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2023年3月18日土曜日

さらなる輸出市場の拡大:トルコがインドネシア向け哨戒艇の輸出に着手した



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 トルコが海軍の分野でほぼ自給自足の状態を成し遂げる方向に急速に進んでいることもあり、近頃では同国で設計された艦艇が世界中の海軍で運用されています。

 この野心的な努力の一環として、トルコの造船所では売り出す軍用艦艇のラインナップを常に拡大し続けているようです。2013年にトルコが現在海軍で仕様されている高速攻撃艇(FAC)を置き換える新型のFACの入札を開始した際に、30近くの国産で設計された案から選定できたことからも、同国での軍用艦の設計に関する流行の規模が決して誇張されたものではないことが証明されています。[1] [2]

 今やトルコは独自設計のヘリコプター搭載型強襲揚陸艦(LHD)からフリゲート、さらには小型潜水艦までも国内外の顧客に売り出しています。そのため、近い将来にトルコが世界最大の軍用艦艇の輸出国の1つになる可能性があることも考えられないことではありません。

 この素晴らしい偉業は少なからずとも防衛装備のほぼ全てを国産化することを意図しているトルコ政府のおかげで達成された産物です。そして、このことは、遠くないうちにトルコの造船所が輸出用の艦船を売り出す際に、艦載兵装を外国製に依存する必要がなくなることも意味します。

 20年ほど前のトルコは依然として自国の海軍のニーズを外国が設計した艦船に大きく依存しており、艦船を輸出すること自体が非現実的な夢物語だったことを考えると、今ではその状況が劇的に変化したことが一目瞭然でしょう。
 
 以前にパキスタン、カタール、UAE、インド、トルクメニスタン、ジョージア、ナイジェリア、エジプト、ウクライナに艦艇を輸出した後、今やトルコは東南アジアの新市場への進出に向けて動き出そうとしているようです。

 トルコの軍事関連メディア「サヴンマTR」のインタビューの中で、駐トルコのインドネシア大使であるラルー・ムハンマド・イクバル氏はトルコから軍用艦を調達することに関する交渉が始まったことを明らかにし、「トルコとの海軍システムに関する協力が相当な規模で増えるでしょう」と述べ、さらに「私たちは防衛産業との関係を向上させるためにより多くのことを行う必要があります...(中略)そのため、インドネシアがトルコから軍用艦を調達する可能性について、いくつかの交渉が始まったのです」とも述べました。[3]

ラルー・ムハンマド・イクバル大使(左)とイスマイル・デミル防衛産業次官(右)

 インドネシアが最初に興味を示したトルコ艦艇は、「TAIS(タイス)」造船所が設計した「KPC 65(65m級大型哨戒艇)」でした(注:「タイス」側では「LPC 65」が制式な名称とされています)。[4]

 強力なパンチ力を秘めた全長65mという大きさの船が「哨戒艇」と分類されていることについて困惑する方もいるでしょうが、本質的な問題ではないので気にしないでください。

 この「パンチ力」は76mm砲1門、2連装35mm機関砲1門、「STAMP」12.7mm リモート・ウェポン・ステーション(RWS)2基、「ロケットサン」製対潜ロケット弾発射機1門、「アトマジャ」対艦ミサイル(AShM)8発で形成されています。

 当然ながら、艦載兵装は顧客の要望に応じて変更可能であるため、インドネシアでは「アトマジャ」から(同海軍が装備している)「エクゾゼ」に変更されるかもしれません。しかし、「ロケットサン」製の対潜ロケット弾発射機は、変更されずにそのまま搭載される兵装システムの1つとなるでしょう。

 インドネシア海軍は、1992年にドイツから購入した16隻の「カピタン・パチムラ(パルヒム)」級コルベットのうち14隻を対潜艦(ASW艦)として運用し続けています。ドイツ海軍は1991年の東西ドイツ統一時に東ドイツの人民海軍から「パルヒム」級を引き継いだものの、冷戦終結後はこれらの艦艇を運用する必要性がほとんどありませんでした。

 このような理由から一気に売却された「パルヒム」級コルベットは当時のインドネシア海軍が持つ哨戒・対潜能力を著しく強化しましたが、今やソナーや兵システムが旧式化したため、更新が必要な状態となっています...それが「KPC 65」を欲した一因なのでしょう。

