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2023年6月17日土曜日

無残な結末:短命に終わったヨルダンの「CH-4B」UCAV飛行隊


著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 無人戦闘航空機(UCAV)を運用する国が年々増加している中で、ヨルダンは保有する全UCAVを運用開始から約2年で退役させてしまったことは知られていません。

 この劇的な動きの原因にあったのは、同国の6機から成る中国製「CH-4B」武装ドローン飛行隊の性能でした。このUCAVは信頼性が低く、ほかのヨルダン空軍(RJAF)が有するアセットと互換性がなく、さらに(ジャミングなどの)厳しい電子戦環境下で運用できないことが明らかであったため、RJAFでほとんど運用されずに売りに出されてしまったのです。[1]

 ヨルダンは2016年に最初の「CH-4B」を導入し、6機はザルカ空軍基地H4ルワイシェッド空軍基地に分遣隊を置くアブドッラー2世空軍基地の第9飛行隊に配備されました。[2]

 当初、ヨルダンは(「CH-4B」を調達する以前に)イタリア製の武装型「ファルコ-EVO」に注目していましたが、最終的にその生産の実現が結実することはありませんでした。 また、アメリカはヨルダンに非武装型の「MQ-1 "プレデター"」や「プレデターXP」を提供する意思を示したものの、武装可能ないかなる種類のUAVの引き渡しについては拒否しました。[3]

 ほかにUCAVを獲得する機会(販売国)が全くなかったため、ヨルダンはその時点で武装ドローンを販売してくれる唯一の国:中国に目を向ける結果に至りました。

 2015年にイラクが導入した「CH-4B」と異なり、ヨルダンが得たタイプは1,500kmを超える距離での運用を可能にさせる衛星通信装置(SATCOM)が装備されていました。[1]

 また、UCAVと一緒に大量の「AR-1」空対地ミサイル(AGM)や「FT-9」誘導爆弾も調達されており、後者はヘッダー画像で「CH-4B」の主翼パイロンに取り付けられている姿を見ることができます。

 すでに2018年11月の時点でヨルダン空軍は「CH-4B」の性能に不満であり、退役を検討していることを露わにしました。結局、このUCAVは2019年前半に退役させられた後に売りに出されるという結果を迎えました。[1]

  当初は6機全てがヨルダンから多大な支援を受けているハリーファ・ハフタル将軍率いるリビア国民軍(LNA)に売却されたと報じられましたが、ドローンが迎えた本当の運命はいまだ謎に包まれています。[4] 

 もっとも現実的なシナリオとしては、(LNAと違って)すでに大規模な「CH-4B」飛行隊を運用しているサウジアラビアに売却された可能性が挙げられます。

 ヨルダンと同様に、サウジアラビアも「CH-4B」の運用で問題に直面したようです。伝えられるところによれば、よく出くわす問題として、修理や整備に関する資料が不足していたり、スペアパーツの在庫や発注システムが無いといったことが含まれています。[5]

 同型機を2015年に導入したイラクでも同じ結果であり、全20機のうち8機は僅か数年の間に墜落し、残りの12機はスペアパーツが不足しているために、現在は格納庫で放置され続けているようです(注:2022年8月に最初の「CH-4B」が運用に復帰したと報じられました)。[6] [7]

 別の「CH-4B」ユーザーであるアルジェリアは、数か月のうちに3機を事故で失ってしまいました。[8]


 「CH-4B」が退役した後のRJAFは、偵察や標的の捜索・指示、さらには精密打撃用に有人機を使用する状態に逆戻りしています。

 現在のヨルダン軍で運用されている唯一のUAVは「シーベル」「S-100 "カムコプター"」VTOL型無人航空システム(UAS)であり、10機未満の数が現役にあると考えられています。[9]

 また、ヨルダンは2010年代前半から中盤にかけて導入した4機から成るイタリアの「セレックス(注:現在はレオナルド社)」製「ファルコ」UAV飛行隊も運用していました。ヨルダン軍の「ファルコ」は少なくとも2機がシリア南部での作戦中に撃墜され、残った2機も2017年後半から翌年前半にかけて密かに退役したと伝えられています。 [10] [2]

