2022年5月21日土曜日

海外へ飛び出す「テクノフェスト」:トルコ発の技術展示会がアゼルバイジャンで開催へ

「テクノフェスト2021」で展示された「バイカル・テクノロジー」社製「アクンジュ」UCAV


 2021年にイスタンブールで開催された「テクノフェスト」の期間中に、トルコがこの技術の祭典を他国でも開催する方針であることが公表されました。[1] 
 
 その候補について推測してみると、 トルコと強力な友好関係を維持し、無人航空機(UAV)を含むトルコの武器や技術を導入している国がいくつか思い浮かんできます。その1つがアゼルバイジャンです。なぜならば、同国はさまざまな無人兵器システムの導入と生産に著しい投資を行っており、最近では国内の技術基盤の拡充を目指す途上にあるからです。
 
 多くの飛行展示や航空機が(地上展示などでも)参加することで航空ショーと呼ばれることもある「テクノフェスト」ですが、学生や子供たちに興味を持たせ、技術コンペに参加してもらうことを目的としているため、より正確には「技術の祭典」と表現すべきイベントです。
 
 こうしたコンペの範囲は戦闘用無人機の競技会から電気自動車の設計、さらには健康や農業分野に恩恵をもたらす技術を考え出すコンペなど幅広くカバーしているため、まさに「技術の祭典」と強調してもし過ぎることはありません。[2]

 トルコが技術や防衛の分野で進歩し続けることに加えて関連する他のハイテク分野の持続的な成長も確保するためには、次世代のエンジニアを奮い立たせることが必要不可欠です。 

 トルコの名目GDPは現時点で世界第20位であり、世界のトップ10に入ることを目指しています。この目標を達成するためには、さらなる技術的進歩を推し進めることが必須となることは言うまでもないでしょう。[3]

  今年(2022年)、トルコはハイテク分野へ投資した成果について、同国初の国産電気列車「TOGC」社製国産電気自動車の量産が開始されるという形でその恩恵を受けることになっています。[4] [5]
 
 アゼルバイジャンに話を戻すと、この国は2009年に「科学開発基金」を創設し、独自のハイテク分野の開発を促進する環境を立ちあげました。この組織は、科学的なプロジェクト群の調整やハイテク産業に携わる企業へ援助をすることによって、アゼルバイジャン独自の技術基盤を支えることを目的としています。[6] [7] 
 
 アゼルバイジャンの経済成長を維持し、石油と天然ガスから脱却した多角的な経済基盤を構築するためには技術革新が欠かせないことは明らかです。近年に得た石油と天然ガスによる収益の一部を技術革新に投資することでアゼルバイジャンのハイテク分野における腕前を押し進め、この分野でのトルコの試みを再現することができるかもしれません。
 
  「テクノフェスト・アゼルバイジャン」は、2022年5月26日から29日まで、首都バクーの「バクー・クリスタル・ホール」の屋内アリーナと隣接する海辺の大通り(悪名高い「軍事戦利品公園」の向かい)で開催される予定です。[8] 
 
 このイベントは、「トルコ技術チーム(T3)財団」とトルコ産業技術省がアゼルバイジャンのデジタル開発運輸省との共催であり、「アセルサン」「バイカル・テクノロジー」といったトルコの主要な防衛メーカーが自社製品の一部を展示するほか、15以上のトルコの大学も参加して、それぞれの教育プログラムを披露することになっています。[9]
 
 「テクノフェスト」は技術コンペで満ちあふれるイベントですが、それは「テクノフェスト・アゼルバイジャン」も同じことです。バクーのイベントでは、バイオテクノロジー、3Dプリント技術、無人機、ロボット工学、農業技術、航空機のモデリングといった分野で競技が行われます。[10]
 
 これらの競技は、(トルコと同様に)賞金や資金援助、場合によっては名門大学への入学できるというチャンスによって、ハイテク技術に関する青少年のスキルや関心を高める機会をもたらしてくれるでしょう。 

