2021年8月17日火曜日

タリバン空軍:保有装備の評定


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 このリストは画像や映像によって証拠があると確認された、鹵獲された前アフガニスタン政府軍の保有機だけを掲載しています。したがって、実際に鹵獲された機体の数はここに記載されているものよりも多いことは間違いないでしょう。

 ただし、無傷の状態で鹵獲された機体の全てが、その時点で稼働状態にあったわけでないことに注意する必要があります。したがって、「タリバンに鹵獲された機体の数 = 同規模の運用可能な彼らの飛行隊」ということにはなりません。 


ほぼ無傷で鹵獲された機体

固定翼機 (13)
  • 1 A-29B 軽攻撃機: (1)
  • 1 セスナ 208 多目的機: (1)
  • 3 L-39 練習機: (1, 2 と 3) [この全機は(鹵獲された時点で)数年も稼働状態にはありませんでした]
  • 8 An-26/32 輸送機: (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 と 8) [同上]

ヘリコプター (44)

無人航空機 (7)



カブール国際空港にて鹵獲されたが米軍によって無力化された機体(米軍の公式発表では73機)

固定翼機 (28)

ヘリコプター (45)


※この一覧については、視覚的なエビデンスが得られた場合には更新していく予定です。
下の画像のキャプションに記載してある日付は鹵獲が確認された日です。
リストの最終更新日:2021年9月20日(Oryx英語版の元記事の最終更新日は2021年9月20日)



ほぼ無傷で鹵獲された機体の画像一覧


1x セスナ 208

8x An-26/32 輸送機

カブールにて鹵獲(2021年8月29日)

カブールにて鹵獲(2021年8月29日)

カブールにて鹵獲(2021年8月29日)


4x UH-60A「ブラックホーク」
ガズニにて鹵獲(2021年8月13日)※右奥

カンダハールにて鹵獲(2021年8月14日)

カンダハールにて鹵獲(2021年8月14日)


13x Mi-24/35「ハインド」
10x MD 530F攻撃ヘリコプター

ヘルマンドにて鹵獲(2021年8月15日)


7x 「スキャンイーグル」UAV



2021年8月9日月曜日

無人の消防士:「バイラクタルTB2」が消火作戦に加わる



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 現在、トルコは国の南部で猛威を振るっている一連の致命的な森林火災と戦っています。

 この地域を苦しめている高温と強風のために、山火事を鎮圧することは今までのところ困難であることが判明しており、新たな火事はすぐに他の州にも急速に拡大しつつある状況です。

 また、容赦ない火災は地中海沿岸のいくつかの観光地を危険にさらしており、炎がゆっくりと海岸に近づくにつれて、壊滅的な痕跡が次々と残されていきます。この山火事では、これまでに8人の死亡と(住宅が炎上したり貴重な家畜が煙や高熱で失われるため)数百人が避難を強いられています。 [1]

 1万人以上のトルコの消防士と一緒に82機以上の飛行機やヘリコプターがこの自然災害と戦っているほか、この戦いにはアゼルバイジャン、スペインとカタールから派遣された消防士たちも加わっています。[2][3]

 また、ウクライナ、イラン、スペイン、クロアチア、ロシアといった国々もトルコへの支援を申し出ており、「An-32」(ウクライナ)を2機、「Il-76」(イラン)を1機、「CL-215」(スペイン)を2機、「CL-415」(クロアチア)を1機、さらに消防用航空機5機とヘリコプター3機(ロシア)を火災との戦いに充てています(注:8日現在でカザフスタンが2機の「Mi-8AMT」を派遣したほか、クウェートも消火用の航空機を派遣することを表明しています)。[4] [5]

 これらに加えて、すでにトルコにはロシア製のヘリコプターやBe-200消防機も展開していますが、これらはロシアによる猛火との戦いへの支援というよりもリース契約に基づいて運用されているものです。


 新たに発生した火災を発見の手助けや消火部隊を連携させるためにトルコは多数の無人航空機(UAV)を投入しており、被災地域を24時間体制で監視しています(8月7日現在では9機のUAVが投入されています)。

 UAVはそれ自身で直接に消火活動を行うことはできませんが、熱源を検知することで当局は消防アセットを迅速にその場所へ投入することが可能となるため、新たな山火事の発生を食い止めることに計り知れないほどの有益性があることが証明されています。

