国産機を開発している間に、サウジアラビアと
「中国航空宇宙科学技術公司(CASC)」がKSA国内に生産ラインと地区整備センターを設立して、最終的に今後10年間で約300機もの「CH-4B」を大量生産する可能性についての関する報道が2017年から飛び交っています(現在の統計を前提とした場合、これが実現するとKSAが世界最大のUCAV運用国となるでしょう)。[8]
なお、このような合意が成立したのか、または計画されたのかすら不明であり、この記事を執筆している2022年9月時点では実現されていないようです。
すでにKSAにはUCAV飛行隊が存在している上に今後数年間で国産のUCAVが就役する予定であることから、この国が 「バイラクタルTB2」や
「アクンジュ」に興味を持つことは驚くべきことだと言う人がいる可能性はあるでしょう。
もっとも、サウジアラビアがUCAVを複数のサプライヤーから入手する最初の国ではありません。実際、この国が有する3種類のUCAVでさえ3つの異なる中国企業が起源ということに注目するべきでしょう。
武器の調達先を多様化させる傾向は大半の湾岸諸国の装備品にも反映されていますが、通常は武器禁輸が課された際の供給を確保するためです。そして、無人機の場合は、将来的な導入の検討における性能の比較を行う興味深い機会も提供してくれます。
サウジアラビアがTB2や「アクンジュ」に関心を持った背景には、前者の素晴らしい実績と後者の斬新な性能が大きく関係していると思われます。中国製UCAVもリビアやイエメンで頻繁に実戦投入されていますが、ヨルダンでは「CH-4B」を導入してから2年も経たないうち全機を売りに出すなど、性能に不十分な点が多くあります。 [9]
同型機はイラクでも良い結果を残せず、全20機のうち8機は僅か数年の間に墜落し、残りの12機はスペアパーツが不足しているために現在は地上で駐機され続けているようです(注:
2022年8月には運用が再開されました)。 [10] [11]
サウジアラビアの場合は、過去4年で最低でも12機の「CH-4B」をイエメンで失ったことが視覚的証拠に基づいて確認されています。
おそらくは中国製UCAVの稼働率や運用実績が乏しいためか、サウジアラビアはすでに少なくとも2017年からUCAVの調達先としてトルコに目を向けるようになっています。
当初は
「トルコ航空宇宙産業(TAI)」の
「アンカ」UCAVに関心を寄せていましたが、最終的にKSAは2010年代後半に「ヴェステル(注:軍事部門はその後「レンタテク」に社名を変更)」社と数量不明の「カライェル-SU」について契約を結びました。[13] [4]
これらはほぼ瞬時にイエメンでの作戦に投入され、現時点で4機が失われたことが視覚的に確認されるまでに至っています。[3]
「イントラ・ディフェンス・テクノロジーズ」社による「カライェル-SU」の国内生産はCOVID-19の影響を受けて1年半遅れたものの、2022年半ばに開始される予定です。その生産は「レンタテク」が重要なコンポーネントを供給し、サウジアラビアで組み立てられる方式となっています。[4]
「カライェル-SU」の国内生産は、「サクル-1」プロジェクトにとって"とどめの一撃"となるかもしれません。
少なくとも2012年からアメリカに拠点を置く
「UAVOS」社と
「キング・アブドルアジーズ科学技術都市(KACST)」で共同開発が進められてきた「サクル-1」は数多くの修正がなされ、2020年に公開された最新型の「サクル-1C」までプロジェクトが進んでいます。しかし、これらはどれも実用化されておらず、より小型の「サクル-2」と「サクル-4」も実機の生産までには至っていません。[14]
最大で48時間という目を見張るような滞空時間を誇りますが、「サクル-1」は兵装搭載用のハードポイントを2つしか備えていないため、UCAVとしての有用性は著しく制限されたものとなります(注:「CH-4B」や「TB2」のハードポイントは4つ)。
「イントラ」社が現在開発中である「サムーン」が「サクル-1」の代わりにサウジアラビア初の量産型国産UCAV となるのか、あるいは(既存のサウジアラビアの防衛プロジェクトの大部分と同様に)開発サイクルの長期化や内部からの反対、最終的に中止という事態に直面することになるのかは、まだ分かりません。[15]
中国の
「腾盾」が開発した巨大な「TB001」は、主翼下部に設けられた4つのハードポイントに、さまざまな誘導爆弾や空対地ミサイル(AGM)、対艦ミサイル、巡航ミサイルで武装することが可能です。
「アル・イカーブ-1」は三基のエンジンを備えた異例の三発機であることが特徴であり、「アル・イカーブ-2」はその双発機型です。
