著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ
ウクライナに対する支援は世界中の至る所から届けられています。しかし、軍事援助やウクライナからの難民に国境を開放することで支援可能な国々がある一方で、政治的な理由やウクライナとの(あらゆる意味での)距離の問題のためにそうした行動を行えない国々も存在していることが見落とされがちです。
このような国々の1つに、一般的には台湾と呼ばれる中華民国があります。台湾はウクライナから公式に国として承認されていないにもかかわらず、人道的支援や資金、さらには小型ドローンまでウクライナに届けています。
こうした支援の大半は市民と企業からのものです...ウクライナの人々への共感のみならず、北京に主権を否定され、長年にわたって外国による侵略の恐怖に直面してきた台湾とウクライナの類似点を彼らが認識していることは明らかでしょう。
台湾はウクライナを侵略したロシアに制裁を加えている西側諸国にも加わっており、その対応としてモスクワへの半導体の輸出を停止しています。[1][2]
ロシア企業は電子機器や軍用機器の製造を台湾製の半導体に全面的に依存していることに加え、世界的な半導体不足のおかげで、台湾による輸出禁止以前の時点ですでにロシアはその供給量の確保に苦心してきました(制裁はこの状況をさらに悪化させます)。[2]
したがって、台湾によるウクライナの窮状への最大の貢献は「ウクライナに何を提供するか」ではなく「ロシアに何を提供しないか」にあるのです。
台湾からのその他の援助については、これまでにドローン企業「Xダイナミクス-台湾」による合計で35,000ドル(約470万円)相当の(公式には民生用として使用される)VTOL型偵察用無人機10機、(医療)物資、少なくとも3300万ドル(約44.6億円)に上る医療機関やウクライナ難民向けの資金援助が挙げられます(注:「Xダイナミクス」社自体は香港に拠点を置くグローバルに展開しているドローン企業です)。[3]
また、2月以降には(約十数人と推定される)台湾人義勇兵がウクライナ軍に加わり、貴重な戦闘経験を現地の軍人にもたらしました。[4]
EUが「一つの中国」政策に傾倒する中でも台湾は欧州諸国との関係をさらに強化しているため、今後の支援は追加の資金援助と(医療)物資で構成されることになるかもしれません(微妙な立場の台湾は積極的に武器支援をすることが難しい環境にあるということ)。
2022年3月中に行われた台湾政府主導のキャンペーンによって、ウクライナ市民や近隣諸国の難民を支援するための膨大な量の物資のみならず 3300万ドル(約44.6億円)もの人道援助用の資金が集められました。
台湾の蔡英文総統、頼清徳副総統、そして蘇曾長首相もそれぞれが給与の1か月分を人道支援のために寄付したことは極めて高度なレベルでのウクライナとの連帯の表明以外の何物でもありません。[5]
現在でもウクライナと台湾はいかなる外交関係も結んでいないため、こうした台湾の市民や政府からのドッと寄せられる支援は非常に特別なものと言えるでしょう。
- 以下に列挙した一覧は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の際に台湾がウクライナに提供した、あるいは提供を約束した装備などの追跡調査を試みたものです。
- この一覧はさらなる支援の表明や判明に伴って更新される予定です。
ドローン
- ドローン・ヴィジョン「リボルバー860」VTOL型武装UAV [2022年3月、4月または5月] (ポーランドに売却し、後にウクライナへ譲渡)
- 10 Xダイナミクス-台湾「エヴォルヴ2」VTOL型偵察用UAV [2022年6月] (「Xダイナミクス-台湾」社からの寄贈)
小火器の部品
- 6000ドル(約80万円)相当の「AR-15」アサルトライフル用部品 [2022年2月以降] (市民からの寄贈)
(医療) 物資
- 27トン分の医療物資 [2022年2月]
- 650トン分の各種物資 [2022年3月]
資金援助
- 300万ドル(約4億円)キーウ特別市向け [2022年4月] (市民から寄せられたもの)
- 500万ドル(約6.75億円) ウクライナにある6つの医療機関向け [同上] (同上)
- 2500万ドル (約33.7億円)ウクライナの難民向け [同上] (同上)
[1] The Republic of China (Taiwan) government strongly condemns Russia’s invasion of Ukraine in violation of the UN Charter, joins international economic sanctions against Russia https://en.mofa.gov.tw/News_Content.aspx?n=1328&s=97420
[2] Taiwan’s semiconductor ban could spell catastrophe for Russia https://www.investmentmonitor.ai/special-focus/ukraine-crisis/taiwan-semiconductor-ban-russia-catastrophe
[3] Taiwan firm donates NT$1 million in drones to Ukraine military https://www.taiwannews.com.tw/en/news/4479918
[4] Wary of China threat, Taiwanese join Ukraine’s fight against Russia https://www.washingtonpost.com/world/2022/07/03/taiwan-fighters-ukraine-war-russia-china-threat/[5] Taiwan president to donate salary for Ukraine relief efforts https://www.aljazeera.com/economy/2022/3/2/taiwan-president-to-donate-salary-for-ukraine-relief-efforts
※ この記事は2022年8月10日にOryx本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもので
す。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所がある
場合があります。
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