2022年5月11日水曜日

オリックスのハンドブック:ナイジェリアの軍用ドローン(一覧)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 過去10年間、ナイジェリアは外国の企業や機関と共同で数種類のUAVを設計してきました。これらのプロジェクトの大半、特に「Gulma」と「ツァイグミ」は設計に失敗したか、あるいはナイジェリアでの生産に入るにはあまりにも利便性が限られていたようです。

 それにもかかわらず、彼らの存在は自身の設計者たちに無人航空機システムの設計における貴重な経験を提供するものであり、いつの日か本格的なナイジェリア製UAVの設計・製造に活用することができるでしょう。

 2020年の後半には、ナイジェリアがまもなく中国から「翼竜II」を2機、「CH-4B」を4機、「CH-3A」を2機追加で受け取ることが報じられましたが、おそらく後者は2014年に同型機が就役して以来、運用中に失われた機体を置き換えるものだと思われます。[1]

 おそらく最も驚くべきことに、2021年2月にはナイジェリアで1機のUAE製「Yabhon フラッシュ-20」が目撃されました。このモデルについては2016年にナイジェリアが発注したことが最初に報じられましたが、これまでにナイジェリアで運用されている姿が目撃されていなかったものです。[2]

  1. この一覧目的は、ナイジェリアが現時点で保有している無人航空機(UAV)のストックを包括的に分類することにあります。
  2. 一覧を合理化し、不要な混乱を避けるために、ここにはナイジェリアの防衛産業に関連する軍用クラスのUAVかドローンのみを掲載しています。また、ナイジェリア軍によって試験が行われたものの、最終的には導入されなかったUAV(RQ-11「レイブン」シーベル「カムコプターS-100」など)はこのリストに含まれていません。
  3. 1つの名称を持つドローンの派生型が複数ある場合は、そのように追加されます。
  4. 可能な限り、機体名の後に導入や運用が開始された年を記載しています。
  5. 発音や読み方が不明の機体については、英語表記のままにしています。
  6. UAVの名前をクリックするとナイジェリアで運用中の機体の画像を見ることができます。


無人偵察機


無人戦闘航空機


垂直離着陸型無人航空機

訓練用無人航空機
  • Mugin (ドローン操作要員の訓練に使用)
  • Amebo I [2010] (英国のクランフィールド大学と共同で設計されたが、就役せず)
  • Amebo II [2011] (同上)
  • Amebo III [2012] (同上)

[1] Nigerian Air Force getting Wing Loong, CH-3 and CH-4 UAVs https://www.defenceweb.co.za/aerospace/unmanned-aerial-vehicles/nigerian-air-force-getting-wing-loong-ch-3-and-ch-4-uavs/
[2] Nigeria has received Emirati UAVs https://www.defenceweb.co.za/aerospace/unmanned-aerial-vehicles/nigeria-has-received-emirati-uavs/




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2022年5月7日土曜日

期待以上の応え:オランダがウクライナに供与する砲兵戦力とAFV


著:ステイン・ミッツァー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo


 ロシアが2月24日にウクライナへの侵攻を開始する以前に、同国への多大な軍事支援を約束した最初のヨーロッパ諸国の1つがオランダです。この支援は、タレス製「スクワイア」地上監視レーダー2基、「AN/TPQ-36」対砲レーダー5基、「シーフォックス」自走式機雷処分用弾薬2セット、(対物)狙撃銃100丁とその弾薬3万発、ヘルメット3000個とボディアーマー2000着で構成されていました。[1]

 さらに、侵攻が始まった後には、「スティンガー」携帯式地対空ミサイルシステム50基とミサイル200発、「パンツァーファウスト3」個人携帯式対戦車砲50基とそのロケット弾400発を含む追加支援がすぐに発表されました。[2]

 ほどなくして、オランダの国防相は「作戦上の機密を保護するため、ウクライナへの武器引き渡しに関する詳細な情報をこれ以上は明かさない」旨を公表しました。[3]

