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2022年2月22日火曜日

イカサマだらけの偽旗:ウクライナ東部における偽旗作戦で失われた兵器類(一覧)


著:ステイン・ミッツアー in collaboration with Dan, Jakub Janovsky と COIN(編訳:Tarao Goo)

 ロシアと同国が支援する分離主義勢力(自称ドネツク人民共和国:DNRと自称ルガンスク人民共和国:LNR)の部隊はロシア軍によるウクライナ侵攻の口実をでっち上げるため、2022年2月中旬からウクライナ東部で数多くの偽旗作戦を実施し続けています。

 ロシアは長い間にわたって、自国や友邦を犠牲者として演じ、(例えば「MH17」撃墜事件の)責任を逃れ、混乱を引き起こし、戦争の口実を作り出すために、そのような偽旗作戦を実施してきました。

 典型的なロシアのやり方では、これらの作戦は、ほとんどのロシアによる情報戦に特有と思しき未熟な手法で行われているようです。[1]

 特にウクライナ東部での偽旗作戦には、「ウクライナの破壊工作員がロシアに潜入した」というものが含まれています。[2]

 (潜入作戦に参加したとされるウクライナ兵のヘルメットに装着されたアクションカム映像について)撮影された映像の位置情報から、ロシア領への侵入は分離主義勢力の支配地域から行われたことが判明し、公開から1時間以内にこの話はフェイクであると暴かれました。(注:位置情報は座標以外にも建物や地理的特性からも特定可能です。いわゆるジオロケート)。[3]

 ロシアはこの潜入の撃退の結果として殺害したとされる5人のウクライナ兵の遺体を見せる代わりに、ウクライナ軍の車両に見えるようによく考えられずに塗装された「BTR-70M」装甲兵員輸送車(APC)の残骸を公開しました。[4]

 皮肉なことに、ウクライナは「BTR-70M」を運用していないため、このような偽旗作戦にどの程度注意が払われているのか(または適当であること)をさらに示しています。

 その他の偽旗作戦には、自動車の爆破やロシアと分離主義勢力の当局が公表する数日前に撮影されたことを示すタイムスタンプが付された住民避難計画の動画すら含まれています。[5]

 これらの全作戦に共通する傾向としては、偽旗作戦がロシアを有利にするどころか、本格的な「のけ者国家」になる道へいっそう推し進めていると言えるでしょう。

 自軍の車両をウクライナのように見せてから、ひどいやらせの「挑発行動」に登場させた後に有り余るほどの証拠を残しながらその車両を爆破するというのは、まさに茶番でイカサマに満ちた「偽旗」を明らかにしていることに疑いの余地はありません。

(各装備名に続く数字をクリックすると、ロシアの偽旗作戦で破壊されたロシアまたは分離主義勢力の車両の画像が表示されます)


ロシアとドネツクまたはルガンスク州における分離主義勢力が「損失」した兵器・装備類

 
装甲戦闘車両(3台、そのうち破壊されたもの: 3台)

ソフトスキン車両 (2台, そのうち破壊されたもの: 2台)

最終更新日:2022年2月22日

[1] How GRU Sabotage and Assassination Operations in Czechia and Bulgaria Sought to Undermine Ukraine https://www.bellingcat.com/news/uk-and-europe/2021/04/26/how-gru-sabotage-and-assassination-operations-in-czechia-and-bulgaria-sought-to-undermine-ukraine/
[2] Russian border security eliminates five saboteurs infiltrating from Ukraine https://tass.com/emergencies/1407169
[3] https://twitter.com/EliotHiggins/status/1495775073906610180
[4] https://twitter.com/NotWoofers/status/1495890957048418316
[5] https://twitter.com/EliotHiggins/status/1494783522682425344

※  当記事は、2022年2月21日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
  ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
  があります。



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2022年2月8日火曜日

意外な国の東側製AFV:サウジアラビアにおけるウクライナ製「BTR-3」装甲兵員輸送車




著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 サウジアラビアは、アメリカから購入した「M1A2S」主力戦車(MBT)や「F-15SA」戦闘攻撃機を含む、現時点で売りに出されている最新鋭の軍事装備を運用していることでよく知られています。

