著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
当記事は、2023年1月4日に本国版「Oryx」ブログ(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。
アゼルバイジャンが無人航空機(UAV)の導入に大規模な投資を行っていたことを考えると、アルメニアが初歩的な無人機による偵察能力しか持たず、ほぼ無人攻撃能力なしで2020年のナゴルノ・カラバフ戦争に挑んだことは意外だったかもしれません。[1]
2020年7月に起こったアゼルバイジャンとの武力衝突の際に、アルメニア国防省は国産の徘徊兵器を使用してアゼルバイジャンの戦車3台を撃破したと自慢していましたが、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争は(こうした熱心な主張があるにもかかわらず)当時のアルメニア軍にそのような戦力が本当に存在しないことを示してしまいました。[2]
しかし、これは国内で入手可能なものが不足していたことが原因ではないと確実に言えるでしょう。なぜなら、アルメニアの防衛企業は過去4年間だけで23種類もの徘徊兵器を設計していたからです!同様に多数の無人偵察機も日の目を見ており、数多くの設計案が試作段階まで到達することに成功していました。
2020年7月に起こったアゼルバイジャンとの武力衝突の際に、アルメニア国防省は国産の徘徊兵器を使用してアゼルバイジャンの戦車3台を撃破したと自慢していましたが、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争は(こうした熱心な主張があるにもかかわらず)当時のアルメニア軍にそのような戦力が本当に存在しないことを示してしまいました。[2]
しかし、これは国内で入手可能なものが不足していたことが原因ではないと確実に言えるでしょう。なぜなら、アルメニアの防衛企業は過去4年間だけで23種類もの徘徊兵器を設計していたからです!同様に多数の無人偵察機も日の目を見ており、数多くの設計案が試作段階まで到達することに成功していました。
ところが、アルメニア国防省はこうした無人兵器やその他の有望な国産兵器には投資するどころか、ロシアから4機の「Su-30SM」多目的戦闘機を調達するために僅かしか使えない予算を投じることを選んでしまったのです。[3] このことは、2020年の戦争でUAVが不足し、専用の兵装を購入する予算が無いために4機の「Su-30SM」を実戦に投入できなかったという悲惨な結果だけを残しました。
アルメニアで実際に運用されたUAVの大部分が初歩的な性能しか備えていなかったようです。それらの中で最も多かったのはロシアのAFM製「プテロ-E5」をコピーした「X-55」であり、この機体は搭載されたGPS受信機を用いてウェイポイントを基準にあらかじめプログラミングされたルートを飛行し、一定の間隔で写真を撮影するという機能を有しています。これで撮影された画像は飛行後に人力で回収され、商業衛星の画像に匹敵する品質の最新情報を提供しますが、限界があることは言うまでもありません。
「クルンク」のような高性能な機種は、2020年の戦争に影響を及ぼすには数があまりにも少なすぎました。このようなアルメニアの深刻な偵察能力の不足を補完するため、ロシアは2020年の戦争中に多数の「オルラン-10」を引き渡しました。[4] また、ロシア製のUAV「グリフォン-12」も軍で運用されています。
さらに、ロシアはアルメニアの無人偵察機「UL-300 (ザラ"421-16E")」 と「UL-350 (スーパーカム"S350")」 の背後にある技術の供給源でもあり、後者はアルメニア陸軍で運用されていることが確認されています。[5]
2020年後半に引き渡された「オルラン-10」は、「ダヴァロ・ディフェンス・システムズ」によって開発された新しい無人偵察機のベースとしても活用されています。[6]
ロシアからのUAVの納入とそれに伴う技術移転は、アルメニアが比較的短期間で無人機による偵察能力を向上させることに役立ったものの、アルメニアの無人機メーカーと彼らが手掛けた国産機は再び隅に追いやられてしまいました。
イスラエルの無人機が切れ目なく続いてアルメニア領内に不時着したおかげで、アルメニアの無人機メーカーはそれらの機能を模倣しようと試みたため、この国独自の無人機はますますイスラエル起源の技術をベースに設計されるようになっています。アルメニアのUAVメーカーである「ダヴァロ」社の取締役は、2020年にイスラエル製のUAVが研究のために自社に移管されていることを認めました。[6]
そして、「UAVLAB」社の工場を撮影した画像はイスラエル製の「スカイストライカー」が分解されていることを明らかにしたほか、同社の「UL-450」が「オービター3」をベースに設計されていることは見抜くには僅かな分析能力も必要としないでしょう。「ダヴァロ」社は次に「ハロップ」を「DEV-3」徘徊兵器(LM)のベースとして活用し、同時にトルコの「STM」社の「カルグ」LMもコピーしています。
