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2021年12月18日土曜日

運用に不向き?:エチオピアの面倒なイラン製「モハジェル-6」UCAV

イランにおける「モハジェル-6」UCAV(エチオピアとは無関係の画像です)

著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo
 
 エチオピアの首都アディスアベバに対するティグレ防衛軍の野心的な反攻は、ついに停止したようです。ただし、この状況は少なくともエチオピア政府側に中国製UCAVが大々的に配備されたことによって実現に至らせたわけではありません。

 これまでにエチオピアによって導入が確認されているUCAVとして、中国の「翼竜Ⅰ」、UAEが供与したVTOL型ドローン、そしてイランの「モハジェル-6」があります。[1] [2] [3]

 エチオピアは長年にわたって軽視されてきた空対地戦力を補うために新しく導入したUCAVに大きく依存しており、この流れは2021年の夏になって空軍に性急なUCAVの調達に乗り出すことを余儀なくさせました。

 当ブログは2021年8月初旬にエチオピアがイラン製「モハジェル-6」UCAVを入手したことについて世界で最初に報じました。 [3]

 「モハジェル-6」はエチオピア側が期待を胸にして導入されたものの、この国における運用キャリアは引き渡されてからほぼすぐに終えました。なぜならば、導入された2機は制御システムの問題で実際にエチオピア上空での飛行することが阻害されたため、すぐに駐機(放置)状態にされてしまったからです。

 この失態は間違いなくエチオピア空軍を大いに幻滅させたことでしょう。彼らのUCAVの導入が次に確認されたのは、2021年9月中旬のことでした。[1] [4]

 エチオピアが新たに導入した中国製UCAV用の武装をかろうじて手に入れるまでには、さらに1ヶ月半を要してしまいました。結局、彼らが真の武装ドローンの配備が実現したのは、それを最初に試みてから約3ヶ月後のことだったのです。[5]

 UCAV用のいかなる兵装もまだ存在しなかったことは、空軍に「翼竜Ⅰ」を用いて(代わりに爆撃する)Su-27の目標を指示させることに至りました。Su-27はさまざまな種類の無誘導爆弾しか搭載できないため、これらによる著しく精度の低い空爆で多くの民間人の犠牲がもたらされてしまいました。[6]

 注目すべき事例としては、ティグレ州の州都メケルの上空でSu-27が投下した爆弾が狙った目標を1キロメートルも外れ、何もない野原に着弾したということがありました。残念なことに、別の空爆で投下された爆弾が本来の目標を外れて民間人の居住地域に着弾するという悲劇も発生しました。[6]

 「モハジェル-6」が抱える問題がやっと解決されたと思われるには2021年10月下旬までの時間がかかったようですが、それはエチオピアに到着してから約2ヶ月半も後のことでした!

 2021年9月から11月初旬にかけて、1機または2機の「モハジェル-6」がセマラ空港の滑走路や駐機場で定期的に衛星画像で確認されており、駐機場におけるイラン製ドローンの頻繁な再配置は、今やこの機体が定期的に飛行している可能性も示しています。[7]

 ほぼ同じ頃、ティグレ軍は傭兵や技術者としてエチオピア政府を支援している外国人を追討すると脅迫しましたが、これは間違いなくエチオピアで「モハジェル-6」を運用しているイラン人オペレーターのことを言及していると思われます。[8]

2021年8月初旬、セマラ空港で新たに導入された「モハジェル-6」と地上管制ステーション(GCS)を視察するエチオピアのアビー・アハメド首相(右)

 「モハジェル-6」は最大で40kgの兵装を搭載することが可能で、これにはそれぞれ2~4発の「ガーエム-1」,「ガーエム-5」,「ガーエム-9」精密誘導爆弾(PGM)が含まれます。

 これらのPGMの軽量性がこのUAVの最大飛行高度約5,500mや12時間の滞空性能を実現させており、このUCAVの製造者:コッズ航空産業社(イラン革命防衛隊傘下の企業)は運用範囲が200キロメートルに及ぶと主張しています(注:軽いPGMの搭載は機体の性能に大きな悪影響を及ぼさないということ)。[9]

 標的探知・獲得や偵察任務用として、「モハジェル-6」には「EOAS-I-18A」FLIR装置が装備されています。[10]

「ガーエム-5」。「モハジェル-6」には最大で4発が搭載可能。

 しかし、運用可能な高度が低いために地上からの対空砲火に脆弱であり、FLIRの品質が低いことや、「モハジェル-6」自体の戦闘における実績が皆無に近いという事実から、実戦では乏しい効果をもたらす可能性があります。