 インドネシアは、海軍用にまずは2隻の「KPC 65」を購入することに関心を示していると考えられています。[4]

 ラルー・ムハンマド・イクバル大使は、「私たちは防衛産業においてさらに前進し、特に海軍システムに関する協力が著しく増えるでしょう。[中略] そして、両国間での開発や共同設計も行われることになるでしょう。」とも述べました。[3]

 これは、「KPC 65」がインドネシアの要求に基づいて設計が変更されたり、同国の造船所で建造されることを意味するのかどうかはまだ不明ですが、後者は確かに妥当なものと思われます。

 

「KPC 65」の後部には多くの兵装が搭載されていることを示しています。この画像では、左から順に2門の12.7mm RWS、対艦ミサイル、対潜ロケット弾発射機、そして2連装の35mm機関砲塔が見えます。このモデルには対艦ミサイルは2発しか搭載されていません。

 現在のインドネシア海軍(TNI-AL) は、20隻程度の高速攻撃艇(FAC)から成る相当な規模の艦隊を運用しています。これらのFACの大部分はその基準からしても軽武装であり、最も多いFACである「クルリット」級は対艦ミサイルを僅か2発しか搭載していません。

 インドネシアが保有するFACで最も高性能なのは「サンパリ(KCR 60M)」級であり、同クラスは中国の「C-705」対艦ミサイルを4発、主砲として40mmまたは57mm機関砲を1門、中国製「NG-18」30mm近接防御システム(CIWS)を1門、そして対空・水上目標に用いる近接防御用20mm機関砲 1 門を装備しています。

 インドネシアは現時点で数回のバッチに分けて合計18隻の「KCR 60M」を導入することを計画しており、これまでに5隻が進水しています。[5]

 新しいバッチは、初期バッチよりもある程度の能力向上が図られる予定です。

 当初は各艇に主砲として「BAEボフォース」製「Mk.3」57mm機関砲が搭載される計画でしたが、予算上の制約で最初の2隻は代わりに同社製の40mm機関砲が搭載されました。これらは最近になってロシア製の「AU-220M」57mm RWSに交換されましたが、将来的に登場するバッチの分には当初から想定されていた「Mk.3」57mm機関砲が装備される予定となっています。[6]

「KRI トゥンバク」は主砲の位置に依然としてボフォース製40mm機関砲を装備しています
5隻目の「KCM 60M」である「KRI カパク(艦番号625)」はボフォース製「Mk.3」57mm機関砲を搭載しています。さらに、その後ろにはロシア製「AU-220M」57mm RWSを装備したばかりの「KRI サンパリ」と「KRI トゥンバク」も停泊しています。

 「タイス」造船所では、「KPC 65」に加えてトルコ初の国産ヘリコプター搭載型強襲揚陸艦(LHD)や複数のFAC、OPV、コルベット、フリゲート、揚陸艦や補給艦を含む広範囲にわたる種類の艦艇を売り出しています。

 「タイス」共同企業体には、(現在「TCG アナドル」 LHDを艤装中の)の「アナドル」造船所、「イスタンブール」造船所、「セデフ」造船所、「セフィネ」造船所、「セラ」造船所が参加しています。

 「タイス」造船所はトルコ海軍向けに数隻の大型揚陸艦や「バイラクタル」級戦車揚陸艦を建造した後に、インド向けに補給艦5隻、カタール向けに練習艦2隻と揚陸艦3隻を建造して輸出に成功しました。

 同造船所が売り出している艦艇のラインナップはここで見ることができます

「タイス」で最も先進的な見た目の「67m級高速ミサイル艇(GFMPB)」

「140m級多目的船フリゲート」は「タイス」が売り込んでいるものでは最大の水上戦闘艦です

 「タイス」造船所が「KPC 65」哨戒艇でインドネシアの市場に参入することができるとすれば、これがトルコとインドネシアの防衛協力の深化につながる可能性は十分にあり得ます。

 現在、両国は「現代型中戦車(MMWT)」プロジェクトで協力関係にあり、インドネシアはトルコ製UCAVの導入にも関心を示しています。[3]

