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2022年4月30日土曜日

ジェットの響きよもう一度:タリバン空軍がジェット機の再運用に向けて動き始めた(短編記事)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 カブール国際空港(IAP)からのアルジャジーラのリポート映像は、ここ最近の「新アフガニスタン空軍(タリバン空軍)」が高速ジェット機の導入に向けた作業に取り組んでいる様子を放送しました。[1]

 この映像には、2010年代初頭からカブールIAPで保管状態にあった「L-39」練習機がエンジンテストを受けている様子を映し出していました。[2]

 アメリカが旧アフガニスタン空軍による「Mi-24」攻撃ヘリコプターと「L-39C」練習機の運用については全く役に立たないとみなしていました。特に「L-39」は過去数年間で一度も飛行したとは考えられていなかったにもかかわらず、両機種の双方が運用可能な状態に維持されていました。

 アフガニスタンが合計で26機の「L-39C」をチェコスロバキアから入手したのは1970年代後半のことであり、これらはアフガニスタン北部にあるマザーリシャリーフ空軍基地の第393訓練飛行連隊で運用に就きましたが、後にたった3機の「L-39」が1990年代の内戦とアメリカによる侵攻から無傷で生き残ったと考えられています。 [3]

 ロシアでのオーバーホール後、「新生アフガニスタン空軍」はさらに数年間はこれらの機体を飛ばし続けました。しかし、L-39はジェット機のパイロットを訓練するために使用されるというよりも、閲兵式のような式典に参加するために飛ばされていたようです。

 「L-39C」は両主翼の下に1つずつハードポイントを装備しており、それらには「UB-16」57mmロケット弾ポッドか最大で250kgまでの無誘導爆弾を搭載することが可能です。

 「L-39」が今や「新アフガニスタン空軍」で運用されている他の大半の機体と同様に、旧「新生アフガニスタン空軍」の要員によって飛行と整備が行われている可能性が高いということは、極めて道理にかなったものと思われます(注:タリバン側にこれらの整備や飛行をできる人材が存在しないため)。

 興味深いことに、タリバンは旧空軍時代に施されたラウンデルをしばらくの間は使用し続けているようです(注:当然ながら、将来的に変更される可能性はあります)。




 タリバン空軍は、数機の「A-29B」も稼働状態への回復を試みる可能性があるでしょう。
 
 これらは「L-39」よりもはるかに優れた能力を空軍にもたらしますが、タリバンによる旧空軍機の今後の再使用を阻止するためにアメリカ軍によって講じられた無力化措置の結果として、ほとんどの機体はコックピットに大きな損傷が生じたものと考えられています。



 タリバン軍は、数機の「An-32」輸送機を稼働状態に戻すことにも試みてきました。これらの機体はアメリカが「新生アフガニスタン空軍」に「C-27」の運用へ移行させようと推し進めた結果として2011年6月に正式に退役しましたが、肝心の「C-27」は支援整備の不足がまともな運用を阻んだため、この機の運用については財政面や運用面での大失敗に終わってしまいました。

 「C-27」は最終的に廃棄された一方で、「An-32」の多くは半稼働状態で残されていました。アルジャジーラの映像では、少なくとも5機の「An-32」と「An-26」が作業を受けている様子が確認できます。

 今後は、これらの機体が「新アフガニスタン空軍」の中核を形成することになると思われます。





 今回の映像には、数機の「UH-60」ヘリコプターの飛行作戦が依然として続けらえていることに加えて、アメリカ軍による無力化措置によって修理待ちであったり修理不能なレベルの損傷を受けた18機の「UH-60」が並んでいる様子も映し出されていました。

 後者は、ほかの「UH-60」の稼働状態を維持するためのスペアパーツの供給源となる可能性が高く、今後何年にもわたってタリバン空軍に安定したスペアパーツを提供することになるでしょう。