 おまけに、これまでに把握されている生産数が少ないため、2年目に突入したこの戦争で「モハジェル-6」が実際に効果を発揮できるかどうかは現時点では不明です。

イランにおける「モハジェル-6」UCAV(エチオピアとは無関係の画像です)

特別協力: Wim Zwijnenburg

[1] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[2] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[3] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[4] Tigray War: Chinese-Made Armed Drones Spotted Over Mekelle https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/tigray-war-chinese-made-armed-drones.html
[5] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html
[6] Deadly Ineffective: Chinese-Made Wing Loong UAVs Designate Targets For Ethiopian Su-27 Bombers https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/deadly-ineffective-chinese-made-wing.html
[7] Ethiopia now confirmed to fly Chinese armed drones https://paxforpeace.nl/news/blogs/ethiopia-now-confirmed-to-fly-chinese-armed-drones
[8] Tigrayan forces say they will 'hunt down' foreign mercenaries https://www.reuters.com/world/africa/tigrayan-forces-say-will-hunt-down-foreign-nationals-aiding-ethiopia-war-2021-11-12/
[9] https://twitter.com/brokly990/status/1256994704568258562
[10] https://twitter.com/L4RB1/status/1192650551814742016

※  この翻訳元の記事は、2021年11月18日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事
  を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇    
  所があります。


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2021年12月16日木曜日

無人機戦力増強の前兆:エチオピアで新たなドローン関連施設整備の動きがキャッチされた


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo


 以前、私たちはエチオピアに最低でも6機のUAEの「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)が配備されたことをお伝えしました。しかし、ごく最近になってハラールメダ空軍基地にUCAV運用のための追加インフラの整備作業が進行中であることが衛星画像によって判明しました。[1] [2]

 2021年9月に中国から導入したエチオピア空軍(ETAF)の3機の「翼竜Ⅰ」UCAVが使用しているハンガーの隣で、新しいエプロンとハンガーが建てられているようです(編訳者注:11月14日から19日の間にエプロンの拡張が開始され、11月29日から12月4日の間にエプロン北側に「大きな黒い影」が登場しました。)[3]

 これらの「翼竜Ⅰ」の1機はすでに11月中旬に撮影された衛星画像でその存在がキャッチされています[4]

 作業が進められている場所については、以前はエチオピア空軍(ETAF)が設けた退役機の墓場であり、約30機の「MiG-21」戦闘機、8機の「Mi-24」攻撃ヘリコプター、5機の「An-12」輸送機、そして1機ずつの「Yak-40」旅客機と「Tu-154」旅客機が放置されていました。

 これらのうち、大型機以外はまもなく建設されるであろう施設の邪魔とならないよう、基地内の別の場所に移動されました。「MiG-21」と「Mi-24」の移動作業は2021年10月には開始され、施設はその後12月初旬から整備作業が開始されたようです。

 この施設が完成した後、このエリアはハラールメダ基地における全U(C)AVの運用拠点になると予想されます。

 現在、ETAFはこの基地から数機のイスラエル製の「エアロスターUAS」と中国製の「翼竜Ⅰ」UCAVを運用しており、イラン製「モハジェル-6」UCAVについては依然としてエチオピア北東部にあるセマラ空港を拠点にしていると考えられています。[5]

 ETAFがメケレ市上空で「Su-27」戦闘機の爆撃目標を指示するためにすでに「翼竜Ⅰ」を実戦投入したことで実証されているとおり、同UCAVはハラールメダ基地からティグレ州全域での任務を遂行するのに十分な航続距離を持っています。[6]

 現在のU(C)AV関連インフラの拡張作業の動きは、ティグレ防衛軍(TDF)が過去1カ月間に獲得した領土の多くを喪失した時期と重なります(注:現在はENDFの攻勢でTDFは退却に追い込まれつつあります)。[7]

 エチオピア北部のティグレ軍に対するエチオピア国防軍(ENDF)の攻撃が見事に期待外れに終わると、TDFは反攻を開始し、その猛威は一時的に首都アディスアベバの安全を脅かすまでに至りました。[8]