 「CH-4B」が行っていた精密打撃の任務は、2013年にUAEから贈与された6機の「AT-802U」によって引き継がれています。

 当初イエメンによって発注されていた4機の同型機も(内戦などの原因でキャンセルされた結果として)、2016年にRJAFが導入しました。

 10機の「AT-802U」は「ウェスカムMX15」前方監視型赤外線装置(FLIR)を装備しており、「AGM-114 "ヘルファイア"」AGMや「GBU-12」、「GBU-58」レーザー誘導爆弾で武装することが可能です。

  約10時間という長い滞空時間や装備された高度なセンサー類、そして最新の精密誘導兵器の運用能力を考慮すると、ヨルダンは結果的に「AT-802U」を運用した方がより都合が良いと判断したと断言することができるでしょう。

レーザー誘導爆弾を搭載しているヨルダン空軍の「AT-802U」

 ヨルダンが「CH-4B」の運用を続けるよりも処分することを好んだという事実=保有する中高度・長時間滞空(MALE)型UAVを全廃したことは、この中国製UCAVが抱えていた問題を解決するには、あまりにも厳しすぎたことを示しているのかもしれません。

 中国製UCAVは多くの国々で実戦投入されていますが、特にリビア、ナイジェリア、イエメンにおける作戦では、常にその性能に不十分な点が多くあったようです。[5] [6] 

 かつて中国製UCAVを導入した数か国は近年になってトルコ製UCAV、特に「バイラクタルTB2」の調達に切り替えています。

 ヨルダン空軍はFLIR装置や精密誘導兵器を装備した数種類の航空機の導入によって「CH-4B」の退役で生じた空白を何とか補完してきましたが、この国がいつの日か再び武装ドローンの導入を試みることは決して考えられないことではないでしょう。

 「CH-4B」で大失敗した後にヨルダンがUCAVの導入で再び中国に目を向けることは起こりえそうになく、アメリカがこれまで武装ドローンを販売することに消極的だったことを踏まえると、UAEやトルコが新たなサプライヤーとなる可能性が考えられます。



[1] Jordan Sells Off Chinese UAVs https://www.uasvision.com/2019/06/06/jordan-sells-off-chinese-uavs/
[2] Jordan modernises https://www.keymilitary.com/article/jordan-modernises
[3] FORCE REPORT Royal Jordanian Air Force https://www.4aviation.nl/wp-content/uploads/2016/12/Jordan-feb16-AirForces-Monthly-PatrickRoegies-Marco-Dijkshoorn.pdf
[4] Jordanian UAVs apparently sold to Libya https://www.defenceweb.co.za/aerospace/unmanned-aerial-vehicles/jordanian-uavs-apparently-sold-to-libya/
[5] Chinese CH-4B Drones Keep Crashing In Algeria For Technical Fault https://www.globaldefensecorp.com/2021/03/11/chinese-ch-4b-drones-keep-crashing-in-algeria-for-technical-fault/
[6] OPERATION INHERENT RESOLVE LEAD INSPECTOR GENERAL REPORT TO THE UNITED STATES CONGRESS https://media.defense.gov/2021/May/04/2002633829/-1/-1/1/LEAD%20INSPECTOR%20GENERAL%20FOR%20OPERATION%20INHERENT%20RESOLVE.PDF
[7] Iraq’s Air Force Is At A Crossroads https://www.forbes.com/sites/pauliddon/2021/05/11/iraqs-air-force-is-at-a-crossroads
[8] Tracking Worldwide Losses Of Chinese-Made UAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/tracking-worldwide-losses-of-chinese.html
[9] Royal Jordanian Air Force: Fit for the Fight https://aviationphotodigest.com/royal-jordanian-air-force/
[10] Drones Are Dropping Like Flies From the Sky Over Syria https://warisboring.com/drones-are-dropping-like-flies-from-the-sky-over-syria/

※  当記事は、2022年1月17日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したも
    のです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所がありま   
  す。



おすすめの記事

2023年1月9日月曜日

地域での成功の鍵:インドネシアが「バイラクタルTB2」と「アクンジュ」を購入に目を向ける


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 最近のトルコ製無人戦闘航空機(UCAV)が中央アジアで輸出を成功させた後、今度はアフリカにおけるトルコ製ドローンの拡散が注目を集めています。[1] 

 チュニジアは「トルコ航空宇宙産業(TAI)」「アンカ」UASを発注した一方、モロッコとリビア、ニジェール、ナイジェリア、エチオピア、ルワンダ、トーゴ、そしてマリは「バイラクタルTB2」を調達しました(注:ニジェールにTB2が納入されたかは未確認)。それらに加えて、アンゴラ、モザンビークといった他のサハラ以南のアフリカ諸国では、TB2の導入を示唆しているか、すでに発注している状態にあります。[2] 

