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2024年10月27日日曜日

思わぬ伏兵:PKKのDIY式対空砲


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマン(編訳:Tarao Goo)

 当記事は2021年に本国版「Oryx」(英語)に投稿されたものを翻訳した記事です。意訳などで僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります(本国版の記事はリンク切れです)。

 トルコから公式に撤退してから約8年経過した今でも、クルド労働者党またはクルディスタン労働者党(PKK)はゲリラ戦を展開しており、イラク北部の山岳地帯からトルコに潜入しています。脅威を絶つことを決心したトルコ軍は、隠れ家や武器庫を無力化するためにPKKの勢力圏への攻勢を頻繁に実施してきました。

 トルコ軍ヘリコプターによる襲撃や攻撃ヘリの脅威を食い止めるべく、PKKは独自に改造した各種の重機関銃(砲)を使って、ヘリコプターのみならず機体から降り立つ兵員も狙った攻撃をしています。

 広い視野を得られ、迫りくる空中の脅威を遠くから発見することが可能な山間部の高い位置に備えられてきた場合が一般的だったこともあり、PKKの対空砲とその操作要員は過去数年間でトルコ軍のヘリコプターに対して小さな成果を上げてきました。

 これらの成功の大半はヘリコプターの撃墜ではなく損傷を与える程度のものでしたが、PKKの支配地域への不時着に至るケースもありました。トルコのヘリボーンへの対抗や抑止には少しも成功していないものの、PKKの対空砲は依然として強力な脅威であり、真剣に対処する必要があります。

 一般的にシリア軍やイラク軍から鹵獲した旧ソ連または中国製の兵器を原則としたPKKの対空砲に求められる主要な条件は、荒れた地面や山岳地帯を輸送するためにいくつかに分解できることです。その理由で、ありふれた(中国製コピーを含む)「DShK」12.7mm重機関銃と「KPV」及び「ZPU-1」14.5mm機関砲は特に人気が高く、その他にも数種類の対空砲が混在していることが判明しています。

 ごく最近では、PKKは隣接する地下洞窟内の安全な場所から操作可能なリモート・ウェポン・ステーションを導入し始めています。このシステムを運用する部隊については、ほとんど知られていません。

 PKK内には「殉教者デラル・アメド防空部隊」と呼ばれる部隊が存在しますが、これまでのところ、その任務は潜入用パラモーターと自家製の爆弾で武装した攻撃用ドローンの運用に限定されているようです。したがって、対空砲は各作戦区域のPKK部隊によって運用されている可能性が高いと思われます。おそらく、トルコ軍のヘリコプターの飛来を別の区域に警告するための全域的な警報システムも備えているのでしょう。

 対空砲が所定の場所に運び込まれて組み立てられた後は、使用する必要が生じるまで秘匿され続けるのが一般的な流れです。対空砲は頻繁に点検され、現地の状況下で確実に継続的な運用ができるように整備されていると思われます。

 下の画像の「KPV」14.5mm機関砲は、秘匿された対空砲の典型的な様子を見せています。被発見率を下げるために木の下に配置され、布と木の枝で覆われているため、上空どころか地上の遠距離からでさえ視認することが不可能に近くなっています。[1]


 この「KPV」は、ほとんどの重機関銃に施された改造の一部も披露しています- 特に注目すべきはマズルブレーキ、三脚、銃床、肩当てです。異彩を放つマズルブレーキは「KPV」に特有の強烈な反動を幾分和らげてくれるものの、命中精度をある程度維持するためには短いバースト射撃しかできません。さらに照準を合わせやすくするため、銃身のキャリングハンドルの後方に照星が追加されました(注:機関砲の後部には照門も追加されています)。


 もう一つの簡易対空システムは、「ZSU-23-4 "シルカ"」自走対空砲(SPAAG)から取り外された「2A7/2A7M」機関砲をベースにしたものです。[1]

 前述の「KPV」と同様に、この機関砲も新たにマズルブレーキ、照星、三脚が装着されました。その大口径ゆえに、「2A7」は反動が大きいおかげで単発かごく短い連射しかできません。このため、実質的には対空砲というよりは対物ライフルに近い性格となっています。