 それでも、オランダ国防省は3月31日までに5000万ユーロ(約63億9500万円)以上の武器をウクライナに引き渡したと報告したことを踏まえると、ウクライナへの軍事支援の流れが妨げられることなく続いていることは確実と思われます。[4]

 カイサ・オロングレン国防相は「オランダが軍事支援を継続するにつれて、その量はさらに増加する」旨を述べ、すでにより多くの武器供与が計画中であることを示唆しました。

 オランダの歓迎すべき変化として、同国防相は「ウクライナにロシア軍を阻止するために必要な武器類を提供することについて、金銭は重要な検討課題ではない」とも明言したことが注目されます。[4]

 4月19日、オランダのマルク・ルッテ首相は、ウクライナに対して装甲戦闘車両(AFV)を含む重火器の供与も開始することを公表しました。[5]

 この件は、ルッテ首相とこれまで何度も自国への重火器の供与をヨーロッパ諸国に働きかけてきたゼレンスキー大統領との電話会談の結果として実現したものです。

 アメリカやいくつかの中欧諸国はこの働きかけに十分に応えたものの、スペイン、イタリア、ドイツといった国々はウクライナの窮状をほぼ無視しています。結果としてドイツはこの問題を外交政策的に大失敗させてしまい、ショルツ政権に対する圧力が高まってしまっていることは言うまでもありません。

 オランダは過去20年間に重装備の大部分を整理しており、「レオパルド2A6」戦車、「M270」MLRS、「ゲパルト」自走対空砲などの兵器は予算削減の影響で全てが売却などの処分を受けましたが、オランダ軍は依然として過去20年間に退役した装甲戦闘車両やその他の重火器類のかなりの数を維持し続けています。

 現時点でこれらの大半は国内に多く存在する軍用倉庫に保管されており、海外からの買い手を待ち続けている状態にあります。こうした兵器には、最大で500台の「YPR-765」装甲兵員輸送車や各種AFV、13門の「FH-70」155mm榴弾砲が含まれています。特に後者は2001年から保管状態にありますが、残念ながら今でも買い手が見つかっていません。[6]

 同様に、将来的に「YPR-765」の売却で得られる収益が(2012年以降現役で使用されていないこれらのAPCの)保管費用を上回る可能性はほとんど無きに等しいと思われます。したがって、こうしたデメリットが保管兵器をウクライナへ無償譲渡される道を開くことになるでしょう。

 しかし、自体は驚くべき方向に展開しました。オランダがウクライナにAFVだけでなく、最新で高性能を誇る「パンツァーハウビッツェ2000NL(PzH2000NL)」155m自走榴弾砲(SPG)も多数供与することを実際に検討していると報じられたのです。[7]

 提案された協定の下では、オランダが(6〜8台と思われる)「PzH2000」を供与し、ドイツが自国かポーランドでこの自走砲を使用できるようにウクライナ兵を訓練すると共に必要な砲弾を提供することになっています。

 「PzH2000」は各国からこれまでにウクライナに供与された地上展開型火力支援アセットの中で最も高性能なものであり、その供与はウクライナへの支援に対する本気度を明確に示すものとなります。

 ウクライナの友好国がこれまで供与した兵器の多くは旧式化した兵器か余剰となったストックであるため、この自走砲の供与は、オランダを高度なレベルの支援を約束する意思がある極めて少数の国に昇格させることになるでしょう。

オランダ陸軍の「PzH2000」自走榴弾砲(砲身基部の砲口速度レーダーに注目)

 「PzH2000」はこの地球上で最も高性能な自走榴弾砲の1つであり、生存性・機動性・長射程・高い発射速度といった性能と目標に最大限の効果をもたらす多様な最新型の砲弾を兼ね備えています。

 この自走砲の高度な性能にはMRSI(同時弾着射撃)を用いた攻撃が可能なことが含まれており、これを行う場合、搭載されている自動装填装置は最大で5発の砲弾が同時に弾着するような軌道を描くように適切な装薬を自動で選択する仕組みとなっています。そのような任務をサポートするため、発射された各砲弾の速度を測定して正確な修正射撃を行うことも可能な砲口速度レーダーを砲身基部に備えていることも特徴です。

