著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ in collaboration with ケマル, ダン
2022年のロシアによるウクライナ侵攻がロシアの軍事力を示すショーになると期待していた人々は、すぐに大きな落胆を強いられることになってしまいました。しかも戦闘能力の低下は急速に進んでおり、全面侵攻開始から1年が経過した現在ではロシアの軍事機構に亀裂が入り、溝が広がり始めているのです。
これまでに1,800台以上の戦車と2,000台以上もの歩兵戦闘車の損失が続いているため、もはやロシア軍は少なくとも損失した装備の戦闘力とほぼ同等の兵器で代替することが不可能な段階までに達していることは言うまでもありません。[1]
失われた「T-72B3 "2016年型"」と「T-80BVM」 戦車を置き換えるためにロシアの軍需産業は期待されていた「T-14 "アルマータ"」戦車を大量生産するどころか、旧式の「T-62」の改修型・リファビッシュ品や1950年代の「T-54」戦車を未改造の状態で導入し始めている有様に陥っています。[2]
ほかのロシア軍兵器についても、ウクライナ軍が西側のパートナーから最新型の「レオパルト2A6」や「M1A1 "エイブラムス"」 戦車、「M2A2 "ブラッドレー"」や「CV90」歩兵戦闘車を受領し始めている中で、1950年代や1960年代の「BRDM-2」偵察車と「BMP-1」歩兵戦闘車、「BTR-50」装甲兵員輸送車が最前線の部隊に配備される動きがあり、状況が改善されているとは口が裂けても言えない状態となっていることは間違いありません。
(ウクライナの戦場で理論上は勝ち目が見込めるようにするため)ロシアの戦車修理工場は老朽化したAFVを装甲を追加するなどしてアップデートするべく奔走しているものの、復活させられた過去の遺物の大半はオイル交換を受けた程度のほぼ未改修の状態で最前線に送り込まれているのが実情のようです。
また、この新たに出現した(動員兵で構成される)即席の軍隊の装備には1940年代の榴弾砲、AFVに搭載した1950年代の艦載機関砲、さらには2022年から親露派がドネツクとルハンスクにある親露派の自称共和国軍で使用されていると指摘されている「モシン・ナガン」ボルトアクション式小銃といった旧式兵器の寄せ集めも含まれています。
徴兵・動員されたばかりの兵員を前線に供給し続けるため、ロシア国防省は(軍が疲弊して機能不全に陥るのを防ぐため)忘れ去られた軍の保管施設の片隅までチェックせざるを得なくなることは間違いないでしょう。貧弱な装備や複雑化したロジスティクスの結果として生じる死傷者の増加によって戦闘効率の低下がさらに加速する可能性があります。そして再び追加の武器を揃える必要性が高まり、ソ連時代のより存在が定かでない亡霊までも復活させるという悪循環に陥る可能性が十分に予想されるのは言うまでもありません。
並ぶ「MT-LB」の上には(手前から奥にかけて)「2M-1」12.7mm重機関銃、「2M-7」14.5mm機関砲、そして「DShK」12.7mm機関銃が装備されている:これらの機関銃は1950年代の艦船に搭載されていたものだ |
この(ジョークのネタで作った)記事の著者の平均年齢は25歳であることから、私たちは最近のウクライナにおける戦場でロシア軍が使用し始めている、私たちの親より生まれた前の兵器類を全てリスト化するのが理解を助けることになる(率直に言って面白い)だろうと思い、本物の記事として執筆しました。
この記事を読んでいる1970年代を生き抜いてきた人たちへ – 安心してください、今回紹介する兵器の大部分は、間違いなく皆さんよりもはるかに悪い時代にさらされてきたものです。私たちは1970年以前に運用が開始された兵器類を十分に旧式と見なしています。つまり、シニア層を除く私たちの読者からするとお酒を飲める年齢に達した頃には正真正銘の時代遅れとなっていたはずのものです。
(親)ロシア軍部隊は21世紀の戦争ではなく、第二次世界大戦の再現を準備しているように見える |
- この一覧については、視覚的証拠に基づいて投入が確認された兵器だけを掲載しています。したがって、新たな兵器類の目撃情報が報告された場合は更新されます。
- 各兵器名をクリックすると、当該兵器の画像が表示されます。
戦車
- ZSU-23-4 "シルカ" [1965]※ウクライナ軍でも数多く使用されている
艦載砲 (AFVに搭載されたもの)
- DhSK 12.7mm重機関銃 [1938]※ウクライナ軍でも数多く使用されている
- 2M-1 12.7mm重機関銃 [1947]
- 2M-7 14.5mm機関砲 [1947]
- 2M-3 25mm機関砲 [1953]
トラック、ジープ、各種車両
- GAZ-51 [1946]
- GAZ-66 [1964]※ウクライナ軍でも一定数が使用されている
- ジル-131 [1964]※ウクライナ軍でも一定数が使用されている
- ウラル-375D [1964]※ウクライナ軍でも一定数が使用されている
- MAZ "TZ-500" [1965]
- UAZ-452 [1965]
- LuAZ-969 [1966]
- KrAZ-255B [1967]※ウクライナ軍でも一定数が使用されている
小火器
- SSh-68 ヘルメット [1968]
- MPL-50 シャベル [1878]
[1] Attack On Europe: Documenting Russian Equipment Losses During The 2022 Russian Invasion Of Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/attack-on-europe-documenting-equipment.html
[2] From Hibernation to Humiliation? Russia Brings T-54 Tanks Out of Retirement https://notes.citeam.org/t-54?1=
※ 当記事は、2023年3月22日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したも
のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
あります。