 TB2は間違いなく、信頼性と手頃な価格を兼ね備えながらも戦場で圧倒的な効果を発揮できた最初のUCAVであるため、 (前述した国以外の)サハラ以南のアフリカ諸国がこのUCAVの導入の流れに続くことはほぼ確実でしょう。
 
 アナリストや無人機ファンが次のTB2輸出に関するニュースを待望している間にも、すでにより多くの国がトルコ製無人機を導入するための行列に加わりつつあります。

 トルコの軍事関連メディア「サヴンマTR」のインタビューにて、駐トルコのインドネシア大使であるラルー・ムハンマド・イクバル氏が「インドネシアはトルコからUAVを入手する可能性について検討している」と明かした上で、「トルコがUAVを供給するだけでなく、将来的にさまざまなタイプのUAVび関する技術移転やプログラムにも参加する」こともインドネシアが願っていると語りました。さらに同大使は「私たちはトルコがこの件(注:UCAV)で世界中で話題になっていることを誇りに思います」とも言及しています。[3]
 
 そして、2022年11月に開催された「インドゥ・ディフェンス2022」でジェーンズと話した情報筋は、さらに「バイカル・テクノロジー」社が「バイラクタルTB2」と「アクンジュ」に関してインドネシア政府と交渉中であることを確認したと語りました。[4]
 
 現時点で、東南アジアでUCAVを保有している国は比較的少数にとどまっています。これまでにUCAVを導入したのはインドネシアとミャンマーだけであり、近年ではタイとベトナムが国産の武装無人機を開発中です。[5] [6] [7]

  マレーシアは近い将来に3機の「TAI」製「アンカ」中高度・長時間滞空型(MALE)UAVを導入する予定です。[8] 同国はまだ武装無人機を追い求めてはいませんが、将来のいずれかの時点で「アンカ」を武装化を図る可能性がゼロとは言えないようです。

 インドネシアは、2019年以降に中国から導入した6機の「CH-4B」UCAVを運用しています。このUCAVは、「TAI」と「PTDI」によって売り込まれたトルコの「アンカ-S」と「翼竜Ⅰ」との競争を勝ち抜いて選定・導入されたものです。同国の「CH-4B」は空対地ミサイル(AGM)で武装可能であり、通信中継あるいは通信情報収集(COMINT)ポッドを装備している姿も目撃されたことがあります。[9] 

 また、インドネシアでは「PT・ディルガンタラ・インドネシア(PTDI)」 によって国産UCAV計画も進められました。「エラン・ヒタム(黒鷲)」という名前で知られているこの計画について、実際に運用可能なシステムが誕生するまでには数年はかかると思われましたがが、技術的な問題に直面して2022年9月に中止となってしまいました。[10]

 トルコの無人機、それもほぼ間違いなく「バイカル・テクノロジー」社が設計した機体に関心を示したということは、インドネシアが「CH-4B」飛行隊を補完するために「バイラクタルTB2」のような追加のUCAVか全く新しい能力を提供する無人機(またはその両方)の導入に目を向けていることを示唆していることは明らかです。

 インドネシアが当初から運用ドクトリンの構築とMALE型UCAVの使用に関する操作員の訓練を目的として「CH-4B」を取得したことを踏まえると、今の時点で同UCAVがさらに調達されることは起こりえないでしょう。

 人口の密集地が海によって隔てられているという独自の地理的特性のために、インドネシアは国の防衛に重大な課題を抱えています。

 インドネシア国軍は東西5,150kmに及ぶ17,000もの群島の哨戒任務を負っており、大量の哨戒艇や哨戒機を運用して不法侵入や領海内で発生するあらゆる活動に目を光らせているのです。

 偶然なことに、かつてオランダの植民地軍(KNIL)も、この広大な島々をいかにしてパトロールするのが適切なのかという同じ問題に直面していました。
 
 1930年代後半になると、オランダは現在のインドネシアに相当する「オランダ領東インド諸島(蘭印)」をめぐる安全保障に関する懸念をますます高めていきました。設計と建造に少なくとも10年はかかる大規模な海軍部隊の構築ではなく、王立オランダ領東インド陸軍航空隊はその代わりとして「空中巡洋艦」構想を打ち出したのです。[11]

