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2026年8月11日火曜日

風変わりな公共交通システム:アシガバートのモノレール


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2023年9月6日に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。また、情勢が変化しており記事と実際の状況が噛み合わないものにもなっていますが、その点はあくまでも当時の考察としてご承知ください。

 ソ連は数多くの構成共和国に建設された豪華な地下鉄でも広く知られています。ミンスク、タシュケント、モスクワ、バクーといった主要都市には、いずれも豪華に装飾された駅を持つ地下鉄路線があります。

 その一方で、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンといった構成共和国の首都については、都市自体の規模が小さすぎたため、莫大なコストを要する地下鉄の建設や運営は現実的ではありませんでした。これは現在の中央アジアにおける大半の都市にも当てはまります。多くの都市では、人々は依然としてバスやマルシュルートカ(小型の乗合バス)を利用して移動しているのです。

 この傾向の例外の一つが、トルクメニスタンの首都アシガバートです。アシガバートは、白い大理石で造られた建物の密度が世界で最も高いというユニークな特徴があり、「白い大理石の都市」という愛称で知られています。 [1]

 市内を縦横に結ぶ数多くの(黒色の車は通行禁止となっている)新高速道路に加え、アシガバートには、リヒテンシュタインの企業が建設した個性的なモノレールがあります。ただし、人口約100万人の市民にとって残念なことに、このモノレールはオリンピック村へ行くためだけのもので、それ以外の場所へはアクセスできません。

 トルコのポリメクス社によって設計されたオリンピック村の構想は、なんと総工費50億ドル(当時で約3,800億円)に上り、2010年代半ばに複数の多国籍建設企業によって建設されました。[2]

 ポリメクス社は、首都のハヤブサの形をした国際空港をはじめ、トルクメニスタンで数多くの大規模プロジェクトを設計・建設してきました実績があります。各会場間の利用者の移動のために、リヒテンシュタインとスイスに拠点を置くインタミン社が全長5.2キロメートルのモノレール路線を建設し、車両も供給しました。[3]

 アシガバートのモノレールは、「P30」という自動運転式の車両を採用しています。モーターや動力装置を搭載した制御車1両と客車3両の計4両で編成されており、各車両の最大定員は90名です。そして、2017年9月に開幕した第5回アジアインドア&マーシャルアーツゲームズより数か月早い5月に運行が開始されました。[4]

 8つの駅を循環する路線で運行されているアシガバート・モノレールの映像については、こちらで観ることができます

アシガバートの「P30」モノレール

 アシガバート・オリンピック村は、2017年の第5回アジアインドア&マーシャルアーツゲームズのために建設された多目的スポーツ施設です。(一度解体されて新築された)既存のオリンピックスタジアムを囲むように整備された公園内に位置するこの複合施設には、モノレールで結ばれた30の競技会場が設けられています。

 新オリンピックスタジアムの収容人数は6万人で、トルクメニスタン代表サッカーチームのホームスタジアムとしても機能しています。この複合施設には、ショッピングセンター、レストラン、ホテル、店舗、駐車場、そして当然ながらモノレールも併設されており、総工費は上述のとおり50億ドルに上りました。[2]


 アシガバートのオリンピック村の完成予想図(実際のものとは若干異なる点がある):2枚目の画像では、モノレール路線がはっきりと確認できる。

 モノレールの路線は全長5.2キロメートルの単線で、8つの駅と2つの跨線橋を備えているのが特徴です。路線はオリンピック村近くの車両基地から始まります。

 車両基地からは、オリンピック村を囲む全ての会場へ短時間でアクセスできます。現在、このモノレールが日常的に運行されているかどうかは不明であり、もしかするとイベント開催日のみに限定されている可能性が否定できません(メッカのアル・マシャアール・アル・ムガッダッサー地下鉄のように、ハッジ/大巡礼期間中の年間僅か7日間のみ運行されるのと同様です)。



 車両と駅に備えられた乗客用のインフォメーションシステム:この設計開発はトルコのアヴィテン社が担当した。

 いつの日か、アシガバートには、(首都の全市民のために)複数の路線と駅で市内各地を結ぶモノレールシステムが整備されることになるかもしれません。心配は無用です。これらの駅も、この記事の冒頭で触れたソ連時代の地下鉄駅と同様に、きっと豪華に装飾されることでしょう。


