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2021年12月16日木曜日

無人機戦力増強の前兆:エチオピアで新たなドローン関連施設整備の動きがキャッチされた


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo


 以前、私たちはエチオピアに最低でも6機のUAEの「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)が配備されたことをお伝えしました。しかし、ごく最近になってハラールメダ空軍基地にUCAV運用のための追加インフラの整備作業が進行中であることが衛星画像によって判明しました。[1] [2]

 2021年9月に中国から導入したエチオピア空軍(ETAF)の3機の「翼竜Ⅰ」UCAVが使用しているハンガーの隣で、新しいエプロンとハンガーが建てられているようです(編訳者注:11月14日から19日の間にエプロンの拡張が開始され、11月29日から12月4日の間にエプロン北側に「大きな黒い影」が登場しました。)[3]

 これらの「翼竜Ⅰ」の1機はすでに11月中旬に撮影された衛星画像でその存在がキャッチされています[4]

 作業が進められている場所については、以前はエチオピア空軍(ETAF)が設けた退役機の墓場であり、約30機の「MiG-21」戦闘機、8機の「Mi-24」攻撃ヘリコプター、5機の「An-12」輸送機、そして1機ずつの「Yak-40」旅客機と「Tu-154」旅客機が放置されていました。

 これらのうち、大型機以外はまもなく建設されるであろう施設の邪魔とならないよう、基地内の別の場所に移動されました。「MiG-21」と「Mi-24」の移動作業は2021年10月には開始され、施設はその後12月初旬から整備作業が開始されたようです。

 この施設が完成した後、このエリアはハラールメダ基地における全U(C)AVの運用拠点になると予想されます。

 現在、ETAFはこの基地から数機のイスラエル製の「エアロスターUAS」と中国製の「翼竜Ⅰ」UCAVを運用しており、イラン製「モハジェル-6」UCAVについては依然としてエチオピア北東部にあるセマラ空港を拠点にしていると考えられています。[5]

 ETAFがメケレ市上空で「Su-27」戦闘機の爆撃目標を指示するためにすでに「翼竜Ⅰ」を実戦投入したことで実証されているとおり、同UCAVはハラールメダ基地からティグレ州全域での任務を遂行するのに十分な航続距離を持っています。[6]

 現在のU(C)AV関連インフラの拡張作業の動きは、ティグレ防衛軍(TDF)が過去1カ月間に獲得した領土の多くを喪失した時期と重なります(注:現在はENDFの攻勢でTDFは退却に追い込まれつつあります)。[7]

 エチオピア北部のティグレ軍に対するエチオピア国防軍(ENDF)の攻撃が見事に期待外れに終わると、TDFは反攻を開始し、その猛威は一時的に首都アディスアベバの安全を脅かすまでに至りました。[8]

 しかし、少なくとも11機以上のUCAVがもたらす絶え間なく続く損耗は、最前線にいるTDF部隊に心理的・物資的に重大な影響を与えたようです。

2021年2月中旬: このエリアはまだ「MiG-21」「Mi-24」や輸送機などで占められています。

2021年11月中旬:「MiG-21」 と「Mi-24」は新たなハンガーとエプロン用のスペースを確保するために移動させられました。

2021年12月9日: かつての「飛行機の墓場」前に最初のエプロンが設けられました。

 幅広い種類のUCAVの導入が、結果として窮地に立たされたアビー・アハメド政権を救う最も決定的な要因となるかもしれません。

 以前のTDFは退却して別の戦線で反撃の機会を試みることもできましたが、ETAFが投入できるUCAVの数が増えていることは、近いうちにティグレの部隊が標的にされずに逃げ隠れできる場所がどこにもなくなってしまうことを意味する可能性があります。

 リビア内戦と2020年のナゴルノ・カラバフ戦争に続いて、おそらくティグレ戦争もUCAVの使用が決定的な勝因をもたらした、急速に増加しつつある紛争のリストに加わることになるでしょう。

「翼竜Ⅰ」(これはイメージ画像であり、エチオピアとは無関係です)

特別協力: Gerjon (敬称略)

[1] The UAE Joins The Tigray War: Emirati Wing Loong I UCAVs Deploy To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/the-uae-joins-tigray-war-emirati-wing.html
[2] https://twitter.com/Gerjon_/status/1467183943237648392
[3] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[4] Satellite Images Show Ethiopia’s Expanding Drone Buildup https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/satellite-images-show-ethiopias.html
[5] Ethiopia now confirmed to fly Chinese armed drones https://paxforpeace.nl/news/blogs/ethiopia-now-confirmed-to-fly-chinese-armed-drones
[6] Deadly Ineffective: Chinese-Made Wing Loong UAVs Designate Targets For Ethiopian Su-27 Bombers https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/deadly-ineffective-chinese-made-wing.html
[7] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1466841807569014787
[8] Ethiopia's Tigray crisis: Citizens urged to defend Addis Ababa against rebels https://www.bbc.com/news/world-africa-59134431