 この構想は、大量の爆撃機を導入して、あらゆる群島の隅々に前線滑走路の建設を必要とするものでした。日本軍の侵攻部隊(艦隊)が蘭印領の島に接近してくる場合には、大量の爆撃機を想定される戦闘地域に近い滑走路へ展開させることができるというわけです。
 
 この構想を実現させるために、蘭印はアメリカから(マーティン「B-10」の輸出版である)「139WH型」と「166型」爆撃機を合計で121機を導入しました。「B-10」系統の機体は1930年代後半に就役した時点ですでに旧式化していましたが、これらは蘭印が容易に入手できる唯一の機種でした。

 この「空中艦隊」は後に爆弾を搭載可能な「ドルニエ」製「Do-24」飛行艇と「ダグラス」製「A-20 "ボストン"」爆撃機によって増強され、そのうちの6機は日本に陥落される前の蘭印に到着できました。[11] 

 旧式の「B-10」爆撃機シリーズは日本の戦闘機を高速で振り切ったり戦闘で勝てると思われていましたが、その性能はすぐに「A6M(零戦)」といった日本軍の新型戦闘機に追い抜かれてしまいました。それでも、「マーティン」機は日本機に対していくつかの素晴らしい勝利を収めたことから、彼らの導入は本質的に群島防衛のための脅威に通用する唯一の選択肢だったことは間違いありません。

 「空中巡洋艦」のコンセプトは、インドネシアが求める防衛上の要求に応えるために「バイラクタル・アクンジュ」を導入することによって息を吹き返す可能性があります。なぜならば、「アクンジュ」が誇る 7,500kmの航続距離と24時間以上の滞空性能は、同国中央の航空基地を拠点としながらインドネシア群島の隅々までカバーするのに十分すぎるほどであるからです。

 ほかの島にある空港は、前方武器燃料補給地点(FARP)として機能することでUCAVの作戦を支援することが可能です。これによって、各地に展開した「アクンジュ」各機が長時間にわたって燃料や弾薬を搭載していない状態が続くことがないことを保証します。

 さらに、「アクンジュ」は陸・海・(射程は限られるものの)空の目標に対して攻勢的な作戦を実施することを可能にする、275km以上の射程を持つ(対艦)巡航ミサイルや100km以上の射程を誇る視程外空対空ミサイル(BVRAAM)を含むさまざまな種類のスタンドオフ兵器の搭載ができるという特徴があるのです。
 

インドネシアにはUCAVの運用をサポートできる空港や空軍基地が100カ所以上あります

 インドネシアが有人戦闘機を「空中巡洋艦」として用いることについては、その短い滞空時間、(十分な)空中給油機の不足、そして莫大な導入価格によって実現が妨げられています。

 現在、インドネシア空軍(TNI-AU)は30機以上の「F-16」と12機の「Su-30KI」を含む約100機の作戦機を運用しており、先述の主力戦闘機以外の数については、「Su-27」、「T-50」「ホーク200」「EMB 314(スーパーツカノ)」ターボプロップ式軽攻撃機で占められています。

 2021年2月、インドネシア空軍のファジャール・プラセティオ参謀総長は、同国が「F-15EX」とダッソー製「ラファール」を調達する意向であることを明らかにし、それに伴って以前から計画していたSu-35の導入構想は完全に終止符が打たれたようです。[13] 

 また、インドネシアは韓国が進めている「KF-X」戦闘機計画のパートナー国であるため、インドネシア空軍によって実際に「KF-21 "ポラメ"」が導入されることがほぼ確実となっています。[13]

 このような外国産の作戦機と一緒に使用されるのが、さまざまな種類の誘導兵器です。「Su-30KI」は「Kh-31P」対レーダミサイル、「Kh-59M」「Kh-29TE」 TV誘導式空対地ミサイルを運用可能です。「F-16」は(2019年に最大で100発を導入した「JDAM」GPS誘導弾や「AGM-65」空対地ミサイルを運用可能ですが、「T-50」や「ホーク200」にも搭載することができます。そして、インドネシア軍の「CH-4B」は「AR-1」及び「AR-2」空対地ミサイルを使用しています。

 「AR-1/2」と「AGM-65」以外の誘導兵器は地上部隊への効果的な火力支援をもたらすには相対的に不向きなため、TNI-AUは火力支援では無誘導ロケット弾や各種の無誘導爆弾の使用に頼らざるを得ません。

