著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
キューバは、かつての指導者フィデル・カストロや、驚くほど共産主義に辛抱強く忠実なこと、そして世界的に有名な葉巻で広く知られています(後者の二つは世界各国に「輸出」されています)。
その一方で、キューバの武器輸出国としての役割についてはまだまだ不透明なままです。
近年のキューバでは広範囲にわたる軍事関連装備の製造と改造を開始していますが、このための軍需産業はこれまでの大半を自国の革命軍(Fuerzas Armadas Revolucionarias:FAR)のニーズを満たすために役立てられてきました。その中で、アンゴラ共和国軍で運用されているキューバ製「ダビド」歩兵機動車(IMV)の存在は、非常に注目に値するものとなっています。
アンゴラとキューバ間の強力な関係は、かつてのポルトガルによる(アンゴラへの)植民地支配に対する解放闘争の間に確立されてアンゴラとその軍隊に重大な影響を与えましたが、過去数十年にわたるアンゴラへの軍用装備の引渡しが具体化されていたことは知られていません。
両国間の結びつきの継続は21世紀に入ってからもアンゴラとキューバ当局者間の会合で再確認されており、両国の国防相らによって軍事分野における関係の継続と協力の強化をしていくことが表明されています。 [1]
「イグアナ」としても知られている「ダビド」IMVがアンゴラ軍で運用されていることが最初に目撃されたのはSADC(南部アフリカ開発共同体)の多国間演習「ヴァーレ・ド・ケェーヴェ 2014」でのことであり、その際にはナミビア軍の「キャスパー」MRAPと一緒に模擬演習に登場しました。
「イグアナ」としても知られている「ダビド」IMVがアンゴラ軍で運用されていることが最初に目撃されたのはSADC(南部アフリカ開発共同体)の多国間演習「ヴァーレ・ド・ケェーヴェ 2014」でのことであり、その際にはナミビア軍の「キャスパー」MRAPと一緒に模擬演習に登場しました。
「ダビド」がキューバで最初に目撃されたのはその数年前のことであり、それは1961年のピッグス湾事件の鎮圧を記念した2011年のプラヤ・ヒロン侵攻撃退勝利50周年パレードに参加したときのことでした。
「ダビド」はよくMRAPとして識別されることがありますが、より適切な分類としては「歩兵機動車(IMV)」です。
この車両に関するプロジェクトはDIY的なものであることから、「ダビド」はその大部分がさまざまな種類の軍用車両から取り外した部品の興味深い組み合わせであることを示しています。例えば、シャーシはソ連製「GAZ-66」トラックのものであり、それに装甲化されたボディが搭載されています。このIMVの装甲値は不明ですが、全周防御力は小火器の銃撃と爆発物の破片から車体を保護するには十分なものと思われます。
「ダビド」の武装は「BTR-60」か「BRDM-2」の砲塔から取り外された一門の7.62mm PKT軽機関銃ですが、(この別車両の主武装という)異なる役割で機能するように改修され、その過程で砲塔が失われています。また、これらの車両はダビドに最大で4つ設けられている兵員用ハッチの出どころでもあります。
このIMVには2種類の派生型が存在していることが知られており、一つは兵員用ハッチを装備しないタイプ(注:上部ハッチが前部座席直上に1基のみ)で、もう一つはアンゴラでも運用されている派生型、つまり4つの兵員用ハッチを装備したタイプです。
また、「ダビド」の両側面には(BTR-60などから転用されたと思しき)銃眼付きの視察窓が備えられていることにも注目する必要があります。
同様に、余剰となった「UAZ-469」は特殊部隊用の高速攻撃車両へ転用されています。このことは、欠乏から逃れることができないこの国では、完全に使い切るまで真の意味で退役する装備がほとんど存在しないことを示しています。[2]
「ダビド」には。兵員ハッチや機関銃手用のスペースに代わって、ルーフに大型アンテナや衛星通信アンテナを搭載した通信車を含む、さらに特殊化された派生型も存在します。
これらの車両は、(キエフからベルリンまでの同じ距離をカバーする)キューバの広大な国土を防衛する3つの異なる地域軍間の効率的な通信を確保するためのものです(注:キューバ陸軍は東部軍・中部軍・西部軍の3つに区分されています)。
「ダビド」IMVの製造に先立ち、すでにキューバは戦場での防御力を強化するために武装の交換や装甲を追加することで数種類の車両を製造・改造に関する僅かな経験を持っていました。これらの車輌の少なくとも一部は、後にアンゴラで使用されました。アンゴラでは、キューバ陸軍と空軍の派遣部隊が1970年代から80年代にかけてUNITA (アンゴラ全面独立民族同盟)やFNLA (アンゴラ民族解放戦線)、FLEC (カビンダ解放戦線) 、そして南アフリカ国防軍(SADF)と敵対するMPLAを支援するために戦っていたのです。
アンゴラに派遣されたキューバ軍部隊は主に軍事顧問や対内乱作戦で活躍するだけではなく、SADFとの直接的な戦闘も頻繁に繰り広げました。
SADFを打ち破ったことが南アフリカのアンゴラ内戦からの撤退と(1990年にナミビアとなる)南西アフリア独立の承認を引き起こしたとよく信じられていますが、 キューバ軍もSADFの手によって相次ぐ敗北を被りました。
バンデーラ-VI-M「Remulgadas」沿岸防衛システムの指揮車として登場したダビドIMV。PKT機関銃にも注目してください。 |
キューバ軍も大打撃を受け、すぐにスペアパーツと燃料の不足に直面しました。その結果として、大量のAFVや航空機が保管状態に置かれ、海軍の大型艦艇と潜水艦が退役に追い込まれてしまいました。
近年では、キューバ軍の戦闘能力の向上を図ることを目的とした新しい装備へと改修するため、余剰となっていた車両と装備が保管庫から持ち出されました。ときには戦時にほとんど戦力とならないような疑わしい代物になるだけではなく、「ダビド」IMVといった、より現実的なプロジェクトに至ることもありました。
これらの優れた改修の例には、地対空ミサイルの発射機を「T-55」戦車の車体に合体させた車両と対戦車砲や対空砲、そして野砲を「BMP-1」の車体や「T-55」だけでなく第二次大戦時代の「T-34/85」の車体に搭載したものが含まれています。
世界中の国々でより多くのキューバ製兵器が出現する見込みについては可能性が非常に低いものの、アフリカでこのような「外来種」の車両が目撃されたことは国際武器市場の複雑さと不透明性を再び示しています。それに伴い、軍備が拡散する道筋を追跡し続けるための正確な分析が必要不可欠です。
(その多くが北朝鮮を含む型破りな出どころから入手された)アンゴラ軍の極めて多様な戦闘車両の兵器庫に追加されたということからも、「ダビド」IMVはそのような事実の優れた実例として役立つでしょう。
[2] The Oryx Handbook of Cuban Fighting Vehicles https://www.oryxspioenkop.com/2019/08/cuban-fighting-vehicles.html
※ この記事は、2017年3月18日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳した
ものです。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所が
あります。