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2022年7月16日土曜日

土壌流出との戦い:エチオピアにおけるドイツ製ドローン



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2020年11月のティグレ戦争開戦前の時点でエチオピアが最後に入手した(無人)航空機は、紛争の初期段階で投入されたと頻繁に報じられた「翼竜Ⅱ」 UCAVではありません。

 エチオピアが戦前の最後に入手した無人機は、2020年10月にドイツ政府から贈呈品として受け取った1機の「クァンタム・システムズ」社製「トリニティF9」eVTOL-UAS(電動垂直離着陸型無人機システム)でした。[1]

 このドローンは天然資源の保護の分野で支援するためにエチオピア農業自然資源省に寄贈された3機のうちの第1陣となるはずでしたが、2020年11月のティグレ戦争が勃発した後にドイツが残りの2機の供給を停止したため、結果的にF9は1機しか引き渡されませんでした[2]。

 もちろん、ドイツ政府が2020年10月に84,000ユーロ(約1,100万円)相当の「トリニティF9」3機をエチオピアに寄贈する計画を立てた時点で、これらが最終的に軍事転用されることを全く想定していなかった可能性があります。なぜならば、軍事目的で使用されることを防ぐため、寄贈された1機のF9の航続距離は約5kmから1km未満に制限されていたからです。[2]

 1kmという航続距離は農業部門などの(当初から目的とされた)民生用途には十分なものですが、現在敵の支配下にある地域のマッピングといった軍事作戦での使用では全く役に立ちません。

 「トリニティF9」で(オプションで)利用可能なカメラは空中から地表の画像データと地理情報を収集するための理想的なツールとなっています。これらのオプションは、F9を近年にエチオピアが直面している最大の自然災害の1つである土壌流出のイメージングに最適なシステムにもさせてくれます。

 F9がエチオピアに引き渡された後、ティグレ州から離れた場所にあるソマリ州にて同国の農業機関と共同でドローンを使用する許可がようやく与えられたのは、2021年10月になってからのことでした。[2]

      

 おそらくティグレ戦争の初期段階で使用するのに適したドローンが不足していため、エチオピア空軍は他の政府部門から、当初から民生用途で使用するために導入されたいくつかの「民生用ドローン」を譲り受けて配備したようです。そのうちの3種類:「ZT-3V」「HW-V230」DJI「マヴィック2」は、エチオピア連邦警察(EPF)から譲り受けました。[3]

 興味深いことに、エチオピア国防軍(ENDF)はこのシステムを黙って受け入れて就役させるのではなく、これらを(中国の市販モデルではなく)独自に設計した無人機として報道陣の前で発表しました。[4]



 一撃離脱戦法と待ち伏せ攻撃に優れている歩兵中心の敵部隊に直面したENDFは、当記事の執筆時点(2021年10月)でエチオピア北部の山間部におけるティグレ軍との戦いにおいて重大な困難に遭っています。

 「トリニティF9」の設計・製造者である「クァンタム・システムズ」社は自社製品を主に民間市場向けに販売していますが、オランダ陸軍は現在(F9の後継モデルである)「トリニティF90+」UASをパスファインダー(降下誘導)部隊で使用するためのトライアルを実施しています。

オランダ陸軍で評価試験を受ける「トリニティF90+」UAS

 現在、UAVが決定的な役割を果たしている紛争で戦っているエチオピア空軍が軍事攻勢の前に地形をマッピングするなどの軍事目的のために、「トリニティF9」と同様の機能をもたらす無人プラットフォームに強い関心を持っていることは考えられません。短い航続距離と滞空性能を踏まえると、そのような用途におけるこれらのドローンの有効性が極めて限定されたものになる可能性が高いからです。

[1] Germany donates unmanned aerial vehicles (drones) to Ethiopia https://www.fanabc.com/english/germany-donates-unmanned-aerial-vehicles-drones-to-ethiopia/
[2] https://twitter.com/mupper2/status/1445887012079210496
[3] Made In China: Ethiopia’s Fleet Of Chinese UAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/made-in-china-ethiopias-fleet-of.html
[4] Chief Commander of the Ethiopian Air Force, Maj. Gen. Yilma Merda.#Ethiopia #Tigray(Courtesy of EBC) https://youtu.be/leUr8ZECQd0

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。



おすすめの記事

2022年7月5日火曜日

エチオピアにおけるイスラエル産兵器:「サンダー」歩兵機動車



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 エチオピア国防軍(ENDF)が老朽化したソビエト製の兵器とより現代的なロシア製の武器のいくらかを混ぜ合わせたものだけに依存していた時代は、とっくの昔に過ぎ去りました。過去10年間でエチオピアは武器の輸入元を多様化してきており、現在では、中国、ドイツ、ウクライナ、ベラルーシといった国々を含む多数の別の供給源も存在しています。

