2023年11月19日日曜日

目覚めつつある野心:マレーシアのドローン計画(保有機一覧)



著:シュタテイン・ミッツアー(編訳:Tarao Goo

 マレーシア政府は自国を東南アジアにおけるドローンの実験場に変えようとしており、すでに国際的な企業が配達やその他の独特なサービスを提供するための無人航空機(UAV)の設計と製造で競争を繰り広げています。[1]

 このような無人機に対する野心を考えると、2000年代初頭からいくつかの軍用レベルのドローンを考案してきた国産ドローン産業が存在するにもかかわらず、マレーシア政府が国軍向けのUAVの導入に全く投資していないことは非常に驚くべきことかもしません。

 国産軍用ドローンでは、最終的には2008年に「アルドラMk.1」の1機種のみがマレーシア軍への就役に至りました。このUAVは2009年に3機がタイへ輸出されたと報じられたにもかかわらず、マレーシア製UAVが海外での商業的成功を収めていることは知られていません。[2]

 この10年の間に「アルドラMk.1」が退役した後、現在のマレーシアはアメリカから寄贈された多数の「ボーイング・インシツ」社の「スキャンイーグル2」、スペインの「フルマーX」、そして僅かな数の市販の中国製VTOL型ドローンを運用してますが、東南アジアの平均よりも貧弱なレベルにとどまっています。[3]

 マレーシア軍で実際に運用されているのは「スキャンイーグル2」のみであり、「フルマーX」はマレーシア海上法令執行庁(沿岸警備隊)、中国製VTOL型ドローンは警察の航空隊で用いられています。このUAVの寄せ集めは、マレーシアが無人航空機の設計・製造で東南アジアの巨人となる極めてまれな好機にあった2000年代に想定されていた保有機の一覧とは全く異なった有様と言っても過言ではありません。
 
 2001年、「コンポジッツ・テクノロジー・リサーチ・マレーシア(CTRM)」社はオーストラリアの軽飛行機「イーグル150B」をベースにした「イーグルARV」有人・無人可変操縦機を発表しました。(このプロジェクトはイギリスの「BAEシステムズ」社と共同で立ちあげられました。)[4]

 航空監視と環境モニタリング用として、マレーシアが3機のドローンと地上管制ステーション1基で構成される1システムを購入したという報道もありますが、結局のところ「イーグルARV」は顧客を獲得することができなかったようです。

 UAVに対するマレーシア軍の関心の欠如は、それ以降にマレーシアで生み出されるほぼ全てのUAVの開発を妨げることになってしまいました。

王立マレーシア空軍の「F/A-18D 'ホーネット'」と並ぶ「イーグルARV」。胴体下部のFLIRターレットに注目。

 それに続く数年間でさらに数種類のマレーシア国産のUAVが日の目を見ることになりましたが、UAVの運用にほとんど価値を認めていなかった当時の政府や軍に直面した結果、いずれも国内での受注を得るには至りませんでした。

 実際、2009年にマレーシアの「サプラ・セキュアード・テクノロジー」社は、UAVの組み立てをマレーシアではなくオーストラリアで行うことを申し入れていました。国内での生産ラインの設置についてはマレーシア政府が実際にUAVの発注を開始した場合にのみ実行可能ということでしたが、それも実現することなく頓挫しました。[2]
 
 結果として「CTRM」社の「アルドラMk.1」はマレーシア軍が導入した唯一の国産ドローンとなってしまいましたが、限られた数の機体が実際に調達されたのか、それともメーカーからのリース品だったのかは不明のままです。

 「アルドラMk.1」はリースした「スキャンイーグル」とともに、2013年にボルネオ島サバ州における対テロ作戦で運用されたことが初めて確認されました。[5] 

 このUAV用に合成開口レーダー(SAR)も開発されましたが、マレーシアでの本格的な運用までには至らなかったようです。[6]
 
 この10年の変わり目の頃に「アルドラMk.1」が退役した後、王立マレーシア空軍(RMAF)は2020年5月に新たな戦術無人航空システム(TUAS)の入札を公示しました。現在、マレーシアの企業はこの入札に2種類のドローンを売り込んでいます。これらは、「CRTM」社(現「デフテック・アンマンドシステムズ」社)の「アルドラ・カマル」と、イタリアの「レオナルド」社と共同で開発した「デフテック・ワンサ」です。