 しかし、世界中の多くの軍隊と同様に、この国でも老朽化した、時には予想外の兵器が、第2防衛戦や危険がより少ないと見なされた戦線で運用されています。サウジアラビア王国の場合では、「M60 "パットン"」戦車や「M113」装甲兵員輸送車(APC)といった旧式装備の一式だけでなく、ウクライナから緊急救助車として使用するためにに購入した、かなり風変わりな見た目をしたBTR-3 APCも含まれています。

 すでにシャルトルーズ(実際の色名)のカラーリングが施されているとおり、サウジアラビアの「BTR-3」が危険を冒して最前線まで近づくことは絶対にないでしょう。その代わり、このAPCが持つ水陸両用及びオフロード走行能力は、洪水や土砂崩れなどの自然災害時に災害救助活動を行うのに最適であることを意味しています。この役割で、「BTR-3」はロシアのGAZ-59037 – ベトナムでの運用で洪水被害者を救助する際にその価値が証明された「BTR-80」APCの民生版 – と非常に似た働きをします。

 サウジアラビアでは緊急救助車両として装備されていますが、「BTR-3」はAPCや歩兵戦闘車(IFV)型と同じ装甲を維持しているため、7.62mm弾や砲弾の破片(さらに言うと「ひょう」による被害)に対する全方位の脅威からの防護力を備えています。

 (正確な時期は不明ですが)サウジアラビアに納入された後、この車両は平時、災害時、そして紛争時に人命や財産を保護するための機関:民間防衛総局に就役しました。


 サウジアラビアといえば、西から東にかけて広がっている広大な砂漠地帯でよく知られていますが、おそらく一般的なイメージとは異なって、この国では、大雨や洪水、そして(全く驚くことではありませんが)砂嵐などの大規模な自然災害に定期的に対応する必要があります。

 このような災害によりうまく対処するため、最初に消防総局が1960年に設立されました。内務省(MOI)の傘下に置かれた同機関は、後に民間防衛総局(GDCD)に改称され、現在に至っています。自然災害への対応に加えて、GDCDは、毎年行われるメッカへのハッジ(大巡礼)の際に巡礼者の安全を確保するという極めて重要な役割を担っています。[1]



 緊急救助車両としての用途にふさわしいものとするため、「BTR-3」は砲塔の撤去、手すりや車体上部へのハッチの追加を含むいくつかの改修を受けました。

 民間防衛総局のエンブレムは、通常は各車両の側面、ときには正面にも施されています。



 また、装輪式の回収車両、大型トラック、ブルドーザーやショベルカーなどの装備といった、さまざまな種類の支援車両も民間防衛総局で運用されています。

 数年前まで、この組織は日本の「川崎重工」製「KV-107」タンデム式輸送ヘリコプターでさえも独自の航空隊で運用していましたことは注目に値するでしょう。[2]

 「KV-107」が00年代後半に退役した後、この種の航空任務はGDCDに代わってMOIが運用するシコルシキー「S-92」汎用ヘリコプターに引き継がれました。




 鮮やかな黄緑色の塗装にもかかわらず、サウジアラビアの「BTR-3」は、現在におけるこの王国で就役している最も目立たない装備の1つであり続けています。

 彼らの様子については、通常はそれらの展開を必要とする厳しい状況下のおかげで影が薄くなっているのかもしれませんが、詳しくないウォッチャーからすると、この「BTR-3」は驚くべき装備が最も予期しない場所に思いがけなく姿を現す可能性があることを気づかせてくれます。

 今回のケースでは無難な緊急救助車両が関係していますが、サウジアラビアのウクライナとの次の取引は、この王国により強力な能力の獲得をもたらすでしょう:「フリム-2」移動式短距離弾道ミサイル(SRBM)は、サウジアラビアからの資金提供をうけてウクライナで設計されたものであり、この10年間の早い時期にサウジアラビアで就役する予定となっています。



[1] The General Directorate of Saudi Civil Defense https://www.eyeofriyadh.com/directory/details/77_the-general-directorate-of-saudi-civil-defense
[2] kawasaki KV-107/IIA-SM https://www.dstorm.eu/pages/en/saudi/kv-107.html

※  この翻訳元の記事は、2021年5月5日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事
  を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇    
  所があります。




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2021年9月29日水曜日

アシガバートからのスナップショット:トルクメニスタンの軍事パレード2021



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 9月27日(月)、トルクメニスタンはソ連からの独立達成30周年を記念して、軍事パレードを実施しました。トルクメニスタンの豪華な軍事パレードは、最新の軍事装備を披露する絶好の機会となっています。

