著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
当記事は、2021年12月29日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。
あまり知られていませんが、「バイラクタルTB2」とイスラエルの徘徊兵器に加えて、アゼルバイジャンは、その性能のおかげで世界で最も高度な部類に位置づけられているイスラエル製の無人偵察機の大規模な飛行隊も運用しています。
無人機(UAV)、徘徊兵器、そしてUCAVから成るアゼルバイジャンの大規模な無人機戦力間の相乗効果が、同国を無人機の戦力において世界のトップクラスに押し上げたのです。
アゼルバイジャンのドローン戦力の進歩がナゴルノ・カラバフ上空にもたらした戦いの急変は、それに巻き込まれた人々にとっては衝撃的なものだったに違いありません。
「トール-M2KM」のような最新型のロシア製地対空ミサイル(SAM)システムや「レペレント-1」と「アフトバザ-M」といった電子戦(EW)システムなどは、(特に味方のEWや電子支援手段と併用した際における)無人機の運用を妨げることが全くできなかったことが証明されました。アゼルバイジャンはその非効率性をフル活用し、「44日間戦争」において「バイラクルTB2」が567の地上目標を撃破し、さらに74の地上目標も徘徊兵器によって撃破されことが視覚的に確認されています。[1] [2]
アゼルバイジャンは単にUAVの実機を調達するだけではなく、(搭載する)高度な監視装置やドローンの効果的な運用に必要なインフラにも投資しています。
2010年代半ばには、アゼルバイジャンはドローン運用に特化した初の飛行場を首都バクーの近郊に設けました。
アゼルバイジャンの軍隊は、敵の防空システムの位置を把握するためにUAVを囮として使用した先駆者でもあります。この目的のために、かなりの数の「An-2」がUAVに改修されましたが、全てがUAVになったわけでなく、4発の無誘導爆弾を装備したUCAVに改修された機体もありました。[3][4]
アゼルバイジャンの軍隊は、敵の防空システムの位置を把握するためにUAVを囮として使用した先駆者でもあります。この目的のために、かなりの数の「An-2」がUAVに改修されましたが、全てがUAVになったわけでなく、4発の無誘導爆弾を装備したUCAVに改修された機体もありました。[3][4]
TB2は空軍によって運用されているものの、無人型「An-2」やほかにアゼルバイジャンが保有しているUAVの大部分は国境警備隊に配備されています。
UAVを生産するための野心はAn-2の改修だけにとどまっていません。
2009年にアゼルバイジャンとイスラエルのUAV製造企業である「エアロノーティクス」社が設立した合弁会社:「アザド・システムズ」社は、これまでに「エアロスター」、「オービター2」、「オービター3」無人偵察機と「オービター1K」徘徊兵器をアゼルバイジャン国内で組立と生産を行うまでに至っています。[5]
「アザド・システム」社はこれらのドローンの製造において、国産化率が30%程度に達したと伝えられています。[6]
その一方でUAVの設計に関する国内の技術基盤も軌道に乗りつつあり、この分野におけるアゼルバイジャンの取り組みは、2022年5月にアゼルバイジャンで開催されるトルコの航空宇宙技術の祭典「テクノフェスト」の際に大きな恩恵を享受する可能性があります。[7] [8]
今やナゴルノ・カラバフがアゼルバイジャンの支配下に戻っても、同国のドローン兵器に対するさらなる投資が鈍ることは起こりそうにありません。
この国は、現在の自国軍が保有している兵器には無い多くの新しい能力をもたらす「バイラクタル・アクンジュ」UCAVの将来の運用国として好都合な位置にいます。その新しい能力には、多数の空対地誘導兵器のみならず、3種類の空対空ミサイルの運用能力も含まれています [9]
すでにアゼルバイジャン空軍は「アクンジュ」の能力を構成する中で最も重要な要素である、250km以上の射程を持つ「SOM-B1」巡航ミサイルを運用しています。
これらを踏まえると、アゼルバイジャンにおけるU(C)AVに関する今後数年の展望は明るいものになると思われます。
アゼルバイジャンのドローン戦力の大部分を有する国境警備隊で使用されているUAV群 |
(各機体の名前をクリックするとアゼルバイジャンで運用されている当該UAVの画像を見ることができます)
無人偵察機
- エルビット「スカイラーク」
- エルビット「ヘルメス200」 (退役したと思われる)
- エルビット「ヘルメス450」 (EO/IR/レーザー指示装置、地上捜索レーダー、COMINTやELINT機器を装備可能)
- エルビット「ヘルメス900」 (EO/IR/レーザー指示装置、 超長距離目標探知・識別・照準システム [AMPS], 「スカイアイ」永続性広域監視システム[WAPS], 地上捜索レーダー、SIGINT、電子妨害及び電子戦装置を装備可能)
- IAI「ヘロンTP」 (EO/IR/レーザー指示装置、地上捜索レーダー、COMINTやELINT機器を装備可能)
- ブルーバード・エアロ「サンダーB」
- エアロノーティクス「エアロスター」
- エアロノーティクス「オービター2」
- エアロノーティクス「オービター3」
- 「シャヒン」 (「エアロスター」をアゼルバイジャン国内で製造したもの)
- 「Garangush」 (「オービター2M」をアゼルバイジャン国内で製造したもの)
- アゼルバイジャンが製造した「オービター3」 (制式名称不明)
- 「トゥラーズ」
- バイカル「バイラクタルTB2」 (最大で4発の「MAM-L」か「MAM-C」誘導爆弾を搭載可能) バイカル「バイラクタル・アクンジュ」[予定](最大で1,350kgの兵装を9基のハードポイントに搭載可能)
