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2024年8月25日日曜日

かつての夢をもう一度:タイの「DTI-1」多連装ロケット砲


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 当記事は2023年1月13日に本国版「Oryx」に投稿されたものを翻訳した記事であり、意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 1990年代半ばから後半は、タイ王国軍にとって「黄金の10年」を迎えようとしていた時期でした。18機の「F-16A」戦闘機の導入はタイ空軍をこの地域における軍事航空分野の先頭へと押し出し、陸軍は「M60A3」戦車「M109A5」155mm自走榴弾砲が追加されることによって増強されたのです。

 この黄金期で最もその恩恵を受けたのはタイ海軍であり、東南アジア初にして唯一の空母である「チャクリ・ナルエベト」を導入するに至ったことはよく知られています。6機の「AV-8S "マタドール"」艦上攻撃機と4機の「S-70B "シーホーク"」対潜ヘリコプターを搭載したこの空母は、18機の「A-7E "コルセア"」攻撃機と3機の「P-3T」対潜哨戒機、そして中国から調達した新型補給艦と6隻のフリゲートとともに、タイ海軍を今後数年間にわたってこの地域で最強の海軍に変えるはずでした。

 しかし、1997年のアジア通貨危機によって生じた大規模な通貨下落はタイが新たに導入した戦力に近隣諸国が対抗できる状態でなくなったことを意味したほか、タイ自身も財源不足で新たな装備の維持や更新に苦労することにさせてしまったのです。こうした状況のため、納入から2年後の時点で、9機の「AV-8S」のうち稼働状態にあったのは僅か1機だけとなってしまいました。
 
 程なくして「マタドール」は後継機を待つ余裕もないまま退役することを余儀なくされ、「チャクリ・ナルベト」は専用の艦載機を持たない空母となりました(この悲惨な状況は今日まで続いています)。「A-7E」や「P-3T」も同じ運命を辿り、誰もが認める地域大国になろうというタイの挑戦は長く続くことなく終わりを迎えたのでした。

 ここ最近になって、タイは近隣諸国を凌駕するような戦力の拡大を図るために必要な財源を得ましたが、他の分野では単に地域内のライバルに追いついたにすぎません。実際、タイは1930年代に東南アジアで初めて潜水艦を運用した後、中国から「S26T」級攻撃型潜水艦1隻という形で潜水艦戦力を(再)導入する(東南アジアで)ほぼ最後の国なのです。[1]

 タイ軍で著しく発展の歩みを見せたものには長距離砲兵戦力があります。これは2011年にタイの国防技術研究所(DTI)と中国との間で、大口径ロケット砲の研究と(最終的には)国内でライセンス生産を実施する契約を締結したことによる賜物です。[2]

 この締結の対象は「WS-1B(最大射程:180km)」「WS-32(最大射程:140km)」の2種類であり、タイではそれぞれが「DTI-1」と「DTI-1G(注:Gは誘導を意味する)」と命名されました。また、DTIは中国の122mmロケット砲の生産とさらなる開発に関するライセンス契約も締結し、これは「DTI-2」としてトラック「85式装甲兵員輸送車」に搭載されています

 フランスの「カエサル」155mm自走榴弾砲と一緒に、ローカライズされた(タイでは「M758」ATMGと呼称されている)イスラエルの「ATMOS 2000」自走榴弾砲と「スピアー」120mm迫撃砲の調達、そして中国の「BL904A」対砲探知レーダーの導入によって、タイは今後数年間にわたって地域における砲兵戦力の優位を確保できるでしょう。[3] [4] [5]

「DTI-1」を搭載する「6x6」型ボルボ製トラックには、小火器の射撃や砲弾の破片から乗員を保護する装甲キャビンが設けられている

 「DTI-1(WS-1B)」は1990年台初頭に登場した「WS-1」をベースに開発された302mm戦術ロケット砲システムです。各ロケット弾には4つの固定翼があり、150kgの弾頭を最大180km圏内の標的に投射することができます。「WS-1B」は中国人民解放軍地上軍(PLAGF)に対して最初の実演が行われたものの、彼らはこのシステムに関心を示すことはありませんでした。

 同システムが最初に成功したのは1996年のことでした。このとき、トルコがアメリカから「MGM-140 "ATACMS"」の生産ライセンスの売却を拒否された後に「WS-1B」を「TRG-300 "カシルガ"」としてライセンス生産する協定を締結したのです。

 ちなみに、「WS-1B」は2000年代により高性能な「WS-2」と共にスーダンにも輸出されました。

 その後、トルコの「ロケットサン」社はGPS/INS誘導を備えた「WS-1B(ブロックII及びブロックIII)」を開発しましたが、その代償として(ブロックIIIでは)射程距離と弾頭重量が犠牲となりました。[6]

 150kmの射程を誇るタイの「DTI-1G」には、中国の北斗衛星測位システムとリンクした誘導装置がインテグレートされており、これによって同システムは最大140kmの射程距離で40m未満の半数必中界(CEP)の実現が可能となっています。[8]

