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2023年10月4日水曜日

現代の戦時急造兵器:シリアの「シャムス」多連装ロケット砲

著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 シリア・アラブ陸軍の機甲師団は、追加装甲でアップグレードされた数種類の戦車やほかの装甲戦闘車両(AFV)を運用していることでよく知られています。

 さまざまなAFVや支援車両に施した後、第1機甲師団(第1AD)は2016年に新型の多連装ロケット砲(MRL)を導入することで、その保有兵器のストックをもう一度拡充しました。このMRLは、アラビア語で太陽を意味する「シャムス」として広く知られています。そのニックネームは、ロシア軍がシリアに展開していた際に配備されたTOS-1A 「Solntsepyok」が「太陽」と呼ばれていたことに由来すると考えられています。

 この車両は、ダマスカスの戦域全体でAFVに施された高度で専門的なアップグレードの傾向を引き継いでいます。

 このようなアップグレードされた車両の最初のものは2014年末に登場し、この時には少なくとも2台の装甲が強化された(イタリアのTURMS-T火器管制システムを装備した)T-72M1が、ジョバルに配備された直後に破壊された姿が公開されました。しかし、この事態が第4ADに計画の推進を阻むことはなく、その後の数年間で数種類の装甲強化型AFVが戦場で目撃されるようになったのです。

 「シャムス」は、2発か5発の大口径ロケット弾を発射する機構とGAZ製SadkoトラックまたはBMP-1歩兵戦闘車(IFV)の車体を組み合わせた自走式MRLシステムです。

 このMRLに使用するロケット弾は標準的なロケット弾により大きな弾頭を組み合わせた評判の高い「ボルケーノ」型であり、2013年のアル・クサイルでの戦いの際に、直撃すれば住宅区画を完全に破壊できる威力があることで広く知られるようになりました。 

 シリアの軍需産業は同時期にこの「ボルケーノ」を大量生産し始め、即座にシリアにおけるほぼ全ての戦線で使用され始めました。

 BMP-1をベースにした「シャムス」はかなりの数の画像が撮影されていますが、実際に改修されたBMPはたった1台だけしかありません。よりすぐに使用できるプラットフォームとしてGAZ製「Sadko」トラックがあり、数台が自走発射機として改修されました。 

 このGAZ製「Sodko」をベースにしたものには2種類のモデルが存在します。1つは発射機を搭載するために特別に改修されたもので、もう1つは無改造のトラックの後部に発射機を搭載したものです。

それ以外の車両は改修されなかったと考えられており、「シャムス」はその後すぐに、より多用途性がある「ゴラン」MRLに取って代わられました。

 BMPとGAZ製「Sadko」をベースにした「シャムス」はその両方が、スラットアーマーを装備した「T-72 TURMS-T」ロシアから供与されたBTR-70M装甲兵員輸送車(APC)を含む、いくつかの注目すべきAFVを運用している第1師団に所属しています。



 シリアでは現在3種類の「ボルケーノ」が生産されていると考えられており、さらにそれぞれいくつかの派生型に分かれています。

 最も広く使用されている「ボルケーノ」用ロケット弾は107mmと122mm弾をベースにしたものですが、220mm弾ベースのものも存在します。シリアでは107mmと122mm(グラート)ロケット弾が非常に一般的なものであることに加えて、220mmロケット弾もシリア国内で製造されていることが知られているため、これらのロケット弾を「ボルケーノ」に改造することは比較的容易です。

 「シャムス」は2種類の122mmロケット弾をベースにした「ボルケーノ」を使用しており、どちらも大重量の300mm弾頭を備えています。「シャムス」MRLから「ボルケーノ」が発射される様子はここで観ることができます

 興味深いことに、「シャムス」で使用されている2種類の「ボルケーノ」の1つには、通常の弾頭より強力な爆発力をもたらすために空気中の酸素を利用し、閉じ込められた空間での使用に最適なサーモバリック弾頭(350kgというとてつもない重量だと伝えられています)を搭載していると評されています 。[1]