 2021年、インドネシアは国軍を近代化するために1250億ドル(約14兆3,300億円)を投資する計画の概説をしました。同計画では、国内の防衛産業から装備類を調達することと、海外からの技術移転を確かなものとすることを優先としています。[7]

 「KPC 65」はこの計画に十分に適合しており、(「MMWT」プロジェクトで見られたように)おそらく最初のバッチはトルコで、残りはインドネシアで建造されるでしょう。

 将来的な両国の協力関係は、防衛産業の域を超越する可能性を秘めています。現在の状況はトルコのハイテク産業に、インドネシアが現在推し進めているいくつかのインフラ関連のプロジェクトに関与することを可能にする余地を残しているのです。

「FNSS」社と「PTピンダッド」社で協同開発された現代型中戦車(「カプランMT/ハリマウ)

[1] Turkish FAC-FIC Designs https://defencehub.live/threads/turkish-fac-fic-designs.558/
[2] Small But Deadly - Turkish Fast Attack Craft In Service With Turkmenistan https://www.oryxspioenkop.com/2021/03/small-but-deadly-turkish-fast-attack.html
[3] Endonezya Ankara Büyükelçisi Dr. Lalu Muhammad Iqbal: Türkiye ile Endonezya arasındaki savunma iş birliği artacak https://www.savunmatr.com/ozel-haber/endonezya-ankara-buyukelcisi-dr-lalu-muhammad-iqbal-turkiye-ile-h15336.html
[4] https://twitter.com/kimlikci_954/status/1459622498614616074
[5] Indonesia Launched Its 5th KCR-60M Fast Attack Craft https://www.navalnews.com/naval-news/2021/12/indonesia-launched-its-5th-kcr-60m-fast-attack-craft/
[6] https://twitter.com/Jatosint/status/1467457606637834245
[7] Indonesia reveals USD125 billion military modernisation plan https://www.janes.com/defence-news/news-detail/indonesia-reveals-usd125-billion-military-modernisation-plan

  ものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所がありま
    す。



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2022年7月29日金曜日

旧式艦+新型兵装:トルコ製RWSがアゼルバイジャンの旧式艦に装備された



著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 アゼルバイジャン海軍は、同国のほかの軍種やカスピ海に存在する他国の海軍と比較した場合、現代化の点で後れを取っています。

 その代わり、アゼルバイジャンは沿岸警備部隊の近代化に多額の資金を投じ、国境警備隊用の「スパイクNLOS」(射程25km)や「スパイクER」(射程8km)対戦車ミサイル(ATGM)を装備したイスラエルの「サール62」級哨戒艦(OPV)6隻と「シャルダグMk V」級高速哨戒艇6隻を導入しました。[1]

 興味深いことに、アゼルバイジャン海軍はどの艦艇にも対艦ミサイル(AShM)を搭載しておらず、純粋に同国が有する排他的経済水域(EEZ)の哨戒部隊として運用されています。

 この国の海軍はコルベットや高速攻撃艇を運用するのではなく、数多く存在するソ連時代の哨戒艇、揚陸艦、掃海艇を活用しているほか、1960年代に建造された「ペチャ」級フリゲートの運用も続けていますが、艦載兵装については銃砲、魚雷、対潜装備しか搭載されていません。

 ごく最近になって、海軍は国境警備隊(SBS)から多数の艦の譲渡されることで戦力が増強されました。とはいえ、これらはソ連時代の「ステンカ」級哨戒艇や対空砲から機関銃まで装備していた大型のタグボートで構成されていたことから、譲渡された艦艇は海軍が保有する艦艇数を少なくとも2倍に増やしたものの、海軍に新たな戦力をもたらすようなことは少しもありませんでした。

 現時点でAShMを搭載できる艦艇を一切保有していないアゼルバイジャン海軍は、旧式化した艦艇の一部に重火器を搭載することによって戦闘能力の向上を図ろうと試みています。

 これまでのところ、この火力向上策には、「AK-230」2連装30mm機関砲塔を第二次世界大戦時代の「70K(61-Kの艦載型)」37mm機関砲といったほかの火砲に換装したことも含まれていますが、このような策が各艦艇の火力増強に全く寄与しなかったことは一目瞭然でしょう(注:後述のとおり、「MR-104」FCSレーダーで管制可能な「AK-230」近接防御システム(CIWS)をわざわざ手動操作式の旧式機関砲に置き換えることに意味を見出すことを理解すること自体が無理に近いでしょう)。