 「DTI-1G」の発射機には、アメリカの「MIM-104 "パトリオット" 」地対空ミサイルシステムのものに酷似した計4本の箱型キャニスターが縦横2列に搭載されています。これとは対照的に、「DTI-1」のロケット弾は蓋が備えられていない4本の巨大な発射管に格納されています。

 当初、タイは「DTI-1G」を6基(1個大隊分)と「DTI-1」を2基製造する予定だったものの、計画の遅延でDTIは結局は3基の「DTI-1G」を製造しただけであり、今は最終的にタイ陸軍が相当な数を導入することになるだろう新型モジュラー式発射機の開発完了を待っています。[8]

タイ独自の「DTI-1」移動式発射機 

提示されたタイの「DTI-1G」大隊の編成図

 「DTI-1」と「DTI-1G」の発射機は、どちらも市販のトラックに搭載されています。

 当初、「DTI-1」と専用の移動式再装填システムは非装甲のボルボ「6x6」型をベースにしていたものの、後に前者は小火器の射撃や砲弾の破片から乗員を守るためにキャビンが装甲化されました。

 「DTI-1G」用の車体は「8x8」大型トラックのイヴェコ製「トラッカー440」をベースにしたものですが、当初から装甲キャビンが設けられています。ただし、「DTI-1」と「DTI-1G」用の再装填車両はいずれも装甲キャビンが設けられていません。

 2022年、DTIは122mm無誘導ロケット弾と「DTI-1(G)」の両方の発射が可能な「タトラ815-7」をベースにした新たな「6x6」型移動式発射機を披露しました。[9]



 この国が最後に武器を取ったのは2008年の国境におけるカンボジアとの小規模な武力衝突であり、その後、この問題は国際司法裁判所を通じて解決されました。

 しかし、カンボジアとの間には未解決の国境紛争がいくらか残っており、両国が満足できる完全な国境の画定は未だに行われていません。再発する可能性は極めて低いものの、次にあるかもしれないカンボジアとの武力紛争は、新型ロケット砲が投入される可能性が最も高いシナリオです。

 カンボジア軍は大量の122mm多連装ロケット砲(MRL)を保有しているほか、近年には中国から「AR2」 300mm MRLを6基導入しました。[12]

 130km超の射程距離を誇る「AR2」はタイの「DTI-1」とほぼ同じ射程距離16発の300mmロケット弾を発射できる上に、はるかに重い弾頭を搭載しています(280kg vs 150kg)。こうした能力の向上は、新千年紀の軍事的な様相を変えたロケット砲の進歩を示す実例と言えるでしょう。

カンボジア軍の「AR2」300mm MRL

 タイはアメリカ製兵器の古くからの顧客であるにもかかわらず、防衛上の必要性から次第に中国へ目を向けるようになってきており、近年に導入された中国製兵器には、「VT4」戦車と「VN16」水陸両用戦車、「VN1」歩兵戦闘車、「S-26T」攻撃型潜水艦、「071E」級揚陸艦、そして「CY-9」及び「BZK005」MALE型U(C)AVが含まれています。

 中国との協力は、これまでタイに自国軍用の「DTI-1/1G」誘導式MRLを含む多くの高度な兵器システムを同時にライセンス生産することを可能にさせました。こうした契約は他国との間では実現不可能だったでしょう。

 中国の寛大さが、かつて抱かれていた東南アジアの"虎"になるというタイの野望の少なくとも一部を復活させ、その地位を維持するという、今度こそより現実的な見通しを可能にしたことは言うまでもありません。

「DTI-1(G)」及び122mmロケット弾の双方を発射可能な新型のモジュラー式移動発射機

[1] History of Royal Thai Submarines in World War Two http://www.combinedfleet.com/Royal%20Thai%20Submarines.htm
[2] Army of Thailand could purchase WS-1B and WS-32 MLRS rocket launcher systems from China https://www.armyrecognition.com/march_2014_global_defense_security_news_uk/army_of_thailand_could_purchase_ws-1b_and_ws-32_mlrs_rocket_launcher_systems_from_china_3103145.html
[3] Thailand inducts Chinese artillery radar https://www.shephardmedia.com/news/digital-battlespace/thailand-inducts-chinese-radar/
[4] Thailand Unveils New 155 mm Truck Mounted Howitzer https://defence-blog.com/thailand-unveils-new-155-mm-truck-mounted-howitzer/
[5] Royal Thai Army Producing Its Artillery https://www.asianmilitaryreview.com/2022/10/royal-thai-army-producing-its-artillery/
[6] TRG-300 GUIDED MISSILE https://www.roketsan.com.tr/uploads/docs/kataloglar/ENG/1628728014_trg-300.pdf
[7] WS-32 https://www.cndefense.com/tgaws/WS-32.html
[8] สทป. ดำเนินการทดสอบสมรรถนะและทดสอบทางยุทธวิธีต้นแบบรถฐานยิงจรวดหลายลำกล้องอเนกประสงค์ ณ สนามทดสอบ ศป. จ.ลพบุรี https://www.facebook.com/dtithailand/posts/pfbid022
[9] https://twitter.com/BuschModelar/status/1530870779977646083



