2022年8月26日金曜日

似た境遇の友人へ:戦争で疲弊したウクライナに対する台湾からの支援(一覧)


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 ウクライナに対する支援は世界中の至る所から届けられています。しかし、軍事援助やウクライナからの難民に国境を開放することで支援可能な国々がある一方で、政治的な理由やウクライナとの(あらゆる意味での)距離の問題のためにそうした行動を行えない国々も存在していることが見落とされがちです。

 このような国々の1つに、一般的には台湾と呼ばれる中華民国があります。台湾はウクライナから公式に国として承認されていないにもかかわらず、人道的支援や資金、さらには小型ドローンまでウクライナに届けています。

 こうした支援の大半は市民と企業からのものです...ウクライナの人々への共感のみならず、北京に主権を否定され、長年にわたって外国による侵略の恐怖に直面してきた台湾とウクライナの類似点を彼らが認識していることは明らかでしょう。

 台湾はウクライナを侵略したロシアに制裁を加えている西側諸国にも加わっており、その対応としてモスクワへの半導体の輸出を停止しています。[1][2]

 ロシア企業は電子機器や軍用機器の製造を台湾製の半導体に全面的に依存していることに加え、世界的な半導体不足のおかげで、台湾による輸出禁止以前の時点ですでにロシアはその供給量の確保に苦心してきました(制裁はこの状況をさらに悪化させます)。[2]

 したがって、台湾によるウクライナの窮状への最大の貢献は「ウクライナに何を提供するか」ではなく「ロシアに何を提供しないか」にあるのです。

 台湾からのその他の援助については、これまでにドローン企業「Xダイナミクス-台湾」による合計で35,000ドル(約470万円)相当の(公式には民生用として使用される)VTOL型偵察用無人機10機、(医療)物資、少なくとも3300万ドル(約44.6億円)に上る医療機関やウクライナ難民向けの資金援助が挙げられます(注:「Xダイナミクス」社自体は香港に拠点を置くグローバルに展開しているドローン企業です)。[3]

 また、2月以降には(約十数人と推定される)台湾人義勇兵がウクライナ軍に加わり、貴重な戦闘経験を現地の軍人にもたらしました。[4]

 EUが「一つの中国」政策に傾倒する中でも台湾は欧州諸国との関係をさらに強化しているため、今後の支援は追加の資金援助と(医療)物資で構成されることになるかもしれません(微妙な立場の台湾は積極的に武器支援をすることが難しい環境にあるということ)。

 2022年3月中に行われた台湾政府主導のキャンペーンによって、ウクライナ市民や近隣諸国の難民を支援するための膨大な量の物資のみならず 3300万ドル(約44.6億円)もの人道援助用の資金が集められました。

 台湾の蔡英文総統、頼清徳副総統、そして蘇曾長首相もそれぞれが給与の1か月分を人道支援のために寄付したことは極めて高度なレベルでのウクライナとの連帯の表明以外の何物でもありません。[5]

 現在でもウクライナと台湾はいかなる外交関係も結んでいないため、こうした台湾の市民や政府からのドッと寄せられる支援は非常に特別なものと言えるでしょう。

  • 以下に列挙した一覧は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の際に台湾がウクライナに提供した、あるいは提供を約束した装備などの追跡調査を試みたものです。
  • この一覧はさらなる支援の表明や判明に伴って更新される予定です。


ドローン


小火器の部品

車両


(医療) 物資
  • 27トン分の医療物資 [2022年2月]
  • 650トン分の各種物資 [2022年3月]


資金援助
  •  300万ドル(約4億円)キーウ特別市向け [2022年4月] (市民から寄せられたもの)
  •  500万ドル(約6.75億円) ウクライナにある6つの医療機関向け [同上] (同上)
  •  2500万ドル (約33.7億円)ウクライナの難民向け [同上] (同上)


[1] The Republic of China (Taiwan) government strongly condemns Russia’s invasion of Ukraine in violation of the UN Charter, joins international economic sanctions against Russia https://en.mofa.gov.tw/News_Content.aspx?n=1328&s=97420
[2] Taiwan’s semiconductor ban could spell catastrophe for Russia https://www.investmentmonitor.ai/special-focus/ukraine-crisis/taiwan-semiconductor-ban-russia-catastrophe
[3] Taiwan firm donates NT$1 million in drones to Ukraine military https://www.taiwannews.com.tw/en/news/4479918
[4] Wary of China threat, Taiwanese join Ukraine’s fight against Russia https://www.washingtonpost.com/world/2022/07/03/taiwan-fighters-ukraine-war-russia-china-threat/[5] Taiwan president to donate salary for Ukraine relief efforts https://www.aljazeera.com/economy/2022/3/2/taiwan-president-to-donate-salary-for-ukraine-relief-efforts

※  この記事は2022年8月10日にOryx本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもので
 す。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所がある
 場合があります。


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2022年8月22日月曜日

ボヘミアとの絆:チェコによるウクライナへの武器支援(一覧)


ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ in collaboration with ヤクブ・ヤノフスキ 


 ウクライナに軍事支援を提供してきた全ての国の中で、チェコ共和国がアメリカやイギリスといった超大国と一緒にその名前で頻繁に出ていることに気づいた人は少なくないでしょう。