 しかし、少なくとも11機以上のUCAVがもたらす絶え間なく続く損耗は、最前線にいるTDF部隊に心理的・物資的に重大な影響を与えたようです。

2021年2月中旬: このエリアはまだ「MiG-21」「Mi-24」や輸送機などで占められています。

2021年11月中旬:「MiG-21」 と「Mi-24」は新たなハンガーとエプロン用のスペースを確保するために移動させられました。

2021年12月9日: かつての「飛行機の墓場」前に最初のエプロンが設けられました。

 幅広い種類のUCAVの導入が、結果として窮地に立たされたアビー・アハメド政権を救う最も決定的な要因となるかもしれません。

 以前のTDFは退却して別の戦線で反撃の機会を試みることもできましたが、ETAFが投入できるUCAVの数が増えていることは、近いうちにティグレの部隊が標的にされずに逃げ隠れできる場所がどこにもなくなってしまうことを意味する可能性があります。

 リビア内戦と2020年のナゴルノ・カラバフ戦争に続いて、おそらくティグレ戦争もUCAVの使用が決定的な勝因をもたらした、急速に増加しつつある紛争のリストに加わることになるでしょう。

「翼竜Ⅰ」(これはイメージ画像であり、エチオピアとは無関係です)

特別協力: Gerjon (敬称略)

[1] The UAE Joins The Tigray War: Emirati Wing Loong I UCAVs Deploy To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/the-uae-joins-tigray-war-emirati-wing.html
[2] https://twitter.com/Gerjon_/status/1467183943237648392
[3] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[4] Satellite Images Show Ethiopia’s Expanding Drone Buildup https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/satellite-images-show-ethiopias.html
[5] Ethiopia now confirmed to fly Chinese armed drones https://paxforpeace.nl/news/blogs/ethiopia-now-confirmed-to-fly-chinese-armed-drones
[6] Deadly Ineffective: Chinese-Made Wing Loong UAVs Designate Targets For Ethiopian Su-27 Bombers https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/deadly-ineffective-chinese-made-wing.html
[7] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1466841807569014787
[8] Ethiopia's Tigray crisis: Citizens urged to defend Addis Ababa against rebels https://www.bbc.com/news/world-africa-59134431

※  当記事は、2021年12月13日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。




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UAEがティグレ戦争に参戦: エミレーツの「翼竜Ⅰ」UCAVがエチオピアに配備された

2021年12月15日水曜日

ティグレ戦争:衛星画像が示すエチオピア軍の武装ドローン(短編記事)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 私たちはエチオピアが9月中旬に3機の「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)を入手したことを最初に報じましたが、同機が実際にティグレ州の上空で初めて目撃されるまでには10月下旬までの時間を要しました。[1] [2]

 エチオピア軍は3機のUCAVを導入した事実を秘匿しようとして、詮索好きなのぞき見を避けるため、引き渡しを受けた際に急いで直近の格納庫に移動させましたが(それでもその努力は失敗に終わりましたが)、「翼竜Ⅰ」がハラールメダ空軍基地に存在していることが最新の衛星画像でも明らかとなりました。[1]

 今回の衛星画像で「翼竜Ⅰ」が運用されている正確な場所を確認できた以外での新しい発見は全くありませんでしたが、そもそも商用の衛星画像にドローンが撮影されたという事実は、エチオピア空軍(ETAF)側がこれらのドローンを用いて実際に運用がなされている現況を隠すことに全く注意を払っていないことを示しています。

 すでにエチオピア政府は、今年8月の時点でアビー・アハメド首相がセメラ空港で地上管制ステーション(GCS)を視察している画像を公開することで、イランから「モハジェル-6」UCAVが引き渡されたことを無様に明らかにしてしまった過去があります。[3]

 エチオピアは秘匿性を維持しながら無人機戦を行おうとしていますが、同時にどの種類のUCAVをどこから入手してどこで運用しているについて、絶えず情報を明らかにしています。[4]

 もちろん、ETAFの固定翼機やヘリコプターをオーバーホールする民間の航空整備士が働くデジェン航空工学産業 (DAVI)から数百メートル離れた場所で、ETAFが現在ドローンを運用するためのさらなるインフラ設備を整備していることも機密保持の助けになっていません。ここで働く整備員たちは、私たちのようなアナリストにとって有益な情報源となっているからです。

ハラールメダ空軍基地に駐機している1機の中国製「翼竜Ⅰ」 (2021年11月2日撮影)

滑走路の直近にドローンを運用するための地上管制ステーション(GCS) と関連設備が設置されている。左端に上の画像と同じ「翼竜Ⅰ」が 駐機していることに注意。

 「翼竜Ⅰ」の低い最高高度は、作戦地域の上空を飛行する姿を地上からでも視認できる場合があることを意味しています(注:飛行する姿が公開される機会が今後もあるということ)。