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2024年7月26日金曜日

トルコからの新しい風:バングラデシュ軍の「TRG-300」多連装ロケット砲


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 当記事は、2022年10月19日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。

 バングラデシュは1億6,800万人以上の人口を誇る世界で8番目に人口の多い国であることは見過ごされがちと言っても過言ではありません 。この国の軍隊は225,000人もの兵力を有しており、彼らは世界各地で平和維持活動にも頻繁に派遣されるものの、長射程の兵器や現代的な戦闘機が著しく不足しています。

 2009年に始動した軍の近代化・戦力向上事業「Forces Goal 2030」は、隣国のミャンマーがすでに軍事力の大幅な飛躍的発展を遂げつつあることから、こうした新しい戦力の導入を目指したものです。

 「Forces Goal 2030」の一環として、バングラデシュ陸軍は、「WS-22」122mm多連装ロケット砲49基、セルビア製「ノーラ"B-52"」152mm自走榴弾砲(SPG)36台、中国製「SLC-2」対砲レーダー、標的獲得用としてスロベニア製「C4EYE」戦術偵察UAV36機の購入を通じて砲兵戦力の火力向上に重点を置いています。

 2021年、バングラデシュはこれまでの中で最も強力な兵器システムである最大射程約120kmの「TRG-300 "カスルガ(別名:タイガー)"」MRLを受領しました。ちなみに、「WS-22」MRLの射程は約45kmです。

 合計で18基の「TRG-300」MRLは、ダッカ近郊のシャバール駐屯地を拠点とするバングラデシュ陸軍の第51MRLS連隊に配備されました。同連隊は「WS-22」122mm MRLも運用しており、こちらは40発の122mmロケット弾を発射可能な状態であるほかに、さらに40発の予備弾をトラックに搭載していることが特徴です。「WS-22」用122mmロケット弾は慣性誘導を採用しているため、半数必中界(CEP)が約30mと通常の「グラート」122mm MRLが使用するロケット弾より精度が高いものとなっています。

 (厳密な起源は中国にありますが)トルコの「TRG-300」は4発の300mmロケット弾を120km(105kg弾頭)または90km(190kg弾頭)先まで発射することが可能で、そのCEPは10m未満です。

 「TRG-300」は、この国がトルコから調達した初の軍用装備ではありません。現在、バングラデシュ陸軍は2000年代から2010年代にかけて導入した「オトカ」社の「コブラI」及び「コブラII」歩兵機動車(IMV)を運用しています(これらは数多くの平和維持活動に投入されてきました)。

 また、バングラデシュでは、救急搬送車としてルーマニア・トルコが共同開発した「RN-94」APCも9台を運用しています。[1]

 現時点で「STM」社の案がバングラデシュの将来フリゲート計画における最有力候補となっていることを考慮すると、バングラデシュへの武器や装備の供給元としてトルコのシェアは拡大する傾向にあるようです。

 実際、バングラデシュがトルコの「バイラクタルTB2」UCAVや「ヒサール-O」地対空ミサイルシステムにも関心を寄せていると云われていることが、その傾向を裏付けしています。[2] [3]

トルコのエミネ・エルドアン大統領夫人が「ロケットサン」社を訪問した際に「TRG-300」を視察した:後ろに「ボラ」弾道ミサイルシステムの試作型があることに注目

 バングラデシュは、「TRG-300」の搭載車両としてロシアの「カマズ-65224」6×6型トラックを採用しています。

 「TRG-300」の自走発射機はモジュール式であることから、ロケット弾ポッドや発射管を交換するだけで同じ発射機で122mmや230mmの(誘導式を含む)ロケット弾の発射に使用することも可能です。これによって、このシステムの運用に関する柔軟性が大幅に向上する効果がもたらされます。また、「TRLG-122/230」誘導式ロケット弾は、レーザー目標指示装置を搭載したUAVが指定した目標に命中させることが可能という利点も有しています。

 つまり、ドローンとの相乗効果が「TRG-300」によって既に与えられている能力を大幅に拡大してくれるだけではなく、このMRLは新たな自走発射機の調達を必要とせずにバングラデシュの戦力をさらに向上させる費用対効果の優れた兵器システムとなり得るのです。

 バングラデシュ以外の「TRG-300」運用国としては、トルコとアゼルバイジャン、そしてUAEが確認されています。アゼルバイジャンとUAEは武力紛争で同MRLを投入しており、前者は2020年のナゴルノ・カラバフ戦争で「TRG-230」誘導式MRLと共にアルメニアの強固に防御された陣地や敵陣奥深くにいる標的に対して使用し、後者はサウジアラビア主導のイエメン介入時に展開させました。

 アゼルバイジャンの「TRG-300」は搭載車両としてバングラデシュと同じようにロシア製「カマズ-63502」8×8型トラックを採用しています。しかし、UAEは「TRG-300」を最大で16発も搭載できる巨大な「ジョバリア」MRLシステムにインテグレートするという、全く別の手法を選択したことは特筆に値するとしか言いようがありません。