※  当記事は、2021年12月13日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。




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2021年12月15日水曜日

ティグレ戦争:衛星画像が示すエチオピア軍の武装ドローン(短編記事)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 私たちはエチオピアが9月中旬に3機の「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)を入手したことを最初に報じましたが、同機が実際にティグレ州の上空で初めて目撃されるまでには10月下旬までの時間を要しました。[1] [2]

 エチオピア軍は3機のUCAVを導入した事実を秘匿しようとして、詮索好きなのぞき見を避けるため、引き渡しを受けた際に急いで直近の格納庫に移動させましたが(それでもその努力は失敗に終わりましたが)、「翼竜Ⅰ」がハラールメダ空軍基地に存在していることが最新の衛星画像でも明らかとなりました。[1]

 今回の衛星画像で「翼竜Ⅰ」が運用されている正確な場所を確認できた以外での新しい発見は全くありませんでしたが、そもそも商用の衛星画像にドローンが撮影されたという事実は、エチオピア空軍(ETAF)側がこれらのドローンを用いて実際に運用がなされている現況を隠すことに全く注意を払っていないことを示しています。

 すでにエチオピア政府は、今年8月の時点でアビー・アハメド首相がセメラ空港で地上管制ステーション(GCS)を視察している画像を公開することで、イランから「モハジェル-6」UCAVが引き渡されたことを無様に明らかにしてしまった過去があります。[3]

 エチオピアは秘匿性を維持しながら無人機戦を行おうとしていますが、同時にどの種類のUCAVをどこから入手してどこで運用しているについて、絶えず情報を明らかにしています。[4]

 もちろん、ETAFの固定翼機やヘリコプターをオーバーホールする民間の航空整備士が働くデジェン航空工学産業 (DAVI)から数百メートル離れた場所で、ETAFが現在ドローンを運用するためのさらなるインフラ設備を整備していることも機密保持の助けになっていません。ここで働く整備員たちは、私たちのようなアナリストにとって有益な情報源となっているからです。

ハラールメダ空軍基地に駐機している1機の中国製「翼竜Ⅰ」 (2021年11月2日撮影)

滑走路の直近にドローンを運用するための地上管制ステーション(GCS) と関連設備が設置されている。左端に上の画像と同じ「翼竜Ⅰ」が 駐機していることに注意。

 「翼竜Ⅰ」の低い最高高度は、作戦地域の上空を飛行する姿を地上からでも視認できる場合があることを意味しています(注:飛行する姿が公開される機会が今後もあるということ)。

 現在、エチオピアが保有する3機「翼竜Ⅰ」飛行隊が追加の同型機によって増強されたという最新情報があります。これらは中国から直接調達するのではなく、この戦争に直接介入している別の国によってエチオピア上空で運用されることになっているようです。

 これらが近いうちに衛星画像や映像に登場するであろうことは、決して信じ難いようなものではないと思われます。

ティグレ州の州都:メケレ市上空を飛行する1機のエチオピア空軍の「翼竜Ⅰ」(2021年10月28日)

[1] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[2] Tigray War: Chinese-Made Armed Drones Spotted Over Mekelle https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/tigray-war-chinese-made-armed-drones.html
[3] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[4] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html

※  当記事は、2021年11月17日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。




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2021年12月14日火曜日

メイド・イン・チャイナ: エチオピアの中国製小型UAV飛行隊



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピアがイスラエルイランから調達した多数のUAVを運用していることに加えて、近年では少なくとももう1つの国が同国に無人機(UAV)を納入しています。その国はもちろん中国のことであり、簡単に入手できる安価な中国製UAVがアフリカの大部分を征服しています。

 興味深いことに、アフリカに普及したこれらの無人機は、そのほとんどが軍用に特別に設計されたものではなく、軍民を問わない幅広い分野での用途に使用される商用モデルで占められていました。

 とは言え、中国製の「翼竜Ⅱ」無人戦闘機(UCAV)がティグレ戦争でエチオピア軍に代わって作戦を遂行したことについては、以前から多くの人から推測されていました。「アラブ首長国連邦が隣国エリトリアのアッサブ空軍基地から運用していた」や「エチオピアが入手して運用していた」などと推測されていますが、ティグレ戦争に中国のUCAVが関与していたことを示す証拠は今のところありません(注:2021年12月現在、エチオピア空軍が「翼竜Ⅰ」UCAVを導入し、UAE軍も同機種をエチオピア国内に配備していることが確認されました。)[1]

 エチオピアで使用されている中国製無人機の実際の保有状況は多くの異なる会社から調達した市販のモデルで構成されているため、僅かに壮観さに欠けるというよりも明らかにパッとしないものかもしれません。

