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2023年6月10日土曜日

未だ完全に至らず:アフガニスタン・イスラム首長国空軍


著:ステイン・ミッツアールーカス・ミュラーヨースト・オリーマンズ

 アフガニスタン・イスラム首長国空軍(IEAF)は、正常に機能する空軍として存続しているだけでなく、損傷を受けた機体や既に退役した航空機のオーバーホールを行って運用可能な機数を継続的に拡大させ、敵味方双方を驚かせています。

 有志連合国軍が支援した旧アフガン空軍の規模に比べると僅かな規模しかないものの、IEAFの現有戦力は攻撃ヘリ約10機と輸送ヘリ約20機、そして輸送機が約6機です。

 タリバンは「UH-60A+"ブラックホーク"」ヘリコプターを数か月以上は運用できないだろうと多くの人から予想されていましたが、最近でも最低6機の「ブラックホーク」が運用され続けているのが実態です。

 固定翼機の輸送部隊を再建しようとする試みにおいて、IEAFは(旧アフガン空軍が西側製の機体に更新した後に退役させた)多数の旧ソ連製の機体に依存しています。

 現時点における輸送機部隊では3機の「An-32B」と1機の「An-26」が運用されており、将来的には他の機体も加わる見込みです。これらのアントノフ機は、旧アフガン空軍から受け継いだ少なくとも4機の「(A)C-208」と一緒に運用されています。また、IEAFは受け継いだ4機の(損傷が軽微な)「C-130H」の運用再開を試み、そのうちの1機は2022年6月にエンジンを始動させることに成功しました。[1]

 しかし、さらなる進展は資格を持ったパイロットの不足によって阻まれているように見えます。この問題はIEAFの「C-130H」だけに限ったことではありません。事実、タリバン軍はマザーリシャリーフ空軍基地で2機の「A-29」軽攻撃機を無傷で鹵獲したにもかかわらず、同機の操縦資格を持つパイロットは全員が国外に逃亡したか、あるいは潜伏状態にあるように思われるからです。

 国内に残留してIEAFに加わった旧空軍の人員らと合流することに願いをかけたタリバンは、彼らに(脱出に用いた乗機と一緒に)帰国するよう何度も懇願してきました。[2]

 そうしている間に、IEAFは修復した4機の「Mi-35」と少なくとも10機の「MD530F」攻撃ヘリコプターを現役に戻し、空軍内の攻撃部隊を形成させることに成功しています。また、異なる種類の航空機も運用自体は可能であっても、資格を持ったパイロットの不足で飛行していない場合があるかもしれません。
 
 以上のことから、将来的なIEAFの編成は彼らが修復して運用を維持できる航空機の数だけでなく、これらの機体を飛ばすために採用あるいは訓練できたパイロットの数にも左右されることになるでしょう。

 現在のIEAFは、練習機も「A-29」や「C-130」のような新しい機体にパイロットを転換させるための専門的な能力も持ち合わせていません。それでも、彼らが将来的に(例えば海外から教官を採用するなどして)課題の克服を試みることは考えられないわけではないでしょう。その試みの最終的な結果がどうなるにせよ、「アリアナ・アフガン航空」がエアバス「A330-200」長距離旅客機・貨物機の購入さえ模索していることもあることから、今のアフガニスタンにおける軍用・民間航空はまだ完成には程遠いレベルにあると言えます。[3]

一列に並べられている「UH-60A+ "ブラックホーク"」:これらはアメリカ軍がアフガニスタンを離れる直前に破壊工作を受けた

 アメリカ軍はカブールで極めて多くの航空機のアビオニクスに損傷を与えた一方で、空港の設備や整備施設はほとんど無傷でタリバン軍の手に落ちてしまいました。

 現在、IEAFはカブールとマザーリシャリーフとカンダハルを主要作戦基地(MOB)として活用しており、山がちな国土の各地にある小さな空港への前方展開が頻繁に行われています。IEAFはフライトの合間に整備する必要がほとんどない頑丈な輸送機とヘリコプターを軸に運用しているため、整備されていない滑走路でも容易に運用することができるというわけです。

 仮にIEAFが「C-130」と「A-29」の運用を再開できた場合、その運用に必要なインフラもそのまま残されていることも注目する必要があるでしょう。

バグラム空軍基地に残されたアメリカの「HEMTT A4」航空機用タンクローリー

  1. 以下に列挙した一覧は、アフガニスタン・イスラム首長国空軍(IEAF)が運用する作戦機を包括的に網羅することを目的としています。
  2. この一覧には、運用されていることが視覚的証拠に基づいて確認された航空機・ヘリコプターのみが掲載されています。
  3. したがって、現在修理中や将来の修理に備えて保管されている機体と、資格のあるパイロットが不在のために駐機状態を余儀なくされている「A-29」のような航空機は、運用されているという証拠が出るまでこの一覧には掲載されません。
  4. この一覧は、運用機の追加や損失が判明した場合に随時更新される予定です。
  5. 各機体の後に続く番号をクリックすると、IEAFで運用されている当該機体の画像が表示されます

アフガニスタン・イスラム首長国空軍で運用されている機体一覧(2023年8月現在)

輸送機 (10)

攻撃ヘリコプター (16)

輸送・汎用ヘリコプター (25)

無人航空機 (UAV)
  •  ? ボーイング・インシツ「スキャンイーグル2」: (~)
  •  ? 民生用VTOL型UAV(偵察用)
  •  ? 民生用VTOL型UAV(迫撃砲弾で武装したもの)

  のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が

2021年8月17日火曜日

タリバン空軍:保有装備の評定


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 このリストは画像や映像によって証拠があると確認された、鹵獲された前アフガニスタン政府軍の保有機だけを掲載しています。したがって、実際に鹵獲された機体の数はここに記載されているものよりも多いことは間違いないでしょう。

 ただし、無傷の状態で鹵獲された機体の全てが、その時点で稼働状態にあったわけでないことに注意する必要があります。したがって、「タリバンに鹵獲された機体の数 = 同規模の運用可能な彼らの飛行隊」ということにはなりません。 


ほぼ無傷で鹵獲された機体

固定翼機 (13)
  • 1 A-29B 軽攻撃機: (1)
  • 1 セスナ 208 多目的機: (1)
  • 3 L-39 練習機: (1, 2 と 3) [この全機は(鹵獲された時点で)数年も稼働状態にはありませんでした]
  • 8 An-26/32 輸送機: (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 と 8) [同上]

ヘリコプター (44)

無人航空機 (7)



カブール国際空港にて鹵獲されたが米軍によって無力化された機体(米軍の公式発表では73機)

固定翼機 (28)

ヘリコプター (45)


※この一覧については、視覚的なエビデンスが得られた場合には更新していく予定です。
下の画像のキャプションに記載してある日付は鹵獲が確認された日です。
リストの最終更新日:2021年9月20日(Oryx英語版の元記事の最終更新日は2021年9月20日)



ほぼ無傷で鹵獲された機体の画像一覧


1x セスナ 208

8x An-26/32 輸送機

カブールにて鹵獲(2021年8月29日)

カブールにて鹵獲(2021年8月29日)

カブールにて鹵獲(2021年8月29日)


4x UH-60A「ブラックホーク」
ガズニにて鹵獲(2021年8月13日)※右奥

カンダハールにて鹵獲(2021年8月14日)

カンダハールにて鹵獲(2021年8月14日)


13x Mi-24/35「ハインド」
10x MD 530F攻撃ヘリコプター

ヘルマンドにて鹵獲(2021年8月15日)


7x 「スキャンイーグル」UAV