2017年2月24日金曜日

シリアにおける北朝鮮の「HT-16PGJ」MANPADS

著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)

ほぼ10年にわたる厳しい制裁の下で、国際武器市場における北朝鮮の従来型兵器の拡散は度々過小に報告されており、過去の多くの武器取引は完全に記録されていない。
それにもかかわらず、これらの取引の跡は未だに世界の紛争地域の多くで目立っており、
時折、新しい影像などが国際的な武器取引への北朝鮮の関与を窺わせている。

今日の紛争のホットスポットで既に存在している、北朝鮮によって改修された主力戦車, 様々な種類の砲, 対戦車ミサイル (ATGM) 軽機関銃 (LMG)のほか、シリア内戦で使用されている武器の画像を分析すると、バッシャール・アル=アサド大統領の政権と対立する様々な勢力の間で、北朝鮮の携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS) の存在が明らかになった。
このミサイルの目撃は、アサド政権への初期供与の規模がかなり大きいと暗示させるほど、十分一般的になったが、常にシリアでも使用されている同様のソビエト製イグラ-1E(SA-16)システムとして特定されていたという事実は、今までこれらが北朝鮮製であると気づかれなかったことを意味している。

2014年8月、同年の夏にジェイシュ・アル・イスラムから奪取したKshesh(注:ジラー空軍基地)においてイスラミック・ステートの戦闘員の手でこの一つの例が最初に特定されたが、さらなる調査で、
 2013年2月のアレッポでのシリア軍第80旅団の基地において、自由シリア軍とカテバ・アル=カウサール(もとはアル=カーイダ系グループ)によって捕獲された少なくとも18発の発射機とそれに付随するシステムの一群の存在が明らかになった
航空機やヘリコプターがこれらのミサイルで撃墜されたことははっきりと知られていないが、戦場における彼ら(北朝鮮製MANPADS)の継続した存在は、最近厳しく包囲されたラタキア県では未だに機能していることを示唆する。

先端キャップが取り外された北朝鮮の「HT-16PGJ」MANPADS。ジラー空軍基地で2014年8月撮影。




発見された北朝鮮の「HT-16PGJ」MANPADS。アレッポで2013年2月撮影。



このMANPADSは、北朝鮮では一般的にHwaseong-Chong(火縄銃)と呼ばれているようであるが、
シリアに輸出されたタイプは、3番目か4番目に北朝鮮で独自に開発されたものと考えられている。
ソ連の9K32 Strela-2(SA-7)MANPADSからコピーされた初期のタイプ(PGLMまたはCSA-3Aという名称を付与されたかもしれない)は1980年代に開発された可能性が高いが、9K34 Strela-3(SA-14)の独自の派生型と思われるものは、早い時期であれば、既に1992年の時点で目撃された。
北におけるMANPADSの開発は、最終的にここ近年でしか認識されていない、ロシアの9K38イグラ(SA-18)に由来と思われるシステムをもたらした。
シリアで現在見られるMANPADSは、古い9K310イグラ-1(SA-16)と最も類似点が共通しているものの、特徴的な三角状のエアロスパイクは、9K38イグラ(SA-18)や9K338イグラ-S(SA-24)で見られる、より近代的な針状のエアロスパイクに置き換えられており、性能が向上している可能性が高いと思われる。
北朝鮮のシステムがソ連/ロシア製との識別を可能にする最も重要な相違点は、MANPADSの電源である熱電池をより前に配置している点である(注:北朝鮮製はオリジナルのSA-16と異なり、熱電池がミサイル・チューブ先端より前に突き出るような配置をしている。)
また、この熱電池は、システムがまだ使用可能かどうかを判断する材料となっている。 
熱電池の枯渇はMANPADSが役に立たなくなったことを意味し、対空装備を入手したくてたまらない武装勢力が自ら代用電池を作り、使用を試みたいくつかのケースに至ることがある。

