2022年4月12日火曜日

呼びかけへの応え:ウクライナへ供与される重装備(一覧)


著: ヤクブ・ヤノフスキ, naalsio26, アロハ, ダン と ケマル(編訳:Tarao Goo)

  1. この記事の一覧は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後にウクライナに供与されたか、または供与が約束された重装備の追跡調査を試みるものです。
  2. この一覧における兵器はカテゴリーごとに(供与国の国旗を付けて)分類されていますが、一部の武器供与が機密性を帯びているため、この一覧に記載されている兵器と数はウクライナへ供与される(された)武器の総量の最低限のものを示しています。
  3. 携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)、対戦車ミサイル(ATGM)、商用ドローンはこの一覧には含まれません。
  4. この一覧は、追加の軍事支援が表明されたり、判明したりした場合に更新される予定です(数の増減や名称の変更なども含みます)。
  5. 重装備類の名前をクリックすると、ウクライナか海外で撮影された当該装備類の写真が表示されます。ウクライナ向けの個体の画像が存在しない場合か供与が約束された重装備の正確な種類がまだ判明していない場合は、"供与する"という情報源が表示されます。
  6. 各国による詳細な支援内容を解説した記事は、下の「おすすめの記事」で紹介しています(基本的に2023年10月1日で更新を終えています)。
  7. この一覧の最終更新日:2024年11月24本国版は11月22日

航空機(130+,このうち約51+機が供与済み

ヘリコプター(93+ ,このうち68機が供与済み)

無人戦闘航空機 :UCAV(35+,35+供与済み)
  •  35+ バイラクタルTB2 [2022年3月から供与](このうち5機はリトアニア・ウクライナ・ポーランドの人々がクラウドファンディングで調達資金を確保。 その後、5機はメーカーのバイカル・テクノロジー社から無償で提供された) 

戦車(1020+, このうち 約660+が供与済み
  • 20 T-72M1 [2022年4月] (ドイツの「循環的交換政策」を通じて15台の「レオパルト2A4」戦車と1台の「ビュッフェル」装甲回収車の提供と引き換えにチェコのストック品から一定数を供与)
  •  62 T-72M1 [2022年5月か6月 と 2023年4月] (いくらかはブルガリアから調達後にウクライナへ供与)
  • 280+ T-72M 及び T-72M1(R) [2022年4月から供与]
  •  31 T-72A [2022年7月か8月]
  • 28 M-55S' [2022年10月] (ドイツの「循環的交換政策」を通じて45台のMAN社製「8x8」トラックの提供と引き換えにスロベニアのストック品から供与)
  • 45 T-72EA [2023年1月以降に供始] (チェコから調達し、ウクライナへ供与)
  • 30 T-72 [2023年1月以降に供与] (他国から調達したもの)
  • 45 T-72EA [2023年1月以降に供与] (チェコから調達し、ウクライナへ供与)
  •  14 レオパルト2A4 [2023年2月~3月に供与]
  • 8 レオパルト2A4 [2023年3月、同年11月までに供与完了]
  • 8 レオパルト2A4 [2023年3月]
  • 18 レオパルト2A6 [同上]
  • レオパルト2A6 [2023年3月に供与が表明後に納入済み,供与の補償として、ドイツはポルトガルが保有する他の戦車の改修に資金提供,供与完了]
  • 14 チャレンジャー2 [2023年3月から供与]
  •  60 PT-91 [2023年4月から供与]
  • 29 レオパルト2A4 [2023年4月と6月に10台を供与、さらに19台の供与が2024年初頭に表明:ドイツはリファビッシュに共同出資]
  •  10 Strv 122(ストリッツヴァグン) [2023年7月]
  • 155 レオパルト1A5・ レオパルト1A5BE [2023年7月から供与、2024年8月までに88台供与](一部はドイツから調達し、ウクライナへ供与)
  •  31 M1A1 "エイブラムス" [2023年9月から供与,供与完了]
  • 14 レオパルト2A4 [予定] (ドイツから調達し、ウクライナへ供与)
  •  25 T-72EA [同上]
  • 30 M-84 [2024年10月に供与を表明, 循環的交換政策を通じてクロアチアのストック品から2024年末までに供与予定]
  • 49 M1A1 "エイブラムス”' [2024年10月に供与を表明]