 インドネシア陸軍(TNI-AD)は最近、対戦車ミサイル(ATGM)を運用可能な攻撃ヘリコプターを導入したものの、現時点でインドネシア全土で使用できる攻撃ヘリは「AH-64E」が8機、「Mi-24」が7機と僅かなものであり、依然として必要な数からはほど遠い状況であることは一目瞭然です。
 

「M117」無誘導爆弾でフル爆装した「F-16」

 インドネシアの広大な範囲と島の数が非常に多いため、航空兵力と大砲・多連装ロケット砲(MRL)との相乗効果が発揮される可能性は限定されています。群島周辺における大分部の軍事作戦では地上ベースの火力支援アセットに期待することが厳しいことを踏まえると、航空戦力はインドネシアが戦うあらゆる戦闘において、極めて重要なファクターなのです。

 したがって、重量級のペイロードを長距離輸送可能なプラットフォームは、非常に貴重なアセットとなります。 

 「アクンジュ」は主翼と胴体下部に合計で9基のハードポイントを備えています。特に後者はUCAVへの搭載が可能な兵装の中で最重量級のものを搭載することが可能であり、具体的には重量900kgの「HGK-84」誘導爆弾と射程275km以上を誇る「SOM」巡航ミサイルの搭載が挙げられます。
 
 「アクンジュ」が他のUCAVと異なるのは、将来的に本格的な空対空ミサイル(AAM)運用能力が備わるという点にあります。このUCAVは自身のAESAレーダーで遠距離にいる標的の位置を特定し、「スングル」携帯式地対空ミサイル(MANPADS)、「ボズドアン」赤外線誘導式AAM、100km以上の射程を持つ「ゴクドアン」目視外射程空対空ミサイル(BVRAAM)で攻撃することが可能となるのです。

 「アクンジュ」の実現可能な武装パッケージは、精密誘導ミサイルと爆弾による長距離打撃能力と共に18発以上の「MAM-L」誘導爆弾の搭載を実現するため、同機を地上部隊への航空支援を供するのに最適なアセットにしています。[15] 

 「アクンジュ」はTNIに長距離攻撃能力を提供する一方で、小型の「バイラクタルTB2」には衛星通信アンテナ(SATCOM)を搭載するオプションがあり、それが適用された機体の航続範囲は27時間という長時間の滞空時間だけが制約となります(SATCOM未装備の機体の作戦可能範囲は僅か約300kmです)。[16]
 

 駐トルコインドネシア大使のラルー・ムハンマド・イクバル氏はトルコに対して、「将来的に、さまざまな種類のUAVに関する技術移転やプログラムにも参加してほしい」という自国の希望を明確に表明しました。[3]
 
 将来的な協力としては、インドネシアにおけるトルコ製無人機の組み立て・整備センターの設立が含まれる可能性が考えられます。
 
 両国の軍事・技術協力の可能性はUAVの分野をはるかに超えています。特に「FNSS」と「PTピンダッド」が共同開発した「カプランMT/ハリマウ」中戦車プロジェクトは、両国が力を合わせれば何ができるのかを示す最適の実例であることは言うまでもないでしょう。[17]

 さらに、すでに「PTDI」と「TAI」が「N-219」と「N-245」ターボプロップ旅客機で協力を進めている間の2021年の後半には、トルコからの海軍艦艇の調達について交渉が始まったことが明らかにされました。[18] [19] 


 2012年の時点でも、トルコは依然として自国の需要に合わせるためにアメリカから武装ドローンを積極的に調達しようと試みていました。[20] 

 それから僅か10年でトルコ製のUCAVを発注した国は(当記事執筆時点の2022年11月時点で)27か国となり、そのうち24か国が「バイカル・テクノロジー」社にUAVを発注しています。[21][22]

 トルコは自身が無限の研究開発予算を持つ超大国でなくても、先端技術分野の開発で素晴らしい偉業を成し遂げられることを証明しました。インドネシアが「バイカル」社や「TAI」からUAVを導入するか否かにかかわらず、トルコ製ドローンがインドネシアの軍事力において決定的な役割を果たす可能性があることは間違いないでしょう編訳者注:2023年8月、インドネシアが「アンカ-S」12機を調達する契約を交わし、2025年11月までに納入される旨が報じられました
 