 現在、エチオピアが保有する3機「翼竜Ⅰ」飛行隊が追加の同型機によって増強されたという最新情報があります。これらは中国から直接調達するのではなく、この戦争に直接介入している別の国によってエチオピア上空で運用されることになっているようです。

 これらが近いうちに衛星画像や映像に登場するであろうことは、決して信じ難いようなものではないと思われます。

ティグレ州の州都:メケレ市上空を飛行する1機のエチオピア空軍の「翼竜Ⅰ」(2021年10月28日)

[1] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[2] Tigray War: Chinese-Made Armed Drones Spotted Over Mekelle https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/tigray-war-chinese-made-armed-drones.html
[3] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[4] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html

※  当記事は、2021年11月17日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。




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2021年11月22日月曜日

致命的に効果なし:エチオピアの「翼竜Ⅰ」 UCAV がSu-27「爆撃機」のために標的を指示した

この「翼竜Ⅰ」はイメージ画像でエチオピアとは無関係です

著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピアがSu-27戦闘機を爆撃機としてティグレ州の標的に使用したことは、不正確な攻撃によって多数の民間人の犠牲を引き起こしたとして、国際的な非難を受けることが予想されます。

 ある例では、Su-27が投下した無誘導爆弾が狙った標的を外して1キロメートルも離れた場所に着弾させたことがありました。[1]

 もともと迎撃機として設計されたSu-27はエチオピアで誘導兵器を搭載するようにアップグレードされていなかったため、北部司令部と同じくらいの大型目標を攻撃することにさえ(爆弾の投下訓練を受けていないパイロットが操縦する)Su-27を使用すること自体にそもそも爆撃が成功する見込みが少しもなかったのです。

 Su-27の攻撃目標を見つけるため、エチオピア空軍(ETAF)は中国製の「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)をティグレの州都であるメケレ市上空に展開させました。同機は西側諸国のUAVよりもはるかに低い高度を飛行するため、それが10月下旬にメケレ市民に飛行している1機の撮影を可能にさせたようです。[2]

 「翼竜Ⅰ」は、ティグレ軍の手に落ちて今やSu-27による空爆の対象となった旧ENDF(エチオピア国防軍)の軍事施設や工場の活動を監視していた可能性があります。[3] [4] [5]

 11月初旬まで「翼竜Ⅰ」はエチオピア空軍では非武装で運用されていたため、このUCAVは地上の標的の確認はできても、実際にそれらと交戦することはできませんでした。実際の攻撃はUCAVの標的確認からしばらく後にSu-27によって行われましたが、たいていは酷い命中精度だったようです。

 エチオピアが9月に「翼竜Ⅰ」を導入した際に専用の兵装も入手しなかった理由は不明のままであり、 UCAV を導入することによってエチオピア空軍がこの先の10年間を見据えて計算された導入戦略を実行しているという主張は、ほとんど現実に基づいていないように見えます。[6]



 2021年6月には、「OFAB-250」無誘導爆弾を4発搭載したエチオピア空軍のSu-27UBの姿が見られました。ETAFのSu-27は、内戦の間に本来は公式に継続して運用されている十数機程度のMiG-23BNによって実施されてきた対地攻撃任務の一部を引き継いでいるようです。

 MiG-23BNはETAF専用の戦闘爆撃機であり、Su-27は迎撃機としてのみ使用されることを目的としていました。機体の老朽化とティグレ戦争の初期段階における酷使は、MiG-23BN飛行隊の一部を恒久的な駐機状態(飛行不能状態)にさせていることを意味しているのかもしれません。

 ティグレ戦争における墜落でさらに2機のMiG-23BNが失われました。1機は2020年11月29日、もう1機は2020年12月6日に墜落(または撃墜)が確認されています。[7]

 Su-27と同様にMiG-23BNもいかなる現代的なPGM(精密誘導爆弾)を搭載することができず、運用され続けている機体は基本的にさまざまな種類のロケット弾や(クラスター爆弾を含む)無誘導爆弾の使用に限られています。それにもかかわらず、彼らのパイロットは実際に空対地兵装を使用するための訓練を受けているので、Su-27を操縦する同僚よりもはるかに正確に爆弾などを命中させることができるのは確実と思われます。

 したがって、Su-27の使用はMiG-23BNと一緒に空爆に投入するという慎重な選択によるものではなく、MiG-23BNの稼働数自体が減少しているために必要が生じたのかもしれません。

