著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
自国の防衛力や近年に入手した軍事装備を誇示することについて、湾岸諸国のほとんどは一般的には控えめです。UAEとサウジアラビアが北朝鮮や中国から弾道ミサイルを入手したことが高度な機密で取り囲まれているのは十分に予想されましたが、湾岸地域ではこの機密レベルが大砲や小火器といった通常兵器にも頻繁に適用されています。
カタールの場合、その状況は少し異なります。 毎年恒例の独立記念日に実施される軍事パレードではほとんどの武器が公開されていますが、演習やほかの行事などでは驚くほど僅かな装備しか公開されていないからです。
同様に、カタールがロシアの「AK-12」アサルトライフルを入手したこともほとんど報じられていないままであり、今までのところは軍事パレード以外でその存在を示す画像などは存在しないようです。
同様に、カタールがロシアの「AK-12」アサルトライフルを入手したこともほとんど報じられていないままであり、今までのところは軍事パレード以外でその存在を示す画像などは存在しないようです。
その見つけにくさは別として、「AK-12」の導入はこれまでにほぼ西側諸国から供給された武器だけに依存してきた湾岸諸国に届くロシア製の武器の流れが増加している証しとなります。カタールは2017年に連続生産に入ったばかりの新型アサルトライフルについて最初に確認された輸出先です。
カタールがロシア製の兵器に関心を持っていることが初めて明らかになったのは、お互いの代表がドーハとモスクワで会談した際にロシアとの軍事技術協力に関する一連の協定に署名した2016年と2017年のことです。[1] [2] [3]
カタールがロシア製の兵器に関心を持っていることが初めて明らかになったのは、お互いの代表がドーハとモスクワで会談した際にロシアとの軍事技術協力に関する一連の協定に署名した2016年と2017年のことです。[1] [2] [3]
これらの協定が厳密に何を含んでいたのかは(当時は)まだ不明でしたが、カタールでロシアの武器が初めて視認されたのはそれからすでに1年後の2018年12月のことです。それは、同年の独立記念日のパレードで数百もの「AK-12」がドーハ・コーニッシュ(海沿いの遊歩道)を行進するカタールの兵士たちの手にある光景を目撃された時でした。
その数ヶ月前の2018年7月に、ロシア特使はカタールとロシアが小火器と対戦車ミサイル(ATGM)の取引を契約したという報道を追認しており、その取引には大量の「AK-12」や「9M133 "コルネット"」ATGM、そして「9K338 "イグラ-S"(SA-16)」携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)さえも含まれていました。[4]
その数ヶ月前の2018年7月に、ロシア特使はカタールとロシアが小火器と対戦車ミサイル(ATGM)の取引を契約したという報道を追認しており、その取引には大量の「AK-12」や「9M133 "コルネット"」ATGM、そして「9K338 "イグラ-S"(SA-16)」携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)さえも含まれていました。[4]
ドーハが関心を示したもう1つのロシアの兵器は「S-400」地対空ミサイル(SAM)ですが、実際にカタールが入手する可能性は(トルコのように)米国による制裁を受ける恐れがあるために極めて低いと思われます。[4]
新たな友好関係の構築
カタールは伝統的にフランスや(その後には)アメリカから武器や装備を購入する顧客でしたが、2017年から2021年まで続いた外交危機でその調達先の多様化に取り組み、今ではロシアも彼らへの武器供給源に含まれています。
これはシリア内戦の間にドーハとモスクワの関係を著しく緊張させていた2010年代初頭からの顕著な変化でした。この点では、カタールがロシアとの関係を強化していることが武器の入手という事実で明白に見受けられます。
現在、カタールとロシアはシリア紛争の政治的解決を実現するための共同した試みで連携して取り組んでいますが、これは外交的に競争の激しいこの地球の片隅で国際関係がいかに迅速に変化するかを示しています。
5.45×39mm口径の「AK-12」は、(旧イズマッシュ社として知られている)「カラシニコフ・コンツェルン」が設計・製造した極めて人気の高いアサルトライフルシリーズの最新モデルです。
多くの欠陥に悩まされていた「AK-12」の試作型を未だに知っている人もいるかもしれませんが、それは(最終的に現行のAK-12となった)よりベーシックな設計の「AK-400」が選ばれたことで放棄されました。ビデオゲームで試作型がほぼ独占的に登場したこともあり、銃器に詳しくない多くのオブザーバーにとって「AK-12」という呼称は未だにこの初期モデルを指していますし、これからもそのままでしょう。
実際にカタールが購入した数は不明ですが、「AK-12」がカタール軍全体で制式化されないことはほぼ確実です。これは2018年にイタリアと「ARX160」と「ARX200」アサルトライフルを国内で生産することの協定を結んだことと同様に、カタールが主要な制式化された小銃を持たずに各部隊がFN製「FNC」、「M4」や「M16」を使用しているという事実に関係があります。[6]
パレードの映像だけを見ると、「AK-12」の大部分がカタール特殊作戦コマンド(Q-SOC)に配備されたように見えますが、おそらくカタール王室警護隊にも同様に配備されているかもしれません。このアサルトライフルは特殊部隊のみに限定して使用される可能性があり、その場合は水中や砂や埃の多い環境での頑強性と信頼性が特に重視されるはずです。
ロシアから「AK-12」を購入したことは注目に値しますが、それは必ずしもカタールが持つ(武器の顧客としての)忠誠心の大規模な変化の始まりを意味するものではありません(注:武器供給国を西側からロシアに移行を意味しないということ)。
カタールは(特にバルザン・ホールディングスを通じて)自国の防衛産業の拡大を目指しており、「ARX160」や「ARX200」と同様に、こうした兵器の少なくとも一部は国内で製造されるか(部品を輸入して)組み立てられることになるはずです。
[1] Qatar, Russia sign military cooperation deal https://www.aa.com.tr/en/middle-east/qatar-russia-sign-military-cooperation-deal/642129