 それでも、23mm砲弾はヘリコプターに対して非常に強力な損傷を与えます。つまり、砲手が「KPV」で同様の(あるいはそれ以上の)効果を得るよりも、目標に命中させるのに必要な弾数は大幅に少なくなるというわけです。

 改造型「KPV」と同様に、この対空砲は2020年6月から9月にかけて実施されたトルコのクローイーグル・タイガー作戦の際に鹵獲されました。[1]


 「KPV」がPKKによって対空砲として使えるように改造されたのに対し、「ZPU-1」は最初から軽量の対空砲として設計されたものです。

 「ZPU-1」は通常であれば二輪式の砲架で移動しますが、ラバや人力で輸送できるように数個のコンポーネント(重量80kg)に分解することが可能となっています。「KPV」と同様の砲弾を約2km先まで発射可能な最大射程、容易な操作性と専用の対空照準器、そして大容量の弾倉はPKKに重宝されているに違いありません。

 下の画像の個体は2021年4月と5月に実施されたクローライトニング・クローサンダーボルト作戦でトルコ軍に鹵獲されたものですが、砲と砲架の大部分が錆で覆われています。これは、おそらく全ての対空砲が適切な手入れをされていたわけではないことを示しています。


 より近年における発明品は、「DShK」12.7mm機関銃(またはその中国の派生型である「54式」や「W85」)をベースにした一連のリモート・ウェポン・ステーション(RWS)です。こうしたRWSの主な利点は、砲手が敵に晒されるリスクを冒さずに安全な洞窟から操作できることにあります。

 欠点としては、状況認識の大幅な低下と弾倉が空になるごとに人力で再装填する必要があることが挙げられます – どのヘリコプターも交戦圏内の飛行時間が短いことを考慮すると、後者は想像以上に問題とはならないかもしれません(注:交戦時間自体が短いため)。

 前述の対空砲と同様に、「DShK」RWSも山の谷間を進む歩兵を標的にする副次的な役目を担っています。

 クローライトニング・クローサンダーボルト作戦の際に、少なくとも3基のRWSがトルコ軍に鹵獲されました。どれもが地下洞窟の付近に配置されていたようです。[2]

 これらは近くにいる敵兵への強力な抑止効果をもたらす一方で、その存在はトルコ軍にPKKが潜む洞窟が本当に近くにあることを即座に警告するデメリットも生じてしまいます。
作戦機やUCAVから投下される精密誘導弾や火砲によってさらに強化されたトルコ軍の数的・戦術的優位を考慮すれば、後に彼らの洞窟が全滅するのはほぼ確実と言ってもいいでしょう。[3]



 前述の多用途兵器システムの開発に多大な努力を注いでいる一方で、PKKが保有している中で最も恐れられている兵器は、いまだに携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)であり続けています。明らかに、システムの複雑性と精密な電子機器が搭載されているおかげで、MANPADSが積極的に使用されたケースはほとんどなく、過去には使用前にトルコ軍に鹵獲されたものもありました。

 PKKにとって最も注目すべき成功例は、2016年5月に「9K38 "イグラ"(NATOコード:SA-18 "グロウス")」MANPADSでトルコ軍の「AH-1W "スーパーコブラ"」攻撃ヘリコプターを撃墜したことです。[4]

 この撃墜はMANPADSがもたらす深刻な脅威を際立たせましたが、これ以降に撃墜に成功したことはありません。


 トルコ軍のヘリコプターがイラク北部で自在に飛び回るのを阻止するため、自由に使用可能な(ATGMを含む)手段を何でも活用しようとしているPKKの試みが紛れもなく機知に富んでいるものの、同時に、トルコ軍のヘリボーン作戦に直面した彼らが対処しなければならない全体的な欠点を象徴しています。