 その一方で、王立マレーシア海軍(RMN) は2020年5月にアメリカから12機の「スキャンイーグル2」を寄贈されています。 [7] [8]

「デフテック・ワンサ」※機首の一部が取り外されている

 その10年前の2009年には、アラブ首長国連邦(UAE)の「アドコム・システムズ」社との共同で、マレーシアがこの地域で中高度・長時間耐久型(MALE)無人機を国内生産する最初の国になると公表されました。生産されることになったMALE型UAVは「ヤブホン-R」であり、現在は「ヤブホン-アルドラ」と呼称されています。

 約30時間の滞空時間を誇ることで、「ヤブホン-アルドラ」は自身をRMAFが今後必要とするMALE型UAVの最適な候補機として位置付けました。[9] 

 しかし、マレーシア軍からの具体的な関心が示されなかったことから、この有望な共同プロジェクトも実現することはありませんでした。



 2021年の時点で、マレーシアが必要とするMALE型UAVの要件に見合うシステムは依然として登場していません。 [10]

  最近、「デフテック」社は「トルコ航空宇宙産業(TAI)」と提携して「アンカー-S」をRMAFのUAV計画に売り込みをかけています。 [10] [11]

 伝えられるところによると、ほかにはアメリカの「MQ-9 "リーパー"」、ロシアの「オリオン-E」、中国の「翼竜II」「CH-4B」、フランスの「パトローラー-S」、イギリスの「ウォッチキーパーWK450」、イタリアの「ファルコ」も検討されているとのことです。[12] 

 「アンカ-S」の売り込みについては、長きにわたってRMAFの要求を満たす有望なシステムと考えられていたこともありますが、近年における「バイラクタルTB2」の台頭が入札への参加を確実にさせたのかもしれません。いかなるトルコ製の機種が選ばれたとしても結果的にマレーシアへ武装UAVをもたらすことになりますが、興味深いことに、武装はマレーシアのMALE型UAVの要件には含まれていないようです(編訳者注:2023年5月、マレーシア政府は「アンカ-S」3機を調達することを公表しました)。

デフテック社のUAVラインナップ(マルチローター型及びVTOL型UAVは商用の中国製)

 マレーシアによる今後のMALE型UAVシステムの導入は、そのような戦力を欲する同国軍の長年にわたるニーズがようやく満たされることを意味します。この国は近隣諸国の大部分がすでに数十年にわたって有している戦力を獲得する方向にゆっくりと歩みつつあるのです。

 将来的には、マレーシアは(「RQ-11 "レイヴン"」といった)小型戦術UAVの不足の対処にも取り組む可能性があります。これらのシステムを国内産業から調達するか海外から調達するかは不明ですが、(おそらく海外のUAVメーカーと共同という形になるでしょうが)マレーシアがようやく自国の技術基盤を活用するとなれば、大きな偉業が成し遂げられることは間違いないでしょう。


無人偵察機 - 運用中


VTOL型無人偵察機 - 運用中


無人標的機 - 運用中


無人戦闘航空
機 - 運用予定


国産固定翼型UAV (試作)


国産VTOL型UAV (試作)