 精密な誘導打撃を可能にする(この自走砲が使用できる)誘導砲弾は存在するものの、ウクライナがそのような特殊な砲弾を受け取れるかどうかは不明です。しかし、供与予定であるオランダの対砲レーダーが「PzH2000」の有効性に多大な貢献をしてくれるかもしれません。

 「PzH2000」は頑丈なAFVですが、すでに何度もウクライナの砲兵陣地や隠れ家を狙っているロシア軍の(武装)ドローンから守るために、行動時には地対空ミサイルシステムの支援を得ることが理想的といえます(注:航空戦力が優勢な敵を相手にする場合はエアカバーが必須であることは言うまでもないでしょう)。
 
 オランダは陸軍で運用していた「M109」自走榴弾砲を更新するために2002年に合計で57台の「PzH2000」を調達しましたが、予算削減が公表された2003年になると、オランダ陸軍には「PzH2000」が39台しか配備されないことが取り決められました。 配備されないことになった残りの18台は、高額のキャンセル料を払う代わりに、製造されてからすぐに売りに出されてしまいました。[8] 

 その翌年、オランダ陸軍は予算削減のせいでさらに24門の「M270」MLRSシステムも退役させなければなりませんでした。

 2007年と2011年の2回にわたる予算削減によって、オランダ陸軍はそれぞれ12台と6台の「PzH2000」を退役させられてしまい、最終的には現役の自走榴弾砲はわずか18台まで減少し、さらに数台が訓練用の車両として用いられるにまで至ったのです。[8]

 しかし、2014に発生したロシアのクリミア占領とドンバス戦争によってもたらされたヨーロッパにおける安全保障の激変は、多くのヨーロッパ諸国に防衛政策の見直しを余儀なくさせました。この状況はオランダでも同様であり、政府はオランダ軍の能力を低下させた20年間にわたる予算削減政策を覆そうと試みています。

 その変化をもたらすために必要な資金がまだ確保されていないにもかかわらず、すでにオランダ国防省は売りに出していた「PzH2000」を中古市場から引き上げています(注:もはやこれらの自走砲を売りに出す余裕が無くなったということ)。[9] 

 ドンバス戦争で砲兵戦力が重要な役割を果たしたことから、今やオランダ陸軍が「PzH2000」を再び重要なアセットとみなすと同時に、多連装ロケット砲の復活も検討していることは大して驚くことではありません。

 幸いなことに、製造直後に売りに出された「PzH2000」の買い手が見つかることは一度もありませんでした。
 
 防衛政策見直しの第1段階として、2007年に段階的に退役させた12台の「PzH2000」を保管庫から出して大規模なオーバーホールを実施しました。このうち6台はオランダ陸軍に再就役して合計で24台のSPGが運用されることになり、残りの6台はすでに運用中であった「PzH2000」を置き換えました(注:置き換えられた側の「PzH2000」は保管状態に移行しました)。[10]

 2026年以降、57台ある「PzH2000」のうち25台が寿命中途近代化改修(MLU)を受けることになっていますが、軍への追加資金が投入可能になれば、この数が増える可能性はあり得ない話ではないと思われます。[11]

 この観点から考えると、少なくとも6台の「PzH2000」がオランダ軍のストックからウクライナに供与されることに対して、ドイツはさらに多くの同型自走榴弾砲を保管していることは、明らかに不可思議に思えます。

 ウクライナに供与されることで生じるオランダの「PzH2000」の不足分は、供与された数だけドイツによって補填される可能性があります。 ウクライナに対する重火器の供与に関するドイツの消極性をオランダが実質的に「PzH2000」を供与することでカバーしていると考えれば、その推測は理にかなっているように思えます。


 おそらくそれほど高度なものではないでしょうが、ウクライナに供与される予定のAFVが「PzH2000」より数多くあることは確実かもしれません。

 ウクライナに供給されるAFVの種類は明らかにされていませんが、 2012年に退役した後もいまだに約500台が保管されているはずの「YPR-765」シリーズであることはほぼ間違いないようです。[12] [13]

