com/2023/01/bye-bye-berlin-turkiyes-he-111-bombers.html
[3] The Turkish Air Force, 1939-45: The Rise of a Minor Power https://www.jstor.org/stable/4283380
[4] Another Section of the Çakmak Line of Defense in Çatalca Surfaced http://en.istanbul.gov.tr/another-section-of-the-cakmak-line-of-defense-in-catalca-surfaced
[5] https://twitter.com/ResuALKAN/status/1618572734602293248

Special thanks:Ole Nikolajsen, Gekho , Mark Bevis.


 お知らせ:2025年7月に上記本の改訂・分冊版である「The Armed Forces of North Korea Volume 1: Part 1: Korean People's Army Ground Forces Organisation, Strategy and Infantry」が発売されました。残りの巻も完成次第発売される予定です(記載情報は2025年現在のものにアップデート済み)。
 お知らせ2:2025年10月に「Volume 1: Part 2(陸軍AFV)」が発売されました。 
 
お知らせ3:2025年12月に「Volume 2(空軍)」が発売されました。
 お知らせ4:2026年2月に「Volume 3(海軍) 」が発売されました

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2026年6月13日土曜日

商業的成功への道のり:トルコ国産の新型電車「METS」

「E44000」系METS

著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2022年2月6日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 この20年間で、トルコの鉄道輸送は大規模な近代化が進められてきました。トルコ政府は今後数年間にかけて、国内の鉄道網をさらに発展させることを決心しているようです。

 現在、トルコは韓国、アメリカ、イギリスといった国々よりも長い高速鉄道網を有しており、現在整備中あるいは計画段階にある路線が完成すれば、世界第3位の規模を誇る高速鉄道網を持つことになる見込みです。[1] [2]

 この野心はそれだけで終わりません。必要不可欠な鉄道インフラの整備に加え、その路線を走る列車の設計開発も自国で手掛ける予定なのです。つまり、この国は鉄道大国となる道を着実に歩んでいます。

 すでに世界の広範な地域で、トルコ企業は鉄道インフラの建設に積極的に取り組んでいます。2021年、ヤプ・メルケジ社はセネガルにおける「地域高速鉄道(TER)」の第1期工事を完了させました。同事業の契約額は4億ドル(約676億円)にも上ります。TERの完成直後、ヤプ・メルケジ社は、タンザニアと近隣諸国を結ぶ全長368キロメートルの鉄道区間建設に関する19億ドル(約3,200億円)の契約を獲得しました(編訳者注:2022年にはタンザニアの鉄道事業で契約を獲得した)。[3][4]

 トルコ企業が鉄道インフラのほぼ全分野で活躍していることは、アヴィテン社がトルクメニスタンのアシガバートにあるモノレール向けに旅客情報システムを構築する契約を獲得したような小規模なプロジェクトからも裏付けられています。[5] [6]

 これらのプロジェクトに共通する特徴としては、トルコ企業がアフリカ諸国にとって現実的な価格で高品質な鉄道インフラを建設でき、それによってトルコが中国にとっての強力なライバルとして位置づけられている一方、現在のトルコは自国で整備した線路を走行させるための列車を自力供給できていないという点が挙げられます。実際、トゥヴァサシュ(トルコ車両製造株式会社)やユーロテム、トゥロムサシュ(トルコ機関車エンジン工業:現TÜRASAŞ)といった車両製造メーカーはいずれも列車や機関車の組み立てを行ってきたものの、これらの車両は一般的に外国の設計に基づいたものです。

 今後数年のうちに数種類の国産列車が導入されることで、車両面における外国依存は終わりを告げることになるでしょう。その中でも、アフリカ、アジア、さらにはヨーロッパやその他の地域でも商業的な成功を収めることがほぼ確実視されている存在があります:それが時速160kmの走行速度を誇る「Milli Elektrikli Tren(国家電気列車)」です(編訳者注:現「E44000」のこと)。[7]

 トルコが国産電車(EMU)の設計を手掛けている一方で、欧州諸国の大半では、旅客列車の開発と製造がポーランド、スイス、フランス、スペインの企業にアウトソーシングされています。

 国家電気列車(METS)は、欧州及び中央アジア市場における欧州鉄道メーカーの独占体制に挑み、東南アジア、サハラ以南のアフリカ、南米でトルコに全く新しい販路を拓くことになるかもしれません。まもなくトルコ企業が鉄道のほぼ全分野で事業を展開できるようになるという事実は、外国にとってトルコが鉄道事業における極めて魅力的な取引相手となるでしょう。トルコの国際的な影響力の拡大は、この傾向をさらに強めることになると思われます。


 ハイテク鉄道技術の開発・製造に向けたトルコの取組みは、新型EMUだけにとどまりません。今後数年間で、トルコは国産の「E5000」電気機関車、通勤列車、ハイブリッド機関車、電気・ディーゼル機関車、そしておそらく最も注目されるであろう国産高速列車の生産を開始する予定です。[8] [9]