ラタキアにおける北朝鮮の「HT-16PGJ」MANPADS。2015年11月26日撮影。右:北朝鮮の閲兵式における同型と思われるMANPADS。











さらなる画像分析によると、シリアで発見された北朝鮮のシステムには、HT-16PGJ(ミサイル単体ではHG-16)と表記されており、第80旅団で捕獲されたものは、2004年1月1日付けの契約日が記載されたシステムの一部であり、これは熱電池の有効保存期間がまだ切れそうにもないことを意味する。
2003年にとある未知のサプライヤー(ベラルーシといわれている)が引き渡した約300基のイグラについて、西側の情報に基づくレポートは、特にシリアではイグラが未だに目撃されていないことから実際には北朝鮮のシステムをめぐる取引に言及している可能性がある。
もしそうであるなら、配送が2004年の初めの時点で継続していたことから、報告よりもさらに多くのMANPADSが獲得された可能性は高い。
実際、ミサイルの箱に対する徹底した調査は、合計600基のHT-16PGJで1箱に各2発ずつミサイルが入っていたことから、少なくとも300箱が引き渡されたことを明らかにしている。

シリア内戦では、かなりのMANPADSの派生型が見られたにもかかわらず、ソ連の伝統的なストレラ-2M、ストレラ-3とイグラ-1から中国のFN-6に至るまでスーダンを通じてカタールによって供給されたほか、ロシアのイグラ-Sが紛争開始の数年前に提供されたが、今日、シリアの空を飛び回る多数の勢力(注:シリア空軍やロシア空軍など)に対抗する防空戦力は未だに不足したままである。
これにより、いくらかの武装勢力は、極端な射程の、見かけだけの間に合わせでしかない防空戦力で戦うことを強いられ、あらゆるMANPADSは貴重な資産とみなされるようになった。 
これらのシステムの能力のために、ミサイルが国外へ密輸され、民間航空機が撃墜されることを恐れたことから、西側諸国は内戦初期に穏健なシリアの反政府勢力へMANPADSを供給することに消極的であった。
このような航空機は、通常、MANPADSの有効高度よりも高い高度で巡航しているが、離陸直後や着陸前に発射されたミサイルは、過去に本当の脅威となっている

ロシアのイグラ-Sシステムに類似するものが、シリアの戦場で見つけられる最も能力の高いMANPADSシステムであるとは思われないが、古いストレラ-2、ストレラ-3、イグラ-1、そして、おそらく中国のFN-6よりも確実に有効であり、後者(FN-6)はそれを使用した反政府勢力によって信頼できないことが明らかになった。
ロシア空軍は、ラタキア県を含むシリア全土でアサドの対抗勢力との空爆作戦の最前線にとどまり続けるため、いかなる種類の防空システムも、その出所を問わず反政府勢力に快く受け入れられるだろう。

将来的にこれらのシステムのより多くが出現するかどうかは当然ながらまだ分からないが、世界中の国に対する北朝鮮の武器輸出の全容の解明がやっと始まったばかりであるとはいえ、結局はいつか違法な武器取引市場に行き着く可能性がある、同国におけるMANPADSを含む新しい武器の開発は未だに進行中である。

朝鮮人民軍で使用されるMANPADS。左から3人目まで使用しているものが、同側から順にイグラ-1、シリアでも使用されている「HT-16PGJ」、ストレラ-3。








'BM-21 Grad'に感謝を申し上げます(注:元記事への協力であり、本件編訳とは無関係です)。

 ※ この翻訳元の記事は、2016年3月に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。     

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2017年2月22日水曜日

備蓄品からの補充:ロシアから供与されたT-62MとBMP-1がシリアに到着した   





著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)

シリア軍への新しいAFVの供与に関する多くの噂に続いて、シリアから流出したいくらかの画像は、そのような引渡しが実際に行われたことを明らかにした。
これらの新しく引き渡されたAFVは、 現在、T4空軍基地~タドムル(パルミラ)間でIS(イスラミック・ステート)との厳しい戦闘に従事しているシリア陸軍第5軍団へ配備されることになっている。
事実、現在ここで行われている戦闘を報じる画像やビデオで、既にこれらの車輌が、ISへの反撃の役割を果たしている状況が確認されている。

多くの人々は、2015年後半にシリア軍部隊にこれらの車輌の小数の引き渡しに続いて、より多くのT-72やT-90でさえ供与されることを期待していたが、現在、第5軍団の中核はT-62MやBMP-1(P)といった、戦闘で実績のあるAFVで占められているように見える。
確かに、他のシリアの戦場で用いられているT-72やBMP-2の派生型よりは旧式であるが、これらのAFVの供与はひどく枯渇したシリア軍の車廠への追加としては、依然として歓迎されている。