無人偵察機 - 退役済み

マレーシア軍の「スキャンイーグル2」

[1] Malaysia moves to become a drone hub for Southeast Asia https://asia.nikkei.com/Economy/Malaysia-moves-to-become-a-drone-hub-for-Southeast-Asia
[2] Malaysia Delivery Three UAV to Thailand http://defense-studies.blogspot.com/2009/06/malaysia-delivery-three-uav-to-thailand.html
[3] Covid-19: Malaysia enlists UASs to enforce countermeasures https://www.janes.com/defence-news/news-detail/covid-19-malaysia-enlists-uass-to-enforce-countermeasures
[4] Group of Companies Unmanned Systems Technology Sdn Bhd (The UAS) https://www.ctrm.com.my/acomp4_a.php
[5] CAP55: RMAF Looking For Tactical UAS http://worldwardefence.blogspot.com/2020/06/cap55-rmaf-looking-for-tactical-uas.html
[6] A new unmanned aerial vehicle synthetic aperture radar for environmental monitoring https://www.researchgate.net/publication/273269922_A_new_unmanned_aerial_vehicle_synthetic_aperture_radar_for_environmental_monitoring
[7] Malaysia Confirms US Aid Package in Shape of Aerial Drones https://www.benarnews.org/english/news/malaysian/malaysia-china-06072019180647.html
[8] Royal Malaysian Navy took delivery of six ScanEagle UAV https://www.navalnews.com/naval-news/2020/05/royal-malaysian-navy-took-delivery-of-six-scaneagle-uav/
[9] Malaysian Firms Manufacture Flighty MALE http://www.satnews.com/story.php?number=406237562
[10] Turkish defense firm's UAV exports to Malaysia discussed at trade fair https://www.dailysabah.com/defense/2018/04/18/turkish-defense-firms-uav-exports-to-malaysia-discussed-at-trade-fair
[11] TUSAŞ Visits Malaysia to Promote ANKA UAV https://www.turdef.com/Article/tusas-visits-malaysia-to-promote-anka-uav/716 [12] More Details on LCA and UAV RFI https://www.malaysiandefence.com/more-details-on-lca-and-uav-rfi/
[13] ANKA'nın yeni adresi Malezya 
https://x.com/TUSAS_TR/status/1661703805203890176?s=20

※  この記事は2022年2月22日にOryx本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもので
 す。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があり
 ます。

2023年11月12日日曜日

中東・アフリカのドローン・ゲーム:エジプトのU(C)AV飛行隊(一覧)


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 突如とした制裁によって軍隊のスペアパーツや弾薬が枯渇する可能性があるため、エジプトは軍備の調達を一国だけに依存するのではなく複数の供給元から得るという長い伝統を持っています。

 現在のエジプト空軍はロシア・フランス・チェコ・アメリカ・中国から導入したジェット機を運用していますが、この状況は他の軍種でも変わっていません。おかげでスペアパーツや兵器のストックは非常に複雑だなものとなっていますが、このような状況はエジプトを決して軍備の供給源に困るような事態に陥らせることもないのです。

 兵器や装備類の調達先を分散化させるというエジプトの試みは、無人機(UAV)にも受け継がれています。今でこそ数多くのUAVや無人戦闘航空機(UCAV)が運用されていますが、この国における無人兵器の発展ペースは、サウジアラビアやUAEといった他のアラブ諸国に比べると比較的緩やかなものにとどまってきました。

 しかし、エジプトは無人戦力をさらに向上させる流れを着々と進めており、新たなUAVを購入するだけでなく自国内で生産するためのライセンスも取得しています。

 エジプトは、1980年代の後半に戦術無人偵察機を導入した最初のアラブ諸国の1つとなりました。1982年のレバノン戦争でイスラエルによるUAVの効果的な活用がなされたことをカイロが見逃さなかったのは明らかであり、これがエジプトに同様の能力を獲得するための取り組みに駆り立てたことは間違いないでしょう。実際、同時期のアメリカの「テレダイン・ライアン」社は「スケールド」社と共同でエジプトの要求事項に沿ったドローンの開発に着手していましたからです。[1]

 結果としてエジプトが手にすることになったのは、一般的には「スカラベ」と呼称される「TR324」: 事前に設定されたルート上から撮影が可能な、極めて高度なステルス性ジェット推進式無人偵察機でした。このUAVはロケット補助推進離陸装置(RATO)によって射出され、任務完了後はパラシュートで回収される方式を採用しています。

 エジプト空軍(EAF)には合計で59機の「TR324」が納入されたものの、このうち実際に組み立てられたのは僅か9機にすぎませんでした。この理由については、訓練や平時の作戦で用いるのには配備された9機で十分であり、残りの50機は戦時用として保管されたというのが妥当と思われます。 [1]

 この無人機はカイロ南方のコム・オーシム基地を拠点に65回の作戦飛行を実施したと伝えられています。 [1]