「DEV-3」はイスラエルのIAI製「ハロップ」をベースに開発されたか、少なくともインスパイアを得ている徘徊兵器である:左下はより小型の「DEV-1」 |
「フレーシュ-7」 徘徊兵器:イスラエルの「ヒーロ-30」にインスパイアを受けたと思われるが、直にベースにして開発されたわけではないようだ |
2020年のナゴルノ・カラバフ戦争で無人戦闘航空機(UCAV)が主導的な役割を果たした姿を痛いほど直に目にしたアルメニアが、それ以降に同様のアセットを導入しようと試みたのは理にかなっているとしか言いようがありません。
アルメニアが隣国のイランから武装ドローンの導入を模索しているという報道がなされましたが、アルメニア国防省はそれどころか国産システムの導入を検討しているようです。[7]
最近、「ダヴァロ」社は最大で4発の「SMA A5」または「AGB-003」誘導爆弾を搭載できるUCAV「アラレズ」を開発しています。この「アラレズ」計画はまだ開発の初期段階にあることから、運用可能なシステムが誕生するのは数年先になるでしょう。
2022年3月に初披露された「アラレズ」UCAV(試作機):主翼下の「SMA A5」誘導爆弾に注目 |
アルメニアで開発された無人機は見応えはありますが、それをさらに発展させ、いつか大量生産に入るための国防省からの(財政的な)支援がないことを考えると、なおさらそう思います(注:国防省の支援を受けないメーカーは国からの制約を受けない独創的な開発が可能である一方、資金難に苦しむことに変わりがない現状を皮肉ったもの)。
2020年夏にはLMの量産が開始されるとの報道があったにもかかわらず、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争ではアルメニアのLMによる攻撃はたった2回しか記録されていません。[8] [9] [10]
とはいえ、アルメニアが軍事的な優位性を向上しつつあるアゼルバイジャンに対抗するために活用するべく、自国で開発された無人機に大きな期待をかけていることは極めて明白です。
アルメニアの主要な無人機メーカーである「ダヴァロ」社は、ロシアの「STC:特別技術センター("オルラン-10"の製造者)」と「クロンシュタット("オリオン" UCAVの製造者)」社、そして2022年にはUAEの「エッジ」グループと協力協定を締結しました。同協定は、アルメニアの無人機分野におけるイノベーション率をさらに高めることに役立つ可能性を秘めているため、今後の展開にも目を離すことはできません。
- 以下の一覧の目的は、アルメニアの無人航空機(UAV)及び無人戦闘航空機(UCAV)及びその兵装、徘徊兵器を包括的に網羅することにあります。
- アポストロフィー内の部分は、他の呼称や非公式な呼称です。
- 一覧の合理化と不必要な混乱を避けるため、ここには軍用レベルの無人機のみを掲載しています。
- 各機種及び兵装に続く角括弧内の年は、当該装備が最初に目撃または報じられた年を意味しています。
- 各機種及び兵装の名前をクリックすると、アルメニアにおける当該装備の画像を見ることができます。
- ベーズ [2015]
- クルンク-25-1 [2011]
- クルンク-25-2 [2017]
- X-55 ''アーミー55'' [2015] (ロシアの「プテロ-E5」を独自にコピーしたもの)
- X-55M ''アーミー55M'' (ロシアの「プテロ-E5」を独自にコピーしたものに改修を加えたもの)
- グリフォン-12 [2021] 2種類: (2)
- UL-350 [2022] [UAVラボ] (ロシアのスーパーカム「S350」を独自にコピーしたもの)
- STC「オルラン-10」 [2020] (2020年のナゴルノ・カラバフ戦争中にロシアから提供されたもの)
- DJI「マトリーチェ」
- Yuneec(ユニーク)「タイーフーンH3」
- アームドローン [2013]
- アームコプター1 [2015]
- アームコプター2 [2015]
- S-1 ''ビーブ-1'' [2018] [プロマックとダヴァロ]
- UL-300 [2020] [UAVラボ] (ロシアのザラ「421-16E」を独自にコピーしたもので、徘徊兵器型も存在)
- UL-350SE [2022] [UAVラボ] (「UL-350」の改良型と思われる)
- UL-450 [2022] [UAVラボ] (イスラエルの「オービター3」をベースに開発されたもの)
- HU-01 [2016]
- AW5(R) [2019] 2種類: (2) [エアワーカー]
- 形式不明の無人偵察機 (1) [ダヴァロ] (ロシアの「オルラン-10」をベースに開発されたもの)
- 形式不明の無人偵察機 (2)
- 形式不明の無人偵察機 (3) 2種類: (2)
- 形式不明の無人偵察機 (4) 2種類: (2)
- 形式不明の無人偵察機 (5)
- 形式不明の無人偵察機 (6)
- 形式不明の無人偵察機 (7)
- 形式不明の無人偵察機 (8)
- 形式不明の無人偵察機 (9)
- 形式不明のクアッドコプター[2023]
- アズニフ (複数の情報源で言及されるも, 形状不明)