 これとは逆に、少なくとも1隻の「ステンカ」級にトルコの「アセルサン」社「SMASH」30mm遠隔操作式銃架(RWS)を搭載するという最近の近代化事業で、旧式艦艇により合理的なアップグレードが施されるようになり始めたようです。

艦首に「SMASH」RWSを装備した「ステンカ」級(G124)

 現在のアゼルバイジャン海軍は、イスラエル製OPVと哨戒艇が就役した後のSBSから得た「G122」から「G125」までの艦番号を付与された4隻の「ステンカ」級を運用していると考えられています。

 当初、「ステンカ」級には「MR-104」火器管制レーダーによって管制された「AK-230」2連装30mm機関砲が艦首と艦尾にそれぞれ1門ずつ搭載されていましたが、少なくとも数隻はどちらかの「AK-230」を「70K」30mm対空機関砲に換装されました。現代の水準における「70K」は本来の対空用途で少しも役立つことはできませんが、迎撃された相手国の艦艇の前方に向けて警告射撃を行うには理想的な火器です。

 現在までのところ、「G124」のみが「SMASH」RWSを装備されていることが知られています。興味深いことに、艦首の「AK-230」だけでなく後部の同機関砲塔も「SMASH」RWSに置き換えられています(上の画像では前部の「AK-230」のみが「SMASH」に換装されているため、段階的に「G124」の近代化を進めているか、または別の同型艇の後部に「SMASH」を装備した可能性があるからです)。

 当然ながら、使用されていないときの「SMASH」RWSは、波や風雨から保護するために防水カバーで覆われています。[2]

艦橋上部から見た艦首部の「SMASH」RWS
艦尾に搭載された「SMASH」RWS

 「SMASH」RWSは近年では世界で最も人気がある艦載用RWSであり、クロアチア、マレーシア、カタール、バングラデシュ、フィリピン、そしてアゼルバイジャンといった国々で導入されています。

 カタールは自国の(トルコ製)巡視船の大部分に装備させるためにこのRWSを調達してきた、世界最大の「SMASH」運用国です。

 同等の「アセルサン」製RWSの大口顧客はトルクメニスタンであり、28隻の艦艇に合計で38の「STOP」25mm RWSを装備しています。また、同国は世界初の「アセルサン」製「ギョクデニズ」35mm CIWS運用国でもあります。

 トルクメニスタンによって導入された海軍艦艇といった新型兵器に装備されたことに加え、「アセルサン」社はEO/IRセンサーやRWSを含む各種兵器システムを陸・海・空のさまざまな旧式プラットフォームにインテグレートすることによって、めざましい商業的な成功も収めています。

 最近の例では、ウクライナの「モトールシーチ」社と共同で同国と潜在的な輸出顧客向けに「Mi-8/17」と「Mi-24」攻撃ヘリコプターを近代化する契約を締結しており、これは「アセルサン」社がEO/IRセンサーを供給し、東側のヘリコプターに最新のトルコ製精密誘導兵器の運用能力をインテグレートするというものです(注:ロシアのウクライナ侵攻で実現はするかは不透明な状況)。[3]

 また、トルクメニスタンが保有する「BTR-80」装甲兵員輸送車の一部に同社製の「SARP(サープ)-DUAL」RWSを搭載してアップグレードを図ったも実例もあります。[4] [5]

現時点のカスピ海で最も強力な海軍艦艇であり、「STOP」25mm RWSや「ギョクデニズ」35mm CIWSを含む多数の「アセルサン」社製艦載兵装を搭載しているトルクメニスタンのコルベット「デニズ・ハン」

 「SMASH」RWSはデュアルフィード機能のおかげで毎分200発の射撃速度を誇る「Mk44 "ブッシュマスターⅡ"」30mm機関砲を備えています。機関砲の両側面には各1つの大型弾倉があり、合計で175発の砲弾を入れることができます。