装甲戦闘車両(160+,このうち73+が供与済み

歩兵戦闘車(1260+, このう780+が供与済み
  •  50 BVP-1 [2022年4月]
  •  56 Pbv 501A [同上]
  • 25 形式不明の歩兵戦闘車 [2024年2月までに供与]
  •  250+ BWP-1 [2022年4月以降に供与]
  • 38 BVP M-80A [2022年6月]
  • 30 BVP M-80A [2024年10月に供与を表明, 循環的交換政策を通じてクロアチアのストック品から2024年末までに供与予定]
  • 40 BMP-1A [2022年10月以降に供与] (ドイツの「循環的交換政策」を通じて40台の「マルダー」歩兵戦闘車の提供と引き換えにギリシャのストック品から供与)
  • 30 BVP-1 [2022年11月] (ドイツの「循環的交換政策」を通じて15台の「レオパルト1A4」戦車と引き換えにスロバキアのストック品から供与)
  • 140 マルダー1A3 [2024年11月までに供与完了]
  • 300+ M2A2 ODS SA "ブラッドレー"及び 4 M7 BFIST [2023年4月以降に供与]
  • 50+ CV9040 [2023年6月から供与]
  • 35+ CV9035NL [2024年2月に供与が表明]
  • 200 KTO「ロソマク」** [2023年7月から供与] (EUとアメリカの資金援助でウクライナが調達)
  • AIFV-B-C25 [2023年8月]
  • BMP-1A1 [予定]
  •  80 BMP-2(このうち35+をチェコから調達) [同上]
  • 64 LAV-2 "コヨーテ"  [同上, 2024年9月に供与を表明]

装甲兵員輸送車(4000+,このうち 2250+が供与済み

MRAP:耐地雷・伏撃防護車両(1,390+,このうち 1,160+が供与済み

歩兵機動車(7310+,このうち6100+が供与済み

牽引砲(440+,このうち410+が供与済み

自走砲(780
+,このうち600+が供与済み

多連装ロケット砲(113+,このうち108が供与済み)

対空砲(375+,数量判明のものは全て供与済み)

自走対空砲 (SPAAG)(170+)

地対空ミサイルシステム
対艦ミサイル:少数

空対空ミサイル:AAM(500+)

空対地兵装

徘徊兵器(2,200+)※2024年初頭で集計を終了

無人偵察機(大量)

輸送用ドローン(少数)

レーダー(180+、SAM用の火器管制レーダーを含まず)

工兵・戦闘支援装備(470+)

艦艇(420+)

 Special thanks : German Aid to Ukraine と Jeff2146(敬称略)


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2022年4月11日月曜日

【独占】ウクライナで別の「バイラクタル」の投入が確認された


著:ヨースト・オリーマンズ と ステイン・ミッツアー (編訳:Tarao Goo)

 現代において最も激しく、そして急速に展開しつつある戦争の1つで、無人機はますます重要な役割を果たすようになり、最終的な戦局を左右する重要な要因の1つとなる可能性があります。

 したがって、戦前のウクライナが保有していた18機に加え、開戦後に少なくとも16機の「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)が追加で納入されたことは、ウクライナの窮状に対する支援として最も重要な事例の1つと言えるでしょう。[1] 

 最近、私たちはトルコによるドローンの貢献がTB2だけにとどまらないという証拠が出たことを把握しました。「バイカル・テクノロジー」社の「バイラクタル・ミニ」UAVがウクライナで撮影した映像が公開されたことで、この機種が同国へ納入されたことが初めて確認されたのです。[2]

 「バイラクタル・ミニ」は、見た目は大型のUCAVと比較するとかなり華やかさに欠けてはいますが、捜索や偵察任務に最適化された手投げ式の小型機であり、 まさにこのタイプの無人機が 一般的な歩兵部隊の戦闘効率を高める点において極めて重要であることが実証されています。

 さらに、このUAVは誕生から絶えず改良が続けられており、最新のD型は30kmの通信距離、約120分以上の滞空時間、約1200mの最大高度を備えるまでに能力が向上しました。[3]

 この能力向上は、「バイラクタルTB2」の成功にも貢献し、「バイカル・テクノロジー」社をおそらく全世界で最も成功した唯一のUAV輸出企業であることを決定づけた、同社による継続的な改良という方針にこのUAVにも適用されていることがわかります。

 「バイラクタル・ミニ」のようなUAVが持つ最大のメリットは、 戦場で普通の兵士が簡単に持ち運ぶことが可能で、発進や回収のために滑走路(などの専用の設備)を必要としないことです。

 そして、このような無人機は、対戦車ミサイル(ATGM)や(迫撃砲を含む)その他の軽装備、またはより典型的な砲兵部隊が攻撃すべき目標を発見するために活用することができるのは言うまでもありません。

 こうした運用で、(より初歩的な民生品のクアッドコプター型を含む)小型UAVはすでにキーウ周辺のロシア軍に驚くほどの損害を与えることに寄与しています。正確に発見さえしてしまえば、彼らは実質的にウクライナ軍の砲兵戦力の格好の餌食となってしまったのです。