- UL-100 (複数の情報源,で言及されるも, 形状不明)
- DEV-4 ''ビーブ-3200 または ビーブ-4'' [2018] [プロマックとダヴァロ] (小型の無誘導爆弾が搭載可能と主張されている)
- UL-450 [2022] (1発の「AGB-003」誘導爆弾を搭載可能) [UAVラボ] (イスラエルの「オービター3」をベースに開発されたもの)
- アラレズ [2022] (4発の「SMA A5」 または 「AGB-003」 誘導爆弾を搭載可能) [開発初期段階] [ダヴァロ]
- 形式不明のUCAV (1) [2018] (2発の「RPG-26」または同世代のRPGなどを搭載可能)
- フレーシュ-7 [2018] [プロマックとダヴァロ] 試作型: (1)
- フレーシュ-12 [2022] [プロマックとダヴァロ]
- DEV-1 [2022] (いまだに量産に入らず) [ダヴァロ]
- DEV-3 [2020] (いまだに量産に入らず [ダヴァロ]
- ビーブ-1800 ''ビーブ-3'' [2018] [プロマックとダヴァロ]
- ビーブ-3000 [2018] 2種類: (2) [プロマックとダヴァロ]
- UL-200 [2017] 2種類: (2) [UAVラボ]
- UL-300 [2020] (ロシアのザラ「421-16E」を独自にコピーしたもの) [UAVラボ]
- AW1 [2018] [エアワーカー]
- AW17 [2018] [エアワーカー]
- AW17V2 [2021] [エアワーカー]
- AW21 [2022] [エアワーカー]
- ''ドローン'' [2022] [プライド]
- ''コプター'' [2022] [プライド]
- ワスプ-1 [2022] [TESAシステムズ]
- 形式不明のジェット推進式徘徊兵器 [2018] [UAVラボ]
- 形式不明の徘徊兵器 (1) [2018] [ダヴァロ]
- 形式不明の徘徊兵器 (2) [2020]
- 形式不明の徘徊兵器 (3) [2020]
- 形式不明の徘徊兵器 (4) [2021]
- 形式不明の徘徊兵器 (5) [2022] [ダヴァロ]
- 形式不明の徘徊兵器 (6) [2021] [ダヴァロ] ※無人偵察機の可能性あり
- クゥート(複数の情報源で言及されるも, 形状不明)
- クルンク-9 (複数の情報源で言及されるも, 形状不明)
- クルンク-11 (複数の情報源で言及されるも, 形状不明)
- AW15 [エアワーカー]
- 形式不明の訓練用UAV 2種類: (2) [エアワーカー]
- 形式不明かつ用途不明のUAV [2022] [ダヴァロ]
[1] Death From Above - Azerbaijan’s Killer Drone Arsenal https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/death-from-above-azerbaijans-killer.html
[2] https://twitter.com/ShStepanyan/status/1284549170892877831
[3] Knights Of Yerevan - Armenia’s Su-30 Flankers https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/knights-of-yerevan-armenias-su-30sm.html
[4] https://twitter.com/Zinvor/status/1324073095490142209
[5] https://twitter.com/wwwmodgovaz/status/1574760539758202880
[6] https://twitter.com/ralee85/status/1284954167795159040
[7] Armenia Wants Iranian Drones, Says Top Iranian Military Official https://hetq.am/en/article/149460
[8] Artsakh to mass produce combat drones, trials successfully completed https://en.armradio.am/2020/05/20/artsakh-to-mass-produce-combat-drones-trials-successfully-completed/
[9] https://twitter.com/Karabakh_MoD/status/1320408314807812100
[10] https://twitter.com/Danspiun/status/1470844958085197832
[11] Davaro News https://davaro.am/News
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