 エンターテインメント部門では、UAVやヘリコプターの地上展示、トルコ空軍のアクロバット・チームである「ターキッシュ・スターズ」と「ソロ・テュルク」、そしてアゼルバイジャン空軍機による曲技飛行の披露が予定されています。

 若者に技術分野でキャリアを歩ませ、技術系の新興企業が活躍できるような環境づくりに向けて最初の一歩を踏み出したにもかかわらず、アゼルバイジャンの技術基盤は未だに極めて未成熟な状態にあります。
 
 アゼルバイジャンの新興企業は現在、農業、運輸、医療、そして宇宙や軍事産業などの分野で活躍しています。
 
 国内兵器産業への投資については、今までのところ、数多くの小火器と車両の設計及び生産が行われるという成果を出しています。 しかし、これらの大部分は外国の設計に基づいたものあり、それらをアゼルバイジャンで生産することが必ずしも同国の技術基盤に大きく貢献しているとは限らない可能性は否定できません。

 ただし、最近の流れはアゼルバイジャンの軍事産業が発展しつつあることを示唆しています。実例としては、この国は「アセルサン」などのトルコ企業と共同で数種類の誘導爆弾を開発している事業が挙げられます。トルコ自身が開発した誘導爆弾とは逆に、これらは「Su-25」や「MiG-29」といったソ連を起源とする航空機が搭載できるように設計されているのが特徴です。[11]
 
 もう1つの有望な事業には、アゼルバイジャンとイスラエルのUAVメーカーである「エアロノーティクス・システムズ」社が設立した合弁会社「アザド・システムズ」があります。
 
 この協力の成果は現時点でイスラエルが設計した無人機の組み立てと生産に限られており、国産化の比率は最大で30%です。しかし、いつの日かアザドの工場が国内で設計した無人機の生産ラインの現場となる可能性を秘めていることは火を見るより明らかでしょう。[12]

 アゼルバイジャンは、すでに2021年にイスタンブールで開催された「テクノフェスト2021」において国内で組み立てた無人機をいくつか展示したほか、同国の専用パビリオンで他分野における数多くの技術プロジェクトも出展しました。[13]
 
  実際、同イベントにはアゼルバイジャンの新興企業11社が参加し、自動駐車システムなどのプロジェクトを展示したのです。[14]
 
 同様に、アゼルバイジャン軍は「MiG-29」戦闘機2機と(「オービター1K」「オービター2」「オービター3」「オービター4」を含む)前述の国内で組み立てたドローンも展示しました。
 

「テクノフェスト2021」で展示されたアゼルバイジャン製「オービター」UAVシリーズ

 UAVの競技会や地上展示及びデモフライトが「テクノフェスト・アゼルバイジャン」の主要な催しとなる見込みです。
 
 まだアゼルバイジャンは国産のUAVを製造していませんが、前述のとおり「アザド・システムズ」社はこれまでに「エアロスター」と「オービター1K」、そして「オービター3」をアゼルバイジャン国内で製造・組み立てをしています。
 
 それらの組み立てとコンポーネントの製造で得られた経験は、いつか真の国産UAVの製造に関する設計者たちに活用されることは確実でしょう。
 

アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領がイスラエル起源の 「シャヒン(エアロスター)」と「ザルバ-K(オービター-1K) 」U(C)AVの国内製造ラインを視察した際の様子

 アゼルバイジャンで開催される「テクノフェスト」では、トルコやイスラエルで開発・製造されたUAVが地上展示やデモフライトで観客を喜ばせることになるのは間違いありませんが、UAVコンペにおける「イスティグバル」のような国産ドローンの初飛行も同様に人々の注目を集める可能性があることは想像に難しくないでしょう(注:「イスティグバル」は「アズアストロ・テクノロジーズ」が開発中の小型無人機)。[15]
 
 もう1つのアゼルバイジャン製UAVが「GÖZ(ギョズ)-N1」であり、これはアゼルバイジャン国立科学アカデミー(ANAS)によって企画されたコンペにて設計されたものです(注:GÖZ=眼)。重量が2.5kgというこのUAVは、最大航続距離が10kmで約45分の飛行する能力を有していると報じられています。[16]
 