 このようにして、新たな火災が急速に鎮圧不可能になる前に消火することが可能となっているのです。

 何ら驚くことではないかもしれませんが、「バイラクタルTB2(通称、TB2)」はこの国での山火事に対する(UAVの)戦いの最前線に立っています。

 数機のTAI 「アンカ」「アクスングル」と共に、警察総局、トルコ海軍やバイカル・ディフェンス社(注:TB2の設計・製造会社、通称バイカル社)に属するTB2が、現時点で消防やOlman Genel Müdürlüğü OGM(森林総局)を支援するために運用されています。

 このようなハイテクな無人アセットの継続的な使用は高額なことのように聞こえるかもしれませんが、実際にはその逆で、1飛行時間あたりのコストは僅か925ドル相当であり、有人機の場合の何分の1かの費用にすぎません。[6]



 米国などの国でも過去に山火事の監視でUAVが使用されていましたが、トルコでは世界でも類を見ない規模でそれが行われています。これは、トルコが過去数年で手に入れた無人機開発におけるパイオニア的な役割を果たしていることや、バイカル社のUAVの機能性や取得価格と運用コストの低さの両方を示しています。

 これらは間違いなく、国内各地での山火事に対する戦いに取り組むためにトルコが2020年から「バイラクタルTB2」を使い始めた理由であり、同年に345件、この2カ月間だけでも86件の火災を検知することに至りました。[7]




 TB2やTAI「アンカ」といったより大型のUAVを使用する強みは、運用する際の高度(5,500~9,000メートル)にあります。そのため、彼らは装備している前方監視型赤外線(FLIR)カメラで広範囲にわたる地域を調査することができるのです。

 火災が住宅地に向かって拡大している場合、(航空機やUAVでそれを把握した場合は)その住人たちへ事前に警告することが可能ですが、火災を監視している地上部隊だけでは正確な火災の範囲や経路を判断することが困難です。

 8月1日、TAI「アクスングル」は山火事が広がっていく経路上に3人の作業員が存在していることを検知しました。見たところ、彼らは迫り来る危険にまだ気づいていなかったようでしたが、炎に完全に包まれる前に警告を受けることができたのは、まさに無人機の鋭い観察眼のおかげでした。[8]



 一旦UAVによって新たな火災が発見されて全ての情報が慎重に判断された後、消火するために適切なアセットをその必要とする地域に投入することが可能となります。トルコでは、このアセットには大量の消防車だけでなく消防専用機の飛行隊も含まれています。

 この飛行隊には、かつては約9機の「CL-215」と11機の「PZL M18 ドロマーダー」という「水爆撃機」が含まれていましたが、これらは全機がここ数年で退役しており、飛行隊に残されているチャーターされたロシアの「Be-200」水陸両用消防機や「Mi-17」、「Ka-32」ヘリコプターがその有益な仕事を引き継いでいます。




 トルコの消防士や国際的な仲間たちが一見すると止められないと思われる熱地獄との絶え間ない戦いに従事している中、「バイラクタルTB2」のようなトルコの無人機は空における彼らの目となるでしょう。

 いわゆる「水爆撃機」よりも目に見えるほど活動的ではありませんが、彼らの仕事は有益であり、それが大型で手頃な価格のUAVの幅広い応用性を証明しています。

 この地域では山火事が確実に迫り来る脅威であり続けることから、トルコ政府は将来の消火活動計画における検討のためにUAVの性能を真剣に評価することになるでしょう。

 これにより、(リースではなく)新しい消防用航空機を購入することだけでなく、関連機関によってTB2などが取得される実例を目にすることもあり得ます。

そのような買収が本当に身近なものであろうとなかろうと、特に他国がこのような能力を持つ機体を獲得しようとする可能性があることから、今回の消防作戦で得られた経験は近い将来により重要になることは確実と思われます。

 現在、バイカル社などのトルコ企業は数多くの新型UAVの設計を進めていることから、いつか近いうちに消防分野におけるより高度な無人機の開発が着想されるかもしれません。



[1] https://twitter.com/TRTWorldNow/status/1421905199355121666
[2] https://twitter.com/TRTWorldNow/status/1421346133457215489
[3] https://twitter.com/SpainNATO/status/1422113728233934850
[4] https://twitter.com/TRTWorldNow/status/1421419114522947586
[5] https://twitter.com/haskologlu/status/1421928051290644482
[6] https://twitter.com/TyrannosurusRex/status/1421416463718563846
[7] https://twitter.com/Selcuk/status/1421068795876085761
[8] https://twitter.com/IsmailDemirSSB/status/1421857980874690560