 相応の武器なしに、利用可能なアセットと革新的な能力の双方で優勢な敵に対抗できる希望はほとんど残されていません。それでも、PPKのDIY式対空砲の脅威は強力と言えます。なぜならば、ローテクゆえに対抗することが困難だからです。

 トルコ側には、対空銃座に対して何らかの対抗策を実行に移せるかどうかが注目されます。例えば、無人機に作戦予定区域内の稜線をスキャンして不審な形状や動きの有無を確認させることが挙げられます。

 武器や通貨の流入不足だけでなく、近年におけるPKKの対空砲の消耗率は、彼らが対抗するトルコの装備に損耗をはるかに上回っている可能性があります。新たな重機関銃を入手するよりも早く重機関銃を失った場合、トルコが実行可能な対抗策を考え出す前に、重機関銃の配備と運用上の有効性が低下することも否定できません。


[1] Northern Iraq PKK-Weapon Caches of Operation ‘Claw Tiger’ https://silahreport.com/2020/08/27/northern-iraq-pkk-weapon-caches-of-operation-claw-tiger-miles-check-this/
[2] Claw-Lightning and Claw-Thunderbolt: Turkey Engages PKK In Iraq https://www.oryxspioenkop.com/2021/04/claw-lightning-and-claw-thunderbolt.html
[3] https://twitter.com/COIN_V2/status/1389131420614991874
[4] Video appears to show Kurdish militants shooting down Turkish military helicopter https://www.washingtonpost.com/video/world/video-appears-to-show-kurdish-militants-shooting-down-turkish-military-helicopter/2016/05/14/d64e96e2-19f6-11e6-971a-dadf9ab18869_video.html

ヘッダー画像:Abdullah Ağar、特別協力:COIN_V2(敬称略)


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2024年9月7日土曜日

盛況な産業基盤に支えられて:セルビアの無人機飛行隊(一覧)


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 当記事は、2022年1Ⅰ月6日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳した ものであり、意訳などで僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。

 セルビアの兵器産業は盛況であり、小火器から高度な誘導兵器まで、セルビア軍用のみならずUAE・キプロス・トルクメニスタン・バングラデシュなど多くの海外顧客向けにも開発・生産されています。

 その中には、すでにセルビア陸軍でも少数が運用されている数多くの無人航空機も含まれるようになりました。また、「ペガズ011」無人戦闘航空機(UCAV)、「ガヴラン145」徘徊兵器、「X-01 "Strsljen"」ヘリコプター型UCAVといった、より意欲的なシステムの開発も進行中です。

 それにもかかわらず、セルビア軍で運用された初のUCAVは中国製となってしまいました。2020年に6機の「CH-92A」を導入した取引には、中国で国産の「ペガズ011」のさらなる開発と試験を実施するための支援も含まれているとのことです。[1]

 セルビア空軍にUCAVの運用経験を提供するために導入されたと思われるほかに「FT-8C」空対地ミサイル(AGM)用のハードポイントを2つだけしか装備していないことから、「CH-92A」はセルビアが大型のUCAVを獲得するための通過点に過ぎないことは確実でしょう。

 当初、セルビアは中国の「翼竜Ⅰ」に関心を示したと噂されていたものの、後にトルコの「バイラクタルTB2」を調達する意向が明らかとなりました。[2]セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領さえも自国がTB2の購入待ちの行列に加わったと報告し、2023年の納入開始を希望しています。ただし、セルビアが最終的に「バイラクタルTB2」を導入できるかは疑わしいようです。[3]

 現在は「セルビア・トルコ間の黄金時代」を迎えていますが、セルビアがTB2を導入した場合、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、特にセルビアが今でも領土と主張しているコソボといった近隣諸国とトルコの関係や販売の見通しを悪化させることになりかねません。こうした懸念が存在する限り、TB2を導入する可能性は厳しいと言えるでしょう。

セルビア空軍の中国製「CH-92A」UCAV

 セルビアでは、「CH-92A」UCAVと共にイスラエルの「オービター1」や国産の「ヴラバツ」無人偵察機も運用されており、この2機種は第72特殊作戦旅団と第63空挺旅団で使用されています。