 これまで国産無人機の量産が実現したことはありませんでしたが、もし「ギョズ-N1」でそれが達成された場合、この小型ドローンは軍事と民間の両分野で活用される可能性があります。

「ギョズ-N1」

 2021年9月、アゼルバイジャンとトルコが技術革新に関する共同研究センターをバクーに設立すると発表されました。「ビリム・バクー・センター(バクー科学センター)」という名称を与えられたこの共同研究センターは、革新的なハイテク機器を開発するだけではなく、研究や研修も行われる予定です。[17] 
 
 トルコが自身が有するハイテク情報の一部を共有する意向であることと、大成功を収めた「テクノフェスト」のやり方は、自国の技術基盤を拡大し、ハイテクが経済成長を促進するような環境を構築しようとする友好国に莫大な利益をもたらす可能性があります。
 
 アゼルバイジャンにとって「テクノフェスト」と「バクー科学センター」は、 いつの日か同国が経済を多角化し、ハイテク分野における重要なプレーヤーとなることを手助けしてくれる可能性が高いプロセスを始動してくれる絶好の機会を提供する存在です。
 
 これは先が見えない長旅のように見えるかもしれませんが、(「バイラクタルTB2」を世に送り出した)「バイカル・テクノロジー」社を見ると、アゼルバイジャンも驚くほど短期間に何らかの偉業を成し遂げる可能性がゼロではないことに留意しておく必要があることでしょう。

スモークを引きながら飛ぶアゼルバイジャン空軍の「Su-25」対地攻撃機

[1] TEKNOFEST festival to be organized in friendly, fraternal Azerbaijan - Turkish president https://en.trend.az/azerbaijan/politics/3489500.html
[2] How Turkey Is Laying The Ground For The Future Of Unmanned Aerial Warfare https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/how-turkey-is-laying-ground-for-future.html
[3] Turkey certain to join ranks of world's top 10 economies: President Erdogan https://www.aa.com.tr/en/economy/turkey-certain-to-join-ranks-of-worlds-top-10-economies-president-erdogan/2400783 
[4] Turkey to start manufacturing 1st indigenous electric train locomotive in 2022 https://www.aa.com.tr/en/economy/turkey-to-start-manufacturing-1st-indigenous-electric-train-locomotive-in-2022/2386599
[5] Minister Varank: TOGG will start mass production at the end of 2022 https://www.bazaartimes.com/minister-varank-togg-will-start-mass-production-at-the-end-of-2022/
[6] The decree of the President of the Republic of Azerbaijan on approval of Charter of Science Development Foundation under the president of the Republic of Azerbaijan https://www.sdf.gov.az/en/generic/menu/Detail/97/menu//
[7] Spurring innovation will be central to diversifying Azerbaijan’s economy, according to UNECE study https://unece.org/circular-economy/press/spurring-innovation-will-be-central-diversifying-azerbaijans-economy
[8] TEKNOFEST Aerospace and Technology Festival https://teknofest.az/en/corporate/about/
[9] TEKNOFEST AZ Competitions https://teknofest.az/en/competitions/
[10] TEKNOFEST AZ Exhibitors https://teknofest.az/en/corporate/exhibitors/ 
[11] Bombs From Baku: Cataloguing Azerbaijan’s Indigenous Air-To-Ground Munitions https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/bombs-from-baku-cataloguing-azerbaijans.html 
[12] Death From Above - Azerbaijan’s Killer Drone Arsenal https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/death-from-above-azerbaijans-killer.html  
[13] Azərbaycan “Teknofest-2021” festivalında təmsil olunur https://azertag.az/xeber/Azerbaycan_Teknofest_2021_festivalinda_temsil_olunur_VIDEO-1880943
[14] Azerbaijan presents startups at Teknofest in Istanbul [PHOTO] https://www.azernews.az/business/183560.html
[15] Azerbaijan tests locally-made UAVs [PHOTO/VIDEO] https://www.azernews.az/nation/180774.html
[16] Azerbaijan creates UAV which can be used for reconnaissance and kamikaze purposes https://apa.az/en/xeber/social-news/azerbaijan-creates-uav-which-can-be-used-for-reconnaissance-and-kamikaze-purposes-352960
[17] Azerbaijan, Turkey to launch joint innovation center https://www.azernews.az/business/183601.html