 その供与されるグレードについては、7.62mm軽機関銃または12.7mm重機関銃を1門装備したAPC(装甲兵員輸送車)型である可能性が高いと思われます。なぜならば、25mm機関砲を装備したIFV(歩兵戦闘車)型の「YPR-765」 は、すでにその大部分がエジプトとヨルダンに売却済みだからです。

 確かにIFV型より性能は劣りますが、APC型は比較的シンプルな構造であるため、訓練やメンテナンス、ロジスティクス面で心配する必要はほとんどありません。実際、トルコは同じような理由で、軍事作戦の際にシリアやリビア側の部隊に自国の「ACV-AAPC(「YPR-765」 APCの亜種)」を多数供与しています。

 イギリスが「FV103 "スパルタン"」、アメリカが200台の「M113」 APCをそれぞれウクライナへ供与するのと同様に、「YPR-765」APC型は本質的に「戦場のタクシー」です。つまり、装甲防御力よりも良好な機動性と小型化に重点を置き、戦場の往来で歩兵を安全に輸送するためのAFVというわけです。

 オランダの「YPR-765」は「FV103」や「M113」に比べて装甲防御力が僅かに強化されていることに加え、車体後部両側面に大きな収納バスケットが設けられていたり、機関銃手を保護する装甲キューポラも装備しています。

 イギリスから供与される「マスティフ」「ウルフハウンド」といったMRAPと「ハスキー」歩兵機動車に対する上述の装軌式APCの主な長所として、荒れ地やぬかるみを走破できる能力が挙げられます。この能力は、(ウクライナでは「ベズドリージャ」と呼ばれる)「ラスプティツァ」という泥沼状態が容赦なく発生することで悪名高いウクライナ東部の大地できっと役立つことでしょう(注:後日、「YPR-765」がウクライナへ供与されたことが確認されました)。

保管状態にあるオランダの「YPR-765」APC

 これまでのところ、供与で話題となっている砲兵戦力は「PzH2000」だけが関係しているように見えますが、「FH-70」155mm牽引式榴弾砲もストックされているその全量が譲渡されることは間違いないでしょう。

 もともと、この榴弾砲は旧式となった「M114」155mm榴弾砲の改修中にオランダの砲兵戦力を維持するため、1990年に15門を一気に導入されたたものです。これらは2001年まで運用された後に保管状態を経て売りに出されましたが、その当時ですでに比較的古い設計の牽引砲であったこともあって買い手が見つかることはありませんでした。

 「FH-70」は欧米諸国が用いる全ての155mm砲弾を発射可能であり、(砲弾の種類によるものの)24km~30kmの射程と(搭載されたエンジンによって時速20kmで自ら移動可能という)機動性は、現在のウクライナで運用されているほとんどの牽引砲よりも格段に優れています。

 訓練と砲弾は(どちらも「FH-70」を運用中である)エストニアかイタリアによって提供することが可能なため、各国でこの榴弾砲の供与に関する詳細な事項を調整することができるでしょう。

 これらの榴弾砲を供与することについて、 オランダ軍の戦力を損なうことない上に実質的にコストがかからないという事実は確かに喜ばしいことであることには違いないでしょう。

オランダが保管中である13門の「FH-70」155mm牽引式榴弾砲はウクライナへ譲渡可能と思われます

 多くのNATO諸国がウクライナからの重火器提供の呼びかけに応えてきましたが、オランダはその呼びかけをはるかに上回る貢献をしたと言えます。

 そうすることで最も高性能なシステムの一部を供与しただけではなく、隣国の優柔不断さもカバーして、少なくともNATOという同盟におけるドイツ政府の面子を立てることを可能にしたのです。

 したがって、上述のとおりにオランダが供与で生じた「PzH2000」の損失分をドイツから見返りに補填されたとしても、あまり驚くような事柄ではありません。

 ウクライナにとって、「PzH2000」は(特にオランダの対砲レーダーと組み合わせた場合)これまで供与を受けた中で最も高性能な地上配備型の火力支援アセットとなります