国内に到着した直後に撮影されたバングラデシュ軍の「TRG-300」MRL

 「TRG-300」の導入は、バングラデシュが軍の長距離砲兵戦力を構築するための第一歩を踏み出したことを象徴しています。

「TRLG-122」や「TRLG-230」用の発射機を追加調達することなく使用可能にしている 「TRG-300」のモジュラー方式が自身を予算内で実現可能な範囲を多様化する最適な選択肢にさせていることを見過ごすわけにはいきません。

 軍事作戦中におけるUAVとの潜在的な相乗効果は、十分い機能する軍隊にとって最も重要である偵察能力を導入することができると同時に、低コストで誘導式MRLが持つ能力をさらに引き出すことができる可能性を秘めています。

 もし、2個目の「TRG-300」連隊(18基分)創設という不確かな噂が本当ならば、「Forces Goal 2030」達成に関するバングラデシュ軍の見通しは急速に良い方向へ向かってることになることは確かだと言えるでしょう。

バングラデシュが調達したのと同じ6x6型モジュラー式自走発射機に「TRLG-122(左)」と「TRLG-230(右)」ロケット弾ポッドが搭載されている

[1] APCs For Export: The Nurol Ejder 6x6 In Georgia https://www.oryxspioenkop.com/2021/04/the-nurol-ejder-6x6-turkeys-first.html
[2] Bangladesh to buy Turkey's Bayraktar TB2 combat drone https://www.middleeasteye.net/news/bayraktar-bangladesh-buy-drones
[3] Bangladeş'in Hisar-O+ ile ilgilendiği iddia edildi https://www.savunmatr.com/savunma-sanayii/banglades-in-hisar-o-ile-ilgilendigi-iddia-edildi-h15926.html

2023年12月10日日曜日

南シナ海に響く咆吼:インドネシアの「CH-4B」UCAV


著:シュタイン・ミッツアー (編訳:Tarao Goo

 インドネシア空軍は現在、自国領を守り、ますます自己顕示欲を強める中国に対抗するための質的な戦力の構築を目的とした再装備計画を推進しています。この計画には多目的戦闘機、空中給油機、新型攻撃ヘリコプターなどの導入も含まれていますが、インドネシア軍が無人戦闘航空機(UCAV)の導入・開発にも投資していることに注目すべきでしょう。

 UCAVについて、同国は今までに中国から6機の「CH-4B」を調達したことに加え、国産の「エラン・ヒタム(黒鷲)」の設計・開発プロジェクトも進めています。[1]

 UCAVの運用に対するインドネシアの関心が生じたのは2010年代半ばと考えられており、最終的に2017年に中国から4機の「翼竜Ⅰ」の発注に至らせました。[2]

 しかし、この契約はインドネシア企業が関与していないとの批判を受けた後の2018年初頭に突如としてキャンセルされ、2018年11月に調達事業を再スタートすることを余儀なくされたのです。

これを受けて、「トルコ航空宇宙産業(TAI)」「PTDI(PT ディルガンタラ・インドネシア)」と提携して「アンカ-S」を提案しましたが、最終的に「中国航天科技集団(CASC)」の「CH-4B」が勝者に選ばれて6機が発注されました。この取引にオフセット契約やインドネシア企業への技術移転も含まれているのか、仮に含まれているとすればどの程度なのかは不明です(注:2023年8月、インドネシアは12機の「アンカ-S」を導入することを公表しました)。[3]

 最初の2機は実証飛行のために2019年8月にインドネシアに到着し、同年10月の国軍記念日に実施された軍事パレードで一般公開されました。[4] [5]

 「CH-4B」は2019年9月に東ジャワで行われた陸海空軍の合同軍事演習で運用デビューを果たし、その際に偵察ミッションをこなしたり、「AR-1」空対地ミサイルを地上の模擬標的に向けて発射しました。[6]

 この演習以降におけるUCAVの運用は、主に戦闘ドクトリンの確立とオペレーターの訓練に向けられていたようです。[7]

 2021年8月、「CH-4B」はインドネシア当局によって正式に軍用の耐空証明を取得しました。[7]


 インドネシアの「CH-4B」は、西カリマンタン州ポンティアナック近郊にあるスパディオ空軍基地に拠点を置く第51飛行隊に所属しています。

 同飛行隊は2013年に導入された4機のイスラエル製「エアロスター」UASも運用している無人機部隊です。[8]

 インドネシアの「CH-4B」には、1,500kmを超える距離での運用を可能にさせる衛星通信装置(SATCOM)が装備されています。約1,500kmの航続距離があるため、(SATCOMを使用した場合の)「CH-4B」は西カリマンタン州の基地からインドネシアを形成する群島の大部分をカバーすることができます。

 スパディオ基地は、南シナ海に位置するインドネシアのリアウ諸島から数百キロメートル離れた場所にあります。現在、リアウ諸島の周辺地域はインドネシアと南シナ海にある他国の島の(一方的な)領有も主張している中国との間で領有権をめぐる論争が繰り広げられています。


 2021年8月には、胴体下部に詳細不明のセンサーポッドを搭載した1機の「CH-4B」が目撃されました。[9]