2022年5月18日水曜日

未来戦に備えよ:トルコが無人機による空戦技術の礎を築くための手法



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 「息子よ、聞きなさい - 君たちは偉大で立派に教育を受けた子供たちだが、外国のメーカーは君たちが手の届かないレベルにあるという事実を受け入れなさい。」(2000年代半ば、トルコ国防産業局の官僚が、現「バイカル・テクノロジー」社の最高技術責任者であるセルチュク・バイラクタル及びCEOであるハルク・バイラクタル兄弟に向けて発した一言)※「バイカル」社はあの「バイラクタルTB2」のメーカーです。

 無人航空機(UAV)の未来が議論されるたびに、いつの日か従来の戦闘機を時代遅れにする可能性がある技術的進歩として、他の航空機との交戦や撃墜できるUAVの能力が頻繁に言及されています。

 それにもかかわらず、そのような未来の実現に向けた実際の歩みは苦痛なほど遅いものでした。

 広く普及している議論の中では、戦闘用UAVの性能が、現実世界の能力よりはるかに先を行っていると考えられがちです。しかし、ロシアといった世界有数の兵器大国でさえ依然として国産の無人戦闘航空機(UCAV)飛行隊を生み出すことに苦労しており、ましてや近い将来に機敏な無人のドッグファイターを誕生させることが机上の空論なのは言うまでもありません。

 アメリカと中国は共にUCAVに短距離空対空ミサイル(AAM)を搭載する試験を行っており、前者は2017年の演習で、それを用いて別のドローンの撃墜に成功するまでに至っています。しかし、この演習でAAMの発射母体として使用された「MQ-9 "リーパー"」は比較的低速な機体であるため、おそらく誰もが思い描くような俊敏な戦闘機の機動性を欠いていることは火を見るよりも明らかです。[2]

 このような無人戦闘機を開発しようとするプロジェクト群は未だに計画段階で固まったままであり、ほとんどの設計案が生産に移行することは起こりえないでしょう。

 それでも、いつか無人戦闘機が有人戦闘機から空を奪取する日が来るであろうことは否定できません。

 無人戦闘機開発の最前線に立つことが見込まれている世界の超大国とは別に、近い将来における無人戦闘機技術の実用化に向けて、今や大躍進を遂げつつある別の国があります...トルコです。

 同国が進めている 「MİUS(ミウス:戦闘無人航空システム)」無人戦闘機計画では、2023年に実機が初の試験飛行を行う予定となっています(注:これは2022年春に「バイラクタル・クズルエルマ」という名称と完成待ちの機体が公開されました)。

 この超音速戦闘ドローンは、 精密爆撃、ドッグファイト、敵防空網の制圧などを遂行するために設計されたものであり、トルコ軍に斬新な能力をもたらすことになるこの開発は、当記事冒頭の引用文に対する激しい反証であることを示しています。

「ミウス」こと「バイラクタル・クズルエルマ」無人戦闘機

 トルコは「アクンジュ」や「クズルエルマ」といった無人戦闘機の開発に加え、いつかそれらの後継機を設計したり、先端技術を特徴とするその他の分野において働くであろう優秀な人材の確保にも入念に注意を払っています。

 この国は、世界でも類を見ない規模で、子どもたちや若者の間でテクノロジー分野のあらゆるものに対する関心を高めることを通じて、その目標を達成することを試みています。

 これを成し遂げようとする方法の1つとしては、毎年開催される「テクノフェスト」などのハイテク関連のイベントが挙げられます。

 「テクノフェスト」を純粋な航空ショーや軍事的な性格だけのイベントと誤解することは許されますが、実際のところ、このイベントはAIを活用した農業プロジェクトから電気自動車の設計までのあらゆるものを含む、30以上の技術コンペが開催されるテクノロジーの祭典なのです。