 2022年4月初旬までにチェコがウクライナに提供した軍事援助の規模はすでに約4億3000万ドル(約588億円)に達しており、同国はNATO加盟国における軍事援助で最大の貢献国の1つとなっています。この援助には小火器や携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)から、戦車・歩兵戦闘車(IFV)・地対空ミサイル(SAM)システム・多連装ロケットランチャー(MRL)、さらには「Mi-24V」攻撃ヘリコプターなどの重火器に至るまでのさまざまな武器が含まれていることは特筆すべきものといえるでしょう。

 チェコ共和国は武器の供与に関する詳細を公表していないものの、多くの情報が明らかになってなり、すでに数種類の武器がウクライナで目撃されています。興味深いことに、これにはチェコ陸軍から引き渡された装備品だけでなく、チェコやブルガリアの防衛請負企業から購入した兵器も含まれているようです。

 武器の供与に加えて、チェコの防衛企業は戦闘で損傷したウクライナの兵器類と戦争勃発以前に保管状態にあった装備品の修理やオーバーホールを開始したことも重要な動きであることは言うまでもありません。[1]

  1. 以下に列挙した一覧は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の際にチェコがウクライナに供与した、あるいは提供を約束した軍事装備の追跡調査を試みたものです。
  2. 一覧の項目は武器の種類ごとに分類されています(各装備名の前には原産国を示す国旗が表示されています)。
  3. 一部の武器供与は機密事項であるため、この一覧は供与された武器の総量の最低限の指標としてのみ活用できます。
  4. この一覧はさらなる軍事支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
  5. * はウクライナがチェコの防衛企業から調達したものです。
  6. ** はNATO加盟国がチェコの防衛企業から調達後にウクライナへ供与するものです。
  7. *** はチェコ(及びスロバキア)国民によってクラウドファンディングで調達・引き渡したものです。
  8. 各兵器類の名称をクリックすると、当該兵器類などの画像を見ることができます。


(攻撃) ヘリコプター(4+)

地対空ミサイル (SAM) システム(6)

レーダー (2)

  • 2 SURN 1S91 (「2K12M2 "クーブ-M2"」用) [2023年8月]

戦車(170+
  • 50 T-72M1 [2002年4月~6月と2023年4月](一定数はドイツの「循環的交換政策」を通じて15台の「レオパルト2A4」戦車と1台の「ビュッフェル」装甲回収車の提供と引き換えにチェコのストック品からウクライナへ供与、それ以外はブルガリアから調達したものを供与)
  • 16 T-72M1* [2022年後半] (ウクライナがチェコから調達)
  • T-72M1 [2022年6月] (チェコがブルガリアから調達後にウクライナへ供与)
  • 1 T-72EA 'トーマス'*** [2022年10月] (チェコ国民によるクラウドファンディングで調達)
  • 11 T-72EA* [2022年後半] (ウクライナがチェコから調達)
  • 90 T-72EA** [2023年1月以降から供与] (アメリカとオランダが調達し、チェコが修復及び改修後にウクライナへ供与)

装甲戦闘車両

歩兵戦闘車(106)

歩兵機動車 (3)

牽引砲
  • D-20 152mm榴弾砲 [2002年4月] (ブルガリアから調達したものをチェコ経由でウクライナへ供与)

自走砲(50+)

多連装ロケット砲(30+)

自走対空砲(115)

携帯式地対空ミサイルシステム :MANPADS(160+)

重迫撃砲(128+)

対戦車兵器
  •  10.000 RPG-75 [2022年3月]

無人偵察機 (49)

電子戦装備 (1システム 及び 1妨害装置)

工兵・支援装備
  • 2 浮橋 [2022年6月]
  • 5 CBRN車  [2023年2月以前]
  • 900メートル 仮設橋 [2023年2月以前]

車両(47)
  • 47 各種車両 [2023年2月以前]

小火器


弾薬
  • 1.5+ Million Artillery, 榴弾, 戦車砲弾, 迫撃砲弾 [2022年2月以降]
  • 60,000+ ロケット弾 (「BM-21」および「RM-70」、航空機用) [同上]
  • 365+ 122mmロケット弾*** (「RM-70 'プシェミスル'」及び「RM-70 'ヴァンピール' 」MRL用) [2023年3月以後] (チェコ国民によるクラウドファンディングで調達)
  • 152mm・125mm・122mm・120mm 榴弾, 戦車砲弾, 迫撃砲弾*** [同上] (同上)
  • 4,263,000 小火器用弾薬 [2022年2月以降]
  • 155mm砲弾** (欧州の防衛当局を介しての調達) [2022年/2023年]

個人装備
  • 被服 [2022年/2023年]
  •  防弾ベスト*** [同上] (チェコ国民によるクラウドファンディングで調達)
  •  CBRN防護装置 [2023年2月以前]

その他の装備品
  • 情報収集, 監視, 監視,目標補足,偵察(ISTAR) 装備[2023年4月]
  • 戦術デコイ [2022年から]
  • 予備部品 [2022年/2023年]
  • 医療用品 [同上]
  • 燃料 [同上]

ウクライナへ供与される前に撮影された「Pbv 501A」歩兵戦闘車(「BMP-1」をスウェーデンが改修したもの)

[1] https://twitter.com/idreesali114/status/1516435083648978945

※  この記事は2021年7月10日にOryx本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもので
 す。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があり
 ます。



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