 間違いなく驚くべきこととしては、このリストにイスラエルやUAEといった国も含まれていることです。実際、これらの国はエチオピアに多くの高度な兵器システムを提供してます。多くのアフリカ諸国にとって、イスラエルは小火器からドローン、さらには艦艇に至るまで何でも供給する人気の高い兵器のサプライヤーであることが証明されています。

 エチオピアは、ハイレ・セラシエⅠ世時代の1950年代にイスラエルと最初に軍事的な関係を構築しました。興味深いことに、エチオピアとイスラエルの軍事協力は、1974年から1991年までエチオピアに存在した共産・社会主義政権の下でも継続されていました。この時代、メンギスツ政権はアラブ諸国とイスラエルの両方と緊密な関係を保っていましたが、後者についてはアラブの同盟国を動揺させさないように、ほぼ秘密にされていました。

 近年におけるエチオピアとイスラエルの強い結びつきは、「メイド・イン・イスラエル」の軍事装備の引き渡しにも現れました。これらの1つが「サンダー」歩兵機動車(IMV)であり、同車はこれまでにエチオピアとカメルーンで運用されています。エチオピアの場合は、自国の武器産業の知識と能力を築き上げるために、国内で車両を組み立てました。

 同様のノックダウン生産はウクライナや中国の間でも行われており、このような動きは、決してこの分野におけるエチオピアの能力を強化するための形だけの努力ではないことを示しています。

       

 2011年から2013年の間に、イスラエルの「ガイア・オートモティブ」社は、エチオピアに80台のサンダーIMVを納入する契約を獲得しました。[1]

 最初の5台はイスラエルで製造され、残りの75台を組み立てるための資材だけでなく、それに必要な全ての工場設備もエチオピアへ出荷されました。ガイア社はエチオピアでさらに5台の「サンダー」IMVを組み立て、その後でエチオピアの人々が自力で残りの70台を完成させました。

 このようなプロジェクトでエチオピア側が得た貴重な経験は、将来にこの国が国産の装甲車両を作り上げようと試みる際に役立つはずです。



 「サンダー」IMVは、民生品であるフォード社製のピックアップトラックのシャーシをベースにした軍用車両です。

 ピックアップトラックから「サンダー」にするためには、まず、このトラックの上部構造(つまり運転室)が完全に剥ぎ取られ、シャーシとエンジンだけを残した状態にします。その後、装甲ボデーを何も載せられていないシャーシの所定の位置に載せて溶接してから、この新たに組み立てられた車両に追加の装備が取り付けられるというわけです。

 最後の仕上げとして、「サンダー」が起伏の多い地形を走破できるようにするためにオリジナルのタイヤを軍用グレードのものに交換することににも注目です。




 ENDFは、ドーザーブレードを装着した派生型を含めて最低でも4種類の「サンダー」IMVを運用しているようです。この派生型は従来型の軍事作戦にはほとんど役に立たないように見えますが、装備されたドーザーブレードは、抗議活動でデモ隊が設置したバリケードを撤去するのに最適です。

 抗議デモはエチオピアの現代社会で頻繁に発生しており、2014年から2016年にかけての反政府デモはその中でも間違いなく最も重要な出来事であり、2018年の政権交代につながりました。

 憲兵隊と連邦警察も独自の派生型を運用していますが、そちらには小型のサーチライトが装備されているように見えます。それらに加えて、エチオピア陸軍では、救急車型と「DShK」12.7mm 重機関銃(HMG)を装備した派生型も運用しています(後者は固定武装を装備した唯一の派生型です)。

 「サンダー」の各型には合計で7基の銃眼(両側面に3基、背面のドアに1基)が装備されているので、(敵襲を払いのけるために)乗員はそこから自分が持つ武器を撃つことができます。




 「サンダー」IMVは、現在のENDFで使用されている唯一のイスラエル産の装備ではありません。(少なくとも名前は)エリートである共和国防衛隊に装備させるため、エチオピアはイスラエルから少数のIWI製TAR-21「タボール」アサルトライフルも導入しました。

 おそらくさらに重要なのは、エチオピア空軍が少なくとも2種類のイスラエル製無人航空機(UAV)を運用していることでしょう。これには「エアロスター」UAVと「ワンダーB ミニ」 UASが含まれており、後者はエチオピア初のUAV連隊を編成するために2011年に調達されました。[2]




 ほとんどがソ連、ロシアや中国製で占められているエチオピアの兵器庫の背後では、新たな外来の装備がそのギャップを埋めています。イスラエル、北朝鮮やドイツから供給されたものであろうと、そのような装備は例によって目立たないように引き渡されていたため、アナリストや一般の人々から全く注目されていません。