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※  この翻訳元の記事は、2021年8月2日に投稿されたものです。当記事は意訳など 
 により、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読ください。      


2021年8月6日金曜日

生え始めたグッピーの牙:カタールの「BP-12A」短距離弾道ミサイル


著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 カタールは2017年12月15日に行われた独立記念日の軍事パレードで中国の「BP-12A」短距離弾道ミサイル(SRBM)を披露し、敵味方を分け隔てなく驚かせました。

 パレードで初公開された「BP-12A」はカタールで運用されるこの種の兵器としては初めてのものですが、それにもかかわらず、カタールはこの地域で最後に弾道ミサイルを装備した国です。

 一部のシンクタンクのアナリストはこの「ドーハの非常に攻撃的な動き」を猛烈に非難していますが、カタールによるこのSRBMの導入は、実際にはより特別な意味合いを持った問題です。[1]

 その重要性とは逆に、過去10年間にカタールによって調達された多数の「レオパルド2A7」戦車、「PzH2000」自走榴弾砲やその他の高度な兵器の中で、この輸送起立発射機(TEL)の存在が簡単に見落とされた可能性があります(注:戦車などに注目が集められてTELが気づかれなかった可能性があるということ)。

 もともと、カタールは中東では最低限の軍事力しか持っていないほか、隣国の(カタールの面積の6.56%にすぎない)バーレーンでさえデータ上では強敵ということが示されていたことから、ドーハはそのギャップを埋めるため、2010年代初頭に大規模な武器の調達に乗り出しました。

 すぐに明らかになったように、このようなカタールの防衛観の劇的な変化は決して早すぎるものではありませんでした。

 2017年6月5日、UAE、サウジアラビア、バーレーンとエジプトは、カタールが湾岸協力会議(GCC)の諸国が容認する以上にイランとの緊密な関係を維持していることについて、国際「テロリズム」を支援し「地域を不安定にしている」と糾弾してドーハとの全ての外交・貿易関係を断絶し、カタールに封鎖を課してアラブ世界に衝撃を与えました。

 これらの措置は明らかにカタールを屈服させる意図によるものでしたが、ドーハにとって封鎖は最終的に嫌がらせ程度のものにしかならなかったようです。

       

 外交危機は、紛争の可能性が常に背後に迫っていること、そして政治的対立がすぐに武力紛争にエスカレートするのを防ぐためには、強力な軍事力が間違いなく最善の抑止力であることを思い出させてくれました。

 封鎖された直後、カタールは自国が実際に侵攻される脅威に直面したため、軍事力の増強を倍増しました。軍事力が飛躍的な成長を遂げていることを示しているため、近隣諸国に対する効果的な抑止力を創出するための努力は依然として非常に現実的なものになっています。

 カタールは、「ラファール」、「F-15QA」、「ユーロファイター "タイフーン"」、を含む現在市場に出回っているほぼ全ての西側戦闘機を購入しており、最近では「F-35」に真剣な関心を示している国として知られていますが、戦力強化の試みは単に空軍を強化するだけに留まってません。[2]

 中でも注目すべきは、ドーハがイタリアから多目的揚陸艦、コルベットや哨戒艇の導入を通じて海軍の全面的な刷新を図っていることでしょう。逆にあまり注目されていないのは、陸軍用にトルコのメーカーであるヌロル・マキナ社製の高い機動性と重武装を備えた装甲戦闘車両(注:「NMS」)を数百台導入したことです。

 しかし、カタールの空軍や海軍の能力は近隣諸国に単に遅れを取っているだけですが、陸軍の大部分は完全に時代遅れと言えます。最近の2010年代初頭でも、(起源が1960年代に遡る)フランス製のAMX-30戦車が依然としてカタール陸軍の機甲戦力を構成しており、砲兵部隊の状況は格段に悪いもので、AMX-30と同時代のオープントップ型の「Mk F3」155mm自走砲が依然として使用されていました。

 世界的な(軍事力の)発展を反映して、より強力なパンチ力を備えた現代的な長射程の砲兵システムの導入を追い求めることは明らかに望ましいものだったと言えます。


 カタールのSRBMを運用することへの関心は2017年の外交危機以前から存在しており、その種の兵器の導入を最初に試みたケースは、2012年にM142「HIMARS」多連装ロケット弾発射機7基とMGM-140「ATACMS(ブロックIA T2K)」 戦術弾道ミサイル60基を推定4億600万ドルで購入する許可を米国に要請した時点まで遡ることができます。[3]
 