 これらの無人機はエチオピア国防軍(ENDF)に就役するのではなく、実際にはエチオピア連邦警察(EPF)がその受取人だったようです。軍用の仲間と比較すれば間違いなく人目を引くものではありませんが、警察によって中型サイズのUAVが運用されることは注目すべきものであり、それがアフリカの部隊で行われた場合はよりいっそうその度合いが高いものとなります。

 エチオピアに無人機が納入される前に、同国の警察官は2018年後半に北京の航空学校で中国公安部によって企画された無人機操縦訓練課程に参加しました。参加者は無人機の操作やメンテナンスの方法を学ぶことに加え、訓練プログラムの一環として、救助、火災、偵察などの各想定に沿った無人機のデモンストレーションも見学しました。[2]

「ZT-3V VTOL」UASを説明する中国人の教官

 エチオピアの警察官が無人機用のインフラが全く整えられていない山間部で遭遇するであろう運用シナリオに対応するため、EPFが導入した機種は全てが垂直離着陸(VTOL)型です。飛行中の効率を高めるために、少なくとも2つのモデルは、垂直離陸した後に水平飛行モードへ切り替えることができます。[3]

 いくつかの小型VTOLタイプも購入されましたが、その後のエチオピア警察での運用については全く知られていません。

 おそらくティグレ戦争の初期段階で投入するのに適した無人機が不足していたため、2020年11月に数機の無人機がエチオピア空軍に譲渡されました。興味深いことに、ENDFはこのシステムを黙って受け入れて就役させるのではなく、これらを(中国の市販モデルではなく)独自に設計した無人機として報道陣の前で発表しました。[4]

 このようなチープなプロパガンダの背後にある正確な理由は不明ですが、政権が作り出したストーリーを疑う理由がほとんどない国内の視聴者を対象にしてエチオピアの軍事力を確信させるために用いた可能性があります。



 「国産モデル」や単なる中国の市販品にかかわらず、この種のドローンの大きな欠点はカメラの品質です。これは、軍用品の数分の1の価格であることから予想されるものであり、警察での使用にはほとんど問題はなかったのでしょうが、ENDFでの使用には支障をきたす可能性が高いと思われます。

 事実上、これらの機体は低高度の運用で(軍用モデルより)より狭い範囲しかカバーすることができないため、TPLF(ティグレ人民解放戦線)部隊からの砲火にさらされることになります。



 ティグレ上空で活動している中国の武装ドローンの存在は一部の人々の争点となっていますが、現実にはエチオピアの無人機飛行隊を構成する数種類の市販モデルが使われているだけなので、その実態は大きく異なっています。

 今やUCAVが決定的な役割を果たす可能性のある紛争に巻き込まれたエチオピアが、より攻撃的な用途のUAVを再び中国に求めることも考えられないことではありません。

 エチオピアの内戦の現状を考えると、新型UCAVを迅速に就役させるため、その入札がすでに進行中でも不思議ではないでしょう(注:最終的に空軍は「翼竜Ⅰ」を導入しました)。



[1] Are Emirati Armed Drones Supporting Ethiopia from an Eritrean Air Base? https://www.bellingcat.com/news/rest-of-world/2020/11/19/are-emirati-armed-drones-supporting-ethiopia-from-an-eritrean-air-base/
[2] Ethiopian police officers attend drone piloting training program in Beijing http://www.xinhuanet.com/english/2018-11/14/c_137606105_3.htm
[3] https://twitter.com/FeWoessner/status/1332068349598191616
[4] Chief Commander of the Ethiopian Air Force, Maj. Gen. Yilma Merda.#Ethiopia #Tigray(Courtesy of EBC) https://youtu.be/leUr8ZECQd0

 ※  この翻訳元の記事は、2021年6月19日に本家Oryxブログ投稿された記事を翻訳した
   ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なってい 
       る箇所があります。



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2021年12月9日木曜日

衰えることなく続くUAEからエチオピアへの航空輸送:フライト数が100回を突破す



著:Gerjon 氏が収集したデータを基にステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ が執筆 (編訳:Tarao Goo

 エチオピア軍の武器・弾薬のストックを維持することを目的としたUAEの航空輸送は、弱まる兆しを見せていません。2021年8月以降、UAEからエチオピアへの貨物便が100便以上も航空機トラッカー:Gerjon氏によって記録されています。[1]

 エチオピアとUAE間を往来するエチオピア航空の貨物便とイランからの追加便も含めると、戦争で荒廃した国へ流入した武器の総量はさらに増加するものと思われます。[2]

 UAEとイランはこれ以上悪化できないほどの対立関係にありますが、追い詰められたエチオピア軍に武器や装備を提供することにおいては妥協点を見出したようです。

 現時点では貨物便の内容にまだ推測することしかできませんが、軍用品が含まれていることはほぼ確実であり、その代わりに人道援助物資はアディスアベバにあるエチオピアで最も主要な国際空港で引き渡されています(注:貨物便のほとんどはハラールメダ空軍基地に着陸しています)。