 このポッドの正確な用途はまだ不明ですが、現時点では通信中継ポッドまたは通信情報収集(COMINT)ポッドのいずれかと考えられています。

 この目撃時には、機体に「03」というシリアルナンバーが追加されていることや、大きな「TNI AUインドネシア国軍-空軍)」の文字が消されて非常に小さなマークに置き換えられていることも明らかとなりました(注:空軍の表記は胴体側面の後部に移動しており、文字も小さくなっています)。

 尾翼のインドネシア国旗はカラーのままですが、インドネシア空軍のラウンデル(国籍マーク)はより小型の低視認性タイプに変更されました。しかし、翼の下面に施されたラウンデルは従来のサイズを維持しているようです。


 さまざまなセンサーポッドや専用の電子情報収集(ELINT)またはCOMINTポッドを搭載することに加えて、インドネシアの「CH-4B」は主翼下に設けられた4基のハードポイントに数種類の兵装を装備することが可能です。

 これまでのところ、TNI-AUが「CH-4B」用に中国製「AR-1」及び「AR-2」空対地ミサイルを調達したことが確認されています。[10]

 これらのミサイルの射程距離は最大で8kmであり、「AR-1」は10kg弾頭を、「AR-2」は5kg弾頭を備えています。[11] [12]  

 「AR-1」は「CH-4B」の標準的な兵装であり、このUCAVを運用する全ての国が導入しています。「AR-2」は「AR-1」の軽量版であり、2連装または4連装発射機に装備できます。「CH-4B」の場合はハードポイントが4基あることを踏まえると、最大で16発の「AR-2」を搭載可能ということになります。

「CH-5」UCAVに搭載された「AR-1」(右)と「AR-2」(左)空対地ミサイル

 「CH-4B」の運用で得られた経験は、いつの日か、インドネシアに領域主権全体を防護・哨戒するための十分な力をもたらす、より大規模なUCAV飛行隊の導入に至らせるかもしれません。

 インドネシアでは現在、国産の中高度・長時間滞空(MALE)型UCAVプロジェクトを進めているほか、トルコ製UAVの導入にも関心を示していることから、この飛行隊がより多くの中国製ドローンで構成されることになるかどうかは定かではありません(注:2022年9月、国産の「エラン・ヒタム」UCAV計画はUCAVという軍事用途から地上監視・気象観測・マッピング・森林火災との監視といった非軍事的用途に用いる計画に変更された旨のコメントがなされました。つまり、インドネシアの実用的な国産UCAV計画は事実上頓挫してしまったようです)。[13]

 しかし、新型のUCAVは有人機が有する戦闘効力をますます再現することができるため、UCAVが将来のインドネシア軍で重要な役割を果たすことだけは確実でしょう。

国産の「エラン・ヒタム」UCAV

[1] An Eagle Takes Shape – Indonesia’s Elang Hitam MALE UCAV https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/an-eagle-takes-shape-indonesias-elang.html
[2] Indonesia acquires four Wing Loong I UAVs from China http://www.janes.com/article/78147/indonesia-acquires-four-wing-loong-i-uavs-from-china
[3] Turkish Aerospace Industries Offering Anka UAV to Indonesia http://aviationweek.com/awindefense/turkish-aerospace-offering-anka-uav-indonesia
[4] https://twitter.com/towersight/status/1171500495917088773
[5] Upacara Peringatan Ke-74 Hari Tentara Nasional Indonesia Tahun 2019 https://youtu.be/egYMHb8sDCk
[6] Indonesia tests CH-4B Cai Hong UCAV in latest combined military exercises https://www.asiapacificdefensejournal.com/2019/09/indonesia-tests-ch-4b-cai-hong-ucav-in.html
[7] Indonesian Air Force's fleet of CH-4 UAVs granted airworthiness approval https://www.janes.com/defence-news/news-detail/indonesian-air-forces-fleet-of-ch-4-uavs-granted-airworthiness-approval
[8] SIPRI Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php
[9] https://twitter.com/RupprechtDeino/status/1432933641483608065
[10] Indonesian Air Force Receives First Batch of AR-2 Missiles for Its CH-4 UCAVs https://www.janes.com/defence-news/news-detail/indonesia-receives-first-batch-of-chinese-made-ar-2-missiles-for-its-ch-4-uavs
[11] AR-1 https://www.globalsecurity.org/military/world/china/ar-1.htm
[12] AR-2 https://www.globalsecurity.org/military/world/china/ar-2.htm
[13] Endonezya Ankara Büyükelçisi Dr. Lalu Muhammad Iqbal: Türkiye ile Endonezya arasındaki savunma iş birliği artacak https://www.savunmatr.com/ozel-haber/endonezya-ankara-buyukelcisi-dr-lalu-muhammad-iqbal-turkiye-ile-h15336.html

※  この翻訳元の記事は、2022年1月14日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を 
  翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所      があります。



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2023年11月23日木曜日

新たなる抑止力: パキスタンの「ファター」多連装ロケット砲


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

2021年8月24日、パキスタンは新たに開発された「ファター-1」誘導式多連装ロケット砲(MRL)の発射実験に成功しました。[1]

 今回の試射(映像)は、2021年1月に実施された弾体の飛行試験の成功に続くものですが、現実的な状況下でその機能と精度を証明した今回の射撃は、このシステムが量産されてパキスタン軍に仲間入りする前の最終テストだったのかもしれません。

