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2024年8月25日日曜日

かつての夢をもう一度:タイの「DTI-1」多連装ロケット砲


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 当記事は2023年1月13日に本国版「Oryx」に投稿されたものを翻訳した記事であり、意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 1990年代半ばから後半は、タイ王国軍にとって「黄金の10年」を迎えようとしていた時期でした。18機の「F-16A」戦闘機の導入はタイ空軍をこの地域における軍事航空分野の先頭へと押し出し、陸軍は「M60A3」戦車「M109A5」155mm自走榴弾砲が追加されることによって増強されたのです。

 この黄金期で最もその恩恵を受けたのはタイ海軍であり、東南アジア初にして唯一の空母である「チャクリ・ナルエベト」を導入するに至ったことはよく知られています。6機の「AV-8S "マタドール"」艦上攻撃機と4機の「S-70B "シーホーク"」対潜ヘリコプターを搭載したこの空母は、18機の「A-7E "コルセア"」攻撃機と3機の「P-3T」対潜哨戒機、そして中国から調達した新型補給艦と6隻のフリゲートとともに、タイ海軍を今後数年間にわたってこの地域で最強の海軍に変えるはずでした。

 しかし、1997年のアジア通貨危機によって生じた大規模な通貨下落はタイが新たに導入した戦力に近隣諸国が対抗できる状態でなくなったことを意味したほか、タイ自身も財源不足で新たな装備の維持や更新に苦労することにさせてしまったのです。こうした状況のため、納入から2年後の時点で、9機の「AV-8S」のうち稼働状態にあったのは僅か1機だけとなってしまいました。
 
 程なくして「マタドール」は後継機を待つ余裕もないまま退役することを余儀なくされ、「チャクリ・ナルベト」は専用の艦載機を持たない空母となりました(この悲惨な状況は今日まで続いています)。「A-7E」や「P-3T」も同じ運命を辿り、誰もが認める地域大国になろうというタイの挑戦は長く続くことなく終わりを迎えたのでした。

 ここ最近になって、タイは近隣諸国を凌駕するような戦力の拡大を図るために必要な財源を得ましたが、他の分野では単に地域内のライバルに追いついたにすぎません。実際、タイは1930年代に東南アジアで初めて潜水艦を運用した後、中国から「S26T」級攻撃型潜水艦1隻という形で潜水艦戦力を(再)導入する(東南アジアで)ほぼ最後の国なのです。[1]

 タイ軍で著しく発展の歩みを見せたものには長距離砲兵戦力があります。これは2011年にタイの国防技術研究所(DTI)と中国との間で、大口径ロケット砲の研究と(最終的には)国内でライセンス生産を実施する契約を締結したことによる賜物です。[2]

 この締結の対象は「WS-1B(最大射程:180km)」「WS-32(最大射程:140km)」の2種類であり、タイではそれぞれが「DTI-1」と「DTI-1G(注:Gは誘導を意味する)」と命名されました。また、DTIは中国の122mmロケット砲の生産とさらなる開発に関するライセンス契約も締結し、これは「DTI-2」としてトラック「85式装甲兵員輸送車」に搭載されています

 フランスの「カエサル」155mm自走榴弾砲と一緒に、ローカライズされた(タイでは「M758」ATMGと呼称されている)イスラエルの「ATMOS 2000」自走榴弾砲と「スピアー」120mm迫撃砲の調達、そして中国の「BL904A」対砲探知レーダーの導入によって、タイは今後数年間にわたって地域における砲兵戦力の優位を確保できるでしょう。[3] [4] [5]

「DTI-1」を搭載する「6x6」型ボルボ製トラックには、小火器の射撃や砲弾の破片から乗員を保護する装甲キャビンが設けられている

 「DTI-1(WS-1B)」は1990年台初頭に登場した「WS-1」をベースに開発された302mm戦術ロケット砲システムです。各ロケット弾には4つの固定翼があり、150kgの弾頭を最大180km圏内の標的に投射することができます。「WS-1B」は中国人民解放軍地上軍(PLAGF)に対して最初の実演が行われたものの、彼らはこのシステムに関心を示すことはありませんでした。

 同システムが最初に成功したのは1996年のことでした。このとき、トルコがアメリカから「MGM-140 "ATACMS"」の生産ライセンスの売却を拒否された後に「WS-1B」を「TRG-300 "カシルガ"」としてライセンス生産する協定を締結したのです。

 ちなみに、「WS-1B」は2000年代により高性能な「WS-2」と共にスーダンにも輸出されました。

 その後、トルコの「ロケットサン」社はGPS/INS誘導を備えた「WS-1B(ブロックII及びブロックIII)」を開発しましたが、その代償として(ブロックIIIでは)射程距離と弾頭重量が犠牲となりました。[6]