「TB001」については2019年に契約が発表されたものの、その開発は長引いており、 サウジアラビアが自国の防衛面での需要を満たすために、このプロジェクトを依然として積極的に推進しているかどうかは今でも不明のままとなっています。[5]
「TB001(アル・イカーブ-1/2)」と比較すると、「バイラクタル・アクンジュ」は非常に成熟した概念的に先進的な兵器システムであり、これまでの量産型には未だに統合されていない多くの技術も導入されています。特に顕著なものとしては、射程275km以上の巡航ミサイルや射程150km以上の対艦ミサイル、さらには100km離れた目標に向けた空対空ミサイル(AAM)を発射できるなど、UCAVとしては斬新な能力を有することが挙げられます。
これらの兵装を搭載するため、「アクンジュ」にはハードポイントが主翼に最大で8個と胴体下部に1個、つまり合計で9個のハードポイントが備えられています。後者については、「HGK-84」及び「NEB-84(T)」誘導爆弾や「SOM」シリーズの巡航ミサイルといった、このUCAVに搭載できる最重量級の兵装を搭載することが可能です。
こうした兵装を搭載可能なことが「アクンジュ」を世界初の量産型マルチロール無人作戦機に変えたほか、 兵装を誘導キットと共にトルコから調達できることも、アメリカがサウジアラビアに爆弾の販売を停止する恐れがある現在では高く評価されると思われます。
「アクンジュ」は現時点で有人戦闘機によって実施されている任務の一部を引き継ぐことができます。その一方で、サウジアラビアが「バイラクタルTB2」を導入することも魅力的な選択肢となるかもしれません。小型かつ(非常に)戦闘で実績のあるプラットフォームとして、TB2はすでにサウジアラビアで運用されているUCAVと同様の役割を果たせますが、それらよりも格段に高い生存率と有効性のレベルを有しているからです。
中国のUCAVは(特にイエメン上空での作戦で)やや墜落する傾向が見られましたが、TB2はこの点で優れた記録を持っており、紛争の行方を著しく変える能力があることは十分に実証されています。
2018年以降にサウジアラビアがイエメン上空で失ったことが視覚的に確認されたUCAV(21)
3 翼竜I: (1, 2019) (2, 2021) (3, 2022)
2 翼竜II: (1, 2021) (2, 2022)
12 CH-4B: (1, 2018) (2, 2018) (3, 2018) (4, 2019) (5, 2020) (6, 2020) (7, 2021) (8, 2021) (9, 2021) (10, 2021) (11, 2022) (12, 2022)
4 カライェル-SU: (1, 2019) (2, 2021) (3, 2021) (4, 2022)
命中弾を受けて墜落するサウジアラビアの「翼竜I」 UCAV(イエメンのサアダ県上空にて2019年4月19日) イエメン上空を飛行する無人機にとっての最大の脅威は、(イエメンの反政府勢力である)フーシ派が少なくとも2019年から投入している(2022年秋まで「358」として知られていた)「サクル」という一種のイラン製地対空ミサイル(SAM)です。
「サクル」は単段式の固体推進剤を用いたブースターによって高度8.000~12.000mに到達してからマイクロジェット推進に切り替わります。このエンジンのおかげでミサイルは赤外線シーカーとレーザー近接信管で攻撃する前に(標的となる)無人機やヘリコプターに追いつくのに十分な低速でしばらく徘徊が可能となるのです。[16]
イエメンへの密輸を容易にするためか、「サクル」は多数の部品に分解可能という特徴を有しています。
「サクル」はUCAVによる作戦を脅かすことができるフーシ派唯一のSAMではありません。
TB2と「アクンジュ」は携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)の標的にできないほどの高度を飛行しますが、フーシ派は2015年にイエメン空軍から接収したSAMと空対空ミサイル(AAM)のストックを最大限に活用しようと試みてきました。[17]
ほとんどのSAMシステムと関連するレーダーシステムはサウジアラビア主導の有志連合軍によって破壊されましたが、その後も一定の
「2K12 "クーブ"(NATOコード: SA-6 "ゲイフル")」SAMシステムと関連する
「1S91」 ミサイル誘導レーダー車はまだ運用されており、過去数年間で数機のUCAVを撃墜することに関与しています。
フーシ派は地対空用の