 UAEはすでに2021年の夏の時点で2発の迫撃砲弾で武装したVTOL型無人戦闘航空機(UCAV)を、その一方でイランは最低でも2機の「モハジェル-6」UCAVと専用の兵装をエチオピアに引き渡しました。 [3] [4]

 2021年10月には、エチオピアは50台の基本的な救急設備を備えた救急車仕様のトヨタ・ランドクルーザーもUAEから供与されています。[5]

 50台の救急車は、(確認された)IL-76輸送機による102便のエチオピアへのフライトのうち17便分の貨物量に相当します。これは残りの84便分が積載していた貨物の中身がいまだに不明のままであり、それらが間違いなくエチオピアではまだ公になっていない豊富な種類の武器で構成されていることを意味しています。

 エチオピア航空もボーイング777によるアブダビ国際空港への定期貨物便を始めたため、この国への武器の密輸は前述の便だけに限られることはありません。これらの航空機は空港の民間貨物ターミナルを使用するのではなく、軍用側にタキシングで移動して詮索好きなのぞき見を避けながら貨物を積み込むからです。[6]



 もっともらしい関係の否認を主張するため、UAEは公式には関与していないとする国々へ武器を引き渡すために多くのフロント企業を利用しています。

 この実例が以前にリビアで目撃されたことがあります。同国では、UAEが国際的に承認されているリビア政府を転覆させることを試みたのです。[7]

 エチオピアに武器と装備を引き渡すため、UAEは自国を拠点にしている(ウクライナとキルギスで登録されたIL-76輸送機を持つ)フライスカイ航空を使用しています(注:名目上はフライスカイという同じ名前の航空会社が両国でそれぞれ設立されているようです。一見して無関係にも見えますが、よくチェックするとUAEと何らかの関係があることを示唆しています)。

 IL-76の外面には機体記号が表示されているだけであり、フライスカイ航空の所有を示すほかのマーキングが皆無であることが、彼らの運用について謎をさらに深めたものにしています。

2021年8月中旬以降に確認された、フライスカイ航空による100回目のフライト

 その莫大な量と積載物の重要性のおかげで、UAEの航空輸送はエチオピア政府の存続か早期敗北かの未来を左右することになる可能性があります。

 ここ最近になって、UAEからハラールメダ空軍基地に追加のUCAVが届いたことを示唆する証拠が現時点で存在します。

 UCAVやほかの武器が最終的にエチオピア政府の勝利を確実なものにするのに十分かどうかは不明ですが、仮にこの戦争がそう終わるのであれば、UAEの揺るぎない支援に少なくない要因があることには間違いないでしょう。



[1] https://twitter.com/Gerjon_/status/1460699563258429452
[2] https://twitter.com/Gerjon_/status/1459486182052618242
[3] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[4] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[5] The Cargo Cleared For Print: UAE Wartime Deliveries To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/the-cargo-cleared-for-print-uae-wartime.html
[6] https://twitter.com/Gerjon_/status/1460715812810014720
[7] Tracking Arms Transfers By The UAE, Russia, Jordan And Egypt To The Libyan National Army Since 2014 https://www.oryxspioenkop.com/2020/06/types-of-arms-and-equipment-supplied-to.html

※  当記事は、2021年11月19日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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ティグレ戦争:エチオピア軍事を支援するUAEの航空輸送
エチオピアにおけるUAEの戦闘ドローンが正体を現した
エチオピアにおけるエミレーツ製小火器

2021年12月7日火曜日

公開が認められた支援物資の誇示:UAEからエチオピアへの戦時供与品



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 UAEとエチオピア間を往来する多貨物便の数は、同国がエチオピア北部でのティグレ防衛軍に対する戦いにおいて、エチオピア軍を支援する上で積極的な役割を果たしていることをほぼ明確なものにしています。2ヶ月間で、UAEから飛び立ったIL-76輸送機がエチオピアに約70回も着陸しました。 [1] [2]

 一部の大型貨物機はアディスアベバ国際空港に着陸したように見えますが、ほとんどの場合は明らかに詮索好きな目やカメラから避けて軍用物資を降ろすため、ハラールメダ空軍基地に着陸しています。

 今もなお、UAEがエチオピア国防軍(ENDF)に引き渡した武器やその他の軍用装備については、比較的少ししか知られていません。分かっているのは、エチオピア軍が(UAEによって供給された)2発の迫撃砲弾で武装した大型のVTOL型無人戦闘航空機(UCAV)を配備していることと、エチオピアの共和国防衛隊が少なくとも同様に供給された3種類のカービン銃や狙撃銃などを使用していることです。[3] [4]

 ティグレ戦争の映像にUAEが供給した武器がその姿を出し始めるは、もはや時間の問題である可能性が高いと思われます。

 そうしているうちに、エチオピア政府はUAEから受け取った装備の一部について珍しく公開しました。しかし、その寄贈物資は銃や弾薬ではなく、基本的な救急設備を備えた救急車仕様のトヨタ・ランドクルーザー50台でした。[5]