[1] Turkmenistan's Capital Named World's 'White-Marble' City https://www.rferl.org/a/turkmenistan-marble-record-architecture/24998685.html
[2] OLYMPIC COMPLEX IN THE CITY OF ASHGABAT IS SPARKLING https://turkey.tmembassy.gov.tm/en/news/1503
[3] Ashgabat Modern Public Transport and landmark at the Olympic site in Ashgabat https://www.intamintransportation.com/project/ashgabat/
[4] People Mover P30 https://www.intamintransportation.com/product/people-mover-p30/
[5] Ashgabat Olympic Complex - Monorail https://www.aviteng.com/en/monorail.html


 お知らせ2025年7月に上記本の改訂・分冊版である「The Armed Forces of North Korea Volume 1: Part 1: Korean People's Army Ground Forces Organisation, Strategy and Infantry」が発売されました。残りの巻も完成次第発売される予定です(記載情報は2025年現在のものにアップデート済み)。
 お知らせ2:2025年10月に「Volume 1: Part 2(陸軍AFV)」が発売されました。 
 
お知らせ3:2025年12月に「Volume 2(空軍)」が発売されました。
 お知らせ4:2026年2月に「Volume 3(海軍) 」が発売されました


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2025年3月29日土曜日

草原の守護者:カザフスタンの軍用車両・重火器(一覧)


著: トーマス・ナハトラブ, シュタイン・ミッツァー, Buschlaid と ヤン・ケルダイク

 この記事は2023年8月21日に本国版「Oryx」(英語)に投稿された記事を翻訳したものです。

 ソ連から軍備を継承することになった時点で、カザフスタンは自身が幸運な立場にあることに気付きました。この結果は、まさに棚からぼた餅しか言いようがありません。

 1980年代後半にドイツ駐留ソ連軍(西部軍集団)の撤退がなければ、カザフスタンの手元には核兵器搭載可能な相当数の「Tu-95」爆撃機と大陸間弾道ミサイル(ICBM)が残されていたかもしれませんが、通常兵器は著しく不足していました。

 ところが、かつて東ヨーロッパ格好に駐留していた大量の部隊がカザフ・ソビエト社会主義共和国に移動された結果として、カザフスタンは新たに樹立された国家の需要をはるかに上回る膨大な軍備を受け継ぐことになったわけです。カザフスタンにとっても、自国の「Tu-95」を引き渡す見返りとして通常兵器をロシアと交換できたことから、こうした装備の不足に対処するのは比較的容易なことでした。

 こうした要因で、カザフスタン陸軍が過去数十年にわたって比較的最小限の装備しか調達してこなかったことは間違いありません。

 その代わり、この国はソ連時代の装甲戦闘車両(AFV)の改修計画を推進すると同時に、主にロシアから少数のより近代的なAFVを調達しています。さらに、カザフスタンは国産AFVの生産能力を構築するための取り組みを開始しており、この事業で「マローダー」 MRAPと「ムボンベ」装甲兵員輸送車を国内生産するための契約を南アフリカ及びイスラエルと締結しました。

 明らかに、カザフスタンは既存のAFV群の有効性を最大限に活用し、可能な限り長く運用することを優先しているようです。しかしながら、カザフスタンでのAFVを近代化させるという試みのスピードは著しく遅いものとなっています。この国では約10年前から「T-72」戦車の近代化を進めていますが、改修を担当する(外国の)企業を最終決定する段階には至っていません。

 すぐに従来型の軍事的脅威に直面することはないものの、カザフスタンが保有するAFV群は、今後何年にもわたって草原(ステップ)を守る準備が整っているように思われます。

  1. この一覧は、現在のカザフスタン陸軍で使用されている全種類のAFVをリストアップ化を試みたものです。
  2. この一覧には、画像・映像などで存在が確認されたものだけを掲載しています。
  3. レーダーやトラック、ジープ類はこの一覧には含まれていません。
  4. カザフスタンで披露された近代化計画や、国内で生産されたものの陸軍に採用されてないものは含まれていません。
  5. カザフスタンが保有する無人機については、こちらで紹介しています。
  6. 各兵器の名前をクリックするとカザフスタンで運用中の当該兵器の画像を見ることができます。

戦車

装甲戦闘車両

歩兵戦闘車

装甲兵員輸送車

MRAP:耐地雷・伏撃防護車両

歩兵機動車

装甲トラック

テクニカル・戦術車両

指揮車両など

地対空ミサイルシステム(固定式)

携帯式・移動式地対空ミサイルシステム

[1] Esoteric Armour: Ukrainian T-72UMG Tanks In Turkmenistan https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/esoteric-armour-turkmenistans-t-72umg.html
[2] Russia, Redux: Turkmenistan Acquires The Typhoon MRAP https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/russia-redux-turkmenistan-acquires.html

改訂・分冊版が2025年に発売予定です

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