- アントノフ「An-2」(UCAV仕様) 'Köpgəröküz' (最大で4発の100kgまたは 250kg無誘導爆弾を搭載可能)
- 「シャヒン」 (最大で1発の82mm迫撃砲弾を搭載可能)
- 「カルタル」 (最大で2発の82mm迫撃砲弾を搭載可能)
- 「オフチュ-G4」 (最大で4発の82mm迫撃砲弾を搭載可能)
- 「シムルグ」 (最大で2発の10kg爆弾を搭載可能)
徘徊兵器
- 「クズグン」 [航続距離:7km] [弾頭重量:0.5kg]
- STM「カルグ」 [航続距離:10km] [弾頭重量:1.3kg]
- 「ザルバ」 [航続距離: 15km] [弾頭重量:2.5kg]
- エアロノーティクス「オービター1K」 [航続距離:100km] [弾頭重量:3kg]
- エルビット「スカイストライカー(初期型)」 [航続距離:100km] [弾頭重量:5 または10kg]
- エルビット「スカイストライカー(現行型)」 [航続距離:100km] [弾頭重量:5または10kg]
- IAI「ハロップ」 [航続距離:1000km] [弾頭重量:23kg]
- アザド「ザルバ-K」 [航続距離:100km] [弾頭重量:3kg] (「オービター1K」をアゼルバイジャン国内で製造したもの)
- 「イティ・グォヴァン」 (同上)
- 形式不明の徘徊兵器 (1)
- 「Fatum」 (未確認)
囮用ドローン
輸送ドローン
[1] The Conqueror of Karabakh: The Bayraktar TB2 https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/the-conqueror-of-karabakh-bayraktar-tb2.html
[2] The Fight For Nagorno-Karabakh: Documenting Losses On The Sides Of Armenia And Azerbaijan https://www.oryxspioenkop.com/2020/09/the-fight-for-nagorno-karabakh.html
[3] https://twitter.com/RALee85/status/1458054095781122050
[4] https://postimg.cc/p9Z11H61
[5] Azad Systems starts UAV production https://www.flightglobal.com/azad-systems-starts-uav-production/98747.article
[6] Леонид Спаткай. Беспилотники в боевых действиях в Нагорном Карабахе
[7] Azerbaijan tests locally-made UAVs [PHOTO/VIDEO] https://menafn.com/1102387258/Azerbaijan-tests-locally-made-UAVs-PHOTOVIDEO
[8] TEKNOFEST festival to be organized in friendly, fraternal Azerbaijan - Turkish president https://en.trend.az/azerbaijan/politics/3489500.html
[9] Arsenal of the Future: The Akıncı And Its Loadout https://www.oryxspioenkop.com/2021/06/arsenal-of-future-aknc-and-its-loadout.html
おすすめの記事
[2] The Fight For Nagorno-Karabakh: Documenting Losses On The Sides Of Armenia And Azerbaijan https://www.oryxspioenkop.com/2020/09/the-fight-for-nagorno-karabakh.html
[3] https://twitter.com/RALee85/status/1458054095781122050
[4] https://postimg.cc/p9Z11H61
[5] Azad Systems starts UAV production https://www.flightglobal.com/azad-systems-starts-uav-production/98747.article
[6] Леонид Спаткай. Беспилотники в боевых действиях в Нагорном Карабахе
[7] Azerbaijan tests locally-made UAVs [PHOTO/VIDEO] https://menafn.com/1102387258/Azerbaijan-tests-locally-made-UAVs-PHOTOVIDEO
[8] TEKNOFEST festival to be organized in friendly, fraternal Azerbaijan - Turkish president https://en.trend.az/azerbaijan/politics/3489500.html
[9] Arsenal of the Future: The Akıncı And Its Loadout https://www.oryxspioenkop.com/2021/06/arsenal-of-future-aknc-and-its-loadout.html
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