 50台の救急車は、(確認された)IL-76による68便のエチオピアへのフライトのうち17便分の貨物量に相当します。これは残りの51便分が積載していた貨物の中身が依然として不明であり、それらがエチオピアではまだ公になっていない豊富な種類の武器で構成されている可能性があることを意味しています。

                       

 エチオピアの保健部門への救急車の提供について、ティグレ州における紛争とは全く無関係だと主張する人もいるかもしれませんが、エチオピアに救急車としてトヨタ・ランドクルーザーを供与するというUAEの決定は、これらの車両の大部分がティグレ州にいるエチオピア軍用に総動員されることを強く示唆しています。

 トヨタ・ランドクルーザー4x4の優れたオフロード能力と、(これらに施されているカーキ色の塗装から判断すれば)これらの車両が軍用のストック品から集められたように見えるという事実は、それが実際の用途であることを確かに暗示しています。




 エチオピアとUAEの間を往来するUAE関連の輸送機に積載された内容については、少なくともその一部が特定されています。

 表向きは民生用という肩書きがあることを除外しても、これの救急車の多くが前線で負傷したエチオピア兵士を病院に搬送するために使用されることになるであろうという推測については、それほど非現実的ではないと思われます。

 仮にこれが実際にそうなるとしたら、それは全体としていまだに拡大しつつある紛争が見せる単なる1つの側面にすぎません。そして、不本意な戦争当事者(エチオピアとティグレ)が最終的に敗北しないように、これまで以上に大量の人員と装備を投じることを余儀なくされるでしょう。



特別協力: Gerjon | חריון.

[1] https://twitter.com/Gerjon_/status/1450886738545627143
[2] https://twitter.com/Gerjon_/status/1451623183556268047
[3] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[4] Emirati Small Arms in Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/emirati-small-arms-in-ethiopia.html
[5] https://twitter.com/lia_tadesse/status/1450520938911604742

※  当記事は、2021年10月31日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 

2021年12月6日月曜日

ティグレ戦争:エチオピア軍を支援するUAEの航空輸送



著:Gerjon 氏が収集したデータを基にステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ が執筆 (編訳:Tarao Goo

 エチオピア北部の全体でますます治安状況が悪化している中、一見して阻止できないティグレ軍の進撃を食い止めることに役立つ可能性のある新しい兵器システムを入手するために、エチオピア国防軍(ENDF)は国際的な爆買いに乗り出しました。

 その取り組みの一環として、エチオピアはUAEやイランといった国から武器を入手しようとしてきました。

 航空機トラッカー:Gerjon氏が収集した最近のデータは、ENDFが必要とするあらゆる武器や装備を供給し続けるために、これらの国によって維持されている航空輸送の規模を明らかにしています。[1]

 53日間で、少なくとも51の疑わしい貨物便がエチオピアに到着し、そのほとんどがハラールメダ空軍基地に着陸しました。51便のうち45便はUAE発で、6便はイラン発のものでした。後者の場合、使用されたボーイング747とIL-76輸送機にはエチオピアに引き渡されたことが確認されている「モハジェル-6」無人戦闘航空機(UCAV)が積載されていたと推定できますが、その他の種類のイラン製兵器がENDFに納入された可能性も除外できません。

 もっともらしい関係の否認を主張するため、UAEは公式には関与していないとする国々へ武器を引き渡すために多くのフロント企業を利用しています。この実例が以前にリビアで目撃されたことがあります。リビアでは、UAEがLNA(リビア国民軍)のハリーファ・ハフタル将軍をリビアの統治者にすることで、国際的に承認されているリビア政府を転覆させることを試みたのです。

 エチオピアに武器と装備を引き渡すため、UAEは自国に拠点を置く(ウクライナとキルギスで登録されたIL-76輸送機を持つ)フライスカイ航空を使用しています(注:名目上はフライスカイという同じ名前の航空会社が両国でそれぞれ設立されているようです。一見して無関係にも見えますが、よくチェックするとUAEと何らかの関係があることを示唆しています)。



 また、中国からの不審な貨物便も含めると、航空輸送の規模はさらに大きなものとなります。2021年9月中旬に1機のウクライナ・アントノフ航空のAn-124が中国の成都を離陸、イスラマバードに短時間立ち寄った後、ハラールメダ空軍基地に着陸しました。 [2]

 現在では、この機体に複数の「翼竜Ⅰ」 UCAVとその関連装備が積載されていたと考えられています。おそらく偶然ではないでしょうが、「翼竜Ⅰ」は成都で製造されているからです(注:後日に当ブログは実際に「翼竜Ⅰ」が引き渡されたことを独占的に明らかにしました)。