 最近にSNS上に投稿されたウクライナからの映像では、1人のロシア兵が自分の部隊に戻るまで追跡され、その後に彼の部隊がウクライナの砲兵部隊から攻撃される様子が映し出されていましたが、その画面から「バイラクタル・ミニ」の特徴的なインターフェイスが明確に識別することができました。(注:兵士を追跡したUAVは映像の特徴から、別の機体である可能性があります)。[4] 

 結果として、この砲撃を受けたロシア軍の「BMP-2」の損傷状況を評定することはできませんが、どうやら放棄されたようです。

 この戦闘は、「バイラクタル・ミニ」の想定していた使用例と、高画質なジンバル装置付きカメラの有用性を見事に実証しました。

 簡易パラシュートと胴体着陸・回収システムは現地の地上部隊による簡易かつ迅速な運用も可能にさせるため、このUAVが持つ強固な耐妨害性と優れた耐久性は、ウクライナの広大な野原や森林でも重宝されるでしょう。[5] 

左:「バイラクタル・ミニ」がロシア軍の陣地が砲撃を受ける様子を撮影した画面
右:トルコで「バイラクタル・ミニ」がFLIRカメラを使用した際の画面(比較用)

 これまで「バイラクタル・ミニ」の運用が確認されている国はカタールとリビアだけでした。前者は早くも2011年にこのUAVに導入する価値があることを見出し、「バイカル・テクノロジー」社初の輸出先となったのです。[6] 

 この機体はまだカタールで公開されていませんが、2011年にイスタンブールで開催された国際防衛産業フェア(IDEF)で締結された契約に基づいて、10機が納入されことが知られています。[7]

 今までのところ、トルコは戦争中のウクライナに無人偵察機を提供する最初の供給国であり、それによって自身が(重装備を引き渡すことをコミットしている数少ない国の1つという面でも)ウクライナの最も重要なパートナーと主張してきましたが、「バイラクタル・ミニ」のようなUAV飛行隊には、近いうちにその他の多くの外国製小型無人機が仲間入りすることになるでしょう。

 特筆すべきは、アメリカが軍事支援の一環として、ウクライナに(「バイラクタル・ミニと似たようなデザインである)「RQ-20 "ピューマ"」無人偵察機と多数の「スイッチブレード300」徘徊兵器を供与すること約束したのです。「スイッチブレード300」は、ウクライナ軍に非常に有能で斬新な能力をもたらすことが期待されており、1000発が送られたと報じられています。[8]

 こういった兵器の供与は、ウクライナ軍が数で圧倒的に勝る敵に対して優位に立たせるための極めて重要なファクターとなる可能性があります。

 小火器や装甲戦闘車両(AFV)といった通常兵器のほかに、「バイラクタル・ミニ」のような無人兵器は、同じ地域に配備されているほかの全ての兵器類の効用を高める乗数的戦力増強要素(フォースマルチプライヤー)として機能します。

 必要とされる所に質の高い十分な乗数的戦力増強要素があれば、両陣営の損失比率はすでに驚くほどアンバランスになっている状態がさらに歪められることになり、最終的にロシアの軍事作戦の立案者たちは攻勢を続けることの利点を再考せざるを得なくなるかもしれません。

 この目標を達成するための手段を提供する任務が実行されるかについては海外のウクライナの友好国次第であり、それによって、現代で最も重要な戦争におけるヨーロッパの運命が決するでしょう。


[1] Ukraine's defence imports from Turkey jumped 30-fold in Q1 - Turkish data https://www.reuters.com/world/ukraines-defence-imports-turkey-jumped-30-fold-q1-turkish-data-2022-04-06/
[2] https://twitter.com/NotWoofers/status/1512131462627270676/photo/1
[3] https://twitter.com/BaykarTech/status/1373569420526813186
[4] https://twitter.com/NotWoofers/status/1512131462627270676/photo/1
[5] GELİŞMİŞ ÖZELLİKLERİYLE BAYRAKTAR MİNİ İHA D https://youtu.be/uFyQrg2E800?t=117
[6] Turkey sells mini drones to Qatar https://www.hurriyetdailynews.com/turkey-sells-mini-drones-to-qatar-15862
[7] Procurement: Turkey Exports UAVs https://www.strategypage.com/htmw/htproc/articles/20120319.aspx
[8] U.S. sending Switchblade drones to Ukraine in $800 million package https://www.politico.com/news/2022/03/16/us-sends-switchblade-drones-to-ukraine-00017836

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。


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