[2] Qatar looking for defence cooperation with Russia https://www.qatar-tribune.com/news-details/id/82421
[3] Qatar, Russia sign agreements on air defense, supplies https://www.reuters.com/article/us-russia-qatar-military-idUSKBN1CV11E
[4] Russia and Qatar discuss S-400 missile systems deal TASS https://www.reuters.com/article/us-russia-qatar-arms-idUSKBN1KB0F0
[5] Armenia will be the first country to purchase AK-12 assault rifles https://arminfo.info/full_news.php?id=54485&lang=3
[6] Qatar to receive first locally produced ARX rifles in 2019 https://defence-blog.com/news/army/qatar-to-receive-first-locally-produced-arx-rifles-in-2019.html ※ 当記事は、2021年4月13日に本国版「Oryx」に投稿されたものを翻訳した記事です。
当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があ
ります。
慣れ親しんだ姿と斬新な特徴
この新型アサルトライフルは「AK-47」の登場から約70年後に生産を開始されており、初代AKの設計思想と形状はこの新型でも容易に尊重されていることがわかります。それにもかかわらず、(置き換えられる対象の)AK-74Mと比較するとAK-12はほぼ全ての面で改良されています。中でも注目すべきものとして、AK-12は命中精度を向上させるフリーフローティングバレル(注:銃身とハンドガードが接触していないので銃身に負荷がかからない)、ピカティニー・レールを備えたモジュラーデザインや過去のAKシリーズに比べて改善された人間工学を踏まえたデザインを備えていることが挙げられます。
多くの欠陥に悩まされていた「AK-12」の試作型を未だに知っている人もいるかもしれませんが、それは(最終的に現行のAK-12となった)よりベーシックな設計の「AK-400」が選ばれたことで放棄されました。ビデオゲームで試作型がほぼ独占的に登場したこともあり、銃器に詳しくない多くのオブザーバーにとって「AK-12」という呼称は未だにこの初期モデルを指していますし、これからもそのままでしょう。
カタールに加えてアルメニアも「AK-12」の潜在的な顧客と推測されており、国内に生産ラインを設置する可能性すらあると見込まれています。[5]
その一方で、現時点でアルメニアはライセンス生産された「AK-103」を軍に装備させている過程にあるため、「AK-12」の大規模な導入と国内生産は実現しそうにないようです。
「ARX160」は湾岸地域で大きな成功を収めており、隣国のバーレーンでは主力の小銃として採用されています。
「ARX-160」や「AK-12」に加えて、さらに数種類の現代的なアサルトライフルも(特殊部隊を中心に)カタール軍に配備されてることを見落としてはならないでしょう。
パレードの映像だけを見ると、「AK-12」の大部分がカタール特殊作戦コマンド(Q-SOC)に配備されたように見えますが、おそらくカタール王室警護隊にも同様に配備されているかもしれません。このアサルトライフルは特殊部隊のみに限定して使用される可能性があり、その場合は水中や砂や埃の多い環境での頑強性と信頼性が特に重視されるはずです。
それどころか、カタールは今後も武器調達の多様化を継続していくと思われます。これは他の供給国からのさらなる武器購入がある可能性を意味しており、その結果としてNATO諸国製の武器とロシアや中国から購入した武器が一緒に運用されることになる可能性があります。
カタールは(特にバルザン・ホールディングスを通じて)自国の防衛産業の拡大を目指しており、「ARX160」や「ARX200」と同様に、こうした兵器の少なくとも一部は国内で製造されるか(部品を輸入して)組み立てられることになるはずです。
この国にとって、このような武器調達に関する方策は自国の軍事力を高めるだけでなく、国家の独立性を高める手段としても魅力的なものになるでしょう – そして、「AK-12」が多様化した武器調達の最後の一例にはならないことも確実です。
[1] Qatar, Russia sign military cooperation deal https://www.aa.com.tr/en/middle-east/qatar-russia-sign-military-cooperation-deal/642129
[2] Qatar looking for defence cooperation with Russia https://www.qatar-tribune.com/news-details/id/82421
[3] Qatar, Russia sign agreements on air defense, supplies https://www.reuters.com/article/us-russia-qatar-military-idUSKBN1CV11E
[4] Russia and Qatar discuss S-400 missile systems deal TASS https://www.reuters.com/article/us-russia-qatar-arms-idUSKBN1KB0F0
[5] Armenia will be the first country to purchase AK-12 assault rifles https://arminfo.info/full_news.php?id=54485&lang=3
[6] Qatar to receive first locally produced ARX rifles in 2019 https://defence-blog.com/news/army/qatar-to-receive-first-locally-produced-arx-rifles-in-2019.html
当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があ
ります。