 「翼竜Ⅰ」は、エチオピアによって最近調達されたUCAVの拡大しつつあるストックに追加されることになるでしょう。このストックには、これまでにUAEとイランから得たUCAVも含まれていることが確認されています。[3] [4]



 現時点では貨物の内容について推測することしかできませんが、軍用品が含まれている可能性が高く、その代わりに人道援助物資はエチオピアの民間空港に届けられていると思われます。

 UAEのために運航しているIL-76は兵器システムをもたらすイランのIL-76と同じく定期的に(ときには1日に2回も)ハラールメダに着陸しているようです。この状況は、とてつもない量の武器が日常的にエチオピアへ輸送されていることを明確に示しています。

   

 多くの貨物便がエチオピアとUAEの間を往来しているにもかかわらず、驚くべきことに、UAE由来の武器や装備は今までのところエチオピアで全く目撃されていません。

 UAEによって最近エチオピアに引き渡されたことが知られている武器には、2発の120mm迫撃砲弾を搭載したVTOL型無人戦闘航空機(UCAV)と数種類のカラカル社製小火器があります。後者の場合で注目すべきポイントとしては、これらの小火器が2020年11月にティグレ戦争が勃発する以前の時点ですでにエチオピアで目撃されていたことです。




 アメリカからの政治的手段で紛争を解決するようにと強まる圧力に直面しているにもかかわらず、ほぼ日常的にエチオピアにやって来るUAEの貨物便を見ると、この国が同盟国を見捨てようとしていないことは明らかでしょう。



特別協力: Gerjon | חריון.

[1] https://twitter.com/Gerjon_/status/1446169759096115200
[2] https://twitter.com/Gerjon_/status/1439611723992997888
[3] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[4] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html

※  当記事は、2021年10月8日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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2021年12月3日金曜日

UAEがティグレ戦争に参戦: エミレーツの「翼竜Ⅰ」UCAVがエチオピアに配備された

「翼竜Ⅰ」(イメージ画像であり、UAEやエチオピアとは無関係です)

著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ編訳:Tarao Goo

 エチオピア政府側にアラブ首長国連邦(UAE)の無人戦闘航空機(UCAV)が展開しているという情報については、2020年11月に反政府勢力と化したティグレ州との紛争が始まって以来、ずっと推測されてきました。

 ただし、いくらかの中国製「翼竜Ⅰ」UCAVがティグレ上空での戦闘任務に就くためにエリトリアのアッサブ空軍基地から出撃しているという頻繁になされる主張については、確かな証拠によって裏付けされたことが一度もありません。

 しかし、著者がハラールメダ空軍基地の整備士から得た新たな情報は、エチオピアの空にエミレーツ(UAE)の「翼竜Ⅰ」UCAVが存在している事実をようやく明らかにしたと思われます。[1]

 UAEは(以前から噂されていた)隣国のエリトリアからの運用ではなく、Uエチオピアの首都アディスアベバ近郊に位置するハラールメダ空軍基地に少なくとも6機の「翼竜Ⅰ」を配備したようです。

 エミレーツの武装ドローンがエチオピアに配備されたのは、政府軍がティグレ軍からの脅威を阻止できない状況下で国内各地の治安状況がますます悪化する最中のことでした。

 10月初旬にエチオピア軍(ENDF)がティグレ防衛軍(TDF)に対して壊滅的な攻撃を行った後、TDFは反攻を開始して一時は首都の安全を脅かす状況までに至りました。[2]

 エチオピア政府がティグレ軍の脅威に屈服する可能性があるとの報道は間違いなくアブダビ当局に警告を与え、アラブ首長国連邦空軍(UAEAF)が保有する「翼竜Ⅰ」を即座にエチオピアへ展開させる有力な理由となった可能性があります。

 その情報筋は、最近になって少なくとも6機の「翼竜Ⅰ」とUAE軍の人員がハラールメダ空軍基地に到着したと伝えましたが、UAEがエチオピアでもUCAVを運用するかどうかはまだ明らかになっていません(UAEからENDFに譲渡される可能性があるため)。

 (譲渡される場合に)エチオピアの要員が最初に「翼竜Ⅰ」の運用に関する広範囲に渡る訓練を受ける必要があることを考慮すると、最初にUAEのオペレーターが同機を使用することは決して不自然なものではないと思われます。

 この情報筋(整備士)はハラールメダ空軍基地にあるデジェン航空工学産業(DAVI)で働いており、2021年10月初旬に当ブログが報じた、エチオピアが中国から調達した3機の「翼竜Ⅰ」の到着について筆者に正確に伝えた人物です(注:つまり、今回の件も一定の信用性があるということ)。[3]

 すでにUAEは2021年初夏の時点で2発の迫撃砲弾で武装した大型のVTOL型UCAVをエチオピア軍に引き渡していますが、自軍の「翼竜Ⅰ」を6機も配備することはエチオピア政府への支援を莫大に増やすことになります。[3] [4]