(この記事が執筆された)2021年現在、EAFが「TR324」を作戦可能な戦力として維持しているかどうかは分かっていません。
  
射出された直後の「TR314 "スカラベ"」:RATOがまだ外れていない点に注目

 「スカラベ」の導入から間もなくして、引き続きアメリカから別種類の無人機の納入されました。1989年になると、戦場監視に最適化された「R4E-50 "スカイアイ"」の引き渡しが始まったのです。[2]

 「スカラベ」と同様に 、この新型機もRATO方式で射出・パラシュートで回収される方式です。 [3]

 その後、これらがエジプトで使用されたという情報は全く無いため、上述した萌芽期のUAVが今も現役で運用されているとは考えられません。とはいえ、1980年代後半から1990年代前半にかけて、エジプトはアラブ世界におけるUAV運用の先頭に立っていたと言えるでしょう。というのも、他のアラブ諸国が無人戦力の構築するための取り組みが本格的に始まったのは2010年代に入ってからだったからです。

 こうした状況を踏まえると、1990年代から2000年代の間にエジプト国産のUAVが全く開発されなかったのは、なおさら驚くべきことかもしれません。これはエジプト軍内部の優先順位が変わったのか、UAVの開発に用心深くアプローチした結果か、それともアメリカがより高度な無人機の供給を拒否した結果なのかは不明ですが、実情は後者の2つの説が混在している可能性が高いと思われます。

 原因が何であれ、エジプトがそれまでの努力で得た成果を徐々に失っていったという結果は同じです。それでもこの国が他のアラブ諸国に対する優位性をどうにか維持できた理由は、この時期に彼らが無人戦力を本格的に構築する試みをしなかったからだと言えるでしょう。
 
ギザのピラミッド直近を飛行するエジプトの「R4E-50 "スカイアイ"」

 エジプトでUAVの運用に向けた取り組みが本格的に再始動したのは中国から「ASN-209」無人偵察機を導入した2010年代初頭であり、その後に同機のライセンス生産も始められました。 [4]

 2011年になると、エジプトは「トルコ航空宇宙産業(TAI)」社が開発したトルコ製「アンカ」UCAVへの関心も表明しました。[5]

 ところが、エジプトとトルコの関係が悪化したことで最終的に同システムの入手が頓挫したため、エジプト空軍がUCAVを導入するにはもう少し待たなければならなくなってしまったのです。

 この念願については、2016年になってEAFが中国から最初の「翼竜Ⅰ」 UCAVの引き渡しを受けた際にようやく成就しました。実際にエジプトへ納入された「翼竜Ⅰ」の数は謎のままであり、75機以上がEAFで運用されていると頻繁に語られていますが、これは著しき誇張された数字である可能性が高いでしょう。 [6]

 エジプトは、「翼竜Ⅰ」をイスラム国に対する作戦に投入するためにシナイ半島や、対密入国作戦を行うために(リビアと面する)西側の国境沿いにある空軍基地へ(導入してから)ほぼ即座に展開させました。 [7]

 既知の配備先としては、シナイ半島のビル・ギフガーファ基地、エジプト中西部のダフラ・オアシス空港ウスマーン基地が挙げられます。


 エジプトで運用されている「翼竜Ⅰ」については、現時点で「AKD-10 "ブルーアロー7"」「TL-2」空対地ミサイル(AGM)で武装している姿が確認されています。後者は小型のため、各ハードポイントに最大で2発を搭載可能という強みがあります。つまり、通常は2つのハードポイントに1発ずつしか搭載できない「翼竜Ⅰ」の兵装ペイロードを倍増させることを可能にしたのです。

 こうした買収劇に続く数年間で、エジプトが(4つのハードポイントを有する)改良型である「翼竜ⅠD」や「翼竜Ⅱ」、「CH-5」を大量発注したことが何度も報じられています。しかし、これまでに上記のUCAVはエジプトで目撃されていないことから、こうした情報は何らかのエビデンスが得られるまでは慎重に扱われるべきでしょう。 [6]
   