メケレ市上空を飛行する「翼竜Ⅰ」(2021年10月下旬)

 エチオピアは最近に「翼竜Ⅰ」UCAV専用の兵装を調達したことで、Su-27による爆撃ミッションが減少する可能性があります。ただし、エチオピアが中国から購入したTL-2空対地ミサイル(AGM)の軽い弾頭を考慮すると(硬目標へ命中しても破壊効果が期待できないため)、当分の間はSu-27の空爆任務が継続されることも考えられないことはないでしょう。[8]

 しかし、ティグレ軍がエチオピアの首都アディスアベバへの進撃を続けているため、より差し迫った目標が目の前にあることは間違いありません。

 ひとつだけ確かなことは、この戦争が終わりからかけ離れているように見えるということです。

[1] Russian Su-27 Fighters Deployed As Bombers In Tigray War https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/su-27-fighters-deployed-as-bombers-in.html
[2] Tigray War: Chinese-Made Armed Drones Spotted Over Mekelle https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/tigray-war-chinese-made-armed-drones.html
[3] https://twitter.com/FdreService/status/1452947692234158087
[4] https://twitter.com/FdreService/status/1453642480298049536
[5] https://twitter.com/FdreService/status/1454772663252099072
[6] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[7] List Of Aircraft Losses Of The Tigray War (2020-2021) https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/list-of-aircraft-losses-of-tigray-war.html
[8] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html

※  当記事は、2021年11月13日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。



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メイド・イン・チャイナ:エチオピアにおける中国製UAV飛行隊(英語:邦訳版は後日公開)

2021年11月19日金曜日

ティグレ戦争:エチオピア軍のSu-27が爆撃機として投入された



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピア空軍(ETAF)は爆撃任務や近接航空支援(CAS)を実施するために、伝統的にソ連製のMiG-23BN飛行隊に依存していました。この頑丈な戦闘爆撃機は2020年11月に始まったティグレ戦争に相当の数が投入されており、今までのところ、2020年11月と12月に2機が失われています。[1]

 相当な数の爆弾を搭載できる能力がETAFによって評価されていますが、今や10数機かそれ未満の数しか残っていないMiG-23BNには現代的な精密誘導爆弾(PGM)を運用する能力が欠如しているため、これらによる標的を正確に攻撃するための選択肢は大幅に限られたものとなっています。

 その結果として生じる能力のギャップを軽減するため、エチオピアはイラン、中国、そしてUAEから3種類の無人戦闘航空機(UCAV)を導入したことが確認されていますが、精密打撃が必要な標的を攻撃するために、僅かに生き残っているSu-25TKを投入する可能性もあります。[2] [3] [4]

 したがって、ティグレの州都メケレへの数多くの空爆で最近目撃されたように、エチオピア空軍がSu-27戦闘機を爆撃機としての使用に引き続き専念していることは、なおさら驚くべきことです。

 当初、エチオピアは1990年代後半にロシアから8機のSu-27を購入しましたが、その後にロシアとウクライナから調達した機体を追加し、導入数は合計で17機となりました。[5]

 何度かの墜落事故により、現在のSu-27の機数はハラールメダ空港を拠点とする第5飛行隊によって運用されている約12機にまで減少しています。

 エチオピアはSu-27S、Su-27P、Su-27UBの各型を入手しましたが、どれもが誘導式の空対地兵器を運用する能力を備えていませんでした。Su-27を純粋に迎撃機として使用する目的だったため、空対地兵装に関する運用能力の制約はETAFにとっては問題ではありませんでした。実際、エチオピア・エリトリア国境紛争でSu-27はエリトリア軍のMiG-29を何機か撃墜するという戦果をもたらしています。

 純粋な迎撃機としての用途から、エチオピアのSu-27パイロットは無誘導爆弾を投下するための訓練を受けていないと考えられており、それは2021年10月にメケレ周辺にある多数の標的を空爆した際における酷い命中精度の原因に関係があると説明できるかもしれません。

 具体的な例として、メケレにある(現在はティグレ防衛軍の訓練場として使用されている)ENDFの北部司令部に対する爆撃を実施した際、Su-27が投下した爆弾は標的の建物だけでなく敷地全体からも外れ、1kmも離れた野原に着弾したことがあったのです。[6]

 メケレの空港に着陸するはずだった国連の飛行機は、この攻撃の結果として、着陸を中止せざるを得なくなりました。[7]