 「ファター-1」はこの種の兵器では初めてパキスタン軍に採用されたものであり、同軍の精密打撃能力を大幅に向上させるでしょう。これはパキスタン軍自身によっても再確認されており、「この兵器システムは、パキスタン陸軍に敵領土の奥深くにある目標との正確な交戦能力を与えるだろう」と言及されています。[2]

 「ファター-1」は140kmの射程距離で約30~50mのCEP(半数必中界)と推測されているため、誘導方式には慣性誘導とGPS誘導を採用している可能性があります。

 パキスタンと中国の緊密な軍事関係を考慮すると、このMRLの設計が中国由来と考えるのも無理はありません。それにもかかわらず、ロケット弾用のキャニスターと140kmという射程距離は現時点で市場に存在しているか開発中である既知の中国製システムとは一致していないことから、「ファター-1」はパキスタンの技術者によって(おそらく中国の協力を得て)開発された、「A-100」無誘導ロケット砲の発展型である可能性が十分に考えられます。

 パキスタンは通常または核弾頭を搭載できる弾道ミサイルや巡航ミサイルを数多く開発・導入してきましたが、「ファター-1」の開発は同国陸軍の通常戦力を強化するための理にかなった次の措置と言えます。敵の部隊や基地に集中砲火を浴びせるための無誘導型MRLシステムが大量に運用されている一方で、指揮所や要塞化された陣地のようなより小さな標的を狙うには、まったく異なるアプローチが必要となるからです。

 「ファター-1」の140kmという射程距離は、世界中で運用されている(大抵は最低でも200km以上の射程距離がある)同世代のMRLシステムをはるかに下回っていますが、それでもインドの誘導型MRLシステムの射程距離をはるかに上回っています。

 インド陸軍が現在運用している「ピナカ」MRLは、最大で75kmの射程距離を持つ誘導ロケット弾を発射する能力があります。このMRLでは最大射程距離が95km以上に達する発展型が開発中とも言われていますが、それでも「ファター-1」の射程距離には全く及びません。[3][4]

 一旦就役すれば、「ファター-1」はパキスタン陸軍の作戦上の柔軟性を高めることに貢献するでしょう。同国陸軍では大量の大口径の無誘導型MRLと短距離弾道ミサイル(SRBM)が運用されていますが、「ファター-1」は能力的に両システムの中間に位置しています。

 これまでパキスタン軍は長距離に位置する小さな標的を攻撃するために無誘導ロケット弾の一斉射撃や巡航ミサイル、そして弾道ミサイルに完全に依存していました。しかし、この方法では得られる効果が少なく、同時に非経済的であることを想像するのは難しいことではないでしょう。

パキスタンの「A-100」MRL。「ファター-1」には誘導装置が組み込まれているため、無誘導のMRLシステムよりもはるかに高い命中精度をもたらします。

「ハトフ-2(アブダリ)」のような戦術兵器システム・短距離弾道ミサイルは「ファター-1」に比べて弾頭重量が大きいものの、命中精度が低いのが特徴です。この2つのシステムがパキスタン陸軍に存在することで、作戦上の柔軟性が大幅に向上します。

 将来的に開発が見込まれるものとしては、「ファター」のロケット弾をU(C)AVが照準した標的に命中させることできる精密誘導弾に変えるためのレーザー誘導キットを導入することが考えられます。この種のキットはすでにトルコとアゼルバイジャンの「TRG-230」MRLに導入されており、UAVとMRLの両方の能力を大幅に向上させています。

 まさにこの種の(UAVによる)偵察と精密誘導弾の相乗効果がナゴルノ・カラバフ戦争でゲームチェンジャーとなったことを証明しており、アゼルバイジャン軍はアルメニアの標的に何が直撃するのか気づかれることなく攻撃することができたのです。


 「ファター-1」の導入は、パキスタンの従来型ロケット砲部隊の一部がすぐにインドの全MRLを高精度でアウトレンジできるようになることを意味します。このことは、この地域における通常戦力のバランスをすでにパキスタンの有利になるように著しく覆していますが、パキスタンは「ファター」シリーズの開発の継続を通じてその射程距離を伸ばすことでその地位をさらに固めることができるでしょう。

 実際、パキスタンでは少なくとも200km以上の射程距離を備えている可能性がある、新システムの開発がすでに本格化している兆候がいくつか存在しているようです。

 編訳者注:2023年7月下旬にイスタンブールで開催された武器展示会「IDEX2023」で、出展したメーカーのGIDS社が「ファター-1」と「ファター-2」を展示しました。前者については上述のスペックどおりですが、後者については詳細不明です。[5]


特別協力: ファルーク・バヒー氏

[1] https://twitter.com/OfficialDGISPR/status/1430132439859580929
[2] Pakistan conducts successful test of 'indigenously developed' Fatah-1 guided MLRS: ISPR https://www.dawn.com/news/1642376
[3] No request for the development of Extended range Pinaka MRLs https://idrw.org/no-request-for-the-development-of-extended-range-pinaka-mrls-sources/
[4] India tests enhanced version of rocket used by Pinaka MRL
[5]IDEF 2023: GIDS Pakistan Presents Various Equipment Including FATAH Guided Multi Launch Rocket System
https://www.armyrecognition.com/defense_news_august_2023_global_security_army_industry/idef_2023_gids_pakistan_presents_various_equipment_including_fatah_guided_multi_launch_rocket_system.html