「翼竜Ⅰ」(イメージ画像であり、UAEやエチオピアとは無関係です)

 UAEは「翼竜Ⅰ」と「翼竜Ⅱ」の活発的なユーザーです。両機種はイエメンやリビアでの戦闘に投入され、今までに事故やフーシ派による地対空ミサイル、そしてトルコの防空システムで少なくとも12機が失われています。[4]

 2020年1月、リビアのトリポリにある士官学校で26人の(非武装の)士官候補生が殺害された攻撃がありましたが、これはエミレーツの「翼竜Ⅰ」によるものでした。

 同年には、UAEによる「民間人の住宅、野戦病院を含む医療施設と救急車を標的にしている」武装ドローンの使用を理由に、アムネスティ・インターナショナルがアメリカにUAEへのドローンの販売を停止するように要請もしています。[5] [6] [7]
 
UAEは躊躇することなくトリポリの士官学校で整列していた士官候補生を攻撃しました

「翼竜Ⅰ」は中国で最も商業的に成功しているUCAVであり、今までに(エチオピアを含む)7つの海外の顧客によって導入されたことが確認されています。[8]

 このUCAVは空対地ミサイル(AGM)または誘導爆弾を合計で2発を搭載するために、左右の主翼にハードポイントを1つずつ備えていますが、その少なさについては、搭載できる幅広い種類の兵装でカバーすることが可能です。

 11月初旬にはエチオピアがこのUCAV用に「TL-2」AGMを調達したことが判明しました。「翼竜Ⅰ」は2連装発射機を用いた場合、このAGM最大で4発を搭載可能です(注:エチオピアが連装発射機を導入したかは不明です)。[9]
        
 UAEは「翼竜」シリーズ用に主として「AR-1」AGMを用いていることが知られています。

「翼竜Ⅰ」(イメージ画像であり、UAEやエチオピアとは無関係です)

 UAEのUCAVがエチオピアに配備されたことは、追い詰められているアビー・アハメド政権に対する支援の質と量を相当に向上させるものであり、同国が法外な政治的・財務コストをかけてでも現体制の存続を保証する意思があることを示唆している可能性があります。

 2021年8月以降、UAEからエチオピアに向かう100便以上の貨物便が確認されています。その大部分がさまざまな武器・弾薬を積載しており、ある時点でこれらのドローンが含まれていたことは明らかでしょう。[10]

 仮にUAEの「翼竜Ⅰ」の配備がイエメンやリビアへの介入で知られた決意と広範囲にわたる関与に類似するものになるのであれば、ティグレ軍は注意を払うことを余儀なくされるかもしれません。

「翼竜Ⅰ」(イメージ画像であり、UAEやエチオピアとは無関係です)

[1] 当然ながら、安全上の問題で身元は秘匿です。
[2] Ethiopia's Tigray crisis: Citizens urged to defend Addis Ababa against rebels https://www.bbc.com/news/world-africa-59134431
[3] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[4] Tracking Worldwide Losses Of Chinese-Made UAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/tracking-worldwide-losses-of-chinese.html
[5] Libya migrant attack: UN investigators suspect foreign jet bombed centre https://www.bbc.com/news/world-africa-50302602
[6] UAE implicated in lethal drone strike in Libya https://www.bbc.com/news/world-africa-53917791
[7] US urged to stop drone sales to UAE over civilian deaths in Yemen and Libya https://www.middleeasteye.net/news/amnesty-demands-us-halt-sale-drones-uae
[8] An International Export Success: Global Demand For The Bayraktar TB2 Reaches All Time High https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/an-international-export-success-global.html
[9] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html
[10] UAE Air Bridge To Ethiopia Continues Unabated - Surpassing 100 Flights https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/uae-air-bridge-to-ethiopia-continues.html

※  当記事は、2021年12月1日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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2021年11月30日火曜日

ティグレ戦争:エチオピアにおけるUAEの戦闘ドローンが正体を現した



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピア政府のためにUAEの無人戦闘航空機(UCAV)が投入されているという情報については、2020年11月に反政府勢力であるティグレ州との武力衝突が始まって以来ずっと推測されてきました。

 多少の中国製「翼竜」UCAVがティグレ上空での戦闘任務に当たるためにエリトリアのアッサブ空軍基地から出撃していると頻繁に主張されていますが、2020年当時でも現在でもそのような実戦投入が確かな証拠によって裏付けされたことは一度もありません。

 しかし、紛争勃発から約1年が過ぎた頃になった今、ティグレ防衛軍(TDF)との戦いを支援するため、UAEの戦闘ドローンが実際にエチオピア軍(ENDF)に引き渡されたことを示す証拠がついに明らかとなりました。[1]

 ただし、この引き渡されたUCAVは以前からティグレ上空で活動していると主張されてきた「翼竜」ではなく、2発の120mm迫撃砲弾を搭載できる大型の垂直離着陸(VTOL)型機でした。