 このRWSは完全にスタビライザーで安定化されているため、荒波の中でも移動する標的に対して正確な照準が可能となっていることが特徴です。

 「STAMP」12.7mm RWSや「STOP」25mm RWSで用いられている固定式の照準システムとは対照的に、「SMASH」は安定化された独立型EO/IRセンサーを搭載しているため、システム全体を旋回させることなく標的を追尾することができる利点が特徴的と言えるでしょう。

少なくとも5か国で運用されている「SMASH」RWSの旧バージョン

 現時点で、アゼルバイジャン海軍によってさらなる「SMASH」RWSが導入される計画が存在するのかは不明です。

 SBSから多数の艦艇が移管されたことは、この国の海軍がしばらくの間は現時点で運用している艦艇で間に合わせる必要があることを示している可能性があります。したがって、対艦ミサイルを搭載した艦船でますますあふれていくカスピ海で戦力を何らかの形で維持するために、アゼルバイジャン海軍は何度も艦艇の改修を余儀なくされるかもしれません。

 少なくとも4隻の「ステンカ級」哨戒艇が就役していることから、「SMASH」RWSがその価値を誇示する機会は十分にあることは確かでしょう。

艦首に「70K」37mm機関砲を装備した「ステンカ」級(G122)

 「アセルサン」社は自ら開発した製品で世界中で広幅広い成功を収めてきました。これはカスピ海も例外ではなく、今や2か国の海軍が同社の製品を装備した海軍艦艇でこの海を航海しています。

 アゼルバイジャンがいつの日か自国の海軍の近代化のためにトルコ製軍用艦艇の調達を選定したり、カザフスタンもトルコ製艦艇に投資する可能性があることを考えると、どうやらトルコ製の海軍用防衛装備品の見通しは明るいようです。

 もちろん、これらにも「アセルサン」社の製品が装備されることについて、疑う余地はないでしょう。

 「SMASH」RWSのような艦載兵装は実際に搭載された船よりも確かに目立つものではありませんが、中央アジアの国々で進められている軍の近代化を示す重要な指標であることには間違いありません。

標準装備である「AK-230」30mm機関砲を装備した「ステンカ」級(G124)

[1] INFOGRAPHICS OF COAST GUARD VESSELS #4: Azerbaijan and Colombia https://www.navalanalyses.com/2017/03/infographics-of-coast-guard-vessels-4.html
[2] https://i.postimg.cc/nrqg7HvB/69.jpg
[3] Aselsan to Supply EO Targeting Pods, AAMs for Modernization of Ukraine’s Mi-8 Helicopter Fleet https://en.defence-ua.com/news/aselsan_to_supply_eo_targeting_pods_aams_for_modernization_of_ukraines_mi_8_helicopter_fleet-2004.html
[4] https://postimg.cc/HJR0QxC3
[5] SARP-DUAL Remote Controlled Stabilized Weapon System https://www.aselsan.com.tr/en/capabilities/land-and-weapon-systems/remote-controlled-weapon-systems-land/sarpdual-remote-controlled-stabilized-weapon-system

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。




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2022年7月17日日曜日

ビッグ・ビジネスの予感:トルコが「F142」級フリゲート(案)を公開した



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 ヨーロッパにおける海軍関連の各造船所は、それぞれが今後数十年を生き抜くにはあまりに規模が小さくなってしまった市場で受注を勝ち取るために激しい競争に直面していますが、トルコの場合は逆に好景気に沸いています。

 近年におけるトルコの造船所は、さまざまな種類の艦艇や、間違いなくそれとほぼ同じくらい重要な艦載兵装とレーダーシステムを世界中のほとんどの国が実際に手に届く価格で売り出しているため、過去10年間で著しい成功を収めているのです。

 トルコで最も商業的に成功している造船所としては、「ヨンジャ・オヌク」「STM」、そして「ディアサン」が挙げられます。後者の2社は、小型潜水艦から大型フリゲートまでのあらゆる艦艇(案)を売り出しており、そのうちの1つが今回の記事のテーマとなります。

 トルコの海軍分野における技術的な進歩は、同時にこの国の造船所のラインナップがこれまでになく大型で、さらには斬新な艦艇の設計案を含むまで着実に拡大していることも意味しています。

 2021年には、「アレス」造船所の「ULAQ(ウラク)」シリーズ、「セフィネ」造船所「NB57/RD09」「ディアサン」造船所「USV11/15」という3種類の武装無人水上艇(AUSV)が発表されました。[1] [2] [3]