「TL-2」AGMを搭載したEAFの「翼竜Ⅰ」:専用のラックを備えることで最大4発の同AGMの搭載が可能

 2010年代後半、エジプト軍はアメリカの手投げ式小型無人機「RQ-20B "プーマAE Ⅱ"」の導入によって、著しい発展を見せました。なぜならば、それまでのエジプトにはこのサイズのUAVがなかったからです。ちなみに、導入した「RQ-20B」はすぐにシナイ半島に配備されたものの、2020年には少なくとも2機が墜落で失われてしまいました。 [8]

もう一つの展開は、エジプト海軍が「アル・セイバー」VTOL型UAV(UAEが生産したシーベル製「カムコプターS-100」)の導入によってもたらされました。同UAVについては、少なくとも3機が2020年にエジプト海軍の「ミストラル」級強襲揚陸艦 (LHD)のヘリ甲板に姿を現したことが確認されています。 [9]

 2隻の「ミストラル」級LHD用として、将来的にはさらに多くのUAVが海軍によって導入されることでしょう。
  
「アル・セイバー」垂直離着陸型UAV

 2020年代は、エジプトがまもなく外国産UAVの生産ライセンスを取得し、国内にその生産ラインを設置するというニュースが飛び交ったことから幕が上がりました。今のところ、その対象にはベラルーシ、イタリア、UAEのUAVが含まれていると言われています。[10] [11] [12]

 ベラルーシの機種が何かはまだ分かっていませんが、「レオナルド」社が設計したイタリアの「ファルコ・エクスプローラー」MALE型UAVは、エジプトが関心を示したと伝えられているシステムの1つです。 [11]

 2021年には、エジプトがUAEの「アドコム」社製「ヤブホン・フラッシュ20」の現地生産を開始したことも公表され、国内では「EJune-30 SW(2013年6月30日革命後)」と呼ばれています。[12]

 エジプトの「フラッシュ20」の国産化は、UAE産UCAVを自国に生産ラインを設置しようというアルジェリアの試みに似たものとなるでしょう。[13]


 エジプトにおける無人機運用の未来は輝かしいものとなっています。

 この国は多くの新型UAVとUCAVの運用を開始するだけでなく国内での生産ライセンスを獲得する予定であり、1980年代後半から1990年代にかけての主導的な立場を近いうちに奪還しようと試みているのかもしれません。そして、そのために国内の産業が役割を果たす可能性もあり、新たに公表された「テーベ-30」のようなUAVは、この国が自国の人材を巻き込もうとしていることを示しています。

 エジプト軍は間違いなく2020年のナゴルノ・カラバフ戦争に注目しており、徘徊兵器のような無人兵器への投資を試みるかもしれません。

 ただし、エジプトが全く新しいタイプの戦力の導入を模索する前に、まずは陸軍における戦術UAVの全般的な不足を対処して全軍種がUAVの恩恵を享受できるように試みる可能性も考えられるでしょう。

無人偵察機

無人標的機

国産UAV

[1] The U.S. Sold This Unique Stealth Drone Called 'Scarab' To Egypt In The 1980s https://www.thedrive.com/the-war-zone/24966/the-united-states-sold-egypt-this-unique-stealth-recon-drone-called-scarab-in-the-1980s
[2] "Egypt Begins Using Unmanned Aircraft for Reconnaissance" Aviation Week and Space Technology, 23 January 1989.
[3] https://i.postimg.cc/jS1P8Yjg/USA-BAE-Systems-Skyeye-y-R4-E-50-and-R4-E-100u-e2r.jpg
[4] Egypt starts the production of Chinese Unmanned Aerial Vehicle ASN-209 https://www.armyrecognition.com/june_2012_new_army_military_defence_industry_uk/egypt_starts_the_production_of_chinese_unmanned_aerial_vehicle_asn-209_egyptian_armed_forces_0706122.html
[5] Turkey, Egypt Discuss Possible Export of Anka UAV https://defense-update.com/20110923_turkey-egypt-discuss-possible-export-of-anka-uav.html
[6] 翼龙翱翔东北非!埃及两次共引进108架,可挂载8枚空地导弹 https://m.sohu.com/a/382780569_120126853/?pvid=000115_3w_a
[7] https://egypt.liveuamap.com/en/2018/15-november-footage-by-isis-cam-for-egyptian-air-force-wing
[8] https://lostarmour.info/egypt/item.php?id=25755
[9] https://twitter.com/mahmouedgamal44/status/1321356067599753216
[10] Belarus to produce UAVs in Egypt https://www.defenceweb.co.za/aerospace/unmanned-aerial-vehicles/belarus-to-produce-uavs-in-egypt/
[11] Egypt seeks more advanced UAV capabilities https://www.shephardmedia.com/news/uv-online/premium-egypt-seeks-more-advanced-uav-capabilities/
[12] Egypt unveils locally made drones at EDEX 2021 https://www.defensenews.com/industry/techwatch/2021/11/30/egypt-unveils-locally-made-drones-at-edex-2021/
[13] Algiers Calling: Assessing Algeria’s Drone Fleet https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/algiers-calling-assessing-algerias.html