 2007年にはグルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領が(トルクメンバシ:トルクメン人の長として知られている)故サパルムラト・ニヤゾフから権力を引き継ぎ、すぐに自国の軍事力強化を目的とした一連の新たな施策を導入しました。

 近代的な装備のストックを大幅に増やし、国内外の脅威に対処するための訓練を強化したこととは別に、これらの施策はセルビア、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、UAE、中国といった国々から数多くの兵器を導入することでも実現しました。

 その他の兵器供給国にはロシア、アメリカ、ブラジル、イタリア、オーストリア、ウクライナ、フランス、ベラルーシが含まれており、前述の国の兵器と一緒に、この国の軍隊を非常に多種多様な軍備のストックで最高潮に至らせました。

 毎年恒例の(いつも同じものの繰り返しである)パレードとは異なり、今回は首都アシガバートのすぐ外側にある真新しいパレード会場で実施されました。 



 T-90戦車(前)に続いて数台のT-72UMGが登場しました(下の画像)。後者は、ベースとなるT-72をウクライナでアップグレードしたものであり、新型装甲や照準装置、発煙弾発射機、遠隔操作式重機関銃、新型エンジンの搭載によって、T-72のほぼ全能力を大幅に向上させた派生型です。

 T-72UMGの最も注目に値する特徴としては、砲塔に「コンタークト-5」爆発反応装甲(ERA)が装着されていることでほぼ間違いないでしょう。

 トルクメニスタンにおけるT-72UMGに関する私たちの記事は、ここで読むことができます(注:後日に邦訳予定)。



 BMP-2D歩兵戦闘車(IFV)に続いて、ウクライナの「シクヴァル」戦闘モジュール(砲塔)でアップグレードされたBMP-1が登場しました(下の画像)。 



 後方から撮影した、30mm機関砲を装備した数台のBTR-80A IFVと、ウクライナの「グロム」兵装ステーションでアップグレードされたBTR-80が2列に並んで行進している状況(下の画像)。

 無人の「グロム」モジュールは、30mm機関砲が1門、副武装として30mm自動擲弾銃、7.62mm機関銃が各1門ずつ、そして9M113(AT-5)「コンクールス」対戦車ミサイル(ATGM)4発を搭載されており、14.5mm機関砲と7.62mm機関銃しか装備していない通常のBTR-80の攻撃力を著しく向上させています。



 BTR-80Aの砲塔を装備したセルビア製の「ラザー3」IFV(下の画像)。

 これらの車両は、トルクメニスタンが保有する兵器の中でも最も新しく追加されたものであり、「ラザー3」はトルクメニスタン軍に就役されたのではなく、国家保安省で運用されています。 



 イスラエルのIMI「コンバット・ガード 4x4」に続き、中国の東風「猛士」3台とロシアのカマズ「タイフーン 6x6」MRAPが登場しました。これらも、この国の装甲戦闘車両(AFV)群に新たに追加されたものです(下の画像)。



 UAEのインカス「タイタン-DS」(下の上段の画像)とトルコのBMC「キルピ」歩兵機動車(IMV)(下の下段の画像)。前者はトルクメニスタンが導入した最新型のIMVです。

 この国は以前にUAEから多数の「ニムル」戦術車両を購入したことがあります。ただし、それらの数はトルクメニスタンがトルコ、サウジアラビア、イスラエル、UAE、オーストリア、ベラルーシを含む多数の供給国から購入した非常に多くのIMVと比較すると存在感が薄いものとなります。




 アメリカのポラリス社が製造する「MV850」全地形対応車(ATV)や「MRZR」「DOGAR」戦術車両も登場しました(下の画像)。





 ベラルーシ製「BM-21A」122mm多連装ロケット砲(MRL)が行進しています(下の画像)。

 このMRLは「ウラル-375D」よりも性能が向上している「MAZ-631705」トラックに搭載されています。搭載するトラックをMAZにしたことで全長が長くなったことは、このMRLシステムにさらに40発の122mmロケット弾を再装填用として搭載することを可能にさせました。

 これによって、ロケット弾を搭載したトラックから補給を受ける前に、各発射機はもう一度全弾を斉射することができるので、戦闘時における有効性が大幅に向上します。 



 ソ連時代の「2K12(NATOコード:SA-6、下の上段の画像)」と「S-200(NATOコード:SA-5、下の下段の画像)」。両システムともソ連から引き継いだものであり、トルクメニスタンは依然としてこれらをオリジナルの状態(注:未改修)で運用しているようです。