 理由は不明ですが、この調達は最終的に失敗に終わりました。それでもなおカタールが後に「BP-12A」を調達したのは、単にこの地域の現状を打破しようと試みたのではなく、長年にわたって必要としていたものことを実現したことを物語っています。

 (カタール以外での弾道弾の導入が)実現した事例を説明すると、まず、西の隣国であるバーレーンが2018年に110基のMGM-140「ATACMS」を調達したことであり、それらは2000年代初頭からすでに運用されている30基の同型ミサイルに追加されました(注:数が増強されたということ)。[4] [5] [6]

 南側では、サウジアラビアが中国の「DF-21」中距離弾道ミサイル(MRBM)の調達と(2022年に運用開始が予定されている)ウクライナの「フリム-2(グロム-2)」への融資を通じて、自国の弾道ミサイル戦力の強化で急速な進歩を遂げています。

 東側では、UAEは2013年から少なくとも224基の「MGM-140 "ATACMS"」を調達しましたが、射程が約500kmある北朝鮮の「火星-6」弾道ミサイルも運用し続けています。UAEで運用されている北朝鮮の兵器の詳細については、私たちのこの記事をご覧ください

 カタールの近隣諸国で弾道ミサイルを運用していない数少ない国の一つであるオマーンは、実際には2000年代後半に「ATACMS」の調達を熱心に推し進めていましたが、おそらく予算上の制約のために実際にその調達は行われませんでした。[9]

 カタールの全ての近隣諸国は数百発の弾道ミサイルを保有しており、その大部分が(それぞれの領土から発射された場合に)お互いを実際の標的とすることができる射程距離があるため、BP-12Aの導入がこの地域の軍事バランスを何ら変化を与えることにはなりません。

 ちなみに米国はこの見解に賛同しており、2012年にカタールが提案した 「ATACMS」の調達について以下のように述べています。
打診された売却案は、現在及び将来の脅威に対応するカタールの能力を向上させ、重要インフラのセキュリティの強化をもたらすものです。この装備と関連する支援の売却案が、この地域の基本的な軍事バランスを変えることはないでしょう。」[3]
 「BP-12A」の射程距離は実際にはよりも短く(280km vs 300km)、唯一の大きな違いは弾頭(480kg vs 230kg)であるため、「ATACMS」に当てはまることは「BP-12A」にも実質的に当てはまるはずです(注:両者は実質的に違いが少ないため、「BP-12A」の導入が大きく騒がれる事柄ではないということ)。

 「BP-12A」のカタログ上での射程距離はMTCR(ミサイル技術管理レジーム)によって課されている輸出規制ガイドラインの(上限である)射程距離300kmを多少超えているという噂がありますが、それが本当でも「BP-12A」に新たな能力が与えられるわけでもありませんし、サウジアラビアとUAEが運用している弾道ミサイルの射程距離よりも短いままです(注:射程距離が300km強でもミサイルがカタールからリヤドには届きません)。


 「BP-12A」の導入以前では、カタールの長距離砲兵部隊はエジプトの「サクル(下の画像)」とブラジルの「アストロスⅡ」多連装ロケット砲(MRL)で構成されていました。前者は北朝鮮の「BM-11」MRLをエジプトがコピーしたものであり、カタールが長期間にわたって運用してきた唯一の非西側諸国製の武器でした。

 最近では、カタールはロシアから導入した「AK-12」アサルトライフル、「ZPU-2」14.5mm高射機関銃、9M133「コルネット」対戦車ミサイル(ATGM)や9K338「イグラ-S」携帯式地対空ミサイル(MANPADS)、中国から入手した56式小銃、「M99」対物ライフルや「FN-6」MANPADS、そしてウクライナから購入した「スキフ」ATGMを含むさまざまな種類の非西側製の武器を運用しています。



 「BP-12A」は(トルコではB611M「ボラ」及び輸出型の「カーン」と共に「J-600T "ユルドゥルム"」としてライセンス生産されている)「B611」SRBMシリーズの発展型であり、2010年の珠海航空ショーで初めて公開されました。

 このシステムの自走式発射機である「WS2400」トラックの車体には、「BP-12A」を2発か「SY-400」地対地ミサイルを8発、あるいは「BP-12A」1発と「SY-400」4発を組み合わせて搭載することができます(注:「BP-12A」のキャニスターには1発、「SY-400」の場合は4発が入っているため)。480kgのHE弾頭を搭載した「BP-12A」は最低でも280km以上の射程距離があるため、敵後方に位置する指揮所や集結した兵員を狙うのに完璧に適しています。[7]