実際、T-62Mは、T-90戦車シリーズに見られる「シュトーラ」のようなアクティブ防護システムには恵まれていないものの、シリアにおいて今も疲弊した機甲部隊の大半を占め続ける、T-55やT-62の初期派生型よりは大幅に改善されている。
引き渡されたBMP-1及びBMP-1Pは僅かな攻撃力と防御力しか提供しないが、特にこれらの車輌を運用した経験がある乗員にとっては習得と維持が容易という事実のために、第5軍団では十分に役立つ可能性がある。 



第5軍団はシリア・アラブ陸軍(以下、SyAAと記載)に新しく設立された部隊で、過去数年間にSyAAの役割を大規模に引き継いだ、勢力を増す様々な民兵組織に対するカウンターウェイトとしての役割を果たすものである。
シリアの体制を存続させるためには、 SyAAの部分的な解体とそれに続く民兵組織の増加が必要であったが、それが将来、手に負えない状況に陥る可能性があるという、幾多の大きな問題を引き起こした。 
第5軍団の設立は、これらの問題の少なくとも一部を解決することをねらいとしている。

ロシアは、民兵をシリアの最高司令部の指揮下で独立した部隊として存続させるのではなく、政権に圧力をかけて多くの民兵の指揮及び統制をSyAAに戻すことによって、同軍の事実上の再建を図るけん引役であるように思われる。  
自身の影響範囲内でシリアを維持するというイランの目標はいくつかの民兵組織の設立で成立したが、その多くは結局のところ外国の組織であり、ロシアはそのかわりに統一された軍の創設によって、現政権の存続を可能にさせる安定した状況を作り出そうと試みている。

このような統一された軍の欠如が、タブカへの攻勢の失敗と2度目のタドムル(注意:パルミラ)の喪失を最近の例として、過去数年に渡る政権側の敗北の大半で、苦痛を伴いながら明確にされてきた。
ロシアがシリアに介入した直後に、第5軍団の創設と同様のプロジェクトが開始され、NDF(注:アサド政権の民兵組織)の一部を含むいくつかの民兵組織が第4軍団に合併するように求められた。 かつてNDFが政権の主要な部隊としてSyAAの大部分と置き換えられたとき、NDFは近隣の警戒から、他の場所への攻勢の引き受けとシリアの至る所にある町やガス田、戦略的な軍用施設の警戒にまで任務を拡大した。
したがって、上記の構想はNDFが地方の防衛専用の戦力に残って、これらの任務がSyAAに戻されることを要求したのである。
しかしながら、今までのところ、このプロセスは全く成功していないように思われる。

ほとんど独占的に徴兵された人員から構成されるシリア軍の他の部隊とは対照的に、第5軍団は、以前はスクア・アル=サハラ(砂漠の鷹)のような民兵組織にしか見られなかった給与と手当を提供することによって、多数の男性を引き付けることを期待している(注:第5軍団は志願制) 。
さらに兵士の数の増強を図るため、以前に徴兵を免除されていたり、対象とならなかったシリア人男性達は、軍役から除外される厳しい規則があるために、第5軍団に入る可能性が高い。




現在、ほぼ6年にわたる長い内戦が、かつてシリアの機甲部隊に大きな被害をもたらし、特にロケット推進擲弾(RPG)と対戦車ミサイル(ATGM)の広範囲への拡散による多大な損失に苦しんでいる。
その上、戦車を脆弱な固定のトーチカとして役目を担わせるという、ほとんどの政権側の部隊によって採用された貧弱な戦術のために、その価値を効果的に退化させられた。
利用可能なAFVの量が、今日の作戦に対してはまだ十分あるように思われるが、その数は完全に新しい戦闘団(第5軍団)に装備させるにはあまりにも不足しすぎている。

第5軍団の新設というロシアの役割に合わせて、この新しい軍団の装備を担当するのも同じロシアである。
これによって、新しい軍団には広範囲にわたる近代的なロシア製兵器が装備されるという見方もあるが、ロシアはこれまでのところ、ロシア軍自身でもはや運用されていない旧式兵器を供与することを約束してきた。
それにもかかわらず、供与された兵器と車輌はSyAAと第5軍団にとって理想的に適していた。

小型の武器や大量のUral、GAZ、KamAZ、UAZのトラックとジープの引渡しに加えて、第5軍団への供与品には、これまでのところT-62M、BMP-1P、BMP-1、122mm M-1938(M-30)榴弾砲が含まれていた。
後者(T-62M)は既にシリアで使用されているものよりも現代的なもので、ロシアが提供したものは1970年代の間に近代化されたバッチであり、オンロード及びオフロードにおける機動性の向上を考慮してオリジナルのゴム縁付き転輪を交換している。

