著:シュタイン・ミッツァー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
無人航空機(UAV)は、今や東南アジアにとって新しいものではありません。タイでは、すでに2001年の時点で陸軍がIAI製「サーチャーMk. II」無人偵察機をイスラエルから調達して運用し続けているのです。
この国ではその後の数十年にわたって(主にイスラエルから)さらなる種類のドローンの導入が続き、結果的に現在の陸海空軍で運用される無人兵器の拡充をもたらしました。
その一方で、この中には数を増やしつつある自国で開発されたUAVや中国からライセンスを得て生産された機種も含まれています。それらの中でも最大かつ最も高性能な機種が中国・北京航空航天大学の「CY-9」をベースに開発した「D-アイズ04」で、最終的には陸軍の旧式化した「サーチャーMk.II」の後継となる可能性があります。[1]
また、タイは、同大学が開発したより大型の攻撃能力も有する無人偵察機「TYW-1」にも関心を示しているとみられています。
中国との協力によって、タイはこれまでに自国軍用の「DTI-1/1G」誘導式多連装ロケット砲を含む数多くの高度な最新兵器をライセンス生産するなど、他国とは実現不可能な取引を行ってきました(注:つまり、今後もこの傾向が続くことが自然ということ)。
サイズと航続距離の(ほぼ)全てのカテゴリーでかなりの数のUAVが運用されているにもかかわらず、タイ軍の保有兵器にはいまだに無人戦闘航空機(UCAV)が欠けています。
2019年には、タイの防衛技術研究所 (DTi) が「U-1 "スカイ・スカウト"」の攻撃機型である「U-1M "スカイ・スカウト-X"」を発表しました。この小型UCAVは射程6kmのタレス製「FF-LMM」誘導爆弾を2発搭載された状態で登場しましたが、この爆弾が大部分のUCAVよりも低い高度で飛行する 「U-1M "スカイ・スカウト-X"」から投下された場合、実際の射程距離はやや短いものとなるでしょう。
この機種が実際にタイ軍の陸海空のいずれかの軍種で運用されることになるのか否かは、現時点では明らかになっていません。
2021年12月、タイ海軍が4機の中高度長時間滞空(MALE)型UAVの導入を検討していることが公表されました。これについてはイスラエルの「ヘロンTP」や「ヘルメス900」、中国の「翼竜II」UCAVが有力な候補とみられていたものの、結果として2022年7月に「ヘルメス900」9機の発注が発表されました。[2][3]
2022年6月にタイ国防省の代表団が「バイカル・テクノロジー」社を訪問したことは、タイが同社の「バイラクタルTB3」に対しても具体的な関心を示している可能性があります。[4]
TB3は当初から海上での任務を念頭に置いて設計されたUCAVであり、今では専用の艦載機を持たないタイ海軍の空母「チャクリ・ナルエベト」からの運用も可能という利点があります。2021年に同空母の全長175mを有する飛行甲板から小型のVTOL型UAVを運用する実験を行っているため、海軍が無人機を将来的な艦載システムと考えていると推測することは至って自然なことです。[5]
(各機体の名前をクリックするとタイで運用されている当該UAVの画像を見ることができます)
無人偵察機 - 運用中 または 発注済み
VTOL型無人偵察機 - 運用中
無人標的機- 運用中
無人偵察機 - 試作
無人戦闘航空機 - 試作
VTOL型無人偵察機 - 試作
既存のイスラエル製UAVや(主に中国の北京航空航天大学との協力を通じて)現在の能力をさらに拡大する態勢を整えている自国の高度な技術基盤のおかげで、タイにおけるUAV戦力の将来は明るいと言えるでしょう。
将来的な「ヘルメス900」やMALE型UCAV、そして中国製大型UCAVのライセンス生産機の導入は(場合によってトルコからのUCAVの導入と組み合わせると)、タイは東南アジアにおける無人機戦力のトップに立つという素晴らしい偉業を成し遂げることを可能にするかもしれません。
北京航空航天大学の「CY-9」をベースに開発された「D-アイズ04」 |
(各機体の名前をクリックするとタイで運用されている当該UAVの画像を見ることができます)
無人偵察機 - 運用中 または 発注済み
- IAI「サーチャーMk.II」 [2001] (陸軍)
- エアロノーティクス「エアロスター」 [2011] (空軍)
- エアロノーティクス「オービター3B」 [2020] (海軍)
- エルビット「ヘルメス450」 [2018] (陸軍)
- エルビット「ヘルメス900」 [2022年に発注] (海軍)
- エアロノーティクス「ドミネーター」 [複数の情報源で言及されるも未確認]
- エアロバイロメント「RQ-11 "レイヴン"」 [2010] (陸軍)
- ボーイング・インシツ「RQ-21 "ブラックジャック"」 [2021] (海軍) [複数の情報源で言及されるも未確認]
- DTI「U-1 "スカイ・スカウト"」 [2017]
- DTI 「D-アイズ02」 [2017]
VTOL型無人偵察機 - 運用中