※  当記事は、2021年9月8日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
  です。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があ 
    ります。



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2023年11月19日日曜日

目覚めつつある野心:マレーシアのドローン計画(保有機一覧)



著:シュタテイン・ミッツアー(編訳:Tarao Goo

 マレーシア政府は自国を東南アジアにおけるドローンの実験場に変えようとしており、すでに国際的な企業が配達やその他の独特なサービスを提供するための無人航空機(UAV)の設計と製造で競争を繰り広げています。[1]

 このような無人機に対する野心を考えると、2000年代初頭からいくつかの軍用レベルのドローンを考案してきた国産ドローン産業が存在するにもかかわらず、マレーシア政府が国軍向けのUAVの導入に全く投資していないことは非常に驚くべきことかもしません。

 国産軍用ドローンでは、最終的には2008年に「アルドラMk.1」の1機種のみがマレーシア軍への就役に至りました。このUAVは2009年に3機がタイへ輸出されたと報じられたにもかかわらず、マレーシア製UAVが海外での商業的成功を収めていることは知られていません。[2]

 この10年の間に「アルドラMk.1」が退役した後、現在のマレーシアはアメリカから寄贈された多数の「ボーイング・インシツ」社の「スキャンイーグル2」、スペインの「フルマーX」、そして僅かな数の市販の中国製VTOL型ドローンを運用してますが、東南アジアの平均よりも貧弱なレベルにとどまっています。[3]

 マレーシア軍で実際に運用されているのは「スキャンイーグル2」のみであり、「フルマーX」はマレーシア海上法令執行庁(沿岸警備隊)、中国製VTOL型ドローンは警察の航空隊で用いられています。このUAVの寄せ集めは、マレーシアが無人航空機の設計・製造で東南アジアの巨人となる極めてまれな好機にあった2000年代に想定されていた保有機の一覧とは全く異なった有様と言っても過言ではありません。
 
 2001年、「コンポジッツ・テクノロジー・リサーチ・マレーシア(CTRM)」社はオーストラリアの軽飛行機「イーグル150B」をベースにした「イーグルARV」有人・無人可変操縦機を発表しました。(このプロジェクトはイギリスの「BAEシステムズ」社と共同で立ちあげられました。)[4]

 航空監視と環境モニタリング用として、マレーシアが3機のドローンと地上管制ステーション1基で構成される1システムを購入したという報道もありますが、結局のところ「イーグルARV」は顧客を獲得することができなかったようです。

 UAVに対するマレーシア軍の関心の欠如は、それ以降にマレーシアで生み出されるほぼ全てのUAVの開発を妨げることになってしまいました。

王立マレーシア空軍の「F/A-18D 'ホーネット'」と並ぶ「イーグルARV」。胴体下部のFLIRターレットに注目。

 それに続く数年間でさらに数種類のマレーシア国産のUAVが日の目を見ることになりましたが、UAVの運用にほとんど価値を認めていなかった当時の政府や軍に直面した結果、いずれも国内での受注を得るには至りませんでした。

 実際、2009年にマレーシアの「サプラ・セキュアード・テクノロジー」社は、UAVの組み立てをマレーシアではなくオーストラリアで行うことを申し入れていました。国内での生産ラインの設置についてはマレーシア政府が実際にUAVの発注を開始した場合にのみ実行可能ということでしたが、それも実現することなく頓挫しました。[2]
 
 結果として「CTRM」社の「アルドラMk.1」はマレーシア軍が導入した唯一の国産ドローンとなってしまいましたが、限られた数の機体が実際に調達されたのか、それともメーカーからのリース品だったのかは不明のままです。

 「アルドラMk.1」はリースした「スキャンイーグル」とともに、2013年にボルネオ島サバ州における対テロ作戦で運用されたことが初めて確認されました。[5] 

 このUAV用に合成開口レーダー(SAR)も開発されましたが、マレーシアでの本格的な運用までには至らなかったようです。[6]
 
 この10年の変わり目の頃に「アルドラMk.1」が退役した後、王立マレーシア空軍(RMAF)は2020年5月に新たな戦術無人航空システム(TUAS)の入札を公示しました。現在、マレーシアの企業はこの入札に2種類のドローンを売り込んでいます。これらは、「CRTM」社(現「デフテック・アンマンドシステムズ」社)の「アルドラ・カマル」と、イタリアの「レオナルド」社と共同で開発した「デフテック・ワンサ」です。

 その一方で、王立マレーシア海軍(RMN) は2020年5月にアメリカから12機の「スキャンイーグル2」を寄贈されています。 [7] [8]