これらがシリアで出現する前に、既にいくつかのT-62Mが、シリアへの輸送のために港へ向かう姿をロシア国内で目撃されている。
これらの車輌はその後、大多数の車輌や装備が既に到着しているタルトゥス港行きの 「シリア急行」に搭載されて出荷された。
その後、T-62MとBMP-1はタルトゥスで現在、シリア中央部のISに対する戦闘に加わっている第5軍団の一部を含む新しい部隊への配分を待つ姿が目撃された。





T-62Mは、1980年代初頭にはより近代的な西側の戦車に性能を大きく上回られていたたことから、いくつかのT-62の派生型をアップグレードすることを目的とした近代化プログラムである。
このプログラムは、 火力、防御、機動性の分野におけるT-62の欠点を対処することを目的とし、それまで期待されていた値より低かった能力を大幅に向上させた。
この改修は、同時期に実施されたT-55及びT-55AをT-55Mに近代化する改修と並行して行われた。

装甲の強化は、 BDD「ブローヴィ」増加装甲を砲塔前面と車体上部及び底部の避弾経始上に装着すること、ゴム製のサイドスカートや砲塔への対放射線防護用の内張り、それに対戦車地雷に対する底面の装甲強化によって達成した。
結果として増加した重量は、新型のV-55Uディーゼルエンジンによって補われた。
強力な115mm砲の全潜在能力を活用するために、KTDレーザー測距器と関連機器から構成される 「ヴォルナ」射撃管制装置が搭載された。
この戦車もまた、シリアの T-55(A)MVで使用されている9M117 (9K116-1)「バスチオン」ATGMとほとんど同一の砲発射式ATGM9M117 (9K116-2)「シェクスナ」を発射する能力を得た。
この目的のために、砲手と戦車長の両方が新たな照準システムを得たことから、夜間戦闘時の有効性を大幅に向上させた。
この全てに加えて、この戦車には新しいスタビライザー、115mm砲用のサーマルスリーブ、新型の無線機が搭載され、砲塔の右側面には発煙弾発射機が装備された。

その年式にもかかわらず、T-62Mは、ソ連のアフガニスタン侵攻中に同国の山岳地で大いに使用され、コーカサスにおける数十年間の対テロ作戦の後、ロシア軍からやっと退役したばかりである。
現在でも、T-62Mは他のいくつかの国、特にキューバで運用され続けており、皮肉なことに「キューバ革命軍」の最も現代的な戦車としその任務を果たしている。



T-62の1967年型及び1972年型のようないくつかの派生型は統一的にT-62Mへ改修されたが、 1967年式がDShK12.7mm重機関銃を装備していないことにより、双方とも未だ容易に識別することができる。
興味深いことに、シリアは1967年式及び1972年式をT-62Mに改修したものを受取ったようだ。
後者(1970年式改修型)は、これまでシリア中央部から出てきている映像で、より大々的に取り上げられており、 死傷者は報告されていないものの、ISが放つATGMの初めての餌食となった。

供与されたほとんどの戦車には、シリアへの出荷前にロシアで描かれた「H22-0-0」という鉄道輸送用マーカーをまだ見ることができる。
これらの表示を消さないことは、この場合にはほとんど重要性を持たない一方、ウクライナに配備された戦車にも同様のマーカーが残っており、これはウクライナ東部における戦争へのロシアの関与を確認するために再度用いられるであろう。




たとえ旧式だとしても、これらのAFVの大量供与は、シリアの戦闘車両群を壊滅させた、蔓延する消耗の趨勢を逆転する可能性がある。
おそらく最も重要なことは、自身の経済的苦境やシリアが破綻している事実にもかかわらず、ロシアが大量の軍用装備で同盟国を支援する能力があり、それを全くいとわないままであることを示している点である。
今回の新構想(注:大量供与)は本質的に組織化された形でのSyAAの再建を意味しており、シリア内戦の将来の展開に大規模な影響を及ぼすことは確実であろう。

 ※ この翻訳元の記事は、2017年2月18日に投稿されたものです。
    当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
    正確な表現などについては、元記事をご一読願います。     

2017年2月15日水曜日

北朝鮮のMANPADSがIS(イスラミック・ステート)戦闘員の手に渡った


著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)
 