 とは言うものの、このシステムの運用は、近年により現代的な中国製地対空ミサイルシステム(SAM)が導入された後では長続きしないと考えられています。

 「S-200」がもたらす唯一の救いは約300kmという見事なその射程距離であり、トルクメニスタン沿岸で運用を続けている1つのSAMサイトだけでカスピ海の空域の大部分をカバーすることを可能にします。




 ZSU-23「シルカ」自走対空機関砲(SPAAG、前列)と9K35「 ストレラ-10(NATOコード:SA-13、後列)も同様に、オリジナルの状態で運用を続けています。



 十分に装備された兵士たちがイタリア製の「ARX-160」アサルトライフルを手にして行進しています(下の画像)。同ライフルはトルクメニスタン軍の標準的な制式小銃です。

 トルクメニスタン軍は、ほぼ全面的に最新の「ARX-160」とイスラエル製の「TAR-21」アサルトライフルを装備してますが、限られた数のAK-74Mも積極的に使用され続けています。


 
 トルクメニスタン空軍は、「M-346」戦闘機(下の画像)、「A-29B」ターボプロップ軽攻撃機や「C-27J」輸送機を飛来させてパレードに参加しました。これらの全てが近年にイタリアとブラジルから導入されたものです。

 さらに、地上では、トルコの「バイラクタルTB2」UCAVやイスラエルの「スカイストライカー」徘徊兵器が登場しました。

 これらのアセットを導入したことで、トルクメニスタン空軍はこの地域で最も強力な空軍の1つとなりました。

 トルクメニスタンの「M-346」「A-29B」「バイラクタルTB2」に関する記事については、別の記事でチェックしてください(機体名をクリックすると当該ページに移動します)




 世界中で行われる軍事パレードでよく見られる光景のとおり、17機のMiG-29とSu-25が「30」の数字を表した編隊を組んで飛行しました(下の画像)。 



 セレックスES「ファルコ」はトルクメニスタンが導入した最初の中高度UAVであり、合計で3システムが、2011年にイタリアとの870万ユーロの契約で導入されました(下の画像)。[1] [2]



 オートジャイロ「キャバロン」(下の画像)。トルクメニスタンでは、これらのオートジャイロを数機運用しており、このタイプは内務省によって運用されています。 



 トルクメンバシ沖で実施された海上パレードには、海軍の「タランタル」級コルベットが2隻、国境警備隊の(トルコの「ツヅラ」級をベースにした)「NTPB」級哨戒艇が3隻、そして同じく国境警備隊で運用されている少なくとも2隻の「FAC 33」級高速攻撃艇(FAC)が参加しました。 「FAC 33」に関する詳細な情報は、同船をテーマにした私たちの記事で読むことができます(注:日本語)。



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2017年6月8日木曜日

希少なAFV:スーダンのAFV修理施設内部の光景


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 1956年にイギリスから独立して以来、様々な供給元の影響のために軍隊で使用されている装備の種類に関して言えば、スーダンは間違いなく最も興味を引く国の一つでしょう。

 そもそもスーダンはエジプトとイギリスによって訓練と装備を受けていましたが、それから大量のソ連製装備を受け取り始め、その後に中国の武器援助が続く道を選びました。近年はベラルーシ、ウクライナやロシアなどの国々から多数の兵器を購入しており、今やこれらの国々は中国やイランとともにスーダンに対する武器供給の主要国となっています。

 スーダンは既に挙げられた国に加えて、ドイツ、リビア、チェコスロバキア、フランス、アメリカ、サウジアラビア、東欧諸国、そしてもちろん北朝鮮といった国からも兵器の供給を受けたことがあります。こうした多様なAFV群を運用することはまさに兵站面での悪夢にほかならず、スーダンに存在する先述した国々のうちの幾つかから派遣された専門家がこれらを維持するために支援しているのです。
  
 この状況を改善するために、スーダンはAFV修理工場とエルシャヒード・イブラヒーム・シャムス・エル・ディーン複合体を設立しました(後者は幾つかの種類のAFVの製造にも関わっています)。このAFV修理工場は主力戦車、歩兵戦闘車(IFV)、装甲兵員輸送車(APC)の修理に特化しており、スーダン軍の管轄下にあります。これは、エルシャヒード・イブラヒーム・シャムス・エル・ディーン複合体がMIC(Military Industry Corporation)の一部である点とは反対です。