インドネシアが導入するTAIの「アンカ-S」UCAV(画像はトルコ軍機)

[1] Turkish Drones Are Conquering Central Asia: The Bayraktar TB2 Arrives To Kyrgyzstan https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/turkish-drones-are-conquering-central.html
[2] Taking Africa By Storm: Niger Acquires The Bayraktar TB2 https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/taking-africa-by-storm-niger-acquires.html
[3] Endonezya Ankara Büyükelçisi Dr. Lalu Muhammad Iqbal: Türkiye ile Endonezya arasındaki savunma iş birliği artacak https://www.savunmatr.com/ozel-haber/endonezya-ankara-buyukelcisi-dr-lalu-muhammad-iqbal-turkiye-ile-h15336.html
[4] Indo Defence 2022: Baykar in talks with Indonesian government on Bayraktar TB2, Akinci UAVs https://www.janes.com/defence-news/news-detail/indo-defence-2022-baykar-in-talks-with-indonesian-government-on-bayraktar-tb2-akinci-uavs
[5] Thai UAV Surprises at Singapore Show https://www.ainonline.com/aviation-news/defense/2020-02-12/thai-uav-surprises-singapore-show
[6] Royal Thai Army developping D-Eyes 04 MALE UAV https://www.airrecognition.com/index.php/news/defense-aviation-news/2021/november/7852-royal-thai-army-developping-d-eyes-04-male-uav.html
[7] Red Star Rising - Vietnam’s Armed Drone Project https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/red-star-rising-vietnams-armed-drone.html
[8] Malaysia Signs Contract with TAI for 3 ANKA Drones https://www.overtdefense.com/2022/10/11/malaysia-signs-contract-with-tai-for-3-anka-drones/
[9] Auguring The Future: Indonesia’s CH-4B UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/roars-over-riau-indonesias-ch-4b-ucavs.html
[10] An Eagle Takes Shape – Indonesia’s Elang Hitam MALE UCAV https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/an-eagle-takes-shape-indonesias-elang.html
[11] Indonesia suspends Black Eagle MALE UAV programme https://www.shephardmedia.com/news/air-warfare/indonesia-suspends-black-eagle-male-uav-programme/
[12] 40 jaar luchtvaart in Indië by Gerard Casius and Thijs Postma
[13] Indonesia definitively closes the door on Su-35; wants Rafale and F-15EX https://www.aviacionline.com/2021/12/indonesia-definitively-closes-the-door-on-su-35-wants-rafale-and-f-15ex/
[14] South Korea rolls out first KFX jet prototype. Will Indonesia still reap benefits from it? https://www.thejakartapost.com/news/2021/04/16/south-korea-rolls-out-first-kfx-jet-prototype-will-indonesia-still-reap-benefits-from-it.html
[15] Endless Possibilities - The Bayraktar Akıncı’s Multi-Role Weapons Loadout https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/endless-possibilities-bayraktar-akncs.html
[16] Bayraktar TB2 https://www.baykartech.com/en/uav/bayraktar-tb2/
[17] Ride The Turkish Tiger: Indonesia’s Kaplan MT Tanks https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/ride-turkish-tiger-indonesias-kaplan-mt.html
[18] Market Expansion: Turkey Set To Export Patrol Vessels To Indonesia https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/market-expansion-turkey-set-to-export.html
[19] https://twitter.com/officialptdi/status/1440521718888497159
[20] Turkey hopeful that US will sell it armed drones https://www.theguardian.com/world/2012/may/22/turkey-us-sell-armed-drones
[21] Akıncı TİHA da katıldı, savunma sanayisi ihracatta yüksekten uçuyor https://www.aa.com.tr/tr/ekonomi/akinci-tiha-da-katildi-savunma-sanayisi-ihracatta-yuksekten-ucuyor/2482865
[22] An International Export Success: Global Demand For Bayraktar Drones Reaches All Time High https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/an-international-export-success-global.html
[23]  Indonesia buys Türkiye's Anka drones worth $300M

※  当記事は、2022年11月27日に本国版「Oryx」に投稿されたものを翻訳した記事です。
   当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があ
  ります。

2022年5月11日水曜日

オリックスのハンドブック:ナイジェリアの軍用ドローン(一覧)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 過去10年間、ナイジェリアは外国の企業や機関と共同で数種類のUAVを設計してきました。これらのプロジェクトの大半、特に「Gulma」と「ツァイグミ」は設計に失敗したか、あるいはナイジェリアでの生産に入るにはあまりにも利便性が限られていたようです。