爆撃任務でメケレ上空を飛行中のエチオピアのSu-27

 2021年6月に放送されたエチオピア空軍のドキュメンタリー番組では、今や空対地任務を担う爆撃機として使用されているETAFのSu-27を初めて垣間見ることができました。[8]

 偶然とは思えないことに、この同時期にETAFのSu-27がティグレ州に近いバハルダール空軍基地に配備されているという最初の報告も明るみに出ました。[9] [10]

 この番組の映像では、ソ連製「OFAB-250」無誘導爆弾を4発搭載したSu-27UBが見られました。Su-27のパイロットは、MiG-23BNのパイロットから(ただでさえ悪い命中精度をさらに悪化させるであろう)ティグレ軍が持つ対空砲の最大射高を大きく超えて飛行しながら地上目標を攻撃する方法について、少なくともある程度の訓練を受けたものと考えられます。



 通常、Su-27飛行隊は首都アディスアベバ近郊にあるハラールメダ空軍基地を拠点としていますが、この紛争の間、空軍はMiG-23BN飛行隊の本拠地であるバハルダール空軍基地に2~4機のSu-27を定期的に分遣し続けています。[9] [10]

 最近のティグレ上空で爆撃任務に従事しているSu-27がハラールメダとバハルダールのどちらから出撃しているのかは不明のままですが、後者からの可能性が極めて高いと思われます。

 2020年11月、バハルダール基地は自身がティグレ軍によって発射された中国製の「M20」短距離弾道ミサイル(SRBM)の標的となったことに気づきました。このミサイル攻撃が物的損失をもたらしたか否かは不明ですが、ETAFにとって幸いなことに、この攻撃が繰り返されることはありませんでした。[11]

人目を引く機体の前でポーズをとるエチオピアのSu-27のパイロットたち(バハルダール基地にて)

 空対地任務でSu-27を使用し続けることについては、その目的を全く達成する可能性はないものの、2年目に突入しようとしているティグレ戦争に国際的な注目をさらに集めるかもしれません。

 Su-27を爆撃機として使用していることから判断すると、エチオピアがこれまでに入手したUCAVの数は彼らの需要に対して不十分なものと思われます。UAVの供給という、戦争という火に油を注ぐ行為が非倫理的と解釈される可能性はありますが、これらに精密誘導爆弾を搭載した場合は目的のターゲットに命中することはほぼ確実であり、不必要な民間人の犠牲を出すことを防ぐことができます。

 より多くのUCAVが導入されるまでSu-27は自身を真に必要としない紛争で戦い続けることになるかもしれませんが、敵を倒すためには利用可能な全てのリソースを活用することが求められます。



[1] List Of Aircraft Losses Of The Tigray War (2020-2021) https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/list-of-aircraft-losses-of-tigray-war.html
[2] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[3] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[4] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[5] Ethiopia - Sukhoi Su-27, Su-27UB, Su-27SK http://sukhoi.mariwoj.pl/
[6] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1451539227217440778
[7] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1451520179758899209
[8] አስደሳች ግድቡን የሚጠብቁት አስፈሪ ጀቶች ጀነራሉን አስደመሙት https://youtu.be/A_rxWbdY9fw
[9] https://twitter.com/Gerjon_/status/1409448673625452546
[10] https://twitter.com/Gerjon_/status/1413857153039876100
[11] Go Ballistic: Tigray’s Forgotten Missile War With Ethiopia and Eritrea https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/go-ballistic-tigrays-forgotten-missile.html

※  当記事は、2021年11月4日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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Tankovy Busters: エチオピアにおけるSu-25TK攻撃機

2021年11月6日土曜日

Tankovy Busters:エチオピアにおけるSu-25TK攻撃機

 

著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 Su-25は、MANPADS(携帯型地対空ミサイル)や対空砲からの凄まじい攻撃に耐えながら幅広い種類の兵装を搭載する能力がある、頑丈な近接航空支援機としての名声を得ています。この機種は当初から限られた誘導兵器の運用を念頭に置いて設計されていましたが、ソ連の設計者が対戦車攻撃専用のSu-25Tを開発することで、やがてこの能力は拡大されていきました。

 当時としては多数の非常に高度な機能を備えていたものの、ソ連末期の登場は最終的にこの派生型の就役を妨げてしまいました。後にロシアは試作型のSu-25Tをチェチェン紛争に投入して一定の成果を上げましたが、最も興味深い実戦投入は北コーカサスの空ではなく、サハラ以南のアフリカの太陽の下で行われました。