タブカ空軍基地が陥落した後にイスラミック・ステート(以下ISと記載)が公開した画像は、この基地でイグラ-1E(注:西側呼称名はSA-16)携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)が捕獲されたことを明らかにした。
しかし、今ではそのミサイルがイグラ-1Eではないとともに、この写真がタブカではなく、現在はISの訓練基地として使用されているジェイシュ・アル・イスラムから占領したKshesh(注:ジラー空軍基地)で撮影されたことが明らかとなった。  
画像の背景にある、退役したMiG-17の列と2機のL-39の存在が基地の識別に寄与したのである。 

このミサイルは当初、イグラ-1Eと識別されたものの、IS戦闘員によって運用されたMANPADSはそれの外観はとまったく一致していなかった。
 「9M39」型イグラ(後の派生型)に見られるような針状のエアロスパイクの存在が、ピラミッド状のノーズコーンを有するソ連が生産した通常のイグラ-1E(9M313)と異なることを示したのである。
また、他の外部の特徴も、他のロシアのシステムおよびその外国のコピーである点を否定した。
イグラ-1Eを生産している他の国はほとんどないが、北朝鮮は9K111対戦ミサイルシステム(注:西側呼称名はAT-4)と共にそれらを生産するライセンスを取得し、その後、独自の要求に応じて改修、イグラ-1Eの派生型を独自生産した。 
改修された9K111は「火の鳥-2(注:不死鳥-2とも言われる)」の名称を付与されており、北朝鮮製のイグラ-1Eは「HT-16PGJ」という名称を得たことが判明している。
しかし、北朝鮮で運用されているMANPADSには、しばしば 「火縄銃」という愛称が与えられているので、HT-16PGJという名称は輸出専用である可能性が高い。

シリアは北朝鮮の武器を取得していることが知られているが、MANPADSがシリア政府側に引き渡されたことについては、今までまったく記録がなかった。
北朝鮮とシリアの双方は武器移転に関する情報の公開について乗り気ではなく、現在の3年半にわたる長い紛争の中で、多数のMANPADSが敵対する兵士達の手に落ちることが見られても、北朝鮮製の可能性があるものはまだ認識されていなかった(注:2014年当時)。

占領された第17師団、121連隊93旅団の基地から出てくる、イラン製Iラード対戦車ミサイルを含む、他の多数の装備が捕獲されている状況を映した様々な写真やビデオリポートでも、それらのミサイルは見られなかった。

北朝鮮が、米国の指定したテロ組織に武器を提供していることはよく知られており、このような移転の最近での例は、ハマスによって使用されている火の鳥-2の目撃によって確認された。

HT-16PGJが元のデザインとは質の面で異なるかは不明だが、いくつかの外面な違いを言及することができる。
まず第一に、ミサイル自体は特徴的なピラミッド型(注:三脚型)エアロスパイクの代わりに、後の世代のロシア製MANPADSで見られる針状のエアロスパイクを使用しているように見える。
さらに、いくつかの型ではバッテリーとハンドルが改修されており、先端の保護キャップはより現代的なMANPADSを思い出させるものとなっている。
 

ISがHT-16PGJの相当数のストックを有することはありそうにもなく、写真のミサイルが彼らの所有する唯一のものであるという可能性すら除外できない。
したがって、観測されたHT-16PGJは、シリアとイラクの戦場における米国、シリア及びイラクの空軍の日常の作戦に少しも影響も及ぼすことはない。

 ※ この翻訳元の記事は、2014年8月に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。     

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2017年1月17日火曜日

フォトレポート:シリア・アラブ陸軍(1)

著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)
 
以下の画像は、シリア四軍が参加した2012年の大規模演習を含む、過去数年間に実施されたシリア陸軍の演習を撮影したものである
この演習はシリアにおける治安状況がますます悪化している最中に実施され、国際社会からリビアに対するような介入の呼びかけにまで至った。
これに反応して、シリア軍は数日間の演習を実施し、外の世界へ強さを見せつけた。

シリアではT-82としても知られているT-72AVが、ダマスカス郊外県での演習中に見ることができた(写真)。
シリアでは、「T-82」群が対戦車ロケット(RPG)や対戦車ミサイル(ATGM)の大規模な拡散により大きく苦戦しているが、いまだにかなりの量が運用され続けている。
下の画像に見られるような、爆発反応装甲(ERA)ブロックの全てを装着した完全に無傷のT-72AVは、今ではますます珍しい光景になった。