 前述のような熱狂が伴った非常に多くのコンテストで特に目立つのは、固定翼機と回転翼機による戦闘UAVの競技会と言っても差し支えないでしょう。競技は、異なるタイプのUAVが想定された空戦シナリオの中で、敵UAVに狙われることを阻みながらドッグファイトを行って制空権を争うものです。

イスタンブール上空で繰り広げられる無人機によるドッグファイト(テクノフェストにて)

 当然ながら、この競技でUAVから敵UAVに向けて実弾が発射されることはありませんが、その代わりとして、各UAVは胴体に搭載されたカメラを用いて相手の「ロックオン」を試みます。「ロックオン」するために使用されるカメラは、UAVの前方視界が得られる位置と角度に固定されています。

 敵UAVを最も多く「ロックオン」した一方で、可能な限り敵の「ロックオン」から回避することに成功した人が、この競技の勝者となります。したがって、実際の「撃墜」は物理的ではなく、バーチャルに行われます。

 ルールは至ってシンプルで、試合も実際の空戦の初歩的なシミュレーションにすぎませんが、このようなコンペは、まさに国の優れた若者の間で情熱の炎を燃え立たせるために必要なものなのです。

 その一方で、こうしたイベントは競技の参加者たちに、いつの日か高度なUAVの生産を可能にする関連ハイテク分野に携わるために必要な、知識の最初の基礎的な要素を提供します。[3]

 これらのコンペの参加者には、多くの高校生や大学生が含まれていることにも注目すべきでしょう。



 バラクタル兄弟と2人の父であるオズデミル氏が、仮に国防産業局の官僚のアドバイスを受け入れていたら、「ミウス」プロジェクトが進められているどころか「バイラクタル・アクンジュ」が空を飛ぶこともなかったでしょう(注:もちろん、あの「TB2」も存在しなかった世界になっていたはずです)。

 トルコの防衛産業が敗北主義という遅効性の毒に強く蝕まれていた時代に、自身のプロジェクトの開発に着手した彼らの奮闘は、いつか新しい世代が彼らの仕事を受け継ぐ道を開きました。

 今や賞金や公的な財政支援、大学入学の機会を通じて、新しい世代が自己のスキルや興味を高める機会を与えられているという事実は、将来的に莫大な効果をもたらす可能性があります。



 「国の富は子にあり」というありふれた決まり文句は、まさにそれが真実だからこそ存在しているのではないでしょうか。

 テクノフェストを訪れた人の中には軍用機の展示や見事な航空ショーを長く記憶にとどまっている人もいるでしょうが、真に重要な進歩については、コンペ等でインスピレーションを得た人々の心の中でしっかりと根付いていることがわかるでしょう。

 「バイカル・テクノロジー」社は最先端技術の設計で素晴らしい偉業を成し遂げたことで、国が無制限の研究開発予算を持つ超大国である必要はないことを証明しました。

 同社の創業者であるオズデミル・バイラクタル氏の逝去は、彼からインスピレーションを受けた人々を悲しませるかもしれません。しかし、同社の作業が止まることなく、彼のレガシーと物語は新しい世代の心の中に生き続け、いつの日かトルコ初の真の無人戦闘機という実を結ぶ弾みをもたらすことは間違いないでしょう。

 「私たちの仕事は、我が国がUAV技術の完全に独立したリーダーになるという目標に到達するまで全身全霊で絶え間なく続くでしょう。」(オズデミル・バイラクタル:1949 - ∞)

若き日のオズデミル・バイラクタル氏

[1] SELÇUK BAYRAKTAR - BAYRAKTAR AKINCI TESLİMAT VE MEZUNİYET TÖRENİ KONUŞMASI https://youtu.be/dGETmeQXemc?t=144
[2] Heat-Seeking Missile-Armed MQ-9 Reaper Shot Down Target Drone During Exercise https://www.thedrive.com/the-war-zone/23694/heat-seeking-missile-armed-mq-9-reaper-shot-down-target-drone-during-exercise
[3] Fighter UAV Competition https://teknofest.org/en/yarisma-detaylar-10.html