 僅か2機のSu-25Tがエチオピアに輸出されたことは、今日でも多くの熟練した軍事アナリストに全く知られていないままです。この記事は事実関係を明らかにし、Su-25を無名の墓からサルベージすることを試みました。今回は、エチオピアのとらえどころのないSu-25TK「Tankovy Busters」の物語を紹介します。

 Su-25TKの歴史や仕様について詳しく説明する前に、エチオピアがSu-25TKの導入を決定した背景を考察することは読者に慧眼な見識をもたらしてくれます。

 エチオピアは1990年代を通じてエリトリアとの間で数々の武力衝突や国境での小競り合いをしていましたが、未解決の国境紛争は1998年5月から2000年6月にかけて続いたエチオピア・エリトリア国境紛争を引き起こしました。

 エチオピア空軍(ETAF)はエリトリア軍のMiG-29をSu-27で迎撃したり、MiG-21bisやMiG-23BN戦闘爆撃機でエリトリア軍の陣地を空爆するなどして、この紛争に著しく関わりました。後者はKh-23M空対地ミサイルの使用が可能でしたが、ETAFは必要としている戦局の打開を可能とするため、より高度な兵器を探し求めていました。
 

 興味深いことに、エチオピアはウクライナやロシアから比較的低コストで入手可能で、かつ幅広い種類の誘導兵器を搭載できるMiG-27やSu-24を選ぶのではなく、ロシア空軍でストックされていた2機のSu-25T(シリアルナンバー:「2252」と不明)と2機のSu-25UB練習機(製シリアルナンバー:「2201」と「2202」)を調達しました。

 1999年の後半に発注されたこの中古機は、クビンカの第121航空機修理工場で整備された後、2000年1月にエチオピアに到着しました。これに伴って、これらの2機には新たに「Su-25TK(Tankovy Kommercheskiy)」という輸出用の名称が付与されました。

 実験的な機体であるSu-25Tは、エチオピアが指揮所や補給拠点といった高価値目標に対する夜間での精密打撃を実施できる能力を得るために導入されました。 そして、これらの機体は元MiG-23BNのパイロットたちが配属されている第4飛行中隊(または第4飛行小隊)に就役し、真っ先に先述の高価値目標に対する精密爆撃に従事しました。[1] [2]

 戦争における短い運用に続いて1機のSu-25Tが事故に巻き込まれて用廃となった後、残存する3機は僅か1年の運用から退いて、保管状態にされました。[1] [2] これは、Su-25Tの特殊なシステム維持に関連する多額のコストが生じたことと、1機がすぐに失われたことが同じくらい関係していた可能性があります。



 Su-25Tは完全に新造の機体を設計するのではなく、ベースとして復座型であるSu-25UBの機体を用いています。

 以前に後部座席が占めていたスペースは追加のアヴィオニクスを備え付けるために活用され、機首は「プリチャル」レーザー測距/目標指示装置を装備した「シクヴァル」電子光学照準システムを搭載するために拡大されました (「シクヴァル」はKa-50攻撃ヘリコプターにも搭載されています)。

 また、この機体には夜間作戦用として、「マーキュリー」航法ポッドを胴体の下に取り付けることが可能です。その夜間作戦能力がSu-25TKで当てにされていることは、ヘッダー画像で見られる独特なマーキング:「獲物を求めて戦場を観察する2つの全てを見通す眼」で目にすることができます。

 Su-25Tの最も素晴らしい特徴は、間違いなくその兵装にあります。

 胴体の下部に搭載された2連装の30mm機関砲に加えて、Su-25Tは対戦車任務用に16発の9K121/AT-16「ヴィクール」レーザー誘導式対戦車ミサイルを発射する能力を備えています。残念ながら「ヴィクール」がエチオピアに納入されたかどうかは不明ですが、入手可能な証拠は、「KAB-500Kr」テレビ誘導式爆弾、「Kh-29T」同誘導式対地ミサイル、「Kh-25ML」レーザー誘導式対地ミサイルに加えて、重量級の「S-25」無誘導ロケット弾、「KMGU」クラスター爆弾、各種の無誘導爆弾、そして「B-8」ロケット弾ポッドといった無誘導兵器が、エチオピアで運用されたSu-25TKの主要な兵装だったことを示唆しています。

   