[1] https://www.facebook.com/watch/?ref=saved&v=1061986771321991
[2] https://twitter.com/HeshmatAlavi/status/1432425159047225353
[3] Wings over the Hindu Kush Air Forces, Aircraft and Air Warfare of Afghanistan, 1989-2001 https://www.helion.co.uk/military-history-books/wings-over-the-hindu-kush-air-forces-aircraft-and-air-warfare-of-afghanistan-1989-2001.php

※  当記事は、2021年12月9日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。




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2022年4月18日月曜日

蘇るAFV:タリバン軍が機甲戦力を復活させる(短編記事)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2001年のアメリカによる侵攻をうけた後、アフガニスタンにおける機甲戦は劇的に減少しました。

 過去の政権や軍閥は火力支援プラットフォームとしての使用で装甲戦闘車両用(AFV)に大きく依存していましたが、米国主導の有志連合軍は重装甲戦力が新しいアフガン国民軍(ANA)にとって全く役に立たないものと考えていたようです。

 その結果として、唯一残っていたANAの機甲部隊にM60A3戦車を再装備する計画については最終的に棚上げされたため、ANAは純真な献身によってのみ1個の戦車大隊を何とかして維持することができたのです。[1]

 BMPシリーズの歩兵戦闘車やZSU-23自走対空砲のような他のAFVはさらに幸運に恵まれず、2000年代半ばの至るところでますます多くの車両が退役に直面していました。

 それにもかかわらず、アメリカは約200台のM113装甲兵員輸送車(APC)をANAに供与しました。しかし、M113のIEDに対する脆弱性と貧相な武装は対反乱戦には不向きであったため、その大部分がすぐに国内各地にあるANAの基地で放置されてしまいました。[2]

 全国の遠隔地にある基地では、いくつかのT-55とT-62がトーチカとして活用されていました。これらの戦車の活用については、その多くは自力で動くことができなくなっているため、大抵の場合は全国的な規模で戦車を移動式のトーチカとして転用することに取り組んだというよりは現地の指揮官が主導して行われたようです。[3]

 戦車がまだ自走できた場合は単に基地の周囲を走り回る際のときに動くだけであって、作戦への投入で動くことはありませんでした。

 しかし、2021年11月中旬に公開された画像は、アフガニスタンの新たなイスラム首長国(タリバン政権)が再び大規模な機甲戦力を使用に転じる可能性を示唆しているように見えます。カリ・ファシフディン陸軍参謀長がカブール近郊の基地を視察した際に、少なくとも各1台ずつのT-62M、T-55、BMP-2を使用していると思われる部隊を訪問したのです。[4]

 さらに、この画像(ヘッダー画像)の後ろには2台のM1117装甲警備車(ASV)も見えます。ASVはタリバン軍が国内で急速に進撃している際に、膨大な数が無傷のまま彼らに鹵獲されています。

カブールでの軍事パレードに登場したBMP-2(ヘッダー画像と同一の車両)

 タリバンの指導下にある新しいアフガニスタン軍が、今でも全国各地の基地で依然として放置され続けているより多くの重火器を復活させようと試みるであろうことは考えられないことではありません。これには戦車から「BM-27」220mm多連装ロケット砲のみならず弾道ミサイルまでもが含まれています。[5] [6] [7]

 しかし、後者の場合は何年も屋外で(野ざらしで)保管されていたので再使用はできそうもなく、カブールの新政府はほぼ間違いなくこのような兵器を全く必要としていないと思われます。

特別協力: NatsecjeffLukas Muller(敬称略)

[1] Afghanistan’s tank battalion is melting away https://www.stripes.com/afghanistan-s-tank-battalion-is-melting-away-1.543030
[2] SIPRI Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php
[3] Disaster At Hand: Documenting Afghan Military Equipment Losses Since June 2021 until August 14, 2021 https://www.oryxspioenkop.com/2021/06/disaster-at-hand-documenting-afghan.html
[4] https://twitter.com/Natsecjeff/status/1459921989225877506
[5] https://twitter.com/oryxspioenkop/status/1432401256086188032
[6] https://twitter.com/oryxspioenkop/status/1438829457528213510
[7] https://twitter.com/AlHadath/status/1438566027663593484