 イランによる「モハジェル-6」UCAVの販売もあって、このアフリカの一角における武器市場は成長を続けているようですが、その需要の増加に応じるためのサプライヤーも増えています。

 ティグレ州での紛争が猛威を降り続けているため、(もし未だに投入されていない場合は)この外来の装備も間違いなくそこで使用されることになるでしょう。



[1] The Establishment of an APC Production Line in Ethiopia http://gaia-auto.com/en/the-establishment-of-an-apc-production-line-in-ethiopia/
[2] The Israel Connection - Ethiopia’s Other UAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/the-israel-connection-ethiopias-other.html

 のです。



おすすめの記事

2022年7月1日金曜日

再び前線へ:エチオピアにおける「2S19 "ムスタ-S"」自走榴弾砲



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ編訳:Tarao Goo

 エチオピア軍は、(この国で輸出されていなければ)輸出市場では全く成功していない多数のロシア製兵器を運用しており、これらの1つであるSu-25TK「Tankovy Buster」については、すでに当ブログの記事で紹介しています

 そして、もう1つの兵器は「2S19 "ムスタ-S"」自走榴弾砲(SPG)であり、約12台がエチオピア国防軍(ENDF)で運用されています。エチオピア北部のティグレ州における武力衝突の勃発を受けて、今やこの自走榴弾砲もティグレ防衛軍(TDF)に対抗するために展開した多くの兵器の間にいます。

 エチオピアが「2S19 "ムスタ-S"」最初の輸出先となったのは1999年のことであり、彼らは少なくとも12台を入手しました。「Su-25TK」と同様に、エチオピアの「ムスタ-S」は、1998年5月から2000年6月まで猛威を振るったエリトリア・エチオピア戦争の際に戦時緊急調達として導入されたものです。エチオピアへの納入を早めるために、「2S19」はロシア軍のストックから直接調達されました(注:新規製造品ではないということ)。

 このほぼ同時期に、エリトリアも最初の自走砲を導入しました。エチオピアに続くことを追い求める中で、エリトリアは当時で入手可能な最も高度な自走砲を購入するのではなく、ブルガリアから中古の「2S1 "グヴォズジーカ"」122mm自走榴弾砲の購入で落ち着かせる必要がありました。[1]

 これらは最大射程距離である15kmまでの目標だけを攻撃することが可能ですが、「2S19」の25kmと比較した場合は不十分な距離でした。そうは言っても、「2S19」も「Su-25TK」も最終的にはエチオピアが期待していた軍事的な突破口をもたらすことがなかったことが今では明らかとなっています。

 エチオピアに納入された当時、「2S19」はアフリカ大陸で使用されている最も現代的な自走砲であり、就役後は以前にENDFで使用されていた北朝鮮製の自走砲よりも大幅な戦力向上をもたらしました。これらは「D-30」122mm榴弾砲を(APCをベースとした)装軌式の車体に搭載したものですが、機動性と弾薬の収納量が増加したことを除くと、牽引式の「D-30」榴弾砲から能力が少しも改善されていませんでした。

エリトリア・エチオピア戦争でエチオピア軍で使用されている北朝鮮製「M-1977」122mm自走榴弾砲。これらの自走砲は後に退役してスクラップとなりました。

「ATS-59」砲兵トラクターの車体に「M-46」130mmを搭載したもの。運用している北朝鮮の自走砲を補完するためにこのようなDIY兵器がいくつか生産され、エリトリア軍に対して急いで使用されました。

 北朝鮮の自走砲や「BM-21 "グラート"」122mm MRLと共にエリトリア兵の集結地点を叩くなどして激しい戦闘を展開したエリトリア・エチオピア戦争後、「2S19」については、2020年11月にティグレ人がアディスアベバの中央政府に対して反旗を翻した際に再び戦闘に加わった様子が見られました。

 ティグレ州の各地にある基地を占領したティグレ防衛軍は、大口径のMRL誘導ロケット弾・弾道ミサイルシステムさえも含む重火器で自らを素早く武装させました。

 これを受けて、中央政府はこの反乱を鎮圧するためにENDFを投入しました。これには「2S19」も含まれており、輸送トラックに搭載されて前線を移動する姿が何度か目撃されています。



 航空機の整備やオーバーホールだけでなく、パイロットの訓練もほぼ完全に自給自足しているエチオピア空軍とは異なり、陸軍は(「2S19」について)未だにある程度はロシア人のインストラクターに依存しているようです。エチオピアにおける彼らの存在が、エチオピア人乗員の訓練または装備のメンテナンス、あるいはその両方に関係しているのかは不明です(おそらく後者の可能性があると思われます)。

 ロシアの軍事インストラクターはアフリカの至る場所で活動しており、彼らがカメラに向かってポーズをとるのが好きなことが、アフリカの軍隊で使用されているロシア製装備の画像がネット上に流出する原因であることは珍しくありません。