 「ウラク」シリーズは対艦ミサイルや対潜兵装、さらには長射程の対戦車ミサイルで武装可能なUSVです。

 これらのUSVが大量にエーゲ海に導入された場合、近年における海軍戦力上のバランスをトルコの有利に変えたり、これまで有人艦艇によって遂行されてきた任務の多くを引き受けることになるかもしれません。その斬新性から、USVが最も注目を集めることは間違いないでしょう。

 とはいえ、新たな大型艦艇の設計案もトルコの防衛産業における能力の向上と現代化に向けた潮流が継続していることを示しています。

 これらの1つが、2021年後半に「ディアサン」造船所によって初公開された「F142」級大型フリゲートです。[4]

 このフリゲートは同造船所で設計されたものでは最大級の軍艦であり、全長142m、全幅18.5m、そして5,500tの排水量を誇ります。ちなみに、「ディアサン」がそれまでに設計した最大の艦艇は、全長が「わずか」92mで、排気量が1,600tでした。[5]



 「F142」級が有する最も強力な艦載兵装システムは、射程20kmの「VL MICA」艦対空ミサイル(SAM)を発射できる32セルもの垂直発射装置(VLS)です。

 また、魚雷発射管も2基搭載されているため、「F142」自身のソナーや搭載されている対潜(ASW)ヘリコプターで探知した潜水艦に魚雷を発射することが可能となっています。

 近接戦闘用には、「ラインメタル」社「ミレニアム」35mm近接防御火器システム(CIWS)が艦の前部・後部にそれぞれ1基ずつ、12.7mm重機関銃付き遠隔操作式銃架(RWS)2基、チャフ・デコイ発射システム6基が装備されています。

 そして、主砲はイタリアの76mmスーパーラピッド砲か国産の76mm艦載砲(注:前者のコピー)です。[6]

 驚くべきことに、「F142」級は16発もの対艦ミサイル(AShM)も装備しており、顧客の要求に応じて国産の「アトマジャ」AShMか他国製のAShMを選択することが可能と思われます。

 最大で16発が装備されたAShMの能力を制限することが考えられる唯一の要因は目標の探知能力であることから、適切なレーダーシステム等を搭載するためにかなりのスペースが用意されています。「F142」級の場合、これらは長距離で複数の目標をアクティブに探知・追尾するために設計された多数のレーダーと複数のEO/IRセンサーという形でもたらされています。

 また、防御的電子戦(EW)用として、イタリアの「エレトロニカ」社製の大がかりなEWシステムが搭載されています。


 「ディアサン」造船所は2010年から2014年にかけてトルコ海軍向けに16隻の「ツヅラ」級哨戒艇を建造した後、(「ギュルハン造船所」との合弁事業で)2010年代前半以降にトルクメニスタンから国境警備隊(沿岸警備隊)と海軍に装備させる艦艇の発注を数多く受けることに成功しました。

 これまでのところ、トルクメニスタンに引き渡された艦艇の数は29隻に達しており、この中には1隻のコルベット、10隻の哨戒艇や6隻の高速攻撃艇(FAC)が含まれています。

 2021年11月、「ディアサン」はイスラエル、オランダ、中国、シンガポールの造船所を打ち破って、ナイジェリア海軍に2隻の「OPV 76」級76m哨戒艇を納入する契約を獲得したことが明らかとなりました。[7]

 今までに「ディアサン」で実際に建造された最大の軍艦は、92mサイズの「デニズ・ハン(メーカー側呼称:C92級)」コルベットであり、トルクメニスタン海軍に「トルクメン」級コルベットとして導入が決定された2隻のうちの最初の艦です。

 「デニズ・ハン」はカスピ海で最も強力な武装を備えた艦艇の1隻であり、「オート・メラーラ(現レオナルオドS.p.A.)」社製の76mm艦載砲を1門、200kmの射程を誇る「オトマートMk 2 ブロックIV」AShMを8発、20kmの射程を持つ「VL MICA」艦対空ミサイルを16発、「ロケトサン」社製ASWロケット弾発射機を1門、「アセルサン」社製「ギョクデニズ」35mm CIWSを1門、25mm機関砲か12.7mm重機関銃を装着したRWSを4門装備しています。