 カタール陸軍で運用されているのが確認されたのは「BP-12A」のみですが、(まだカタールが導入していない場合は)将来的に推定射程距離200kmの「SY-400」地対地ミサイルをこのシステムに円滑に統合することが可能です。

 慣性誘導だけでなく衛星誘導方式も取り入れているため、半数必中界(CEP)がおそらく50m以下である「BP-12A」は前者しか使用していない旧式のシステムよりも有効性の向上を誇っています。また、各発射機がミサイルなしの状態で長時間を過ごすことがないように、TELには2発の再装填用ミサイルを積載した、専用の(同様に「WS2400」がベースである)ミサイル運搬車が伴われています。

 現時点ではカタールが唯一の「BP-12A」の運用国として知られていますが、「M20」SRBM「A200」誘導ロケット弾を使用する(同じ中国の)競合相手はベラルーシ(「ポロネズ」という呼称で、後にアゼルバイジャンに輸出されました)とエチオピアで採用されており、最近では2020年のティグレ紛争でティグレ分離主義勢力とエチオピア軍との戦いでの使用が確認されました。[8]


 カタールが「BP-12A」SRBMを導入したことは(特にあなたがUAEが出資したシンクタンクで働いているのであれば)ドーハの攻撃的な動きと誇大的に評価されやすく、サウジアラビア、UAE、バーレーンの首都に脅威を突きつけて、この地域を軍拡競争へと駆り立てるでしょう(注:UAEは反カタールのため、「BP-12A」の導入をサウジなどを狙うためのものだとしてプロパガンダ的な主張をするということです)。

 もう少し広い視点で見ると、「BP-12A」の導入はこの地域全体で徐々に高まる武器拡散の流れと一致したものであり、地域内の別の国(カタール)が周囲との競争条件の平等化を試みるに至ったものと捉えることができます。

 政治的な忠誠心が急速に変化する可能性があって軍事バランスがこれまで以上に何とかして自力でやっていこうとする捕食者側に傾く地域の鮫が出没する海では、これらの弾道ミサイルが強力な抑止力をもたらすという事実は当然ながら快く歓迎されるでしょう。

 関係が修復された今では問題となっているミサイルが近隣諸国のいずれかに怒りに任せて発射されることはないかもしれませんが、「BP-12A」の保有はかつては無防備だったグッピーが突然牙を生やしたということを今後も簡単に思い出させてくれるものになるはずです。


[1] Why is Qatar showing off its new short-range Chinese ballistic missile? https://english.alarabiya.net/en/News/gulf/2017/12/20/Qatar-showcases-offensive-ballistic-missiles-targeting-neighbors
[2] Exclusive: Qatar makes formal request for F-35 jets - sources https://www.reuters.com/article/us-qatar-israel-jets-exclusive-idUSKBN26S37Q
[3] Qatar--HIMARS, ATACMS, and GMLRS https://www.dsca.mil/press-media/major-arms-sales/qatar-himars-atacms-and-gmlrs
[4] Bahrain – M31 Guided Multiple Launch Rocket System (GMLRS) Unitary and Army Tactical Mission System (ATACMS) T2K Unitary Missile https://www.dsca.mil/press-media/major-arms-sales/bahrain-m31-guided-multiple-launch-rocket-system-gmlrs-unitary-and
[5] Proposed ATACMS Sale to Bahrain Announced https://www.armscontrol.org/act/2000-10/news-briefs/proposed-atacms-sale-bahrain-announced
[6] Bahrain Purchases Lockheed Martin's ATACMS Missiles https://web.archive.org/web/20120112011513/http://www.lockheedmartin.com/news/press_releases/2000/BahrainPurchasesLockheedMartinSATAC.html
[7] Qatar Displays Chinese Missile https://www.armscontrol.org/act/2018-03/news-briefs/qatar-displays-chinese-missile
[8] https://twitter.com/imp_navigator/status/1347413795463946240
[9] SCENESETTER FOR U.S.-OMAN JOINT MILITARY COMMISSION https://wikileaks.org/plusd/cables/09MUSCAT273_a.html
         
※  当記事は、2021年3月6日に本国版「Oryx」に投稿されたものを翻訳した記事です。
   当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があ
  ります。