 このAFV修理工場はハルツーム(首都)の中心に位置しており、そのような施設を設けるにしては間違いなく興味深い場所と言えます。


 様々な荒廃状態にある多数のAFVが散乱している施設の現状を確認してみると、スーダン人の要員がいるだけではなく、いくらかの東欧の人間もソビエト時代のAFVの維持と分解整備を支援しています。

 この記事にある画像のほとんどはそのようなアドバイザーからのものであり、その多くはスーダン滞在中に彼らの作業を撮影したものです。このある人物は以前にはウガンダとイエメンで勤務しており、ここでも同様に人材育成の支援をしていたようです。


 著しく損傷した「T-72AV」はスーダンでは「アル・ズバイル-1(T-55-SH1)」としても知られており、破壊された「2A46」125mm砲の修理を待っているか、あるいは部品取り用として使用されているようです(下の画像)。

 これまでにスーダンは「T-72AV」を世界中の国から入手しており、その大半はアフリカに供給していたウクライナから(同国が最後にストックしていたものを)調達しました。

 スーダンの「T-72AV」購入は、南スーダンもその数年前に大量の「T-72AV」を購入していたために注目に値します。この取引はケニア経由で手配されたものであり、33台の「T-72AV」を積載した南スーダンへ向かう貨物船「ファイナ」が海賊によって乗っ取られたために、国際的な議論の原因となったからです。

 ウクライナのインストラクターが南スーダンの兵士に「T-72AV」を運用させる訓練の担当になった一方で、残りの「T-72AV」をスーダンに売ることは問題にならなかったように思われます。

 スーダンはSPLA-N(スーダン人民解放軍/運動)に対抗するため、同国南部にこれらの戦車をすぐに配備しました。

 この取引は、スーダン軍と南スーダン軍との間で新たな戦闘が発生しそうな出来事の間に、両軍が互いに同一の迷彩が施された「T-72AV」を配備するという特異な状況をもたらしており、それは戦場での混乱や場合によっては誤射に至ることが不可避なことは言うまでもありません。


 今でもなお新品状態にある非常に古いアルヴィス「サラディン」装輪装甲車は、施設のメンテナンスホールの外で再塗装を控えています(下の画像)。この装甲車がいかに旧式であるにしても、いくつかの国は運用し続けており、インドネシアでさえ残存している車両の改修を試みているほどです。

 スーダン軍が「サラディン」を運用し続けるのか、この残存している車輌をゲートガードとして展示するつもりなのかは判然としていません。


 結局、この「サラディン」装甲車は(変わった迷彩塗装を施されたおかげで)本来の無塗装の状態に対する被発見率を多少は低下させることができたようです(下の画像)。

 少なくとも2台の「サラディン」が新しい塗装を施されており、2台目(画像の2段目)は前部に深刻な損傷を受けていますが、再塗装によって悲惨な姿から受ける印象がさらに増してしまいました。


 「フェレット」装輪装甲車はスーダンで運用されてきたもう一つのイギリス製の主要な装備であり、スーダン軍の兵士たちによって運用されていた最初のAFVの一つです(下の画像)。これも再塗装されているものの、砲塔の「M1919」軽機関銃が失われてしまいました。
 前部タイヤの一つに深い亀裂が入っていることから、 再塗装はもはや戦闘での使用を目的にしたものではない可能性があります(注:同一個体ではないものの、ゲートガードで使用されている車両が存在しているため)。

 下の2列の画像の上段には一見して退役したように見える中国製の「62式」軽戦車の列を見ることができますが、そのうちの少数は今でも現役に留まり続けています。



 「BMP-1」歩兵戦闘車は30mm機関砲を搭載した一人用砲塔「2A42 コブラ」への換装の改修を受け、本来ならば同車に搭載されている既存の73mm低圧砲を装備した「2A28 グロム」砲塔を置き換えています(下の画像)。この新型砲塔はベラルーシとスロバキアの共同開発であり、スーダンは運用しているある程度の「BTR-70」もこの砲塔に換装しています。
 画像の車両では、「PKT」7.62mm同軸機銃が欠落しているようです。