 METSの開発・整備を通じて得られたインフラと知見を活用して最高速度225km/hを誇る国産高速列車が登場したならば、トルコは国産高速鉄道の生産を推し進めるでしょう。

 これらのプロジェクトが同時に展開されているおかげで、トルコは(高速)列車、機関車、地下鉄、路面電車、バスなど、あらゆる種類の公共交通機関を自国で整備できる段階に到達しようとしています。

 こうした成果により、そう遠くないうちにトルコでは技術と専門知識を世界中に輸出できる土台が整うことになります。その対象はアジアやアフリカのみならず、南米や欧州に及ぶ可能性があるでしょう。トルコ製の列車がヨーロッパの路線を走るというアイデアについて、一見奇妙に思えるかもしれません。しかし、トルコ産のバスはすでにユーラシア大陸の広範囲にわたって運行されています。それに加えて、チェコ、オーストリア、ハンガリー、セルビアの鉄道事業者がすでに中国製の(旅客)列車を導入していることを踏まえると、トルコ製の列車という構想は決して非現実的なものではないのです。[10] [11] [12] [13]

 中国と同様に、トルコも欧州のメーカーよりも低価格で先端技術を生産することができます。ただし、中国とは異なって、トルコ製の製品には一般的に「中国製」に付きまとうような否定的なイメージがありません。

 トルコの鉄道車両メーカーの競争力の高さは、すでにルーマニアやポーランドにおける複数の契約獲得をもたらしています。その中でも特に注目すべきなのは、ドゥルマズラー社がルーマニアの首都ブカレスト向けに路面電車100両を納入するという1億8000万ユーロ規模(約335億円)の契約を勝ち取った事例でしょう。同社は入札の過程で中国やルーマニアの企業を退けてせり勝ったのです。[14]

 同年、路面電車メーカーであるボザンカヤ社は、ルーマニアのヤシ市に路面電車16両を納入するという3,000万ユーロ(約56億円)の契約を締結しました。この契約も競合していたポーランド企業を制して落札に至りました。ちなみに、同社は2019年の初めにティミショアラ市に路面電車16両の納入に関する3,300万ユーロの契約を獲得しています。また、ドゥルマズラー社は2018年にポーランドのオルシュティン郡と路面電車12両の納入に関する2,380万ユーロ(約44億円)の契約も勝ち取っています。こうした事例は、トルコの鉄道車両メーカーの競争力をはっきりと証明していると言えるのではないでしょうか。[14][15]

 METSのコストは、将来の受注を確保する上での重要な要素となるだけでなく、欧州の鉄道事業者に、いつの日かトルコ製列車への置き換えを働きかける上でも重要なものになると考えれられます。現在のところ、METSは輸入品に比べて80%未満のコストで製造可能であり、量産が本格化すれば、その価格はさらに下落することは間違いないでしょう。METSのプロトタイプの現地調達率は65%であり、量産時には最大80%まで引き上げられる予定です。列車のコンポーネントと技術の80%がトルコ企業から調達されるという事実は、この国の経済を活性化させるほか、数億ドルの資本が国外流出するのを防ぐことにもなります。[16] [17]

トルコの高速鉄道プロジェクトの初期イメージ図

 トゥラサシュは、2025年までにトルコ国鉄(Türkiye Cumhuriyeti Devlet Demiryolları – TCDD)にMETS EMU(電車)を計56編成納入する計画です。2022年には4編成、2023年にさらに15編成の納入が予定されています。トゥラサシュは、国内鉄道車両メーカーの効率性を向上させるため、2020年3月にトゥヴァサシュ、トゥロムサシュ、そしてトゥデムサシュが合併して設立された企業です。[17]

 トゥラサシュによるMETS EMUの製造とトルコ国鉄による導入は、海外からの列車調達に終止符を打つことになうでしょう。これはまさに驚異的な成果と言えます。[18]

 METSの製造と同様に極めて重要なのが、その開発と製造のために整備されたインフラです。これはMETSのみならず、トルコにおける今後のあらゆる列車の開発・製造プロジェクトにも恩恵をもたらすことになるでしょう。このインフラには、車体を製造するための最新鋭の施設と国産の列車統合管理装置(TCMS)が含まれます。

 METSのTCMSはアセルサン社によって設計されました。同社がこれまで多種多様な防衛システムの設計開発で積み重ねてきた経験が、今では公共交通部門に活用されているのです。[18] [19]


 METSは5両編成で最大324名の乗客を収容可能であり、身体の不自由な乗客のために車椅子専用スペースが2か所設けられています。また、この5両編成には、ユニバーサルデザイントイレ(車椅子対応)が1か所、一般トイレも4か所備わっています。

 列車にはファーストクラスとセカンドクラスの区分が設けられており、各車両には小さなテーブル付きのグループ席が配置されています。

 全車両に、天井設置型の乗客用インフォメーションシステムが装備される予定です。ちなみに、運転室には6台の運転席用ディスプレイとスクリーンが設置されています。



 トルコは、タンザニアやセネガルなどの国における鉄道建設において、すでに大きな成果を上げていることは先に申し上げました。今後、この国がこれらの線路を走る列車も製造することになるという事実は、まもなく完全に新しい顧客層を誘引し、トルコ企業が以前よりも大きな市場シェアを獲得することを可能にするでしょう。