 それにもかかわらず、彼らの存在は自身の設計者たちに無人航空機システムの設計における貴重な経験を提供するものであり、いつの日か本格的なナイジェリア製UAVの設計・製造に活用することができるでしょう。

 2020年の後半には、ナイジェリアがまもなく中国から「翼竜II」を2機、「CH-4B」を4機、「CH-3A」を2機追加で受け取ることが報じられましたが、おそらく後者は2014年に同型機が就役して以来、運用中に失われた機体を置き換えるものだと思われます。[1]

 おそらく最も驚くべきことに、2021年2月にはナイジェリアで1機のUAE製「Yabhon フラッシュ-20」が目撃されました。このモデルについては2016年にナイジェリアが発注したことが最初に報じられましたが、これまでにナイジェリアで運用されている姿が目撃されていなかったものです。[2]

  1. この一覧目的は、ナイジェリアが現時点で保有している無人航空機(UAV)のストックを包括的に分類することにあります。
  2. 一覧を合理化し、不要な混乱を避けるために、ここにはナイジェリアの防衛産業に関連する軍用クラスのUAVかドローンのみを掲載しています。また、ナイジェリア軍によって試験が行われたものの、最終的には導入されなかったUAV(RQ-11「レイブン」シーベル「カムコプターS-100」など)はこのリストに含まれていません。
  3. 1つの名称を持つドローンの派生型が複数ある場合は、そのように追加されます。
  4. 可能な限り、機体名の後に導入や運用が開始された年を記載しています。
  5. 発音や読み方が不明の機体については、英語表記のままにしています。
  6. UAVの名前をクリックするとナイジェリアで運用中の機体の画像を見ることができます。


無人偵察機


無人戦闘航空機


垂直離着陸型無人航空機

訓練用無人航空機
  • Mugin (ドローン操作要員の訓練に使用)
  • Amebo I [2010] (英国のクランフィールド大学と共同で設計されたが、就役せず)
  • Amebo II [2011] (同上)
  • Amebo III [2012] (同上)

[1] Nigerian Air Force getting Wing Loong, CH-3 and CH-4 UAVs https://www.defenceweb.co.za/aerospace/unmanned-aerial-vehicles/nigerian-air-force-getting-wing-loong-ch-3-and-ch-4-uavs/
[2] Nigeria has received Emirati UAVs https://www.defenceweb.co.za/aerospace/unmanned-aerial-vehicles/nigeria-has-received-emirati-uavs/




おすすめの記事

2021年10月26日火曜日

人命の犠牲と引き換えに:イエメン内戦で喪失した有志連合軍のUAV一覧



著:ステイン・ミッッアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
  1. この一覧は、2015年3月に開始されたサウジアラビア主導のイエメン介入において、視覚的に確認された有志連合軍が運用する無人航空機(UAV)の損失を記録することを目的としています。
  2.  この一覧には実際に視覚的に確認されたものだけを掲載しています。したがって、実際に戦場で失われたUAVの数はここに記録されたものよりも著しく多い可能性があります(例:サウジアラビア領内で墜落したが残骸が撮影されなかったもの)。
  3.  この紛争は現在も継続中であるため、新たな喪失が発生するたびに一覧は更新されます。(日本語版の最終更新日:2022年10月5日、本国版の最終更新日:10月5日


喪失年と機数
  • 2015: 4
  • 2016: 5
  • 2017: 4
  • 2018: 5
  • 2019: 10
  • 2020: 3
  • 2021: 19
  • 2022:11


喪失機の運用国と機体数
  • サウジアラビア: 42
  • アラブ首長国連邦: 15
  • アメリカ合衆国: 7


喪失したU(C)AVの製造国 
  •  アメリカ合衆国: 22
  • 中国: 20
  • オーストリア: 10
  • 南アフリカ: 4
  • トルコ: 4
  • ドイツ: 2
  • イタリア: 1


  • 各機体名に続くリンクをクリックすると、失われた当該U(C)AVと撃墜・墜落した日付が表示された画像を見ることができます。


無人偵察機 (32機)

無人戦闘航空機 (31機)


このリストの作成にあたり、Lost Armour氏とYuri Lyamin氏に感謝を申し上げます。