 また、このコルベットには「F142」級と同じEW装置も装備されています。


 「ツヅラ」級哨戒艇はトルコ海軍での運用でその価値が実証されてきたものの、「F142」級はトルコの将来型フリゲートの入札に参加するには、設計案の登場があまりにも遅すぎました。この入札については、結果として2010年代半ばに「STM」が勝ち取りました。[8]

 結果として採用されたフリゲートは「イスタンブール」級と知られており、「F142」級と同様に16発の対艦ミサイルが搭載されることになっています(注:「イスタンブール」級は「イスティフ(İstif)」級と呼称される場合もありますが、メーカー側の呼称は「I」級フリゲートです)。

 1番艦にしてネームシップでもある「TCG イスタンブール(F-515)」は2021年1月に進水しており、2022年の初頭にはもう3隻の同型艦の建造に向けた入札が開始される予定となっています。[9]

 「ディアサン」が売り出している艦艇のほとんどは輸出向けに特化されたものです。ただし、「F142」級は特定の国からの要求を満たすように設計されたものではないようですが、このフリゲートに関心を持つ可能性のある国には、インドネシア、マレーシア、モロッコ、南米の多くの国が含まれています(注:このコルベットは特定の国からの発注を見越して特別に設計された艦ではないということ)。

 「STM」はすでに2021年12月下旬にコロンビアに「アダ」級コルベットをベースにした「CF3500」級フリゲートを売り込んでおり、トルコが南米の海軍市場に参入する下地を作りつつあるのです。[10]



 トルコの造船所は、この約10年の間で、ほぼ全ての種類の軍用艦艇において見事な数の設計を考案してきました。そして、各種艦艇と一緒に多数の最新の国産兵装システム、レーダーやセンサー類も設計・開発されてきました。

 その結果として、トルコの造船所は輸出用の艦艇を売り込む際に、もはやその艦載兵装を外国製に依存する必要性が限りなくゼロに近くなるでしょう。特に「ディアサン」造船所の場合、その恩恵を受ける対象は新たに公開されたUSVシリーズや33m級小型潜水艦だけでなく、「トルクメン」級コルベットや「F142」級フリゲートなど従来型の艦艇も含まれます。

 これらの艦艇や兵装システムが近いうちに、ヨーロッパ、南米、東南アジアといった全く新しい市場に手を伸ばすことについては、考えられないことではないと思われます。

「ディアサン」造船所の33m級小型潜水艦「L SUB 33」

この記事の作成にあたり、 Kemal氏に感謝を申し上げます。

[1] Turkey begins the mass-production of ULAQ armed USV https://navalpost.com/turkey-begins-the-mass-production-of-ulaq/
[2] Turkish Companies Team Up For New Armed USV Projects https://www.navalnews.com/naval-news/2021/07/turkish-companies-team-up-for-new-armed-usv-projects/
[3] Turkey’s Dearsan Shipyard unveils new combat USV https://www.navalnews.com/naval-news/2021/12/turkeys-dearsan-shipyard-unveils-new-combat-usv/
[4] Frigate F-142 http://www.dearsan.com/en/products/naval-vessels/frigate-f142
[5] Corvette C92 http://www.dearsan.com/en/products/naval-vessels/corvette-c92
[6] Turkey’s New 76mm Naval Gun to Enter Service in 2022 https://www.navalnews.com/naval-news/2021/12/turkeys-new-76mm-naval-gun-to-enter-service-in-2022/
[7] Maritime Success: Nigeria Orders Turkish OPV 76s https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/maritime-success-nigeria-orders-turkish.html
[8] I Class Frigate https://www.stm.com.tr/en/our-solutions/naval-engineering/i-class-frigate
[9] Turkey opens bidding for three new frigates https://www.dailysabah.com/business/defense/turkey-gears-up-to-build-3-new-domestic-warships
[10] STM, A Reliable Partner Of The World’s Navies, Presents Its Naval Projects And Tactical Mini UAV Systems At Expodefensa! https://www.stm.com.tr/en/media/news/stm-reliable-partner-worlds-navies-presents-its-naval-projects-and-tactical-mini-uav-systems-expodefensa-en

  を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇    
  所があります。