 150kmの射程を誇るタイの「DTI-1G」には、中国の北斗衛星測位システムとリンクした誘導装置がインテグレートされており、これによって同システムは最大140kmの射程距離で40m未満の半数必中界(CEP)の実現が可能となっています。[8]

 「DTI-1G」の発射機には、アメリカの「MIM-104 "パトリオット" 」地対空ミサイルシステムのものに酷似した計4本の箱型キャニスターが縦横2列に搭載されています。これとは対照的に、「DTI-1」のロケット弾は蓋が備えられていない4本の巨大な発射管に格納されています。

 当初、タイは「DTI-1G」を6基(1個大隊分)と「DTI-1」を2基製造する予定だったものの、計画の遅延でDTIは結局は3基の「DTI-1G」を製造しただけであり、今は最終的にタイ陸軍が相当な数を導入することになるだろう新型モジュラー式発射機の開発完了を待っています。[8]

タイ独自の「DTI-1」移動式発射機 

提示されたタイの「DTI-1G」大隊の編成図

 「DTI-1」と「DTI-1G」の発射機は、どちらも市販のトラックに搭載されています。

 当初、「DTI-1」と専用の移動式再装填システムは非装甲のボルボ「6x6」型をベースにしていたものの、後に前者は小火器の射撃や砲弾の破片から乗員を守るためにキャビンが装甲化されました。

 「DTI-1G」用の車体は「8x8」大型トラックのイヴェコ製「トラッカー440」をベースにしたものですが、当初から装甲キャビンが設けられています。ただし、「DTI-1」と「DTI-1G」用の再装填車両はいずれも装甲キャビンが設けられていません。

 2022年、DTIは122mm無誘導ロケット弾と「DTI-1(G)」の両方の発射が可能な「タトラ815-7」をベースにした新たな「6x6」型移動式発射機を披露しました。[9]



 この国が最後に武器を取ったのは2008年の国境におけるカンボジアとの小規模な武力衝突であり、その後、この問題は国際司法裁判所を通じて解決されました。

 しかし、カンボジアとの間には未解決の国境紛争がいくらか残っており、両国が満足できる完全な国境の画定は未だに行われていません。再発する可能性は極めて低いものの、次にあるかもしれないカンボジアとの武力紛争は、新型ロケット砲が投入される可能性が最も高いシナリオです。

 カンボジア軍は大量の122mm多連装ロケット砲(MRL)を保有しているほか、近年には中国から「AR2」 300mm MRLを6基導入しました。[12]

 130km超の射程距離を誇る「AR2」はタイの「DTI-1」とほぼ同じ射程距離16発の300mmロケット弾を発射できる上に、はるかに重い弾頭を搭載しています(280kg vs 150kg)。こうした能力の向上は、新千年紀の軍事的な様相を変えたロケット砲の進歩を示す実例と言えるでしょう。

カンボジア軍の「AR2」300mm MRL

 タイはアメリカ製兵器の古くからの顧客であるにもかかわらず、防衛上の必要性から次第に中国へ目を向けるようになってきており、近年に導入された中国製兵器には、「VT4」戦車と「VN16」水陸両用戦車、「VN1」歩兵戦闘車、「S-26T」攻撃型潜水艦、「071E」級揚陸艦、そして「CY-9」及び「BZK005」MALE型U(C)AVが含まれています。

 中国との協力は、これまでタイに自国軍用の「DTI-1/1G」誘導式MRLを含む多くの高度な兵器システムを同時にライセンス生産することを可能にさせました。こうした契約は他国との間では実現不可能だったでしょう。

 中国の寛大さが、かつて抱かれていた東南アジアの"虎"になるというタイの野望の少なくとも一部を復活させ、その地位を維持するという、今度こそより現実的な見通しを可能にしたことは言うまでもありません。

「DTI-1(G)」及び122mmロケット弾の双方を発射可能な新型のモジュラー式移動発射機

[1] History of Royal Thai Submarines in World War Two http://www.combinedfleet.com/Royal%20Thai%20Submarines.htm
[2] Army of Thailand could purchase WS-1B and WS-32 MLRS rocket launcher systems from China https://www.armyrecognition.com/march_2014_global_defense_security_news_uk/army_of_thailand_could_purchase_ws-1b_and_ws-32_mlrs_rocket_launcher_systems_from_china_3103145.html
[3] Thailand inducts Chinese artillery radar https://www.shephardmedia.com/news/digital-battlespace/thailand-inducts-chinese-radar/
[4] Thailand Unveils New 155 mm Truck Mounted Howitzer https://defence-blog.com/thailand-unveils-new-155-mm-truck-mounted-howitzer/
[5] Royal Thai Army Producing Its Artillery https://www.asianmilitaryreview.com/2022/10/royal-thai-army-producing-its-artillery/
[6] TRG-300 GUIDED MISSILE https://www.roketsan.com.tr/uploads/docs/kataloglar/ENG/1628728014_trg-300.pdf
[7] WS-32 https://www.cndefense.com/tgaws/WS-32.html
[8] สทป. ดำเนินการทดสอบสมรรถนะและทดสอบทางยุทธวิธีต้นแบบรถฐานยิงจรวดหลายลำกล้องอเนกประสงค์ ณ สนามทดสอบ ศป. จ.ลพบุรี https://www.facebook.com/dtithailand/posts/pfbid022
[9] https://twitter.com/BuschModelar/status/1530870779977646083