※  当記事は、2021年11月15日に本国版「Oryx」ブログに投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。




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2021年9月28日火曜日

カブールからのポストカード: タリバンが鹵獲機を公開した



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 最近リリースされたビデオからの映像は、タリバンに占領された時点でカブール国際空港に残されていた旧アフガニスタン空軍の航空機やヘリコプターに関する追加的な細かい情報を映し出しています。

 タリバンによる旧アフガン空軍のアセットの再使用を防ぐために米軍が航空機に損傷を与えたことに加えて、この映像ではMi-24V攻撃ヘリ3機がタリバンに無傷で鹵獲されたことも明らかにしています。また、C-208/AC-208多目的(攻撃)機やC-130輸送機といったほかの航空機は、当初に考えられていたよりも被害が少なかったようです。

 現在、タリバン空軍ことアフガニスタン・イスラム首長国空軍の飛行可能な保有機は、MD530F攻撃ヘリコプター×8機、Mi-8/17×約10機、UH-60「ブラックホーク」輸送ヘリコプター×4機で構成されています。より多くのMi-8/17と多数のUH-60が稼働状態にされる可能性がありますが、能力を持った技術者なしでは、全ての「ブラックホーク」の運用寿命は限られたものになる可能性があるでしょう。

 それにもかかわらず、カブールで少なくとも12機のUH-60と14機のMi-8/17が鹵獲されたことは、タリバンに今後何年にもわたって安定したスペアパーツの供給源もたらす可能性があることを意味するでしょう。

カブール空港で遭遇した、最低でも3機ある旧アフガニスタン空軍のC-130のうちの1機。

この機体はカブール陥落以前の時点ですでに稼働していませんでした。3番エンジンのプロペラがフェザリング状態であることに注目。

カブールに残存していたほかの旧アフガニスタン空軍機とは異なって、このC-130はアビオニクスが破壊されていませんでした。

2機目のC-130。この機体の運用状況は不明のままです。

カブールで無傷で鹵獲されたMi-24V(Mi-35)攻撃ヘリの少なくとも3機のうちの1機。米軍の手によっていかなる損傷も受けていないようなので、これらの機体は将来のアフガニスタン・イスラム首長国空軍の中核を形成するでしょう。

これらのヘリコプターは、もともと2019年10月にインドがアフガニスタンに贈ったものです。インドは自国のヘリコプターを引き渡すのではなく、ベラルーシにMi-24Vのオーバーホールと納入を委託しました。

C-208/AC-208の多目的・攻撃機が5機並んでいます。手前のAC-208はレーザー誘導のAPKWS精密誘導弾(PGM)を搭載するロケット弾ポッドを装備しています。

このC-208はエンジンが取り外されており、機体が後方へ転倒することを防ぐため、エンジンの代わりとして機首に3つのタイヤが積まれています。

C-208多目的機が5機並んでいます。真ん中の機体はエンジンが搭載されていないため、若干後ろに傾いています。

カブール空港の軍用地側にあるヘリコプター用格納庫の一角。

この格納庫には主にMD530Fと少なくとも2機のUH-60が格納されていましたが、どれもが窓や計器盤に大きな損傷を受けていました。

このMD530Fはエキゾーストパイプでさえも損傷が加えられていました。

格納庫にあるUH-60のうちの1機はコックピットに損傷を受けました。

MD530Fの1機はテールブームが折られています。この損傷が米軍によるものなのか、あるいはそれ以前の事故によるものなのかは不明です。

別の格納庫はロシア製のMi-17ヘリコプターの整備やオーバーホールに使用されていました。これらは全てがアメリカ製のUH-60に置き換えられるはずでしたが、ロシア機よりも整備がはるかに困難であることが判明しました。

この格納庫にあるMi-17の大部分も、米軍によっても損傷を受けたようです。

ほとんどのMi-17はタイヤがパンクしており、米軍が意図的に破損させる以前にはすでに稼働状態になかったと思われます。

タイヤがパンクしておらず、窓に埃が付着していない状態の数少ないMi-17のうちの1機。この状態は、鹵獲される直前にはまだ稼働状態にあったことを示している可能性があります。

地面には犬用のキャリーケースや食べ物、フンが散乱しており、この格納庫にいるほかの住人を思い出させます。カブール空港には約120匹の犬が置き去りにされました。

このUH-60は、おそらく記念品として持ち帰りたいと考えた、うんざりした米軍によってサイドドアからラウンデルが切り取られたのかもしれません。

カブールで鹵獲された12機のUH-60のうちの1機の内部写真は、彼らが受けた損傷の状況を示しています。

この格納庫のMD530Fも、確かに「アメリカの攻撃」からは免れることはできませんでした。

MD530F飛行隊のオペレーションボードは、同部隊が少なくとも21機のヘリコプターを保有していたことを明らかにしています。

   のです。


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2021年9月4日土曜日

カブール国際空港でタリバンによって鹵獲された飛行機・ヘリコプター(一覧)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 この記事は、カブール国際空港で鹵獲されたものの、米軍によって使用不能にされたアフガニスタンの航空機を包括的にリスト化することを目的としています。 カブールに駐留していた米軍は、アフガニスタンから撤退する際に73機の航空機とヘリコプターに(タリバンによる再使用を防ぐために)無力化措置を講じたと公表されています。これらの機体が被った被害の全容については不明のままですが、 米軍がこれらの再使用を妨げるには十分な損傷を与えたことが予想されます。


カブール国際空港にて鹵獲されたが米軍によって無力化された機体など

固定翼機 (28)

ヘリコプター (47)

リストの最終更新日:2021年9月20日(Oryx英語版の元記事の最終更新日は2021年9月3日以降)




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2021年8月17日火曜日

タリバン空軍:保有装備の評定


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 このリストは画像や映像によって証拠があると確認された、鹵獲された前アフガニスタン政府軍の保有機だけを掲載しています。したがって、実際に鹵獲された機体の数はここに記載されているものよりも多いことは間違いないでしょう。

 ただし、無傷の状態で鹵獲された機体の全てが、その時点で稼働状態にあったわけでないことに注意する必要があります。したがって、「タリバンに鹵獲された機体の数 = 同規模の運用可能な彼らの飛行隊」ということにはなりません。 


ほぼ無傷で鹵獲された機体

固定翼機 (13)
  • 1 A-29B 軽攻撃機: (1)
  • 1 セスナ 208 多目的機: (1)
  • 3 L-39 練習機: (1, 2 と 3) [この全機は(鹵獲された時点で)数年も稼働状態にはありませんでした]
  • 8 An-26/32 輸送機: (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 と 8) [同上]

ヘリコプター (44)

無人航空機 (7)



カブール国際空港にて鹵獲されたが米軍によって無力化された機体(米軍の公式発表では73機)

固定翼機 (28)

ヘリコプター (45)


※この一覧については、視覚的なエビデンスが得られた場合には更新していく予定です。
下の画像のキャプションに記載してある日付は鹵獲が確認された日です。
リストの最終更新日:2021年9月20日(Oryx英語版の元記事の最終更新日は2021年9月20日)



ほぼ無傷で鹵獲された機体の画像一覧


1x セスナ 208

8x An-26/32 輸送機

カブールにて鹵獲(2021年8月29日)

カブールにて鹵獲(2021年8月29日)

カブールにて鹵獲(2021年8月29日)


4x UH-60A「ブラックホーク」
ガズニにて鹵獲(2021年8月13日)※右奥

カンダハールにて鹵獲(2021年8月14日)

カンダハールにて鹵獲(2021年8月14日)


13x Mi-24/35「ハインド」
10x MD 530F攻撃ヘリコプター

ヘルマンドにて鹵獲(2021年8月15日)


7x 「スキャンイーグル」UAV