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2022年7月16日土曜日

土壌流出との戦い:エチオピアにおけるドイツ製ドローン



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2020年11月のティグレ戦争開戦前の時点でエチオピアが最後に入手した(無人)航空機は、紛争の初期段階で投入されたと頻繁に報じられた「翼竜Ⅱ」 UCAVではありません。

 エチオピアが戦前の最後に入手した無人機は、2020年10月にドイツ政府から贈呈品として受け取った1機の「クァンタム・システムズ」社製「トリニティF9」eVTOL-UAS(電動垂直離着陸型無人機システム)でした。[1]

 このドローンは天然資源の保護の分野で支援するためにエチオピア農業自然資源省に寄贈された3機のうちの第1陣となるはずでしたが、2020年11月のティグレ戦争が勃発した後にドイツが残りの2機の供給を停止したため、結果的にF9は1機しか引き渡されませんでした[2]。

 もちろん、ドイツ政府が2020年10月に84,000ユーロ(約1,100万円)相当の「トリニティF9」3機をエチオピアに寄贈する計画を立てた時点で、これらが最終的に軍事転用されることを全く想定していなかった可能性があります。なぜならば、軍事目的で使用されることを防ぐため、寄贈された1機のF9の航続距離は約5kmから1km未満に制限されていたからです。[2]

 1kmという航続距離は農業部門などの(当初から目的とされた)民生用途には十分なものですが、現在敵の支配下にある地域のマッピングといった軍事作戦での使用では全く役に立ちません。

 「トリニティF9」で(オプションで)利用可能なカメラは空中から地表の画像データと地理情報を収集するための理想的なツールとなっています。これらのオプションは、F9を近年にエチオピアが直面している最大の自然災害の1つである土壌流出のイメージングに最適なシステムにもさせてくれます。

 F9がエチオピアに引き渡された後、ティグレ州から離れた場所にあるソマリ州にて同国の農業機関と共同でドローンを使用する許可がようやく与えられたのは、2021年10月になってからのことでした。[2]

      

 おそらくティグレ戦争の初期段階で使用するのに適したドローンが不足していため、エチオピア空軍は他の政府部門から、当初から民生用途で使用するために導入されたいくつかの「民生用ドローン」を譲り受けて配備したようです。そのうちの3種類:「ZT-3V」「HW-V230」DJI「マヴィック2」は、エチオピア連邦警察(EPF)から譲り受けました。[3]

 興味深いことに、エチオピア国防軍(ENDF)はこのシステムを黙って受け入れて就役させるのではなく、これらを(中国の市販モデルではなく)独自に設計した無人機として報道陣の前で発表しました。[4]



 一撃離脱戦法と待ち伏せ攻撃に優れている歩兵中心の敵部隊に直面したENDFは、当記事の執筆時点(2021年10月)でエチオピア北部の山間部におけるティグレ軍との戦いにおいて重大な困難に遭っています。

 「トリニティF9」の設計・製造者である「クァンタム・システムズ」社は自社製品を主に民間市場向けに販売していますが、オランダ陸軍は現在(F9の後継モデルである)「トリニティF90+」UASをパスファインダー(降下誘導)部隊で使用するためのトライアルを実施しています。

オランダ陸軍で評価試験を受ける「トリニティF90+」UAS

 現在、UAVが決定的な役割を果たしている紛争で戦っているエチオピア空軍が軍事攻勢の前に地形をマッピングするなどの軍事目的のために、「トリニティF9」と同様の機能をもたらす無人プラットフォームに強い関心を持っていることは考えられません。短い航続距離と滞空性能を踏まえると、そのような用途におけるこれらのドローンの有効性が極めて限定されたものになる可能性が高いからです。

[1] Germany donates unmanned aerial vehicles (drones) to Ethiopia https://www.fanabc.com/english/germany-donates-unmanned-aerial-vehicles-drones-to-ethiopia/
[2] https://twitter.com/mupper2/status/1445887012079210496
[3] Made In China: Ethiopia’s Fleet Of Chinese UAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/made-in-china-ethiopias-fleet-of.html
[4] Chief Commander of the Ethiopian Air Force, Maj. Gen. Yilma Merda.#Ethiopia #Tigray(Courtesy of EBC) https://youtu.be/leUr8ZECQd0

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。



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2021年10月19日火曜日

国際的な輸出の成功:「バイラクタルTB2」の世界的な需要が最高記録に達した



著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 ある種の兵器システムが非常に人気があることが判明していて、各国がそれを購入するために列を成して待っているということはめったにありません。皮肉なことに、これは「バイラクタルTB2」の状況のようです。

 バイカル社の最高技術責任者(CTO)であるセルチュク・バイラクタル氏への最近のインタビューでは、これまでに「バイラクタルTB2」の輸出について10カ国以上と新たな輸出契約が結ばれており、現在、「バイカル・テクノロジー」社は輸出から収益の70%以上を創出していると述べました。[1]

 現時点におけるTB2の運用国には、トルコ、カタール、リビア、ウクライナ、アゼルバイジャン、トルクメニスタンが含まれていることが知られており、モロッコは現在、最初のTB2を受け取る課程にあります。

 ポーランドは2022年に最初の機体を受領する予定であり、同国はTB2を運用する2番目のNATO諸国となります。現在、トルコを除く少なくとも7カ国で運用されている(または発注されている)「バイラクタルTB2」は、これまでで最も商業的に成功したUCAVです。

 いくつかの国と新たな輸出協定が結ばれたことで、「バイラクタルTB2」が今後も他のUCAVに対する優位を拡大し続けるだろうことを疑う余地はほとんど無いでしょう。


UCAVの輸出契約が確認された配備先のランキング・一覧(最終更新日:2023年11月17日)