※  この翻訳元の記事は、2021年10月21日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳した
  ものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所がありま
  す。




おすすめの記事

2022年5月15日日曜日

塹壕戦の再考:アルメニアの国産リモート・ウェポン・システム



著:スタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ

 少ない人口と限られた経済力は、アルメニアが軍事装備の陳腐化に対処し、全く新しい能力を自国の軍隊に導入するための創造的な解決策を考え出す必要に迫られていることを意味しています。

 この状況は長年を通じて非常に活発な研究開発プロジェクトの立ち上げに至りましたが、アルメニアの外ではメディアの注目をほとんど集めていません。

 資金不足のため、そのプロジェクトのほとんどが試作品の域を超えて進行することはありませんでしたが、範囲を限定した(つまり、必要とする財政的な関与が少ない)ものに関しては、通常はより多くの成功を収めました。

 これらの成功したプロジェクトの一つが、照準用スクリーンに接続されたサーマルサイトを用いて隠れながら射撃できるように改修された「PKT」機関銃です。この非常に興味深い装置は、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争でアルメニア軍で使用されたことが初めて目撃され、同軍の陣地を制圧したアゼルバイジャン軍に鹵獲され、詳しく調査されました。[1] [2]

 見た目は粗雑ながらも、意図された役割において有用であるこのシステムは、アルメニアの軍事産業を象徴する適応性を示した明確な一例となっています。

         

 もちろん、第一次世界大戦時のソンムやヴェルダンの塹壕から出てきたものをそのまま現代に適応させたような装置だと言われても、私たちはそれを全く非難することはできません。

 1994年の停戦合意以来、厳しい膠着状態のさなかにあった境界線沿いのアルメニア軍の塹壕は、実際に第一次世界大戦の塹壕を連想させるものでした。アルメニアとアゼルバイジャンの両側が地雷や障害物が散らばった無人地帯の細いラインで隔てられていたのです。

 防御的な砦のネットワークは過去数十年間にわたって全く変化しておらず、大抵の場合、それらは現代的な防御施設というよりは一時的な戦闘用の陣地に似たようなものでした。

 これらの塹壕はあらゆる地上部隊が接近して最終的に制圧する際に立ちはだかる悪夢となる可能性がありますが、上空を旋回しながら自己が搭載する「MAM-L」誘導爆弾や地上の多連装ロケット砲による誘導ロケット弾の標的にする価値がある陣地を慎重に選択することができるアゼルバイジャンの「バイラクタルTB2」ドローンに直面した結果、防衛上の価値が全く無いことが判明しました。

 結果として、大部分の塹壕線や陣地は今まで近くに寄せ付けないはずだった敵が視界に入るずっと前に、この見えない相手に無力化されてしまったのです。

 それでも、小規模な無人戦闘航空機(UCAV)の飛行隊では限られた範囲しかカバーできなかったため、その代わりにいくつかの防衛ラインでは陣地が繰り返しアゼルバイジャン軍の集中砲撃を受け、続いて機械化部隊や歩兵の攻撃に直面しました。

 これらの攻撃は最終的にアルメニア兵を陣地から追い出すことに成功しましたが、ほかの陣地では数日または数週間にわたってアゼルバイジャン軍を抑えることに成功しました。ナゴルノ・カラバフの北部では特にそうであり、山岳地とアルメニア軍の激しい抵抗が、44日間戦争の全期間にわたってアゼルバイジャン軍の前進を阻んだのです。




 このシステムで使用されているのはPKT機関銃であり、これはソ連の戦車やAFVの同軸機銃として搭載するために特別に設計されたPK汎用機関銃の派生型です(そのため、PK-Tankという名前になっています)。

 (電磁式トリガーを用いることによって)最初から遠隔操作で発射できるように設計されていたことから、PKTをリモート・ウェポン・システムという新しい役割のために改造する必要はほとんどありませんでした。