 これらの無誘導の迫撃砲弾は「翼竜」や他の中国製UCAVが搭載している誘導兵器に比べて命中精度が著しく低いため、固定化した防御線ではなく機動力と奇襲攻撃を力とする敵に対してはあまり役に立ちません。都市部ではその有効性がさらに低下することを踏まえると、巻き添え被害を避けるために民間人がいる地域にこれらのUCAVを投入しないように、その操縦員に大きな自制を余儀なくさせるでしょう。

 アラブ首長国連邦(UAE)は、アビー・アハメド首相率いるエチオピア政府の強固な支援者であることが証明されています。

 これまでのところ、この支援が具体的にどのようなものだったかについては、依然として議論の対象になっています。分かっているのは、大型の「IL-76」輸送機がUAEとエチオピア最大の空軍基地であるハラールメダの間を頻繁に往来していることです。[1]

 貨物の内容に関しては現時点で推測の域を出ませんが、それらにティグレ州での使用を目的とした軍用品が含まれていたことは、ほぼ間違いありません。

 これまでのUAEによるエチオピアへの武器輸送には、数多くの現代的なデザインの小火器を製造しているカラカル社製の銃火器が大量に含まれていたことが知られています。[2]

 エチオピアでも使用されているイスラエル製の「TAR-21」アサルトライフルと同様に、UAEから供給された武器は共和国防衛隊だけに支給されました。最近では、共和国防衛隊はエチオピアのよく訓練された部隊の1つとして、ティグレ戦争に積極的に加わるレベルまで任務が拡大しているようです。

       

 伝えられるところによれば、UAEが引き渡した戦闘ドローンの画像は、約4ヶ月前(2021年6月頃)にティグレ州のマイチュー地区で撮影されました。[3]

 (戦争の間にティグレ防衛軍と変身した)ティグレ軍が、この地域からエチオピア政府軍を追い出そうと何度にもわたる攻勢をかけた後、マイチューは今やティグレの確固たる支配下にあります。

 このドローンシステム自体はエチオピア軍のオペレーターと一緒に退却した可能性があります。現時点で彼らの航続距離はマイチュー周辺のティグレ軍を再び攻撃して苦しめるには不十分なものとなってしまいました。



 このUCAVのベースとなった正確なドローンの形式はまだ不明のままですが、イエメンでフーシ派に撃墜された2機のUCAVとデザインが同一です(下の2枚の画像)。当然のことながら、これらのUCAVは撃墜された当時、UAEの支援を受けた部隊によって運用されていました。

 地上に落下した後に撮影されたドローンの画像は、これが2発の迫撃砲弾を搭載するように改造された(もともと中国製と思われる)市販の大型VTOL機であることを明らかにしています。




 重い120mm迫撃砲弾を搭載するため、ドローンの両側面には飛行する際に砲弾を格納する2本の大きなチューブが取り付けられています。操縦員が適切な標的を発見した後、これらの迫撃砲弾は遠隔操作で投下され、実質的に無誘導爆弾のごとく標的に向かって急速に落下していく仕組みです。

 当然ながら、これは低高度から投下した場合でも非常に不正確な照準方法であり、ドローンの有効性を静止した標的や大規模な歩兵の集団への攻撃に限定させるものです。ただし、それらのようなシンプルな標的でも攻撃のために必要な精度を得るためには、低高度から砲弾を投下させる必要があります。

 この手法はUCAVを地上からの攻撃を受けやすくさせますが、エチオピアで撃墜されたと報じられたドローンはまだありません(下の画像はイエメンで撃墜された機体です)。



 アメリカからの政治的手段で紛争を解決するようにと強まる圧力に直面しているにもかかわらず、日常的にエチオピアにやって来るUAEの貨物便を見ると、その同盟国がエチオピアを見捨てようとしていないことは明らかです(余談ですが、政治的手法による解決というオプションについては、エチオピアとティグレの両陣営の双方が検討する意思を持っているようです)。

 興味深いことに、エチオピア政府の支援者には互いに対立する国も含まれています。実際、互いに敵対しているUAEとイランはエチオピアにUCAVやその他の武器を供給しているのです。

 これらがエチオピアへの武器の最後の引き渡しでないことだけは確実でしょう。決して確定的なものではありませんが、中国やトルコ製ドローンの配備についても何度も伝えられているため、この戦争には継続的な観察を要します(注:後に空軍が「翼竜Ⅰ」UCAVを導入したことが明らかとなりました)。



[1] https://twitter.com/Gerjon_/status/1435329547722018817
[2] Emirati Small Arms in Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/emirati-small-arms-in-ethiopia.html
[3] https://twitter.com/wammezz/status/1445034651085639688

特別協力: Wim ZwijnenburgVleckie(敬称略)

※  当記事は、2021年10月5日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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メイド・イン・チャイナ:エチオピアの中国製小型UAV飛行隊(同上)