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2024年7月26日金曜日

トルコからの新しい風:バングラデシュ軍の「TRG-300」多連装ロケット砲


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 当記事は、2022年10月19日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。

 バングラデシュは1億6,800万人以上の人口を誇る世界で8番目に人口の多い国であることは見過ごされがちと言っても過言ではありません 。この国の軍隊は225,000人もの兵力を有しており、彼らは世界各地で平和維持活動にも頻繁に派遣されるものの、長射程の兵器や現代的な戦闘機が著しく不足しています。

 2009年に始動した軍の近代化・戦力向上事業「Forces Goal 2030」は、隣国のミャンマーがすでに軍事力の大幅な飛躍的発展を遂げつつあることから、こうした新しい戦力の導入を目指したものです。

 「Forces Goal 2030」の一環として、バングラデシュ陸軍は、「WS-22」122mm多連装ロケット砲49基、セルビア製「ノーラ"B-52"」152mm自走榴弾砲(SPG)36台、中国製「SLC-2」対砲レーダー、標的獲得用としてスロベニア製「C4EYE」戦術偵察UAV36機の購入を通じて砲兵戦力の火力向上に重点を置いています。

 2021年、バングラデシュはこれまでの中で最も強力な兵器システムである最大射程約120kmの「TRG-300 "カスルガ(別名:タイガー)"」MRLを受領しました。ちなみに、「WS-22」MRLの射程は約45kmです。

 合計で18基の「TRG-300」MRLは、ダッカ近郊のシャバール駐屯地を拠点とするバングラデシュ陸軍の第51MRLS連隊に配備されました。同連隊は「WS-22」122mm MRLも運用しており、こちらは40発の122mmロケット弾を発射可能な状態であるほかに、さらに40発の予備弾をトラックに搭載していることが特徴です。「WS-22」用122mmロケット弾は慣性誘導を採用しているため、半数必中界(CEP)が約30mと通常の「グラート」122mm MRLが使用するロケット弾より精度が高いものとなっています。

 (厳密な起源は中国にありますが)トルコの「TRG-300」は4発の300mmロケット弾を120km(105kg弾頭)または90km(190kg弾頭)先まで発射することが可能で、そのCEPは10m未満です。

 「TRG-300」は、この国がトルコから調達した初の軍用装備ではありません。現在、バングラデシュ陸軍は2000年代から2010年代にかけて導入した「オトカ」社の「コブラI」及び「コブラII」歩兵機動車(IMV)を運用しています(これらは数多くの平和維持活動に投入されてきました)。

 また、バングラデシュでは、救急搬送車としてルーマニア・トルコが共同開発した「RN-94」APCも9台を運用しています。[1]

 現時点で「STM」社の案がバングラデシュの将来フリゲート計画における最有力候補となっていることを考慮すると、バングラデシュへの武器や装備の供給元としてトルコのシェアは拡大する傾向にあるようです。

 実際、バングラデシュがトルコの「バイラクタルTB2」UCAVや「ヒサール-O」地対空ミサイルシステムにも関心を寄せていると云われていることが、その傾向を裏付けしています。[2] [3]

トルコのエミネ・エルドアン大統領夫人が「ロケットサン」社を訪問した際に「TRG-300」を視察した:後ろに「ボラ」弾道ミサイルシステムの試作型があることに注目

 バングラデシュは、「TRG-300」の搭載車両としてロシアの「カマズ-65224」6×6型トラックを採用しています。

 「TRG-300」の自走発射機はモジュール式であることから、ロケット弾ポッドや発射管を交換するだけで同じ発射機で122mmや230mmの(誘導式を含む)ロケット弾の発射に使用することも可能です。これによって、このシステムの運用に関する柔軟性が大幅に向上する効果がもたらされます。また、「TRLG-122/230」誘導式ロケット弾は、レーザー目標指示装置を搭載したUAVが指定した目標に命中させることが可能という利点も有しています。

 つまり、ドローンとの相乗効果が「TRG-300」によって既に与えられている能力を大幅に拡大してくれるだけではなく、このMRLは新たな自走発射機の調達を必要とせずにバングラデシュの戦力をさらに向上させる費用対効果の優れた兵器システムとなり得るのです。

 バングラデシュ以外の「TRG-300」運用国としては、トルコとアゼルバイジャン、そしてUAEが確認されています。アゼルバイジャンとUAEは武力紛争で同MRLを投入しており、前者は2020年のナゴルノ・カラバフ戦争で「TRG-230」誘導式MRLと共にアルメニアの強固に防御された陣地や敵陣奥深くにいる標的に対して使用し、後者はサウジアラビア主導のイエメン介入時に展開させました。