 アメリカとカナダの「M777」牽引式榴弾砲、ポーランドとチェコのソ連製自走榴弾砲と多連装ロケット砲、フランスの「カエサル」トラック搭載式砲兵システム、オランダの「PzH2000」、そしておそらく近いうちにベルギーの「M109A4BE」が供与されることで、ウクライナは地球上で最もユニークな砲兵戦力を急速に構築しつつあります。これが、ロシアの好戦性に対するウクライナの主権を支持するNATO加盟国の決意を示していることは誰の目から見ても明らかでしょう。
 
偽装を施された「YPR-765」(「M2」重機関銃にも注目)

[1] Ukraine conflict: Netherlands to supply weapon locating radars to Ukraine https://www.janes.com/defence-news/ukraine-conflict-netherlands-to-supply-weapon-locating-radars-to-ukraine/
[2] Dutch to supply anti-tank, air defence rockets to Ukraine https://www.reuters.com/world/europe/dutch-deliver-200-air-defence-rockets-ukraine-govt-letter-2022-02-26/
[3] Ollongren wil niets kwijt over verdere levering wapens Oekraïne https://www.leidschdagblad.nl/cnt/dmf20220303_37634896
[4] The Netherlands has already supplied over 50 million euros worth of weapons to Ukraine https://nltimes.nl/2022/03/31/netherlands-already-supplied-50-million-euros-worth-weapons-ukraine
[5] https://twitter.com/MinPres/status/1516393082148773892
[6] Defensie verkoopt overtollig materieel https://www.rd.nl/artikel/501829-defensie-verkoopt-overtollig-materieel
[7] Ukraine conflict: European countries supply Kyiv with more weapons https://www.janes.com/defence-news/weapons-headlines/latest/ukraine-conflict-european-countries-supply-kyiv-with-more-weapons
[8] Materieelprojecten Nr. 99 BRIEF VAN DE MINISTER VAN DEFENSIE. Aan de Voorzitter van de Tweede Kamer der Staten-Generaal Den Haag, 17 april 2012 https://zoek.officielebekendmakingen.nl/kst-27830-99.html
[9] Vuursteun Commando https://www.defensie.nl/organisatie/landmacht/eenheden/oocl/vuursteun-commando
[10] https://www.facebook.com/matlogco/posts/2240037096053772
[11] Pantserhouwitser 2000NL https://www.defensie.nl/onderwerpen/materieel/voertuigen/pantserhouwitser-2000nl-pzh2000
[12] Materieelprojectenoverzicht - Prinsjesdag 2013 https://zoek.officielebekendmakingen.nl/blg-251575.pdf
[13] YPR-pantserrupsvoertuig https://www.defensie.nl/onderwerpen/materieel/voertuigen/ypr-pantserrupsvoertuigen

※  当記事は、2022年4月25日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したも
  のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
  あります。


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2022年5月3日火曜日

無人機による航空阻止:リビアにおける「バイラクタルTB2」UCAV



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)は、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争において、アゼルバイジャンがアルメニアに勝利するために極めて重要な役割を果たしたことでよく知られています。

  歴史上、1つの兵器システムだけで勝利した戦争はありませんでしたが、TB2なしでアゼルバイジャンがめざましい勝利を得ることができなかっただろうことに疑う余地はないでしょう。

 あまり知られていないのは、2019年から2020年にかけて国際的に承認されたリビア政府(GNA)を救い、UAEやエジプト、そしてロシアから多大なる支援を受けた「リビア国民軍(LNA)」のハリーファ・ハフタル将軍による敵対的な乗っ取りを阻止したTB2の功績です。[1]

 リビアにおけるTB2の取り組みが認知に欠けているのは、特にシリアやナゴルノ・カラバフでの空爆の映像が公開された数と比べた場合に、少しもTB2による空爆の模様が公開されていないことに原因があると思われます。