 PKTが持つもう一つの利点は、250発という素晴らしい量の7.62×54mmR弾を収納できる弾倉(弾薬箱)のサイズにあります。追加の弾倉を陣地に持ち込む必要が生じる以前に長時間の連続射撃を可能にするため、予備の弾倉を入れる専用のラックが金属製銃架の右側に溶接されています。

 ちなみに、アルメニアはすでに大量のPKT機関銃を保有していたものの、どうやらすでに使用されていなかったようです。これらのPKTはかつて「BRDM-2」偵察車や「BTR-60」装甲兵員輸送車(APC)に搭載されていたものですが、これらのAFVの大部分が予備役に追いやられて最終的にはアルメニア軍によって退役させらたため、搭載されていた武器は保管状態に置かれました。

 ただし、アルメニア軍はこの潜在的に有用な武器を放置して朽ち果てさせるのではなく、相当な数のPKTをリモート・ウエポン・システム用の銃として採用しました。


 PKTはポールの上に設置された粗末な金属製の構造物に取り付けられており、使用時には機銃を塹壕のすぐ上まで持ち上げ、使用しないときや再装填する必要がある場合には塹壕内に降ろすことができます。

 機関銃手は、システムの左側に備えられたロシアの「インフラテック」社製「IT-615」サーマルサイトとリンクした目の前のモニターを通して狙いを定めます。そして、誰かが照準線上に入ると、機関銃手は武器システムの照準にも使用できる、2本あるハンドルのうち1本のトリガーを押してPKTを射撃します。[3] [4]

 サーマルサイト用のバッテリーと思しき物体が金属製銃架の左側に雑に取り付けられていますが、これは全てのシステムに備えられているわけではないようです。




 アルメニアによって開発された自動式の銃架は、PKT用のシステムだけではありません。 別のプロジェクトでは対地攻撃に転用した高射機関砲の自動化が提唱され、 実際に「ZPU-2」14.5mm高射機関砲をベースにした試作モデルが作られました(PKT機関銃と同様に、ZPU-2もアルメニアでは現役を退いていました)。

 装甲化された目標に対するシステムの攻撃力を高めるために、1門の「SPG-9」73mm 無反動砲(RCL)が副装備として追加されました。この組み合わせは戦車に至るまでのあらゆるAFVに対して致命的な打撃を与える可能性があり、歩兵を乗せたBMP歩兵戦闘車(IFV)がその最適な目標となると思われます。

 完全に遠隔操作され、サーマルサイトで照準を合わせるこのシステムで人の手を必要とするのは、SPG-9を撃つたびに砲弾を装填することと、ZPU-2が2つの大きな弾倉に収納された2400発の機関砲弾を撃ち尽くした後に弾薬を装填することだけでした。

 しかし、この一見して使えそうなシステムもほかの多くのアルメニア独自の軍事プロジェクトと同様に、予算不足がそれ以上の開発と最終的な軍隊への導入を妨げたようです。




 一方、PKT用システムのコンセプトをより発展させたものも開発されており、エレバンで開催された武器展示会「ArmHiTec 2018」で初めて公開されました。[5]

 この箱型システムの機銃手は地下のバンカーの安全な環境の中で座りながら射撃できるため、このタイプのPKTはようやく真の遠隔操作式機関銃と呼べるものとなりました。当然ながら、この時点でも予算不足がこの有望な兵器システムの導入を不可能にしたようです。

 このシステム唯一の真の欠点は、比較的小さな弾倉が空になった後に毎回手動で再装填する必要があることです。箱型システムの場所によっては、その行為が危険な試みになる可能性があります。継続しての使用でシステムへ装填するために、アルメニア兵が必然的に敵の視界に入る高い位置へ上る必要があるからです。

 使用されている弾倉には最大で150発の7.62mm弾が装弾されている可能性が高いですが、毎分750発という発射速度を考慮すると、怒りに任せて射撃するとすぐに弾切れになってしまうおそれがあります。