「R-77」アクティブ・レーダー誘導式AAMも展示したこと過去がありますが、これには少なくとも1組の「MiG-29SM」戦闘機のファザトロン製「N019MP」レーダーと関連火器管制システムを改造する必要があったことから、実際には実現不可能だったようです。これは技術的な問題のためか、それとも有志連合軍の爆撃で全ての「MiG-29SM」が「N019MP」レーダーと一緒に破壊されたためなのかは分かっていません。
イランの大規模な支援は、フーシ派が巡航ミサイルや弾道ミサイルに加えて多種多様な徘徊兵器を入手するという結果も招きました。これらの徘徊兵器については、イスラム革命防衛隊またはイラン軍で既に使用されているものやレバノン・イエメン・イラク・パレスチナにおける代理勢力で使用するために特別に設計されたもので構成されています。
こうした無人機の小型さは世界最新鋭の防空システムを用いても探知・撃墜を困難にしています。そのため、サウジアラビアは定期的に「F-15」戦闘機を配備し、徘徊兵器が王国の奥深くに位置する目標へ到達する前にその脅威に対処しなければならないのです。
それゆえに、アメリカ製の「AIM-9 "サイドワインダー"」や「AIM-120 "アムラーム"」(AAM)で小型の徘徊兵器と戦うためのコストが法外と言われても当然ではないのでしょうか。2021年末にサウジアラビアが枯渇したストックを補充するために280発の「AIM-120」を発注した際、6億5千万ドル(約837億円)、つまり1発あたり230万ドル(約2.9億円)以上も支払わなければいけませんでした。[19]
「F-15SA」戦闘機の飛行コストは1時間あたり約2万9千ドル(約373万円)を要することから、1万ドル(約128万円)にも満たない価値の徘徊兵器1発を撃墜するために、サウジアラビアは推定250万ドル(約3.2億円)を負担することになってしまうのです(初弾に発射したミサイルが目標を外れた場合は500万ドル=約6.4億円に増えます)。[20]
これに対し、「バイラクタルTB2」UCAV1台の輸出価格はおよそ500万ドル(約6.4億円)と推定されています。一般的にTB2は迎撃任務とは無縁ですが、近いうちに射程8km以上を誇る
「ロケットサン」製
「スングル」赤外線画像誘導式MANPADSを搭載可能となりますし、1時間あたり飛行コストは僅か925ドル(約12万円)相当となることも注目すべき点でしょう。[21]
「パトリオット」のような防空システムを使う場合、迎撃コストはさらに悪化してしまいます。2017年には約1,000ドル(約13万円)の小型クアッドコプターの撃墜に成功したことで、王立サウジ防空軍は約300万ドル(約3.8億円)の損失を被ったことがありました。[20]
「アクンジュ」自体を非常に強固な防空アセットとして使用可能という事実については、トルコ国産の
「ボズドアン」赤外線画像誘導式AAMやアクティブレーダー・シーカーを用いて自身を目標に向けて誘導する
「ゴクドアン」目視外射程AAM(BVRAAM)などのAAMを搭載できるという能力を活用することで実現されることになります。
「アクンジュ」のAESAレーダーは、最大で100km圏内にいる低速飛行中の固定翼機や無人機、ヘリコプターを撃墜するために、目標を自律的に見つけ出して交戦することを可能にさせます。
特にKSAが直面しがちな脅威(徘徊兵器)への対処では「F-15SA」の能力と重複しているため、「アクンジュ」は各段に安価で便利な代替手段として選択されるかもしれません。
サウジアラビアは
「ビジョン2030」の一環として2030年までに防衛支出額の少なくとも50%を現地調達に充てることを目指しており、防衛企業が兵器類の現地生産ラインを構築するための刺激材料となっています。
2010年代初頭から数多くの(部分的な)国産UCAVプロジェクトが登場しているにもかかわらず、これらが最終的にサウジアラビア軍が求める要件と重要を満たすという確証については、まだ少しも得られていません。
中国製ドローンの高い消耗率と、(おそらく)基本的な整備上の問題にさえ悩まされていることから、サウジアラビア当局が最近公表した高い人気と実績を誇る「バイラクタルTB2」と「アクンジュ」の導入へ関心を示したことについては、一部の人が予想したほどあり得ない動きではないのです。
TB2と「アクンジュ」はサウジアラビアで開発されたものではありませんが、ドローン技術に関する「バイカル・テック」との協力や、おそらく現地での同社製品の生産は、この王国における新興の無人機産業を実質的に有効なレベルまで引き上げるのに役立つであろう貴重な知識をもたらすことになるでしょう。
「バイカル・テック」との契約は、デポレベルの整備を行うための現地における整備工場の設立につながる可能性もあります。
このような動きは、無から本格的なドローン産業を素早く作り上げようと試みるよりも、自国の防衛上のニーズを自給自足するための現実的な道筋を整えてくれることになるかもしれません。