※  当記事は、2021年12月28日に本国版「Oryx」ブログ(英語)に投稿された記事を翻
  訳したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更し

2023年11月6日月曜日

衰退した近代化の象徴:ベネズエラにおけるイスラエル製「バラク-1」地対空ミサイルシステム


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 過去20年間にわたって軍に何百億ドルもの投資を行ったにもかかわらず、不思議なことに、今のベネズエラには一連の投資を行う前よりも著しく弱体化した軍隊が残されています。この見事な "偉業"が達成された要素には、極めて特異な調達決定がもたらした結果だけではなく、1990年代後半のベネズエラ軍が南米で(事実上)最も強力な軍隊の一つだったことも含まれています。

 この国は、長年にわたってアメリカ、フランス、イスラエルなどから近代的な装備を調達してきたものの、2006年にウゴ・チャベス大統領の政策が原因となってアメリカがベネズエラに武器禁輸措置を取ったため、武器調達先はこれらの国々からロシア、中国、イランに置き換えられました。
 
 2006年以前のベネズエラは西側諸国から高度な装備を調達することができましたが、同年以降は、防衛上のニーズを満たすため、または(もはや西側諸国から容易に入手不可能となった予備部品の不足で)運用できなくなった装備を置き換えるため、新たな調達先としてロシアに目を向けることになったのです。

 興味深いことに、ベネズエラは即座にロシアから旧式の「T-72B1」戦車と「S-125」地対空ミサイル(SAM)システムを大量に調達するに至りました。その後に「ブーク-M2」や「S-300V」等のより先進的なシステムも導入されましたが、ある程度の調達した兵器システムについては、その能力が確実に置き換え対象よりも低かったことは注目に値するでしょう。
 
 唐突なサポート停止で置き換えが必要になったシステムの一つが、2005年にイスラエルから新品で調達した同国製の「バラク1 ADAMS」SAMシステムです。(1基につき8セルを備えた)3基の「バラク1」発射機は、ベネズエラ空軍とは別の組織である防空作戦コマンド(CODA:Comando de Operaciones de Defensa Aérea)に配備されていたフランスの「ローランド-2 」SAMシステムを更新するために導入されたものであり、戦争やクーデターの際に航空攻撃を受ける可能性がある空軍基地やその他の重要施設の防衛を任務としていました。

 1992年11月に発生したクーデター未遂事件では、ベネズエラ空軍の一部が戦闘機や攻撃機で体制側の空軍基地を攻撃するなどの極めて重要な役割を果たしたため、空軍基地防衛の重要性はベネズエラ軍にとっては火を見るより明らかなことだったのです。

1992年11月のクーデター未遂事件では、政府軍の「F-16」からの機銃掃射で反乱軍の「OV-10 "ブロンコ"」が撃墜された:この劇的な瞬間の映像はこの画像をクリックすると視聴できる

 12kmの射程距離を誇る「バラクー1」高機動防空システム(ADAMS)は、低空飛行する敵機やヘリコプターに対する拠点防空に最適化されたものです。8発のミサイルを搭載する小型の牽引式発射システムについては、トラック搭載型も設計されましたが、商業的な成功を収めることはありませんでした。