 もう1種類は250kgの通常弾頭(元の122mmロケット弾では約65kg)を使用したもので、装備されている短いロケットブースターによってサーモバリック弾頭型と識別することが可能です。「ボルケーノ」の射程距離はサーモバリック型では3.4キロメートル、従来型では1.5キロメートルとのことです。


 「シャムス」は戦時下に適応した完璧なケースであり、(改修されなければ)平凡だったAFVを現在の戦場で遭遇するタイプの戦闘に完全に適応した、強力なプラットフォームに変えました。

 シリア軍がこういった効果的な戦力増強をさらに行うかどうかはその意欲とリソース次第ですが、そのような試みにおける柔軟性が軍事プランに反映されるのであれば、その決定は最終的にシリア軍の再建に大きな影響を与える可能性があるでしょう。

  [1] @WithinSyria氏との個人的な会話

特別協力: Morant Mathieu(敬称略)

※  当記事は、2021年10月3日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したも      のです。意訳などにより、僅かに意味や言い回しを変更した箇所があります。

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2023年8月8日火曜日

ロシアの戦争:2008年南オセチア戦争でジョージアとロシアが損失した兵器類(一覧)


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 2008年8月、(ジョージア領内における分離独立地域の南オセチアとアブハジアの軍隊を含む)ロシア軍とジョージアとの間で5日間という短さの戦争がありました。

 1992年の停戦合意があるにもかかわらず、8月1日に南オセチア軍がジョージアへの砲撃を開始したことを受けたジョージアが8月7日に軍を南オセチアの支配領域に投入し、その州都であるツヒンヴァリ市の大部分を制圧したのです(注:8月7日の戦争勃発の契機となったのは南オセチアによる砲撃とされているが、ロシア軍の侵攻を引き起こしたのはジョージア軍の攻撃によるもの)。

 この制圧を受け、ロシアは南オセチアに代わって参戦する口実としてジョージアによる「ジェノサイド」を非難し、8月8日にジョージアへの陸・空・海の全面的な侵攻を開始しました。

 ロシアの侵攻は混沌としていたものの、何とかしてジョージア軍を完全に圧倒することに成功しました。なぜならば、大部分のジョージア軍部隊は2022年に侵攻を受けた際のウクライナ軍の戦いぶりとは大きく異なり、数多くの車両や兵器を無傷のまま放置してロシアの進撃より先に逃走してしまったからです。

 この軍事的な敗北は、自国領内の分離独立地域をめぐるロシアとの紛争を見越したミヘイル・サーカシビリ大統領が、2004年から大金を投じてジョージア軍に近代的な装備を導入した後のことだったことは注目に値するべきものと言えるでしょう。近代化に伴って導入した装備には、イスラエルの「スパイダー」地対空ミサイルシステムや「LAR-160」多連装ロケット砲、「ヘルメス450」UAVが含まれていました。

 (今では悪名高い重巡洋艦「モスクワ」も投入された)ロシア海軍によるジョージアに面する黒海沿岸の封鎖と港湾都市であるポチの占領が、ロシア軍部隊がジョージア海軍の艦艇を港で沈められて海軍自体の壊滅に至らせることに成功したことはよく知られています。
 
 ジョージアの空軍基地が爆撃されながらも同軍の「Su-25」と「Mi-24」は、温存する目的で隠匿される前に何度かの出撃に成功しましたが、「Mi-24」2機と「Mi-14」1機がロシア軍に鹵獲・無力化されたことに加え、ジョージアは戦争に至るまでの数か月間で「An-2」3機と「ヘルメス450」UAV3機も喪失しています。

 8月12日の停戦合意に至るまでの間に、ロシア軍とアブハジア軍はコドリ峡谷に攻撃を仕掛けて第二戦線を展開し、支配地域を拡大したことも忘れてはいけません。ちなみに、南オセチア人が占領地でジョージア人の民族浄化を始めたため、ロシア軍は一時的にジョージアの数都市を占領したことも見過ごされがちです。