 約10年間もビショフツでの保管状態が長引いた後、そのどこかの時点で彼らの再稼働が決定されました。

 これらの機体が現役にあったのは約1年のみだったため、それに続くオーバホール作業はDAVI(デジェン航空産業)の経験豊富な技術者でも困難だったことが判明したに違いありません。また、この時点でSu-25を整備していた数人の技術者はすでに引退して、再稼働に必要な(使える)専門知識がさらに少なくなっていた可能性があります。メンテナンスや修理に使用できるスペアパーツや専門知識が限られているため、Su-25TKに搭載されたシクヴァル照準システムといった特殊なシステムが特に悩みの種だったはずです。                                          

 それでも、2013年には復活したSu-25が初めて目撃され、3機全てががビショフツのエプロンに姿を見せました。

 その後、通常は1機だけがエプロンにいる様子が見えていましたが、2020年以降は衛星画像上で3機が一緒にいる姿が定期的に目撃されるようになりました。



 現在、エチオピアは着実に成長を遂げつつあるTPLF:ティグレ人民解放戦線(TDF:ティグレ防衛軍)との戦争に直面しており、これまでに政府軍はその進撃を阻止できていないため、この国は今や自らの運命を変えるための何かを必死に探しています

 現在、エチオピアで運用されている作戦機の中で精密誘導弾を使用可能な唯一の機種として知られているSu-25T(及びSu-25UB)は、すでに戦争に投入されていることが予想できます。その用途としては、例えば、TDFがエチオピア軍から鹵獲し、エチオピア空軍のMiG-23BN飛行隊の本拠地であるバハルダール空軍基地を攻撃した誘導ロケット弾・弾道ミサイルシステムを無力化することが挙げられます。

 不思議なことに、現在までの時点で、彼らの姿は前線に近い空軍基地を撮影した衛星画像では見えません。それでも、空軍のSu-27でさえ無誘導爆弾を搭載している様子が見られたので、Su-25がティグレ戦争で戦闘デビューは(分離した地域でまだ投入されていないのであれば)遅かれ早かれ実現するかもしれません。

3機のSu-25TKがビショフツ基地で多数のSu-27と一緒に駐機しています。

 事故に遭った1機の運命は、長きにわたって保管状態にあった仲間よりも華やかなものではありませんでした。

 2000年5月の事故から間もなくして、損傷した機体はビショフツ空軍基地の静かな片隅に引き下がり、その後はスペアパーツの供給源として使用されて今日でもその役割を続けているものと思われます。

 隣接するエプロンは空軍のグローブ「G120TP」練習機が使用しているため、機体が投棄された場所はこの上なく象徴的な場所でした。部品と尊厳を奪われたこの機体は、新たな役割として、将来のキャリアで直面するであろう危険をパイロット志望者たちに気付かせるという目的を見つけました。

  
 

 おそらくアフリカの空を優美に飾った最も興味深い航空機の1つだったものの、エチオピアのSu-25Tは購入に要したのとほぼ同じくらいの素早さでで退役してしまいました。引き渡されてすぐに1機が修復不可能なほどに損傷してSu-25TK飛行隊を実質的に半減させた事実が、おそらくはその不名誉なキャリアを短くするのに貢献したかもしれません。

 その後の退役でエチオピア空軍による誘導兵器を用いた作戦が終了したことを示しましたが、それはSu-25TKの再生だけでなく、現在も続いているティグレ戦争中にイランから「モハジェル-6」を入手した後で復活したことでしょう。

 ただし、この限定的な精密誘導能力の再導入が戦争の流れを変えるのに十分かどうかは不明ですが、その可能性はありそうにないようです。 

 したがって、「モハジェル-6」の調達後すぐにUCAVのさらなる入手が続く可能性があります。ただし、これらは20年前に導入したSu-25Tとは異なって安価で実用的であり、実験的な性質はより少ないものになりそうです。

 UCAVの普及は今日における戦争の単純な性質ですが、エチオピアの「Tankovy Busters」の武勇伝がすぐに忘れ去られないことを願っています。

[1] African MiGs Volume 1: Angola to Ivory Coast https://www.harpia-publishing.com/galleries/AfrM1/index.html
[2] Ethiopian-Eritrean Wars: Volume 2 Eritrean War of Independence 1988-1991 & Badme War 1998-2001 https://www.helion.co.uk/military-history-books/ethiopian-eritrean-wars-volume-2-eritrean-war-of-independence-1988-1991-and-badme-war-1998-2001.php?sid=7291642fc0c8fa0eb0c12b7d97c4502b

※  当記事は、2021年8月26日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所    があります。




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