T-72AVと一緒に運用されているこの戦車はT-72 'ウラル'であり、これは内戦の開始前にシリアが得た最初のかつ最も量が少ないT-72の型である(写真)。
この戦車には訓練用のレーザー交戦装置が装備されている(写真)。
T-72 'ウラル'は、TPD-2-49ステレオ式測遠機が砲塔から突き出ており、サイドスカートも後の型がゴム製のサイドスカートであるのに対し、ヒレ型の装甲パネルを装備していることから、他のT-72のバリエーションと容易に識別できる。
 

2012年の演習にて標的を狙うM-46/130mm野砲の砲列(写真)。
いくらかの他種類の野砲が外国から届けられたり、内戦の間に保管状態から引き出されたとはいえ、130mmのM-46と122mmのD-30はシリア軍の主要な野砲のままである。
限られた数のM-46/130mm砲 は、その機動性と有効性の向上を目的としたプログラムの下、メルセデス・ベンツのトラックに搭載されている
そして、中国のBEE4/130mmロケット補助推進弾(RAP)が、このプラットフォームで使用するために特別に調達され、M-46/130mm砲の運用能力を大幅に向上させた。
これについて、多数の砲の改修が計画されていたにもかかわらず、内戦の開始が本格的な生産の開始を妨げたことから、それに従ってこの車載型は比較的珍しいタイプのままとなっている。
 



























2010年の演習から、3台のT-55(A)MVと1台のBMP-1の車列が進行中の状況(写真)。
シリア軍の膨大な戦車及びBMP群は、かつてはイスラエルが占領していたゴラン高原上において共同で運用される予定ではあったが、今では多くの車輌が、シリアを平定すべく戦う様々な部隊や民兵に付随した運用をされている。
第4機甲師団及び共和国防衛隊の部隊だけが組織化されたやり方と、(時には)歩兵の支援を受けながらAFVを運用し続けている。
 

シリア軍のT-55(A)MV群は、伝統的にゴラン高原沿いに集中して配置されていており、現在使用されているイスラエルの戦車と比べて旧式だが、それらの戦闘効率はT-72 'ウラル'およびT-72M1を上回ると主張できる。
T-55(A)MVは、コンタークト-1爆発反応装甲(ERA)、KTD-2レーザーレンジファインダー、スモークディスチャージャー、アップグレードされたエンジン、そして9M117Mバスチオン対戦車ミサイルを発射する能力を備えている。
いくつかタイプのミサイルは、T-55自体の価格より高いため、内戦での使用例はシリアのクネイトラ県での作戦中でしか見られていない。



























間違いなく現在の戦場で最も恐れられているRPGである、RPG-29で兵士が照準を合わせている(写真)。
PG-29V/105mmタンデム弾頭は、これまでにシリア陸軍の戦車群、特にT-72に対して莫大な損失をもたらしている。
T-55(A)MV及びT-72AVの両方は、戦車自身の生存性を向上することをねらいとしたERAを装備しているが、これらのタンデム弾頭はそのような装甲に対抗するように特別に設計されているため、それを貫徹する際には問題にほとんど直面することはない。























現用のAK(M)と他の(外国の)派生型を、大量のAK-74Mの調達で置き換える計画であったが、内戦がこの大規模な再装備プログラムを中断させた。
伝えられるところによれば、AK-74MはトライアルでイランのKH-2002を含むいくつかの他の競争相手と競合し、結果として、後者が参加した数のうちの2挺が故障したという(注:事実上、AK-74Mがトライアルの勝者であることを示す)。
しかし、内戦が推移する間に、シリアは他の現代的なロシア製兵器と共にいくらかの新しいロットのAK-74Mの供給を受けた。
それでもなお、AK(M)-47やPKMといった武器は、親アサドの軍隊の中では最も一般的な小火器であり続けている。

























作戦区域内を隊列を組んで進行するBMP-1歩兵戦闘車(写真)。
内戦中に大きな損失を被っているBMP-1は、シリアの至る所に広がる各派閥で運用されている姿を見ることができる。
この車両は多くのDIY改造のベースとして活用されており、BMP-1をベースにした多連装ロケット発射機でさえ、最近になって第4機甲師団で運用されている姿が目撃された。



