 「ブラバツ」は情報収集・監視・偵察(ISR)任務用に、機首の下に小型の電子光学センサーを搭載していますが、2022年には6発の「M22」40mm無誘導爆弾(擲弾)を搭載した「ブラバツ」のUCAV型も公開されました。ただし、これが軍に採用されるどうかは現時点で不明です。[4]

国産の「ヴラバツ」無人偵察機は6発の40mm擲弾で武装可能

 セルビアにおける武装ドローンの開発で、さらに大胆な試みと言えるものが「シーラ750C」 UCAVでしょう。「シーラ750C」軽飛行機の無人機バージョンであるこの新型機は、高価なUCAVに代わる低コストの代替策として開発されました。

 警戒監視任務向けに最適化されたこのUCAVは、胴体下部から突き出ているスタブ・ウィングに二つの兵装用パイロンを装着することが可能で、これには「BR-7-57」57mmロケット弾ポッド2基か、射程が約10kmある「RALAS」空対地ミサイル2発を搭載することができます。

 残念ながら、この「シーラ750C」UCAVは2015年のプロジェクト発表から一度も顧客を得ることができませんでした(注:「ユーゴインポート」社のウェブカタログには今でも掲載され続けているため、売り込み自体を断念したわけではありません)。

「シーラ750C」 UCAV

 より一般的なドローンとしては、13kgの弾頭を145km圏内に飛ばすことができる(徘徊モードでは50km)徘徊兵器「ガヴラン(レイヴン)」という形で開発が進められています。

 当初の設計では、見た目は徘徊兵器に転用した無人偵察機そのものであり、普通の滑走路からの離陸を可能にする三輪式の降着装置さえ備えていましたが、今では地上のキャニスターから射出されるコンパクトなモデルに進化しました。

 専用のキャニスターは18発か27発用の箱型発射機を備えたトラックかトレーラーに搭載されます。

徘徊兵器「ガヴラン145」

 1995年、セルビアの領空は「MQ-1 "プレデター"」の実戦デビューが果たされた舞台でした。それからの約30年でセルビアは高度な無人機を独自に設計・生産・調達するまでに至っています。

 トルコからの「バイラクタルTB2」の導入は政治的な理由で実現しそうにありませんが、「ペガズ011」のさらなる開発を進めるほかに中国から「翼竜I」あるいは「CH-95」などのUCAVを追加調達することで、セルビアが求めるUCAVの要件をほぼ満たすことができるでしょう。

 その他の見込まれる展開には無人偵察機や徘徊兵器の導入も挙げられますが、これはセルビア国内に確立された無人機産業のおかげで現地調達が可能という利点があるためです。

  1. 各機及び兵装の名前をクリックすると、セルビアにおける当該装備の画像を見ることができます。


無人偵察機 - 運用中

無人偵察機 - 試作 / 未採用

無人戦闘航空機 - 運用中

無人戦闘航空機 - 試作

徘徊兵器 - 試作 / 未採用

[1] https://twitter.com/200_zoka/status/1395129230506217475
[2] Erdoğan promised Serbia Turkish Bayraktar TB2 drones: Vucic https://www.dailysabah.com/business/defense/erdogan-promised-serbia-turkish-bayraktar-tb2-drones-vucic
[3] Serbia Joins ‘Queue’ for Turkish Bayraktar Drones https://www.thedefensepost.com/2022/09/09/serbia-queue-turkish-bayraktar-drones/
[4] Serbian MoD develops armed version of Vrabac small UAV https://www.janes.com/defence-news/news-detail/serbian-mod-develops-armed-version-of-vrabac-small-uav


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2024年5月25日土曜日

空のように高い野望:アルメニアの無人機計画(一覧)


著:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 当記事は、2023年1月4日に本国版「Oryx」ブログ(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。

 アゼルバイジャンが無人航空機(UAV)の導入に大規模な投資を行っていたことを考えると、アルメニアが初歩的な無人機による偵察能力しか持たず、ほぼ無人攻撃能力なしで2020年のナゴルノ・カラバフ戦争に挑んだことは意外だったかもしれません。[1]