 世界的な影響力を高めているトルコは、今まさにこの機会を大いに活用できる絶好の立場にあります。これまで、大部分の国は中国か欧州のいずれかから列車を調達せざるを得なかったわけですが、トルコはまもなく世界の鉄道市場において非常に重要な存在となる可能性があるのです。

 METSは長年にわたる鉄道関連技術への投資の集大成です。しかしながら、トルコの取組みはMETS EMUで終わることはないでしょう。と言うのも、トゥラサシュは近いうちに、鉄道車両や気動車(DMU)といった、輸出向けに特別設計されたより多く種類の車両を既存の製品ラインナップに加える可能性があるからです。

 他国のニーズに適合する列車や設備を設計開発することは、世界各国に向けてあらゆる製品の販売で成功を収めてきたトルコの防衛企業による幅広い取り組みを反映するものになるでしょう。


編訳者による補足:この記事で言及されたMETSは「E44000」と呼称され、2023年5月にアンカラとイスタンブール間の主要路線であるアダパザル~ゲブゼ間での運行が開始された。(2025年時点で)発注された22編成のうち、最後のものは2026年末までに納入されるということだ。[20]

[1] High speed lines in the World https://uic.org/IMG/pdf/20180420_high_speed_lines_in_the_world.pdf
[2] High-speed rail in Turkey: Vision 2023 https://www.globalrailwayreview.com/article/112860/high-speed-rail-turkey/
[3] Rolling Into Modernity: Senegal’s Express Régional https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/rolling-into-modernity-senegals-express.html
[4] Turkish firm lands $1.9B deal to build standard railway in Tanzania https://www.aa.com.tr/en/africa/turkish-firm-lands-19b-deal-to-build-standard-railway-in-tanzania/2459886
[5] Ashgabat’s Quirky Monorail System https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/ashgabats-quirky-monorail-system.html
[6] Ashgabat Olympic Complex - Monorail https://www.aviteng.com/en/monorail.html
[7] NATIONAL ELECTRIC TRAIN SET https://www.turasas.gov.tr/national-electric-train-set
[8] Turkey to start manufacturing 1st indigenous electric train locomotive in 2022 https://www.aa.com.tr/en/economy/turkey-to-start-manufacturing-1st-indigenous-electric-train-locomotive-in-2022/2386599
[9] Karaismailoğlu: National Commuter Train Set Project Started https://en.rayhaber.com/2021/03/karaismailoglu-milli-banliyo-tren-seti-projesi-basladi/
[10] Leo Express to deploy new trains from China https://english.radio.cz/leo-express-deploy-new-trains-china-8121022
[11] Chinese electric multiple units boost regional connectivity across Europe http://www.cseba.eu/news/chinese-electric-multiple-units-boost-regional-connectivity-across-europe/528/
[12] Chinese Bison Arrived In Europe https://www.railvolution.net/news/chinese-bison-arrived-in-europe
[13] Chinese companies start work on $1bn high-speed rail line in Serbia https://www.globalconstructionreview.com/chinese-companies-start-work-on-1bn-high-speed-rail-line-in-serbia/
[14] Turkish tram manufacturers capture Romanian market https://www.railtech.com/rolling-stock/2019/11/19/turkish-tram-manufacturers-capture-romanian-market/
[15] Turkish trams Panorama have appeared in Olsztyn, Poland https://www.railway.supply/en/turkish-trams-panorama-have-appeared-in-olsztyn-poland/
[16] Bakan Varank: Milli elektrikli trenimiz mayıs sonunda raylara indi, bugün itibarıyla da fabrika testlerine başlanıyor https://www.yenisafak.com/ekonomi/sanayi-ve-teknoloji-bakani-mustafa-varanktan-son-dakika-milli-elektrikli-tren-aciklamasi-3547184
[17] Final testing of first Turkish-built EMU begins https://www.railjournal.com/news/final-testing-of-first-turkish-built-emu-begins/
[18] 'Milli Elektrikli Tren' ile ekonomide büyük kazanım https://www.tgrthaber.com.tr/ekonomi/milli-elektrikli-tren-ile-ekonomide-buyuk-kazanim-2693074
[19] Capabilities ASELSAN https://www.aselsan.com.tr/en/capabilities

 お知らせ:2025年7月に上記本の改訂・分冊版である「The Armed Forces of North Korea Volume 1: Part 1: Korean People's Army Ground Forces Organisation, Strategy and Infantry」が発売されました。残りの巻も完成次第発売される予定です(記載情報は2025年現在のものにアップデート済み)。
 お知らせ2:2025年10月に「Volume 1: Part 2(陸軍AFV)」が発売されました。 
 お知らせ3:2025年12月に「Volume 2(空軍)」が発売されました。
 お知らせ4:2026年2月に「Volume 3(海軍) 」が発売されました