 このミサイルはキャニスターから垂直に発射される、いわゆるVLS方式を採用しています。上述のとおり、地上発射型についてはベネズエラが唯一のカスタマーという結果で終わった一方で、艦載型はチリ、インド、イスラエルの海軍に採用され、各国でその能力が高く評価されています。

 機能と運用面で地上運用型の「バラク-1」に最も近い他国の同等品としては、ロシアの「9K330 "トール"」が挙げられます。

「バラク-1」のミサイル・キャニスターが8セル備えた垂直発射機に装填される状況

 CODAにおける運用で、「バラク-1は」、オットーメララ製「40/L70」レーダー誘導型40mm機関砲と「フライキャッチャーMk.1/2」火器管制レーダーの組み合わせと「ローランド-2」SAMシステムで構成される「ガーディアン」防空システムを更新しました。

 CODAに加えて、かつてのベネズエラ陸軍はボフォース40mm対空機関と 「AMX13 S533」「AMX-13M51 "ラファーガ」自走対空砲から成る独自の防空戦力を保有していましたが2010 年代の変わり目に退役して以来、今のベネズエラ軍は自走対空砲を保有していません。

 その代わり、ロシアから入手した「S-125 "ペチョーラ-2M」、「ブーク-M2」、「S-300V」SAMシステムを運用しています。


 ベネズエラとイスラエルの外交関係が緊張した結果、メーカーであるIAIとラファエルからのサポートが途絶えたため、「バラク-1」はすぐに運用継続が困難になってしまいました。

 この状況は、アメリカがイスラエル政府に対してベネズエラとの(自国由来の技術を含む)軍事面における契約を全面的に解消させ、今後はいかなるイスラエルの軍事技術も売却しないよう要請したことでさらに悪化したようです。

 これらの要因が組み合わさった結果、ベネズエラにおける「バラク-1」運用史は異常に短い形で終焉を迎えました。というのも、相当な費用を投じて導入された「バラク-1」は、たった数年間使用されただけで退役したからです。

 結果として、CODAは高度な防空システムを「トール」や「パーンツィリ」のような現代的なロシアのシステムに更新するのではなく、ロシアから調達した「ZU-23」対空機関砲で間に合わせる必要に迫られてしまいました。この機関砲は現在でも空軍基地防衛の主要な装備であり続けています。

ベネズエラの「ローランド-2」:「バラク-1」と同様に発射機は牽引式である

CODAで運用されていたオットーメララ「40/L70 "ダルド"」40mm対空機関砲:同型の砲塔を装備した艦艇を世界中で目にすることができるだろう

 2010年代初頭には石油の供給と引き換えに中国との軍事協定が締結されたものの、ベネズエラが「バラク-1」のようなシステムを導入する余裕があった時代はとうの昔に過ぎ去ってしまいました。

 近年では、ベネズエラは過去数十年間に退役した装備のオーバーホールを行うことで戦力の強化に努めています。これまでに、「AMX-13」と「AMX-30」戦車、キャデラック・ゲージ「コマンドウ」装甲車、イスラエルの「LAR-160」 多連装ロケット砲(MRL)といった、過去に放棄された兵器類が復活を遂げました。しかしながら、ベネズエラはこのMRLシステムを本来の用途に用いるのではなく、「LAR-160」の(「AMX-13」戦車がベースの)車体を地雷除去車として再利用したり、さらには「M40A1」106mm無反動砲を6門搭載した装甲戦闘車両の車体として活用したのでした。

 「バラク-1」が再生兵器の候補に選ばれる可能性は極めて低いでしょう。 まだイランに提供されていないのであれば、このSAMシステムは間違いなく放棄された倉庫で分厚い埃に埋もれて生き残っていることでしょう。そして、その姿を見る人にベネズエラがまだ南米で強大な軍隊の一つに数えられていた時代を思い出させる役割を果たし続けているのかもしれません。

「バラク-1」が最初で最後に公開された2006年の独立195周年の閲兵式の一コマ

特別協力:FAV-Club

    たものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。