今日の戦場でT-34/85の実戦への再投入が期待されていたが、この伝説的な戦車のシリアにおける最近の目撃はわずか5件に限られたままとなっており、そのうち2件はT-34/85をD-30/122mm榴弾砲で武装したT-34/122mm自走榴弾砲に改修されたものであるが、これらは内戦のずっと以前に退役した。
他の2両のT-34/85は、シリアのクネイトラ県において、そのままの姿でイスラエルに直面するトーチカとして配置、使用されている状態が見られた。
これらの戦車は、つい最近まで運用可能だったと思われる。
以下のT-34/85は、内戦の勃発直前に演習中に見られた(写真)。
T-34/85またはT-34/76について言えば、実際、全世界にわたりその優れた作戦能力で使用され続けてはいるが、今日に現存しているのはイエメンと北朝鮮に留まっている。



























2012年の演習におけるM-160/160mm迫撃砲(写真)。
内戦初期の段階で大量の使用されたことを見てみると、抗議と武装蜂起がまだ都市に限定されていたときに(内戦が拡大する前に)、これらと他の重迫撃砲は、反乱を起こした地域の砲撃のために、たびたび都市郊外の周囲に配置された。
近年になって、シリア陸軍はM-160のほかに、ロケット弾発射体を搭載した追加のM-240/240mm迫撃砲が補充されたと考えられている。






最近の演習で、2両のBMP-1が、敵の拠点に対する、AFVと歩兵と協同した襲撃を想定した訓練を実施している(写真)。
これは素晴らしい宣伝映像に役立つとはいえ、このように調整された襲撃は、今日の内戦では限られた数の親アサドの部隊だけによって(正確に)実行されている。
その反対陣営では、アル=ヌスラ戦線(最近になってレバント征服戦線と改名された)が、アレッポのアサド政権が維持する領域を襲撃する際に、主にT-72とBMP-1での協同した運用を多用している。



























シリア陸軍の兵士達が、演習中にBMP-1の兵員室乗降部に向かって走っている(写真)。
画像の兵士は、現在のごちゃ混ぜした軍服や装備をした同軍兵士と比較すると、相対的によい装備をしているようだ。
シリア陸軍は、内戦の勃発直前にヘルメットや防弾ベストを含む中国で生産された戦闘装備を大量に取得したが、戦場での優位を獲得するためにますます多くの新兵が集まり始めると、簡単に在庫切れになった。




























BM-21が、40連装122mmロケット弾のうちの1発を目標に向けて発射している(写真)。
BM-21は、シリア軍で最も多く運用されている、多連装ロケット砲(MRL)である。
これまでにかなりの数の北朝鮮製BM-11/122mmMRLと一緒に運用されていた型は、以前にシリアが保管していたT-54及び古いT-55と共にレバノンへ供与された。
シリア軍は保有するボルケーノ(注:政権側のDIY的ロケット弾)及び220mm、300mm、302mmの多連装ロケットの数を増加し、質的な火力を相当に増加させることによって、BM-21の多数の損失をいくらか補償している。
シリア北部で行動している反政府勢力は、最近、とある湾岸諸国の1つによって東欧から得たBM-21を受け取り、シリアにおけるこのシステムの拡散をさらに促進させている。



























※ この編訳元の記事は、2016年11月に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが大きく異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。

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2017年1月16日月曜日

フォトレポート:シリア・アラブ防空軍

著 Stijn Mitzer と Joost Oliemans (編訳:ぐう・たらお)

シリア・アラブ防空軍は、かつてはシリア軍の誇り高い独立軍種であったが、5年にわたる長い内戦で甚大な被害に遭った。
シリア防空軍の多くの地対空ミサイル及びレーダー基地が、シリアを支配すべく戦うさまざまな勢力のために失われたことによって、防空軍はすでに深刻な打撃を受けていたものの、貧しい財政状況と陸軍及び国防軍(NDF:政権の民兵組織)への人員の転換は致命傷を与えた。

以下の画像は、シリア四軍が参加した2012年の大規模演習の際に撮影されたものである。
この演習はシリアにおける治安状況がますます悪化している最中に実施され、国際社会からリビアに対するような介入の呼びかけにまで至った。
これに反応して、シリア軍は数日間の演習を実施し、外の世界へ自国軍の強さを見せつけた。