 アゼルバイジャンの「TRG-300」は搭載車両としてバングラデシュと同じようにロシア製「カマズ-63502」8×8型トラックを採用しています。しかし、UAEは「TRG-300」を最大で16発も搭載できる巨大な「ジョバリア」MRLシステムにインテグレートするという、全く別の手法を選択したことは特筆に値するとしか言いようがありません。

国内に到着した直後に撮影されたバングラデシュ軍の「TRG-300」MRL

 「TRG-300」の導入は、バングラデシュが軍の長距離砲兵戦力を構築するための第一歩を踏み出したことを象徴しています。

「TRLG-122」や「TRLG-230」用の発射機を追加調達することなく使用可能にしている 「TRG-300」のモジュラー方式が自身を予算内で実現可能な範囲を多様化する最適な選択肢にさせていることを見過ごすわけにはいきません。

 軍事作戦中におけるUAVとの潜在的な相乗効果は、十分い機能する軍隊にとって最も重要である偵察能力を導入することができると同時に、低コストで誘導式MRLが持つ能力をさらに引き出すことができる可能性を秘めています。

 もし、2個目の「TRG-300」連隊(18基分)創設という不確かな噂が本当ならば、「Forces Goal 2030」達成に関するバングラデシュ軍の見通しは急速に良い方向へ向かってることになることは確かだと言えるでしょう。

バングラデシュが調達したのと同じ6x6型モジュラー式自走発射機に「TRLG-122(左)」と「TRLG-230(右)」ロケット弾ポッドが搭載されている

[1] APCs For Export: The Nurol Ejder 6x6 In Georgia https://www.oryxspioenkop.com/2021/04/the-nurol-ejder-6x6-turkeys-first.html
[2] Bangladesh to buy Turkey's Bayraktar TB2 combat drone https://www.middleeasteye.net/news/bayraktar-bangladesh-buy-drones
[3] Bangladeş'in Hisar-O+ ile ilgilendiği iddia edildi https://www.savunmatr.com/savunma-sanayii/banglades-in-hisar-o-ile-ilgilendigi-iddia-edildi-h15926.html

2023年11月23日木曜日

新たなる抑止力: パキスタンの「ファター」多連装ロケット砲


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

2021年8月24日、パキスタンは新たに開発された「ファター-1」誘導式多連装ロケット砲(MRL)の発射実験に成功しました。[1]

 今回の試射(映像)は、2021年1月に実施された弾体の飛行試験の成功に続くものですが、現実的な状況下でその機能と精度を証明した今回の射撃は、このシステムが量産されてパキスタン軍に仲間入りする前の最終テストだったのかもしれません。

 「ファター-1」はこの種の兵器では初めてパキスタン軍に採用されたものであり、同軍の精密打撃能力を大幅に向上させるでしょう。これはパキスタン軍自身によっても再確認されており、「この兵器システムは、パキスタン陸軍に敵領土の奥深くにある目標との正確な交戦能力を与えるだろう」と言及されています。[2]

 「ファター-1」は140kmの射程距離で約30~50mのCEP(半数必中界)と推測されているため、誘導方式には慣性誘導とGPS誘導を採用している可能性があります。

 パキスタンと中国の緊密な軍事関係を考慮すると、このMRLの設計が中国由来と考えるのも無理はありません。それにもかかわらず、ロケット弾用のキャニスターと140kmという射程距離は現時点で市場に存在しているか開発中である既知の中国製システムとは一致していないことから、「ファター-1」はパキスタンの技術者によって(おそらく中国の協力を得て)開発された、「A-100」無誘導ロケット砲の発展型である可能性が十分に考えられます。

 パキスタンは通常または核弾頭を搭載できる弾道ミサイルや巡航ミサイルを数多く開発・導入してきましたが、「ファター-1」の開発は同国陸軍の通常戦力を強化するための理にかなった次の措置と言えます。敵の部隊や基地に集中砲火を浴びせるための無誘導型MRLシステムが大量に運用されている一方で、指揮所や要塞化された陣地のようなより小さな標的を狙うには、まったく異なるアプローチが必要となるからです。

 「ファター-1」の140kmという射程距離は、世界中で運用されている(大抵は最低でも200km以上の射程距離がある)同世代のMRLシステムをはるかに下回っていますが、それでもインドの誘導型MRLシステムの射程距離をはるかに上回っています。

 インド陸軍が現在運用している「ピナカ」MRLは、最大で75kmの射程距離を持つ誘導ロケット弾を発射する能力があります。このMRLでは最大射程距離が95km以上に達する発展型が開発中とも言われていますが、それでも「ファター-1」の射程距離には全く及びません。[3][4]