「デフテック・ワンサ」※機首の一部が取り外されている

 その10年前の2009年には、アラブ首長国連邦(UAE)の「アドコム・システムズ」社との共同で、マレーシアがこの地域で中高度・長時間耐久型(MALE)無人機を国内生産する最初の国になると公表されました。生産されることになったMALE型UAVは「ヤブホン-R」であり、現在は「ヤブホン-アルドラ」と呼称されています。

 約30時間の滞空時間を誇ることで、「ヤブホン-アルドラ」は自身をRMAFが今後必要とするMALE型UAVの最適な候補機として位置付けました。[9] 

 しかし、マレーシア軍からの具体的な関心が示されなかったことから、この有望な共同プロジェクトも実現することはありませんでした。



 2021年の時点で、マレーシアが必要とするMALE型UAVの要件に見合うシステムは依然として登場していません。 [10]

  最近、「デフテック」社は「トルコ航空宇宙産業(TAI)」と提携して「アンカー-S」をRMAFのUAV計画に売り込みをかけています。 [10] [11]

 伝えられるところによると、ほかにはアメリカの「MQ-9 "リーパー"」、ロシアの「オリオン-E」、中国の「翼竜II」「CH-4B」、フランスの「パトローラー-S」、イギリスの「ウォッチキーパーWK450」、イタリアの「ファルコ」も検討されているとのことです。[12] 

 「アンカ-S」の売り込みについては、長きにわたってRMAFの要求を満たす有望なシステムと考えられていたこともありますが、近年における「バイラクタルTB2」の台頭が入札への参加を確実にさせたのかもしれません。いかなるトルコ製の機種が選ばれたとしても結果的にマレーシアへ武装UAVをもたらすことになりますが、興味深いことに、武装はマレーシアのMALE型UAVの要件には含まれていないようです(編訳者注:2023年5月、マレーシア政府は「アンカ-S」3機を調達することを公表しました)。

デフテック社のUAVラインナップ(マルチローター型及びVTOL型UAVは商用の中国製)

 マレーシアによる今後のMALE型UAVシステムの導入は、そのような戦力を欲する同国軍の長年にわたるニーズがようやく満たされることを意味します。この国は近隣諸国の大部分がすでに数十年にわたって有している戦力を獲得する方向にゆっくりと歩みつつあるのです。

 将来的には、マレーシアは(「RQ-11 "レイヴン"」といった)小型戦術UAVの不足の対処にも取り組む可能性があります。これらのシステムを国内産業から調達するか海外から調達するかは不明ですが、(おそらく海外のUAVメーカーと共同という形になるでしょうが)マレーシアがようやく自国の技術基盤を活用するとなれば、大きな偉業が成し遂げられることは間違いないでしょう。


無人偵察機 - 運用中


VTOL型無人偵察機 - 運用中


無人標的機 - 運用中


無人戦闘航空
機 - 運用予定


国産固定翼型UAV (試作)


国産VTOL型UAV (試作)


無人偵察機 - 退役済み

マレーシア軍の「スキャンイーグル2」

[1] Malaysia moves to become a drone hub for Southeast Asia https://asia.nikkei.com/Economy/Malaysia-moves-to-become-a-drone-hub-for-Southeast-Asia
[2] Malaysia Delivery Three UAV to Thailand http://defense-studies.blogspot.com/2009/06/malaysia-delivery-three-uav-to-thailand.html
[3] Covid-19: Malaysia enlists UASs to enforce countermeasures https://www.janes.com/defence-news/news-detail/covid-19-malaysia-enlists-uass-to-enforce-countermeasures
[4] Group of Companies Unmanned Systems Technology Sdn Bhd (The UAS) https://www.ctrm.com.my/acomp4_a.php
[5] CAP55: RMAF Looking For Tactical UAS http://worldwardefence.blogspot.com/2020/06/cap55-rmaf-looking-for-tactical-uas.html
[6] A new unmanned aerial vehicle synthetic aperture radar for environmental monitoring https://www.researchgate.net/publication/273269922_A_new_unmanned_aerial_vehicle_synthetic_aperture_radar_for_environmental_monitoring
[7] Malaysia Confirms US Aid Package in Shape of Aerial Drones https://www.benarnews.org/english/news/malaysian/malaysia-china-06072019180647.html
[8] Royal Malaysian Navy took delivery of six ScanEagle UAV https://www.navalnews.com/naval-news/2020/05/royal-malaysian-navy-took-delivery-of-six-scaneagle-uav/
[9] Malaysian Firms Manufacture Flighty MALE http://www.satnews.com/story.php?number=406237562
[10] Turkish defense firm's UAV exports to Malaysia discussed at trade fair https://www.dailysabah.com/defense/2018/04/18/turkish-defense-firms-uav-exports-to-malaysia-discussed-at-trade-fair
[11] TUSAŞ Visits Malaysia to Promote ANKA UAV https://www.turdef.com/Article/tusas-visits-malaysia-to-promote-anka-uav/716 [12] More Details on LCA and UAV RFI https://www.malaysiandefence.com/more-details-on-lca-and-uav-rfi/
[13] ANKA'nın yeni adresi Malezya 
https://x.com/TUSAS_TR/status/1661703805203890176?s=20

※  この記事は2022年2月22日にOryx本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもので
 す。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があり
 ます。