パーンツィリ-S1と一緒にいる9K317E ブク-M2Eは、かつてはシリア防空軍の誇りであった。
下に見える9A317の輸送車兼用起立式レーダ装備発射機(TELAR)は、9S36レーダーのために独立した運用が可能である。
これらのシステムのいくつかは、ダマスカス周辺及びシリアの沿岸地域に配備されている。
2007年にデリゾールにある原子炉と疑われる建造物へのイスラエルによる爆撃後、ロシアからの最新の防空装備の到着は大いに期待されたが、新しく到着したブク-M2E、パーンツィリ-S1やペチョラ-2Mはイスラエル機を撃墜できないとして置き換えられた防空システムとあまり変わらないと思われた。

9A316輸送起立発射機(TEL)から射出され、勢いよく飛行する9M317ミサイル(写真)。
9A316にはレーダーの代わりに4発の再装填用ミサイルが搭載されているため、独立して運用することはできない。
通常の状況下では、ブク大隊は6両のTELARと3両のTELで構成され、さらに2両のTELARと1両のTELを持つ3個中隊にに細分することができる。
各大隊には、標的獲得レーダー、指揮車両及びより多くのを再装填用のミサイルを運ぶトラックも含まれている。

パーンツィリ-S1が12発を搭載する57E6地対空ミサイルの1発を発射している(写真)。 
これらのシステムブク-M2Eやペチョラ-2Mと同様、主にダマスカス周辺及びシリアの沿岸地域に集中して配備されている。  
海岸沿いの環境により溶け込むために、多くのパーンツィリ-S1には、沙漠の環境向けに仕上げられた迷彩パターンを導入された。

2012年演習では、シリアが9K35 ストレラ-10を運用していることが初めて視覚的に確認された。
他の多くのストレラ-10運用国とは対照的に、シリアは機動SAMシステムとして陸軍へ配備しないで、これらを航空基地の周囲に配置した。
ほとんどの9K31 ストレラ-1が保管状態に置かれていたが、シリアでのすべての9K35 ストレラ-10は未だに現役で運用中と信じられている。
 

シリアは今までにSAMシステムを全く退役させておらず、2連装及び4連装のS-125用発射機も運用し続けている。
これは、より現代的な4連装の派生型が一般的であり、シリアの至る所で見つけることができる。
2連装発射機は主にダマスカス周辺に集中して配置され、このうち1基のミサイル・サイトが2012年にジャイシュ・アル=イスラムによって制圧された。 



2連装及び4連装のS-125用発射機の運用に加えて、シリアは約10年ぶりにロシアから数個中隊分のペチョラ-2Mを受領した。
このシステムは、ベラルーシのMZKT-8022シャシーに4連装のS-125ランチャー(実際は2発のミサイルではあるが)を組み合わせ、敵の航空機や巡航ミサイルに対して大幅に性能を向上させた。
ペチョラ-2Mを配備しているいくつかのサイトは、ダマスカス周辺およびシリアの沿岸地域で確認されているが、敵に与える驚異を保持するために、異なる場所へ頻繁に転換している。
 

9K33オサーSAMシステムから2発の9M33ミサイルが発射され、煙が上がっている(写真)。
シリアはすでに80年代の間にレバノンで9K33を運用していたが、注目を浴びたのは2012年にジャイシュ・アル=イスラムがゴータ東部でいくつかの発射車輌を捕獲した後であった。
これらの9K33はその後、ジャイシュ・アル=イスラムの領域上空を飛行するシリア空軍ヘリコプターと交戦するために使用され、未だに使用されている。


2K12地対空ミサイルシステムは、1973年の10月戦争(ヨム・キプル戦争)の際にエジプトがイスラエル空軍に対して使用して大成功を収め、伝説の地位を得た。
実際、このシステムはすぐに「死の三本指」というニックネームを得て、非常に恐れられた。
ただし、このシステムはシリア軍での運用では成功例が少なく、1982年のレバノンのベッカー高原でのモール・クリケット19作戦時と、過去数年間のシリアへのイスラエル空軍の襲撃で、防空軍と空軍の残りの装備と一緒に完全に打ち負かされた。
 


シリア・アラブ防空軍の装備や組織構造などの現状を取り上げる記事は、後日にこのブログに掲載される予定だ(注:2017年現在で未執筆であるが、執筆の予定はあるとのこと)。。
 

















※ この編訳元の記事は、2016年8月に投稿されたものです。
   当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが大きく異なる箇所があります。
   正確な表現などについては、元記事をご一読願います。

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