 2020年7月に起こったアゼルバイジャンとの武力衝突の際に、アルメニア国防省は国産の徘徊兵器を使用してアゼルバイジャンの戦車3台を撃破したと自慢していましたが、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争は(こうした熱心な主張があるにもかかわらず)当時のアルメニア軍にそのような戦力が本当に存在しないことを示してしまいました。[2]

 しかし、これは国内で入手可能なものが不足していたことが原因ではないと確実に言えるでしょう。なぜなら、アルメニアの防衛企業は過去4年間だけで23種類もの徘徊兵器を設計していたからです!同様に多数の無人偵察機も日の目を見ており、数多くの設計案が試作段階まで到達することに成功していました。

 ところが、アルメニア国防省はこうした無人兵器やその他の有望な国産兵器には投資するどころか、ロシアから4機の「Su-30SM」多目的戦闘機を調達するために僅かしか使えない予算を投じることを選んでしまったのです。[3] このことは、2020年の戦争でUAVが不足し、専用の兵装を購入する予算が無いために4機の「Su-30SM」を実戦に投入できなかったという悲惨な結果だけを残しました。

 アルメニアで実際に運用されたUAVの大部分が初歩的な性能しか備えていなかったようです。それらの中で最も多かったのはロシアのAFM製「プテロ-E5」をコピーした「X-55」であり、この機体は搭載されたGPS受信機を用いてウェイポイントを基準にあらかじめプログラミングされたルートを飛行し、一定の間隔で写真を撮影するという機能を有しています。これで撮影された画像は飛行後に人力で回収され、商業衛星の画像に匹敵する品質の最新情報を提供しますが、限界があることは言うまでもありません。

 「クルンク」のような高性能な機種は、2020年の戦争に影響を及ぼすには数があまりにも少なすぎました。このようなアルメニアの深刻な偵察能力の不足を補完するため、ロシアは2020年の戦争中に多数の「オルラン-10」を引き渡しました。[4] また、ロシア製のUAV「グリフォン-12」も軍で運用されています。

 さらに、ロシアはアルメニアの無人偵察機「UL-300 (ザラ"421-16E")」 と「UL-350 (スーパーカム"S350")」 の背後にある技術の供給源でもあり、後者はアルメニア陸軍で運用されていることが確認されています。[5]

 2020年後半に引き渡された「オルラン-10」は、「ダヴァロ・ディフェンス・システムズ」によって開発された新しい無人偵察機のベースとしても活用されています。[6]

 ロシアからのUAVの納入とそれに伴う技術移転は、アルメニアが比較的短期間で無人機による偵察能力を向上させることに役立ったものの、アルメニアの無人機メーカーと彼らが手掛けた国産機は再び隅に追いやられてしまいました。

 イスラエルの無人機が切れ目なく続いてアルメニア領内に不時着したおかげで、アルメニアの無人機メーカーはそれらの機能を模倣しようと試みたため、この国独自の無人機はますますイスラエル起源の技術をベースに設計されるようになっています。アルメニアのUAVメーカーである「ダヴァロ」社の取締役は、2020年にイスラエル製のUAVが研究のために自社に移管されていることを認めました。[6]

 そして、「UAVLAB」社の工場を撮影した画像はイスラエル製の「スカイストライカー」が分解されていることを明らかにしたほか、同社の「UL-450」「オービター3」をベースに設計されていることは見抜くには僅かな分析能力も必要としないでしょう。「ダヴァロ」社は次に「ハロップ」「DEV-3」徘徊兵器(LM)のベースとして活用し、同時にトルコの「STM」社の「カルグ」LMもコピーしています
 
「DEV-3」はイスラエルのIAI製「ハロップ」をベースに開発されたか、少なくともインスパイアを得ている徘徊兵器である:左下はより小型の「DEV-1」

「フレーシュ-7」 徘徊兵器:イスラエルの「ヒーロ-30」にインスパイアを受けたと思われるが、直にベースにして開発されたわけではないようだ

 2020年のナゴルノ・カラバフ戦争で無人戦闘航空機(UCAV)が主導的な役割を果たした姿を痛いほど直に目にしたアルメニアが、それ以降に同様のアセットを導入しようと試みたのは理にかなっているとしか言いようがありません。