 一旦就役すれば、「ファター-1」はパキスタン陸軍の作戦上の柔軟性を高めることに貢献するでしょう。同国陸軍では大量の大口径の無誘導型MRLと短距離弾道ミサイル(SRBM)が運用されていますが、「ファター-1」は能力的に両システムの中間に位置しています。

 これまでパキスタン軍は長距離に位置する小さな標的を攻撃するために無誘導ロケット弾の一斉射撃や巡航ミサイル、そして弾道ミサイルに完全に依存していました。しかし、この方法では得られる効果が少なく、同時に非経済的であることを想像するのは難しいことではないでしょう。

パキスタンの「A-100」MRL。「ファター-1」には誘導装置が組み込まれているため、無誘導のMRLシステムよりもはるかに高い命中精度をもたらします。

「ハトフ-2(アブダリ)」のような戦術兵器システム・短距離弾道ミサイルは「ファター-1」に比べて弾頭重量が大きいものの、命中精度が低いのが特徴です。この2つのシステムがパキスタン陸軍に存在することで、作戦上の柔軟性が大幅に向上します。

 将来的に開発が見込まれるものとしては、「ファター」のロケット弾をU(C)AVが照準した標的に命中させることできる精密誘導弾に変えるためのレーザー誘導キットを導入することが考えられます。この種のキットはすでにトルコとアゼルバイジャンの「TRG-230」MRLに導入されており、UAVとMRLの両方の能力を大幅に向上させています。

 まさにこの種の(UAVによる)偵察と精密誘導弾の相乗効果がナゴルノ・カラバフ戦争でゲームチェンジャーとなったことを証明しており、アゼルバイジャン軍はアルメニアの標的に何が直撃するのか気づかれることなく攻撃することができたのです。


 「ファター-1」の導入は、パキスタンの従来型ロケット砲部隊の一部がすぐにインドの全MRLを高精度でアウトレンジできるようになることを意味します。このことは、この地域における通常戦力のバランスをすでにパキスタンの有利になるように著しく覆していますが、パキスタンは「ファター」シリーズの開発の継続を通じてその射程距離を伸ばすことでその地位をさらに固めることができるでしょう。

 実際、パキスタンでは少なくとも200km以上の射程距離を備えている可能性がある、新システムの開発がすでに本格化している兆候がいくつか存在しているようです。

 編訳者注:2023年7月下旬にイスタンブールで開催された武器展示会「IDEX2023」で、出展したメーカーのGIDS社が「ファター-1」と「ファター-2」を展示しました。前者については上述のスペックどおりですが、後者については詳細不明です。[5]


特別協力: ファルーク・バヒー氏

[1] https://twitter.com/OfficialDGISPR/status/1430132439859580929
[2] Pakistan conducts successful test of 'indigenously developed' Fatah-1 guided MLRS: ISPR https://www.dawn.com/news/1642376
[3] No request for the development of Extended range Pinaka MRLs https://idrw.org/no-request-for-the-development-of-extended-range-pinaka-mrls-sources/
[4] India tests enhanced version of rocket used by Pinaka MRL
[5]IDEF 2023: GIDS Pakistan Presents Various Equipment Including FATAH Guided Multi Launch Rocket System
https://www.armyrecognition.com/defense_news_august_2023_global_security_army_industry/idef_2023_gids_pakistan_presents_various_equipment_including_fatah_guided_multi_launch_rocket_system.html

※  当記事は、2021年9月8日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
  です。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があ 
    ります。



おすすめの記事

2023年10月28日土曜日

戦友から敵へ:エチオピアの中国製「AR2」多連装ロケット砲

 著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ編訳:Tarao Goo

 2010年代は、エチオピア国防軍(ENDF)にとって大きな変動の時期でした。 

 この10年以内に、冷戦時代の老朽化した兵器は徐々に退役し(場合によってはアップグレードされ)、より近代的な装備に置き換えられていったのです。これは単に旧式のシステムをそのまま代替する場合もありましたが、ENDFは大口径の多連装ロケット砲、誘導ロケット弾、短距離弾道ミサイル(SRBM)の導入を通じて全く新しい戦力を導入しようと試みました。

 新たに導入した兵器のいくつかは、ENDFの近代化への取り組みを誇示するために報道や武器展示会で大きく取り上げられるものもありましたが、強力な運用保全(OPSEC)規則に沿って、意図的にスポットライトから外された兵器もありました。おそらく、それらは無防備な敵に火力を解き放つことができるその日までサプライズとして秘匿されていたのかもしれません。

 その兵器の一つが「AR2」300mm 多連装ロケット砲(MRL)であり、その多くは2010年代後半にエチオピアが中国から購入したものです。

 「M20」SRBM・「A200」誘導ロケットシステムと共に「AR2」を導入したことは、ENDFに近隣諸国がかき集めることができた同種装備よりも明確な優位性をもたらしました。