- TOP「ファルコン-V」 [2017] (海軍)
- 「ナライ 3.0」 [2018] (海軍及び国軍本部)
- シーベル「カムコプター S-100」 [2020] (海軍)
- NRDO「MARCUS(マーカス)-B」 [2021] (海軍) (空母「チャクリ・ナルエベト」用)
無人標的機- 運用中
- SCR「モアイ」 [2019] (陸軍)
無人偵察機 - 試作
- DTI「タイガーシャークII」 [2011] (運用を目的としたものではない)
- DTI「T-イーグルIII」 [2015] (タイ陸軍に売り込まれたもの)
- TOP「スパロー1」 [2014] (採用されず)
- DTI「D-アイズ03」 [2019] (運用を目的としたものではない)
- DTI「D-アイズ04」 [2021]
- NRDO「MARCUS(Maritime Aerial Reconnaissance Craft Unmanned System)」 [2021] (海軍)
無人戦闘航空機 - 試作
- DTI「U-1M "スカイスカウト-X"」 [2019]
VTOL型無人偵察機 - 試作
- TOP「ピジョン-V」 [2015]
- 「TAREM(Tactical Assault rifle-Enabled Multirotor )」 [2015] (陸軍で試験されたが採用されなかったと思われる)
- DTI「D-アイズ01」 [2019] (同上)
- 形式不明のVTOL型UAV (1) [2015] (同上)
- 形式不明のVTOL型UAVUAV (2) [2015] (同上)
- 多種多様な商用VTOL型UAV群 (同上)
既存のイスラエル製UAVや(主に中国の北京航空航天大学との協力を通じて)現在の能力をさらに拡大する態勢を整えている自国の高度な技術基盤のおかげで、タイにおけるUAV戦力の将来は明るいと言えるでしょう。
将来的な「ヘルメス900」やMALE型UCAV、そして中国製大型UCAVのライセンス生産機の導入は(場合によってトルコからのUCAVの導入と組み合わせると)、タイは東南アジアにおける無人機戦力のトップに立つという素晴らしい偉業を成し遂げることを可能にするかもしれません。
タイの代表団メンバーが「バイカル・テクノロジー」のハルク・バイラクタルCEOから「バイラクタル・アクンジュ」UCAVの模型を贈呈された際の記念撮影(2022年6月) |
[1] Royal Thai Army developping D-Eyes 04 MALE UAV https://www.airrecognition.com/index.php/news/defense-aviation-news/2021/november/7852-royal-thai-army-developping-d-eyes-04-male-uav.html
[2] Thai Navy Seeking Long-Range Maritime Surveillance Drone https://www.thedefensepost.com/2021/12/30/thailand-maritime-surveillance-drone/
[3] Thailand to Buy Israeli-Made Hermes 900 Drones https://www.thedefensepost.com/2022/07/04/thailand-israel-hermes-drones/
[4] Royal Thai Embassy, Ankara https://www.facebook.com/rteankara/posts/pfbid02k
[5] Thai aircraft carrier tests VTOL drone MARCUS-B https://www.navalnews.com/naval-news/2022/01/thai-aircraft-carrier-tests-vtol-drone-marcus-b/
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[4] Royal Thai Embassy, Ankara https://www.facebook.com/rteankara/posts/pfbid02k
[5] Thai aircraft carrier tests VTOL drone MARCUS-B https://www.navalnews.com/naval-news/2022/01/thai-aircraft-carrier-tests-vtol-drone-marcus-b/
※ 当記事は、2022年7月12日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したも
のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
あります。
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