 アルメニアが隣国のイランから武装ドローンの導入を模索しているという報道がなされましたが、アルメニア国防省はそれどころか国産システムの導入を検討しているようです。[7]

 最近、「ダヴァロ」社は最大で4発の「SMA A5」または「AGB-003」誘導爆弾を搭載できるUCAV「アラレズ」を開発しています。この「アラレズ」計画はまだ開発の初期段階にあることから、運用可能なシステムが誕生するのは数年先になるでしょう。
 
2022年3月に初披露された「アラレズ」UCAV(試作機):主翼下の「SMA A5」誘導爆弾に注目

 アルメニアで開発された無人機は見応えはありますが、それをさらに発展させ、いつか大量生産に入るための国防省からの(財政的な)支援がないことを考えると、なおさらそう思います(注:国防省の支援を受けないメーカーは国からの制約を受けない独創的な開発が可能である一方、資金難に苦しむことに変わりがない現状を皮肉ったもの)。

 2020年夏にはLMの量産が開始されるとの報道があったにもかかわらず、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争ではアルメニアのLMによる攻撃はたった2回しか記録されていません。[8] [9] [10]

 とはいえ、アルメニアが軍事的な優位性を向上しつつあるアゼルバイジャンに対抗するために活用するべく、自国で開発された無人機に大きな期待をかけていることは極めて明白です。

 アルメニアの主要な無人機メーカーである「ダヴァロ」社は、ロシアの「STC:特別技術センター("オルラン-10"の製造者)」と「クロンシュタット("オリオン" UCAVの製造者)」社、そして2022年にはUAEの「エッジ」グループと協力協定を締結しました。同協定は、アルメニアの無人機分野におけるイノベーション率をさらに高めることに役立つ可能性を秘めているため、今後の展開にも目を離すことはできません。  

  1. 以下の一覧の目的は、アルメニアの無人航空機(UAV)及び無人戦闘航空機(UCAV)及びその兵装、徘徊兵器を包括的に網羅することにあります。
  2. アポストロフィー内の部分は、他の呼称や非公式な呼称です。
  3. 一覧の合理化と不必要な混乱を避けるため、ここには軍用レベルの無人機のみを掲載しています。
  4. 各機種及び兵装に続く角括弧内の年は、当該装備が最初に目撃または報じられた年を意味しています。
  5. 各機種及び兵装の名前をクリックすると、アルメニアにおける当該装備の画像を見ることができます。

無人偵察機 - 運用中

無人偵察機 - 試作/ 未採用

無人戦闘航空機 - 試作 / 未採用


徘徊兵器 - 運用中


徘徊兵器 - 試作 / 未採用


訓練用無人機など - 試作


[1] Death From Above - Azerbaijan’s Killer Drone Arsenal https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/death-from-above-azerbaijans-killer.html
[2] https://twitter.com/ShStepanyan/status/1284549170892877831
[3] Knights Of Yerevan - Armenia’s Su-30 Flankers https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/knights-of-yerevan-armenias-su-30sm.html
[4] https://twitter.com/Zinvor/status/1324073095490142209
[5] https://twitter.com/wwwmodgovaz/status/1574760539758202880
[6] https://twitter.com/ralee85/status/1284954167795159040
[7] Armenia Wants Iranian Drones, Says Top Iranian Military Official https://hetq.am/en/article/149460
[8] Artsakh to mass produce combat drones, trials successfully completed https://en.armradio.am/2020/05/20/artsakh-to-mass-produce-combat-drones-trials-successfully-completed/
[9] https://twitter.com/Karabakh_MoD/status/1320408314807812100
[10] https://twitter.com/Danspiun/status/1470844958085197832
[11] Davaro News https://davaro.am/News