2023年11月3日金曜日

アルジェの目覚め:アルジェリアが保有する無人飛行隊の評定(一覧)


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 アルジェリアは武器の導入や現時点における兵器類の保有状況の詳細などの情報面では秘密主義で悪名高い国です。したがって、この国によって調達・運用されている無人航空機(UAV)の種類に関する情報が非常に多く公開されていることは、極めて驚くべき状況と言えるでしょう。

 公開されている情報は、この国が中国やアラブ首長国連邦(UAE)、南アフリカ、その他の多くの国から調達された非常に多種多様な(武装)ドローンを保有していることを明らかにしています。

 近年では、アルジェリア自身も数種類の国産ドローンの設計・開発をしてきました。将来的な見込みはあるものの、これらの国産UAV開発プロジェクトはまだ実用的な運用システムを生み出すには至っていません。

 アルジェリアのUAVの大部分については、最近では首都アルジェから南方約200kmに位置するアイン・ウセラ空軍基地を拠点にしています。

 アルジェリアのUAVの運用に対する関心については1990年代の中頃に生じたと考えられており、結果的には、その数年後に南アフリカから10機程度の「デネル」社製「シーカーII」の購入に至ったようです。[1]
 
 この機種は長期間にわたって、アルジェリア唯一のUAVとして運用されていました。90年代製のUAVを1機種だけ使い続けたことについて不思議に思う人もいるかもしれませんが、「シーカーII」はモロッコの「R4E " スカイアイ"」よりも優れた性能を発揮し、隣国のリビアでは長きにわたって無人機の運用が全く行われていなかったため、それでも十分だったのです。[2] 

 2010年代のUAV技術の発展はアルジェリアにさらなるUAVの導入に対する関心を再び高めさせたものの、新型機が実際に調達されるまでには2010年代後半までの年月を要しました。

 当時のアルジェリアは無人戦闘航空機(UCAV)を導入するために中国に目を向けました。当初、アルジェリアが保有する中国製UCAV飛行隊は中国航天科技集団(CASC)から調達した「CH-3A」だけで構成されていましたが、後により高性能な「CH-4B」も同社から追加導入されました。

 残念ながら、アルジェリアが入手した中国製無人機の数に関する情報はありません。知られているのは、アルジェリア空軍が数ヶ月の間に3機の「CH-4B」を墜落事故で喪失したことだけです。[3] 

 これらの事故のうちの2件は、アルジェリアでのシステムの運用試験の段階で発生しました。興味深いことに、この事故はアルジェリアに「CH-4B」の購入を推進させることをを思いとどまらせるには不十分だったようです。

アルジェリア軍の「CH-4B」

 中国製UCAVが運用開始されたのと同時期に、アルジェリア空軍はUAEに拠点を置くドローン製造企業:「アドコム・システムズ」社から2種類の奇抜な姿のドローンも調達しています。

 アルジェリアでそれぞれ「エル・ディジャザール-55」と「エル・ディジャザール-54」と呼称されている「ヤブホン・フラッシュ20」と「ヤブホン・ユナイテッド40」は、2018年に同国で就役したと考えられています。アルジェリアはこれらのドローンについては「アドコム」社から直接購入したのではなく、実際に国内で製造されたものだと主張しています。[4] 

 ほぼ間違いなく両機種ともに見た目が乏しいですが、その欠点は兵装の搭載能力で補われており、「NAMROD」空対地ミサイルや(無誘導爆弾として用いる)120mm迫撃砲弾用に最大で10基のハードポイントを備えてます。

 さらに、「ユナイテッド40」は機体に1基の6発入り回転式ディスペンサー(詳細不明)や合成開口レーダー(SAR)を搭載することも可能です。


 UAEの「ヤブホン」シリーズUCAVの組み立てに加えて、アルジェリアは限定的ながら軍用級のドローンの研究開発能力も有しています。

 国内で現在進行中のドローンプロジェクトの大部分は、これまでに少なくとも5機の「アメル」シリーズのUAVを設計してきた産業技術研究センター(CRTI)によって進められています。

 これらのドローンの大半がアルジェリア軍に就役する可能性は極めて低いですが、その設計と開発で得た経験はいつの日か真の国産U(C)AVを登場させるかもしれません。あるいは、アルジェリアはUAEからほかの機体の製造ライセンスを購入することによって設計プロセスを省略する可能性も考えられますが、当然ながら真の国産UAV技術の基盤を代償とするリスクも伴います。

試験中のCRTI「アメル2-700」

 2021年9月には、アルジェリアが中国から24機の「翼竜Ⅱ」UCAVを発注したことが報じられました(注:続く2020年1月には「CH-5」と「WJ-700」UCAVの発注も報じられました)。 [5]

 武器の調達についてアルジェリアはめったにコメントしないことから、「翼竜Ⅱ」の導入が実際になされたことが(初めて)確認できるのは、同機がアルジェリアの空軍基地で目撃された場合のみに限られると思われます。

 その間にアルジェリア空軍は追加の「ヤブホン・フラッシュ20」と「ユナイテッド40」UCAVを継続して組み立てる一方で、国産システムの設計・開発を進めるためにより多くのリソースを投入するかもしれません。

 これがアルジェリアのUAV戦力の発展に後れずについていくのに十分かどうかは現時点では不明であり、徘徊兵器といった追加的なドローン戦力の導入も起こりえないわけではないと思われます。


無人偵察機

無人戦闘航空機(UCAV)

無人標的機

国産UAV (試作)

発注が報じられているU(C)AV

[1] SIPRI Arms Transfers Database https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php
[2] Operating From The Shadows: Morocco’s UAV Fleet https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/operating-from-shadows-moroccos-uav.html
[3] Chinese CH-4B Drones Keep Crashing In Algeria For Technical Fault https://www.globaldefensecorp.com/2021/03/11/chinese-ch-4b-drones-keep-crashing-in-algeria-for-technical-fault/
[4] Adcom adds to Algerian force https://www.timesaerospace.aero/features/defence/adcom-adds-to-algerian-force
[5] Algeria To Receive A New Squadron Of Advanced Drones https://www.echoroukonline.com/algeria-to-receive-a-new-squadron-of-advanced-drones

※  当記事は、2021年12月2日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したも
  のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
    あります。



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