 もう1つの要因としては、メディアが6年以上続いたこの内戦にほとんど注目しなかったことも挙げられるでしょう。

 とはいえ、「バイラクタルTB2」は、UAEとロシアがリビアに配備したロシア製防空システム「パーンツィリS-1」のかなりの数を撃破したことで知名度を上げました。伝えられるところによれば、「パーンツィリS-1」は少なくとも15台がTB2によって撃破され、そのうち9台は72時間以内に喪失したとのことです。現時点で、報じられている15台の損失のうち9台は視覚的な証拠によって確認できています。[2] 

 LNAの作戦機もTB2の空爆を受ける側となり、リビア西部と中部の空軍基地に駐機していた貨物機と戦闘爆撃機がそれぞれ3機ずつ破壊されました。その結果として、前述の空軍基地から実施されるLNAの継続的な航空作戦は著しく危険なものとなり、主要なアル・ワティーヤ空軍基地での活動さえも停止に追い込まれてしまいました。[3] 

 事実上、アル・ワティーヤは2019年の夏から「バイラクタルTB2」によってロックダウンされていたのです。

 貨物機が地上で積載物を降ろすことが危険となったことは、最終的にLNAに物資のほとんどを陸路での輸送を余儀なくさせ、トリポリの部隊に物資を供給し続けることが極めて困難なものとなってしまいました。

 

 LNAにとってさらに悪いことに、「バイラクタルTB2」がリビア西部を通ってトリポリに向かう補給部隊の車列に放たれ、「パーンツィリS-1」に護衛されていても、彼らが頭上を飛ぶTB2の格好の餌食になったことが実証されました。

 実際、単に「パーンツィリS-1」が存在するだけで補給部隊が標的となる可能性が高まったように思われます。この防空システムは頭上の敵機(TB2)と交戦することは不可能同然であることに加え、GNAにその位置を特定するのに十分な通信・電波信号の情報をもたらしたからです。 

 ほかのケースでは、移動中に補給部隊の車列を護衛していた兵士がセルフィーしていたこともありましたが、これも作戦上の安全性に有益だったはずがなかったことは言うまでもないでしょう。[4]

 地上では、トルコはトリポリのGNA部隊を再編して同市の郊外を効果的に防衛できるようにし、最終的にはLNAに戦いを仕掛けることを可能にしました。

 UAEができなかったことですが、トルコは単に武器や装備を提供するだけでなく現地部隊の訓練も開始しました。この方法はかなりの効果をもたらし、今では対戦車ミサイル(ATGM)や対物ライフルで武装し、支援射撃や無人機の支援を受けたGNA軍は、今や通り道を敢然とLNAのキルゾーンに変えることができるようになりました。

 ハリーファ・ハフタル将軍たちが実際に敗北を喫したのは2020年6月でしたが、2019年5月にトルコの最初の支援が到着した時点で彼の運命が決したと言えます。

2020年7月、アル・ジュフラ空軍基地上空で「バイラクタルTB2」から投下された「MAM」誘導爆弾の直撃を受けた2機の「IL-76」貨物機の残骸。

 TB2によるドローン攻撃は、2019年から2020年半ばまで、LNA軍に大きな被害を加え続けました。

 同期間に、トルコ海軍の「G」級フリゲートもリビア領海内に展開していました。「G」級フリゲートが装備している「SM-1MR」艦対空ミサイルの射程距離の長さは、「ACV-30 "コルクート "」35mm自走対空砲(SPAAG)の配備と同様に、地上のGNA部隊にさらなる「防空の傘」を提供しました。

 「バイラクタルTB2」は対空砲が届かない高さを飛行するだけでこのような兵器からの攻撃を避けることができますが、「翼竜II」といった中国製UCAVはTB2よりもはるかに低い高度で運用されています(注:実用最大高度が低いためにトルコが配備した防空システムの有効射程から逃れられないということ)。

 「MIM-23 "ホーク "」SAM部隊と「GDF-003B」35mm 高射機関砲の配備と相まって、リビア西部における  UAEによる「翼竜Ⅰ」及び「翼竜Ⅱ」ドローンの運用が効果的に封じ込められました。