 サハラ以南のアフリカで大口径MRLの導入が確認されている国は、多数の北朝鮮製「M-1989」240mm MRLを運用しているアンゴラ、現在イラン製システムと中国の「WS-1B」及び「WS-2」MRLを運用しているスーダン、そして「AR2」の競合システムで同様の300mmロケット弾を使用する「A100」MRLを調達したタンザニアだけです。

 2010年代にエチオピアに到着した後、「AR2」はエリトリアとの不安定な国境の近くにあるENDFの北部コマンドに配属されました。 

 当時はまだ予測できませんでしたが、これはエチオピアの最高司令部がすぐに後悔することになる決定でした。なぜならば、2020年11月にティグレ州で武力衝突が勃発すると、「AR2」はこの地域に点在するENDFの基地を制圧し始めた分離主義勢力の軍隊によって即座に鹵獲されてしまったからです。また、(おそらく彼ら自身がティグレ人であったと思われる)部隊の指揮官が、「AR2」とそれを運用する兵士を連れて直接分離主義勢力に直接加わった可能性もあります。

 経緯がどうであれ、結果的にティグレ防衛軍(TDF)は大口径のMRL、誘導ロケット弾、少なくとも射程距離が280kmもある弾道ミサイルを突如として掌握することに成功したのです。 

 「AR2」はすぐに元の持ち主に対して使用され、今やエチオピア軍は調達したばかりのシステムの破壊力を実感する側となってしまいました。

 この最初の衝撃を克服した後、ENDFは鹵獲されたシステムを発見・破壊するために貴重なリソースを割く必要があり、現在までに少なくとも1台の「AR2」と再装填用のロケット弾を積載した輸送車が後にティグレ中部のテケズで奪還・破壊されました。[1]

 残った別のシステムの運命については、現時点でも不明のままです。

 「AR2」は中国人民解放軍陸軍で大量に運用されている「PHL-03」MRLの輸出仕様です。
ソ連の「BM-30 "スメルチ"」の設計に基づいているため、「PHL-03」と「AR2」はロシアのものと同じ構成を維持しており、300mmロケット弾用の12本の発射管を万山(ワンシャン)製「WS2400」8x8重量級トラックに搭載しています。

 ただし、中国のロケット弾はソ連のものよりも射程距離が大幅に伸びており(130km対70km)、「AR2」にはGPS/北斗/グロナスを取り入れたデジタル式射撃統制システムも組み込まれています。ジャミングを受けない場合、このような誘導方式はMRLの命中精度を大幅に向上させることが可能なため、対砲兵戦や高価値の標的への攻撃に使用できる可能性をもたらすという点で本質的に新たなパラダイムを切り開きます。

 今までのところ、エチオピアとモロッコだけが「AR2」の輸出先として知られています。

 各発射機にロケット弾がない状態が長引かないように、「AR2」には12発の再装填用ロケット弾を積載した、専用の「8x8 WS2400」ベース及び「10x8(または10x10)WS2500」トランスポーターを伴っています。 

 「AR2」が現代のシステムに比べて大きな欠点となっているのは、単にロケット弾ポッド全体を一度に交換するのではなく、各発射管にロケット弾を一本ずつ装填しなければならないということです。これについては、前者の方が装填速度がはるかに速く、敵に次の斉射するまでの時間を短縮できるからです。


  全く皮肉なことに、ENDFが過去10年間に備蓄してきた高度な兵器の大半がかつての持ち主である自身に向けられているため、たとえ彼らがこの紛争で優位に立ったとしても、再び(鹵獲された兵器の)代替装備を探すことを余儀なくされるでしょう。

 その間にも、死傷者が積み重なり続けて北部の地域の大半が混乱状態にあるため、エチオピアは苦しみ続けています。

「AR2」の前で中国人インストラクターと一緒に並ぶエチオピアの乗員(エチオピアにて)

 [1] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1352325064973189123

※  当記事は、2021年9月3日に「Oryx」本国版に投稿されたものを翻訳したもので。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。 

2023年10月21日土曜日

カダフィ大佐の遺産:死後から1年も残存し続けた大規模な砲兵戦力


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2011年末の第一次リビア内戦の終結以降、親カダフィ派組織的による組織的な反乱の噂が絶えません。しかし、2012年から2014年に発生した数々の攻撃や自動車爆弾によるテロを除くと、組織化された抵抗運動が実際に起きることはありませんでした。

 その代わり、カダフィ大佐の次男であるセイフ・アルイスラム・カダフィは政治的手段によって(かつて父親が手にしていた)権力を奪回することを目指しており、2021年11月に同年12月に実施されるリビア大統領選挙の候補者として届け出ようとしたものの、拒否されてしまいました。ところが、この決定は1か月足らずで覆され、彼は2023年のある時点で実施される予定の選挙で大統領候補として復活することになったのです。[1][2]