バイラクタルTB2 = 32
 ジェネラル・アトミクス MQ-9「リーパー」 = 9
 TAI アンカ = 7
CAIG 翼竜 I = 7
CAIG 翼竜 II = 6
CASC Rainbow CH-4 =4 (かつて運用していた国を含めると6)
CASC Rainbow CH-3 = 4
ジェネラル・アトミクス MQ-1「プレデター」 = 1
 ジェネラル・アトミクス MQ-9B「シーガーディアン」= 2(日本の海保を含めると3)
モハジェル-6 = 2(イラクのPMUを含めると3)
 モハジェル-2 = 1
 TAI アクスングル = 1
レンタテク「カライェル」= 1(かつて運用していた国を含めると2)
CASC Rainbow CH-92A = 1
CASC Rainbow CH-95 = 1
CASIC WJ-600A/D = 1
 CASIC WJ-700 = 1

 TB2の開発で多いに有名な「バイカル・テクノロジー」社ですが、それ以外にも数種類のUAVを製造しており、TB2と同様に海外市場への進出に成功しています。そのうちの2つである「バイラクタル・ミニ UAV」と「アクンジュ」は、4か国で運用が開始されました。また、「バイラクタル・クズルエルマ」の斬新な能力も、自身の将来的な輸出の成功につながる可能性があります。


現時点における(確認された)バイカル・テクノロジー社製品の運用国(最終更新日:2023年11月17日)


バイラクタルTB2
  • トルコ [2014]
  • 陸軍
  • 海軍
  • ジャンダルマ総司令部(国家憲兵)
  • 警察総局
  • 国家情報機構
  • カタール [2019]
  • 偵察・監視センター(EOセンサーとしてL3ハリス・ウェスカム「MX-15D」を搭載)
  • リビア(統一政府) [2019]
  • 空軍(EOセンサーとしてL3ハリス・ウェスカム「MX-15D」やアセルサン「CATS」を搭載)
  • ウクライナ [2019]
  • 空軍(EOセンサーとしてL3ハリス・ウェスカム「MX-15D」を搭載)
  • 海軍(同上)
  • 国防省情報総局(同上)
  • アゼルバイジャン [2020]
  • 空軍(EOセンサーとしてL3ハリス・ウェスカム「MX-15D」やアセルサン「CATS」を搭載)
  • トルクメニスタン [2021]
  • 空軍(EOセンサーとしてヘンゾルト「アルゴス-Ⅱ HTD」を搭載)
  • モロッコ [2021]
  • 空軍
  • エチオピア [2021]
  • 空軍(EOセンサーとしてアセルサン「CATS」を搭載)
  • キルギス [2021]
  • 国境警備隊(EOセンサーとしてアセルサン「CATS」を搭載)
  •  パキスタン[2022]
  • 空軍(EOセンサーとしてヘンゾルト「アルゴス-Ⅱ HTD」とアセルサン「CATS」を搭載)
  •  ジブチ [2022]
  • 空軍(EOセンサーとしてアセルサン「CATS」を搭載)
  • ブルキナファソ [2022]
  • 空軍
  • ルワンダ [2022]
  • 空軍
  •  トーゴ [2022]
  • 空軍
  • ニジェール [2022]
  • 空軍
  • ナイジェリア [2022]
  • 空軍
  • ポーランド [2022]
  • 空軍(EOセンサーとしてL3ハリス・ウェスカム「MX-15D」を搭載)
  •  マリ [2022]
  • 空軍(EOセンサーとしてアセルサン「CATS」を搭載)
  • アラブ首長国連邦 [2022 または 2023]
  • 空軍
  • コソボ [2023]
  • 陸軍
  •  ウズベキスタン [2023]
  • 軍種不明

バイラクタル・アクンジュ

  •  トルコ [2021]
  • 陸軍
  • 空軍
  • パキスタン [2022]
  • 空軍
  •  キルギス [2023]
  • 国境警備隊

バイラクタル・ミニ(UAV)
  • トルコ [2007]
  • 陸軍
  • カタール [2012]
  • 陸軍
  • リビア(統一政府) [2020]
  • 空軍
  • ウクライナ [2022]
  • 陸軍



将来的なバイカル・テクノロジー社製品の運用国

バイラクタルTB2
  • アルバニア [時期不明]
  • 空軍
  •  クウェート [時期不明]
  • 空軍
  • ルーマニア [時期不明]
  • 陸軍

バイラクタルTB3
  • トルコ
  • 海軍
  •  アラブ首長国連邦
  • 海軍?

バイラクタル・アクンジュ
  •  アゼルバイジャン [2022]
  • 空軍
  • キルギス [2023]
  • 空軍
  • サウジアラビア [時期不明]
  • 空軍
  •  エチオピア [時期不明]
  • 空軍
  •  ウクライナ [時期不明]
  • 陸軍

バイラクタル・クズルエルマ(無人戦闘機)
  • トルコ
  • 陸軍


将来的なバイカル・テクノロジー社製品の潜在顧客(国)

バイラクタルTB2
  • ブルガリア
  • フィンランド
  • ラトビア
  • リトアニア
  • スロバキア
  • イタリア
  •  日本(注:衛星通信アンテナ装備型のTB2S)
  • セルビア
  • イギリス
  • イラク
  • カザフスタン
  • タジキスタン
  • オマーン
  • サウジアラビア
  • バングラデシュ
  • インドネシア
  • アンゴラ


バイラクタル・アクンジュ
  •  ブルガリア

バイラクタル・クズルエルマ






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