 2020年4月末頃にGNAがLNAをトリポリ直近から押し返すことに成功したことで、リビア西部からの混乱した撤退をもたらし、トリポリを占領して自称リビア大統領に就任するというハフタル将軍の長年の夢が絶たれたのです。

  それからまもなくして、 GNA軍は5月18日にアル・ワティーヤ基地を占領しました。[3]

 1か月も経たないうちの2020年6月5日、戦略的要衝に位置する(LNAの巨大な補給基地として機能していた)タルフーナの都市が占領され、リビア国民軍(LNA)が首都トリポリの攻略を目指して約14カ月も展開してきた攻勢が正式に終了したことを世に知らしめました。[5]

 1年足らずで「バイラクタルTB2」はLNA軍を追い出した一方で14機が撃墜されましたが、厳しい戦局を変えるにしては小さな代償で済んだと言えます。

 トルコにとって非常に効果的なドローンの使用は、全く新しい外交政策である「バイラクタル外交」を形づくるために、彼らの増大する外交発言力をさらに押し上げています。

 低い経済的・人道的なコストで政治的・軍事的な影響の最大化を追求した、規模が小さい介入を基本とする「バイラクタル外交」は、本質的に現代の紛争の特徴に比類なく適した新しいタイプの戦い方を構成しています。 

 それを担う無人機(TB2)は比較的安価なものですが、「バイラクタル外交」は実際には国家の運命を決めたと言えるほど効果的なものでした。なぜならば、「バイラクタルTB2」がなければ GNAはリビアで全滅していた可能性が十分にあり得たからです(注:仮にバイラクタル外交がリビアやナゴルノ・カラバフのように国家の運命を左右したとしても、この外交で使われるTB2は安価で発展性がある無人機であり、決して驚異的な武器ではありません)。



  1. リビアで「バイラクタルTB2」の手で破壊されたことが確認された目標の一覧は、以下のとおりです。
  2. このリストには、画像または動画による視覚的証拠で確認された、破壊された車両及び装備だけが掲載されています。
  3. 場合によっては、地上で撮影された映像だけで判定されている兵器類も掲載されています。 ただし、それらは武装ドローンの使用が現地の目撃者によって報告されているため、無根拠なものではありません。
  4. おそらく、その運用にできる限り注目されないようにするためか、TB2がリビアを空爆した映像は今までにほとんど公開されていません。
  5. したがって、TB2によって破壊された兵器などの数は、ここに記録されているよりもかなり多いと予想されます。
  6. この一覧は、より多くの映像等が入手可能になり次第、更新されます。
  7. 各装備名に続く数字をクリックすると、それぞれの破壊された車両や装備の画像が表示されます。
上の国籍マークが以下の一覧に示された破壊された兵器の運用主体です

                 
戦車(1)


装甲戦闘車両 (2)
  • 1 「アル・マレード」装甲兵員輸送車: (1)
  • 1 MSPV「パンテーラT6」 装甲兵員輸送車: (1)


多連装ロケット砲:MRL (6)


地対空ミサイルシステム (11)
  • 2 「2K12/SA-6 "クーブ "」: (1) (2)
  • 1 「パーンツィリ-S1」: (1)
  • 7 「パーンツィリ-S1」: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
  • 1 「パーンツィリ-S1」: (1)


航空機 (6)


各種車両 (44)

[1] Tracking Arms Transfers By The UAE, Russia, Jordan And Egypt To The Libyan National Army Since 2014 https://www.oryxspioenkop.com/2020/06/types-of-arms-and-equipment-supplied-to.html
[2] https://twitter.com/Archer83Able/status/1263253266416230400
[3] Al-Watiya - From A Libyan Super Base To Turkish Air Base https://www.oryxspioenkop.com/2020/09/al-watiya-airbase-capture.html
[4] https://twitter.com/Acemal71/status/1261714776612356096
[5] Disaster at Tarhuna: When Haftar Lost Another Stronghold In Crushing Defeat To The GNA https://www.oryxspioenkop.com/2020/09/disaster-at-tarhuna-how-haftar-blew-yet.html

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。