 2012年8月にトリポリで起きた一連の自動車爆弾によるテロ攻撃がなければ、この状況は変わっていたかもしれません。この爆弾テロに関する捜査によって、当局はトリポリ近郊のタルフーナにある軍備保管施設を掌握している民兵組織にたどり着きました。[3]

 2011年の革命以降に彼らがこの施設を管理していることは、政府の樹立と反政府武装勢力の武装解除に追われていた当局には気づかれていなかったようです。

 この「カティーバ・アル・アウフィヤ(信者旅団)」と呼ばれる民兵組織は、反カダフィ勢力を装いながらずっとカダフィ体制への復帰を画策することに成功していました。実際、この民兵組織は内部で「殉教者ムアンマル・カダフィ旅団」と呼ばれていたのです ![3]

 この旅団が管理していた軍備保管施設は単なる倉庫ではなく、数百もの野砲や自走砲(SPG)、多連装ロケット砲(MRL)、さらには「スカッド」弾道ミサイル発射機でさえも保管されているという、この種の施設としてはアフリカ最大級のものでした。  

 自動車爆弾テロや2012年6月に起きたトリポリ国際空港の一時的な占拠さえなければ、この施設における「ムアンマル・カダフィ殉教者旅団」の活動は、クーデターを引き起こすのに必要な戦力を構築するのに十分過ぎるほどの間にわたって気付かれなかった可能性があります。なぜならば、この施設にアルジェリア・エジプト・モロッコに次ぐアフリカで4番目に規模の大きな砲兵装備が保管されていたからです!

 同施設にあったロケット砲の多くは(1990年代に外国企業が退去した後の)少なくとも20年間はほとんど整備されずに保管されていたものの、保管庫と布製カバーがその大部分を良好な状態で維持することを可能にしたようです。2011年のNATOが主導するリビア介入時に有志連合軍の航空機が同施設に属する46の保管庫のうち40を攻撃し、保管されていた大砲の一部が損傷を受けました。

 それでも「殉教者ムアンマル・カダフィ旅団」は既に多くの火砲を使用可能な状態に修復したほか、共食い整備用として他のシステムから予備部品を調達し、さらに多くの火砲を修理している段階までいっていたようです。

複合施設で遭遇した「スカッド」ミサイル発射機の1つ。車体のエンブレムは「砲とミサイルに指示を」と書かれており、1999年の革命30周年記念閲兵式のために特別に施されたものである。

 「タルフーナ複合施設」は、もともと1970年代後半か1980年代前半に軍用装備の保管・修理・整備施設として建設されたものです。

 1970年代、カダフィ大佐はリビアを「イスラムの兵器庫」にするために大規模な兵器の買い占めに乗り出しました。この野心的な取り組みの一環として、彼は自国の軍隊が必要とする量をはるかに超える量の軍備を調達したわけです。

 入手した兵器システムの多くはリビアに到着後すぐに保管庫に入れられ、一部は後に中東・南米・アフリカの友好国(もちろん北朝鮮にも)に寄贈されましたが、残りは最初に到着した保管庫から外に出ることはありませんでした。実際、2011年に反政府軍がソクナの巨大な戦車保管施設を制圧した際、部隊に支給すらされていない無数の「T-55」戦車・「MTU-55」架橋戦車・「BMP-1」歩兵戦闘車(IFV)・「BTR-60PB」装甲兵員輸送車(APC)に遭遇しています

 こうした兵器は1970年代にアメリカやイスラエルとの世界的な戦争に参加するために購入されたものの、その来るべき出番がやってくることはありませんでした。その代わりとして、カダフィ大佐による42年にわたる統治を終わらせようとする反政府軍に動員されてしまったのです。

 この複合施設に保管されているSPGやMRLの多くが最後に運転されたのは、1999年にトリポリで行われた革命30周年記念の閲兵式に参加した時でした。「アフリカ合衆国」の発足を目指す取り組みを強化するため、カダフィ大佐はリビアが壊滅的な打撃がもたらされた10年にわたる制裁の後でも依然として侮れない国であることを世界に示すべく、リビア軍が導入したほぼ全種類の兵器を紹介する壮大な閲兵式を組織しました。[3]

 ただし、これらの大部分はこの時点でも長期保管の状態にあったことから、閲兵式のためにわざわざ再稼働させる必要があったことは言うまでもないでしょう。

 自身の民衆に感銘を与えようとするカダフィ大佐の試みは、リビア空軍に引退した「Tu-22」爆撃機を再稼働させて閲兵式の会場上空を飛行するよう命じるまでに至りました。10年以上も飛行していなかったこともあって飛行中の機体は激しく振動しましたが、その酷さはトリポリのミティガ空軍基地に着陸後のパイロットは地面にキスをして本拠地であるジュフラ基地への再飛行を拒否するほどだったようです。その後、この「Tu-22」はミティガに放棄されてしまいました。[5]