 スーダンに僅かしかない「BMP-2」歩兵戦闘車の一台を背景に見ることができます。これも少数のイランが設計した、同車のコピーである「ボラーク」装甲歩兵戦闘車(AICV)と一緒に運用されています。


 背景に「BMP-2」、中国製「WZ-551」装甲兵員輸送車(APC)、「59D式」戦車と2台のイラン製「サフィール74」・「タイプ-72z」・「T-72Z」または「シャブディズ」戦車といった他の車両が寄せ集められている中に、フランス製の「パナールM3」APCが見えます(下の画像)。  
 この「パナールM3」は20mm機関砲が取り外されており、いつか再び運用されることは見込めません。おそらくはフランス製「AML-90」も同じ運命に陥っているでしょう。


 スーダンは非常に多様なBTRの派生型を運用しているおり、その中でも「BTR-70」、ベラルーシによる改修型「BTR-70」、ウクライナによる改修型「BTR-70/80A」と「BTR-3」が含まれています。それに加えてスーダン軍は中国の「WZ-551」と「WZ-523」 APCの大量のストックも有しており、70年代初めに引き渡されたチェコスロバキア製「OT-64A」の残存しているものもあります。

 2番目の画像で、「BTR-80」の砲塔が車体に備え付ける状況を見ることができます。



 MICが「アミール2」偵察車として売り出しているソビエトの「BRDM-2」は、まだ新品同様の状態です(下の画像)。「BRDM-2」自体の設計は60年代前半のものですが、スーダン軍は2000年代にベラルーシから追加の車両を受領し続けていたとみられており、それらは既に同軍で運用されている「BRDM-2」群に加わりました。

 「アミール2」は近ごろUAEで開催された武器展示会「IDEX2017」でも展示されており、MICが国際市場向けに新造した「BRDM-2」を売り出すことを示唆しました。

 MICの分かりにくいマーケティング戦略にもかかわらず、「アミール2」は実際のところ「BRDM-2」の運用を続ける国に向けた同車のアップグレード案です。このアップグレードでは、「BRDM-2」本来の140hpを誇る「GAZ-41」エンジンを210hpのいすゞ製「6HH1」エンジンへの換装が見られ、機動性と燃費の向上を提案しています。

 いくつかのアフリカ諸国が老朽化している「BRDM-2」の運用を続けていますが、これらの国のいずれかが同車のアップグレードに関心を持つということは考えにくいでしょう。


 修理施設のメンテナンスホールに3台の「WZ-551」があります(下の画像)。このAPCは以前にMICによって「シャリーフ2」として売り出されていたものであり、MICが単に同車を輸出製品の一覧に記載していただけで実際に売り出していたのかは不明だが、画像の車両はスーダンでオーバーホールを受けている可能性を示唆しています。

 スーダンに納入された別の中国製AFVである「WZ-523」が今や「シャリーフ2」として売り出されていることが、余計な混乱を招いています。

 しかし、この件についてはMICが「WZ-551」と「WZ-523」の両方をオーバーホールできる可能性を意味しているかもしれません。


 スーダン軍は主にベラルーシ、ウクライナやロシアからストックされている中古AFVを入手していますが、限られた数のウクライナの「BTR-3」に加えてロシアの「BTR-80A」も保有しており、そのうちの一台を下の画像で見ることができます。 また、その背景に一台の「BRDM-2(またはアミール2)」、「BMP-1」と「T-72AV」も見ることができる。

 より興味深いことに、画像には退役したM60の列(注:画像左)が見えますが、そのうちのごく一部は依然としてスーダン軍で運用状態にあると考えられています。


 下の画像で見える教場は、スーダン軍で運用されている様々なロシアのAPCとIFVの武装で満たされています。

 左には「BRDM-2」、「BTR-70」と「BTR-80」用である「PKT」7.62mm同軸機銃付きの「KPV」14.5mm重機関銃2門があり、右には「BTR-80A」と「BMP-2」用の「2A42/2A72」30mm機関砲2門を見ることができます。また、「BTR-80A」の砲手の訓練用に設けられた完全な同IFVの砲塔モジュールが後ろに見えることにも注目するべきでしょう。

 壁に掲げられたロシアの国旗は、スーダンの乗員の訓練におけるロシアの影響を疑う余地は無いことを暗示しています。


 ※  この翻訳元の記事は、2017年5月31日に「Oryx」本国版(英語)に投稿されたもの
   を翻訳したものです。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる