2025年3月29日土曜日

草原の守護者:カザフスタンの軍用車両・重火器(一覧)


著: トーマス・ナハトラブ, シュタイン・ミッツァー, Buschlaid と ヤン・ケルダイク

 この記事は2023年8月21日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。

 ソ連から軍備を継承することになった時点で、カザフスタンは自身が幸運な立場にあることに気付きました。この結果は、まさに棚からぼた餅しか言いようがありません。

 1980年代後半にドイツ駐留ソ連軍(西部軍集団)の撤退がなければ、カザフスタンの手元には核兵器搭載可能な相当数の「Tu-95」爆撃機と大陸間弾道ミサイル(ICBM)が残されていたかもしれませんが、通常兵器は著しく不足していました。

 ところが、かつて東ヨーロッパ格好に駐留していた大量の部隊がカザフ・ソビエト社会主義共和国に移動された結果として、カザフスタンは新たに樹立された国家の需要をはるかに上回る膨大な軍備を受け継ぐことになったわけです。カザフスタンにとっても、自国の「Tu-95」を引き渡す見返りとして通常兵器をロシアと交換できたことから、こうした装備の不足に対処するのは比較的容易なことでした。

 こうした要因で、カザフスタン陸軍が過去数十年にわたって比較的最小限の装備しか調達してこなかったことは間違いありません。

 その代わり、この国はソ連時代の装甲戦闘車両(AFV)の改修計画を推進すると同時に、主にロシアから少数のより近代的なAFVを調達しています。さらに、カザフスタンは国産AFVの生産能力を構築するための取り組みを開始しており、この事業で「マローダー」 MRAPと「ムボンベ」装甲兵員輸送車を国内生産するための契約を南アフリカ及びイスラエルと締結しました。

 明らかに、カザフスタンは既存のAFV群の有効性を最大限に活用し、可能な限り長く運用することを優先しているようです。しかしながら、カザフスタンでのAFVを近代化させるという試みのスピードは著しく遅いものとなっています。この国では約10年前から「T-72」戦車の近代化を進めていますが、改修を担当する(外国の)企業を最終決定する段階には至っていません。

 すぐに従来型の軍事的脅威に直面することはないものの、カザフスタンが保有するAFV群は、今後何年にもわたって草原(ステップ)を守る準備が整っているように思われます。

  1. この一覧は、現在のカザフスタン陸軍で使用されている全種類のAFVをリストアップ化を試みたものです。
  2. この一覧には、画像・映像などで存在が確認されたものだけを掲載しています。
  3. レーダーやトラック、ジープ類はこの一覧には含まれていません。
  4. カザフスタンで披露された近代化計画や、国内で生産されたものの陸軍に採用されてないものは含まれていません。
  5. カザフスタンが保有する無人機については、こちらで紹介しています。
  6. 各兵器の名前をクリックするとカザフスタンで運用中の当該兵器の画像を見ることができます。

戦車

装甲戦闘車両

歩兵戦闘車

装甲兵員輸送車

MRAP:耐地雷・伏撃防護車両

歩兵機動車

装甲トラック

テクニカル・戦術車両

指揮車両など

地対空ミサイルシステム(固定式)

携帯式・移動式地対空ミサイルシステム

[1] Esoteric Armour: Ukrainian T-72UMG Tanks In Turkmenistan https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/esoteric-armour-turkmenistans-t-72umg.html
[2] Russia, Redux: Turkmenistan Acquires The Typhoon MRAP https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/russia-redux-turkmenistan-acquires.html

改訂・分冊版が2025年に発売予定です

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2025年3月23日日曜日

勢力圏の拡大:イラン製無人機の輸出先(一覧)


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 
 イラン製UAVを運用する国の数が増加しつつあるため、この国が開発した無人機の成功は自身の勢力圏を拡大させる契機となっているようです。

 国外の運用者には、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラクの人民動員隊(PMF)といった無数の非国家主体だけでなく、(導入当初の苦労を経て2021年後半に「モハジェル-6」UCAVの運用を開始した)エチオピア、ロシア、タジキスタン、スーダンといった国も含まれています。
 
 特にイランの無人機産業とU(C)AVの海外輸出を標的とした外国による制裁が課されているにもかかわらず、この国が持つU(C)AVの開発能力が急速に進化しているため、イラン製無人機を運用する国家が今後も増加すると思われると同時に、フーシ派のような非国家主体も同様に新しいイランの無人機を入手し続けていくでしょう。

  1. 以下に列挙した一覧の目的は、イランの無人機を引き渡された国家及び非国家主体を網羅することにあります。
  2. 一覧には、イラン以外の国家または非国家主体で運用されていることが確認されたU(C)AVのみが含まれています。また、シリアなどでイラン人によって運用されているものは含まれていません。
  3. 各U(C)AVの名称に続く角括弧に記載された年は、当該機体が最初に目撃された年です(通常は引き渡された年を指します)。
  4. この一覧については、イラン製無人機の新たな運用者が確認された場合に更新される予定です(2023年10月時点で暫定的に終了)。
  5. イランの U(C)AVの全貌については、こちらをご一読ください
  6. 各機体をクリックすると、輸出先で運用されている当該機体を見ることができます。
  7. 用語について...UAV=無人偵察機、UCAV=無人戦闘航空機、徘徊兵器(自爆突入型無人機の総称)

アフリカ

エチオピア

リビア国民軍(リビア)

スーダン


中央アジア

中東

ハマス (パレスチナ)

フーシ派 /アンサール・アッラー(イエメン)