 最終的にロシアはアブハジアと南オセチアの独立を承認し、10月8日にジョージアにおける係争地域からの軍の撤退を完了させました。

 戦闘停止後、鹵獲した兵器の大半は南オセチアとアブハジアの軍隊に引き渡されました。ただし、ゴリ市近郊のジョージア軍守備隊から「T-72B」 戦車15台と「BMP-2」歩兵戦闘車2台は、ジョージアに返還されるのではなく、ロシア軍によって爆破されてしまいました。

 多大な物的損害を被ったものの、ジョージア軍は「LAR-160」MRLや「スパイダー」SAMシステムといった最新システムを温存することには成功しました。とはいえ、ジョージアは残置された4基の「ブーク」SAMシステムと5台の「2S7 "ピオン"」 203mm自走榴弾砲の回収について、断念を余儀なくされるという手痛い損失を被ったのです。

 ジョージアの「スパイダー」と「ブーク-M1」SAMシステムは「Tu-22M3」戦略爆撃機1機を含む3機の撃墜に寄与しましたが、それ以外について、ロシアはこの戦争での損失は比較的軽微な損失にとどまりました。

  1. 以下に列挙した一覧では、損失が確認されたロシアとジョージアの兵器を掲載しています。
  2. この一覧では、利用できる画像や映像などの視覚的証拠に基づいて損失が確認された兵器類のみを掲載しています。したがって、実際の損失はここに記録されたものより多いと思われます。
  3. 対戦車ミサイル、携帯式地対空ミサイルシステム、ピックアップトラックはこの一覧に含まれていません。
  4. 1991年以前に製造されたタイプの兵器については、名称の前のソ連国旗を表示しています。
  5. 各兵器の名称に続く数字をクリックすると、損失した当該兵器の画像が表示されます。
  6. 画像に記された日付については必ずしも損失した正確な日付を示すものではありません。あくまでその目安となる時期を示すものとご理解ください。

ロシア (93, このうち撃破: 86, 損傷: 4, 鹵獲: 3)

戦車 (4, このうち撃破: 4)

装甲戦闘車両(4, このうち撃破: 3, 鹵獲: 1)

歩兵戦闘車 (20, このうち撃破: 19, 損傷: 2)

砲兵支援車両または装備類(1, このうち撃破: 1)

自走砲 (1, このうち撃破: 1)

航空機 (8, このうち撃墜破: 8)

ヘリコプター(2, このうち墜落: 2)

トラック・ジープ・各種車両 (46, このうち撃破: 44, 損傷: 1, 鹵獲: 1)


ジョージア (194, このうち撃破: 90, 損傷: 3, 鹵獲: 101)

戦車(44, このうち撃破: 27, 損傷: 1, 鹵獲: 17)

装甲戦闘車両 (2, このうち撃破: 1, 鹵獲: 1)

歩兵戦闘車(25, このうち撃破: 19, 鹵獲: 6)

歩兵機動車 (3, このうち鹵獲: 3)

指揮通信車両 (1, このうち鹵獲: 1)
  • 1 9S470M 指揮車両(「ブーク-M1」用): (1, 鹵獲)

工兵車両及び装備類 (6, kのうち撃破: 1, 鹵獲: 5)

牽引砲 (25, このうち撃破: 1, 鹵獲: 24)

自走砲 (9, このうち撃破: 6, 鹵獲: 3)

対空砲 (2, このうち鹵獲: 2)

地対空ミサイルシステム (6, このうち鹵獲: 6)

レーダー (2, このうち撃破: 2)
  • 1 P-18「スプーン・レストD」VHF二次元対空捜索レーダー: (1, 撃破)
  • 1 ST86U/36D6-M「ティン・シールド」対空レーダー: (1, 撃破)

航空機 (3, このうち地上撃破: 3)

ヘリコプター (4, 地上撃破: 3, 損傷: 1)

艦艇 (9, of which destroyed: 7, captured: 2)

トラック・ジープ・各種車両 (49, このうち撃破: 18, 損傷: 1, 鹵獲: 30)

特別協力:Lost Armour(敬称略)
  のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が