 アルメニアのPKTシステムは、最終的には(塹壕ではなく)空で決した戦争の流れを変えることはできませんでしたが、限られた手段に直面した中で費用対効果の高い創意工夫を具現化した一流の手本であり続けています。

 壊滅的な敗北後に自軍がボロボロになっているため、この国は2020年のナゴルノ・カラバフ戦争で目の当たりにした新しいタイプの戦争と軍事バランスに適した武器を軍に提供するため、このような創意工夫に優れた装備を求める可能性があります。

 十分な資金が供給された場合、アルメニア独自の軍事産業は敵味方問わずに大きな驚きを与え、自国と軍隊を現在直面している不利な状況からゆっくりと回復し始めることができるでしょう。

[1] https://twitter.com/TvIctimai/status/1312037877174480897
[2] https://i.postimg.cc/VNmjFRSH/6jf.png
[3] https://twitter.com/Mukhtarr_MD/status/1357673286704988167
[4] https://twitter.com/neccamc1/status/1362011034891005953
[5] https://twitter.com/Mukhtarr_MD/status/1360539364506402816

※  当記事は、2021年3月2日に本国版「Oryx」に投稿されたものを翻訳した記事です。意
  訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所が存在する可能性
    があります。



おすすめの記事

2022年5月11日水曜日

オリックスのハンドブック:ナイジェリアの軍用ドローン(一覧)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 過去10年間、ナイジェリアは外国の企業や機関と共同で数種類のUAVを設計してきました。これらのプロジェクトの大半、特に「Gulma」と「ツァイグミ」は設計に失敗したか、あるいはナイジェリアでの生産に入るにはあまりにも利便性が限られていたようです。

 それにもかかわらず、彼らの存在は自身の設計者たちに無人航空機システムの設計における貴重な経験を提供するものであり、いつの日か本格的なナイジェリア製UAVの設計・製造に活用することができるでしょう。

 2020年の後半には、ナイジェリアがまもなく中国から「翼竜II」を2機、「CH-4B」を4機、「CH-3A」を2機追加で受け取ることが報じられましたが、おそらく後者は2014年に同型機が就役して以来、運用中に失われた機体を置き換えるものだと思われます。[1]

 おそらく最も驚くべきことに、2021年2月にはナイジェリアで1機のUAE製「Yabhon フラッシュ-20」が目撃されました。このモデルについては2016年にナイジェリアが発注したことが最初に報じられましたが、これまでにナイジェリアで運用されている姿が目撃されていなかったものです。[2]

  1. この一覧目的は、ナイジェリアが現時点で保有している無人航空機(UAV)のストックを包括的に分類することにあります。
  2. 一覧を合理化し、不要な混乱を避けるために、ここにはナイジェリアの防衛産業に関連する軍用クラスのUAVかドローンのみを掲載しています。また、ナイジェリア軍によって試験が行われたものの、最終的には導入されなかったUAV(RQ-11「レイブン」シーベル「カムコプターS-100」など)はこのリストに含まれていません。
  3. 1つの名称を持つドローンの派生型が複数ある場合は、そのように追加されます。
  4. 可能な限り、機体名の後に導入や運用が開始された年を記載しています。
  5. 発音や読み方が不明の機体については、英語表記のままにしています。
  6. UAVの名前をクリックするとナイジェリアで運用中の機体の画像を見ることができます。


無人偵察機


無人戦闘航空機


垂直離着陸型無人航空機

訓練用無人航空機
  • Mugin (ドローン操作要員の訓練に使用)
  • Amebo I [2010] (英国のクランフィールド大学と共同で設計されたが、就役せず)
  • Amebo II [2011] (同上)
  • Amebo III [2012] (同上)

[1] Nigerian Air Force getting Wing Loong, CH-3 and CH-4 UAVs https://www.defenceweb.co.za/aerospace/unmanned-aerial-vehicles/nigerian-air-force-getting-wing-loong-ch-3-and-ch-4-uavs/
[2] Nigeria has received Emirati UAVs https://www.defenceweb.co.za/aerospace/unmanned-aerial-vehicles/nigeria-has-received-emirati-uavs/




おすすめの記事