 閲兵式に参加した火砲やMRLはタルフーナへ送り返されて即座に再び保管状態に入り、リビアの軍隊を実際よりも強く見せるという役目を終えました。

2011年の有志連合軍によって破壊される前のタルフーナ軍備保管複合施設:この施設は2016年から2017年にかけて撤去された

 「ムアンマル・カダフィ殉教者旅団」は複合施設にある一部の火砲を複合施設への入り口をカバーする固定式バンカーに変えようと試みたにもかかわらず、彼らの守りは最終的に敗れ、その場にいた民兵の殺害や逮捕に至りました。[3]

 「タルフーナ複合施設」から強制的に退去させられた後の旅団は事実上消滅し、こうしてジャマーヒリーヤの時代に回帰するという彼らの夢に終止符が打たれたのです。

複合施設の正面入り口をガードしていた「2S1 "グヴォズジーカ"」122mm自走榴弾砲と「ZU-23」を搭載したトヨタ製テクニカル
複合施設を防備していた「殉教者ムアンマル・カダフィ旅団」に用いられていたテクニカルと北朝鮮の「BM-11」120mm MRL
46棟の保管庫のうちの1棟で見つかった「パルマリア」155mm自走榴弾砲:保管庫の屋根が有志連合軍の空爆で崩落している点に注意
すでに保管庫の外へ移動されていた十数台以上の「パルマリア」:リビアで最も新しい(装軌式)自走砲として、これらのほぼ全てが「リビアの夜明け(後のGNA)」によってリビア国民軍(LNA)やイスラム国の戦いで再び使用されることになる


「2S1 "グヴォズジーカ"」122mm自走榴弾砲」:「2S1」は「パルマリア」と共に2011年のカダフィ政権軍で広く使用されていた唯一の自走砲だった

放置された4台の「2S3 "アカーツィヤ "」152mm自走砲:1990年代に大部分が退役した「2S3」は現在のリビアでも稀な存在となっている

「2S1」及び「2S3」中隊で用いられる「MT-LBu」指揮車両


チェコスロバキアの「SpGH "ダナ"」152mm自走榴弾砲 :これらは全てが1990年代に退役していた。理由は不明だが、リビアで最も高性能な自走砲であるにもかかわらず、どの勢力もDANAを運用可能な状態に戻そうとはしていない



チェコスロバキア製「RM-70」MRL:「DANA」と同様に1990年までにはほぼ全てが退役していた

 現役へ復帰させる試みはなされていませんが、「RM-70」のうち少なくとも1台はタルフーナでAPCに改造され、もう1台は即席のSAM/ロケット砲として使用されました。

この「RM-70」のドアに施されたインシグニアには「勝利か死か」の文字が書かれている

「RM-70」は40発分の発射管を装備しており、さらに40発の122mmロケット弾を再装填用として搭載することができた。

北朝鮮の「BM-11」MRL:リビアの「BM-11」のほとんどはポリサリオ戦線やスーダンなどの他国軍へ寄贈されたものの、リビアでも数台が運用され続けている。

2台の「BM-11」の隣には中国製「63式」100mm MRL(ありふれた「63式」107mm MRLと混同しないように注意)が停まっている(画像の左):興味深いことに、中央の「BM-11」は給水車に改造されている

牽引される「M-46」野砲の背後には、中国製の「63式」130mm MRLが破壊された保管庫の外に投棄されている:「63式」はリビアで非常に不評であり、使用された機会は極めて限られたものだったが、「ムアンマル・カダフィ殉教者旅団」は、そのうちの数基を修復しようと試みた


見渡す限り「M-46」130mm野砲が並んでいる:この射程距離は「D-30」122mm榴弾砲より圧倒的に凌駕していたものの(27km対15km)、リビア軍は1990年代を通して「M-46」と北朝鮮の152mm野砲の両方を保管していた


数台の「スカッド」移動式発射機(ミサイルなし)もこの施設に存在していた

1969年のカダフィによるクーデター直前に、リビア軍は少数の「M109」155mm自走榴弾砲をアメリカから引き渡された:これらも46棟ある保管庫の1棟で遭遇した


リビア政府軍に持ち去られる戦利品たち:タルフーナ複合施設の発見と占領はカダフィ支持者が抱いたクーデターへの希望に終止符を打ったが、それは撮影された兵器たちの本格的な運用の始まりを告げたに過ぎなかった - 実際、その大半は今日まで使われ続けている。

[1] Libya election commission says Saif Gaddafi ineligible to run
[2] Libyan court reinstates Saif Gaddafi as presidential candidate https://www.aljazeera.com/news/2021/12/2/libya-court-reinstates-gaddafis-son-as-presidential-candidate
[3] Libya seizes tanks from pro-Gaddafi militia https://www.bbc.com/news/world-africa-19364536
[4] LIBYA. Military parade https://youtu.be/TIGehN-6JgU

※  当記事は、2023年1月3日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもの
  です。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があ
  ります。



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