 1990年代後半にロシアから少なくとも12台の「2S19 "ムスタ-S"」を調達したことが、エチオピア軍による最後の自走砲の導入として知られています。

 エチオピアの砲兵装備は、より多くの「2S19」に投資するのではなく中国から多数の兵器システムを導入することを通じて、これまでで最大となる戦力の押し上げを経験しました。現在までのところ、これらには「AH-1」155mm牽引式榴弾砲、「AR2」300mm多連装ロケット砲(MRL)「A200」300mm誘導ロケット弾発射システム、さらには「M20」短距離弾道ミサイル(SRBM)も含まれています。

         

 砲兵戦力をさらに向上させるため、エチオピアは国内の兵器産業に対してすでに運用しているいくつかのシステムの機能改善を求め、「D-30」122mm榴弾砲をトラックに搭載した、安価ながらも機動性の高い自走榴弾砲を開発しました(下の画像)。

 また、老朽化した「グラード」122mm MRLも、発射機を新しいトラックに搭載することによって新たな命が吹き込まれました(下の画像の左側)。


 さらに別のプロジェクトでは、「ビショフツ・オートモティブ・インダストリー」が一部の「BMP-1」歩兵戦闘車(IFV)を迫撃砲牽引車(注:自走迫撃砲である可能性もあります)に改修するというものもありました(下の画像)。

 これらのプロジェクトのどれもが試作の域を超えて進行したのかどうかは不明であり、それぞれが僅かなサンプルの生産だけでストップしている可能性は十分にあります。



 2S19は世界のこの地域では異色の軍用装備の一部であり、これからもそうであり続けます。

 エチオピアが宿敵のエリトリアよりも優位に立つことを可能にさせる現代的な装備を必死に探していた時期に導入された「ムスタ-S」は、別の敵との別の戦いに参加するために十分な期間の現役を務めてきました。

 20年後のティグレ戦争で、エチオピアは自身が当時と驚くほど似たような状況に直面していることに気づきました。ただし、今回は紛争で必要とする装備を求める相手がロシアではなくイランとなり、そこから「モハジェル-6」UCAVを入手しました

 しかし、この調達が戦争の新しい装備に対する渇望を満たすかどうかはまだ不明であり、「ムスタ-S」も、自身がすぐに(新しく導入された)さまざまな外国産の兵器と一緒に並ぶことに気付くかもしれません(注:この戦争で新装備がどんどん追加調達される可能性があるということ)。



[1] Trade Registers https://armstrade.sipri.org/armstrade/page/trade_register.php

※  この記事は2021年9月20日にOryx本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したもので
 す。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所があり
 ます。

2022年2月16日水曜日

終わりなき内戦の中で:エチオピア・オロミア州でも武装ドローンが投入された

「モハジェル-6」※イメージ画像であり、エチオピアとは無関係です

著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 2022年1月初にエチオピア・オロミア州のギダミの町付近でイラン製「ガーエム-5」精密誘導爆弾(PGM)の残骸が発見されたことは、エチオピア空軍(ETAF)がイラン製の「モハジェル-6」UCAVをオロミア州に近い空港に全身配置したことを示す最初の兆候でした。[1] 

 衛星画像は、今や武装ドローンが隣接するベニシャングル・グムズ州のアソサに配備された可能性が高いことを示唆しています。[2]

 アソサからの「モハジェル-6」は、現時点でオロモ解放戦線(OLA)が活動しているオロミア州の大部分をカバーするのに十分な航続距離を有しています。 

 オロミア州の一部地域は反政府活動の温床となっています。TPLFは2021年11月にティグライ人民解放戦線(TPLF)や他の反政府勢力とも同盟を結び、エチオピア政府に対する統一戦線を形成しました。

 現在も続くエチオピアの紛争については、一般的にエチオピア政府とTPLFの間で起きているものと考えられていますが、実際のところは国内各地に存在するさまざまな勢力が互いに争っているのです。

 ETAFは散発的な空爆やドローン攻撃で、反政府勢力の活動を阻止しようとしています。オロミア州上空で実施されたドローン攻撃は民間施設の破壊や民間人の殺害をもたらしたと報告されていますが、これらは独立して検証されたものではありません。[3]

 「モハジェル-6」は衛星通信システム(SATCOM)を備えていないため、作戦可能範囲はたった200kmに限られています。つまり、このUCAVはエチオピア北東部のセマラ空港や中部のハラールメダ空軍基地からティグレ防衛軍の拠点に到達するには十分でしたが、オロミア州上空に到達することは完全に不可能だったのです。 

 「モハジェル-6」を格納するため、アソサ空港の駐機場に2棟の小さな格納庫が建設されたことが確認されました。格納庫には(雨天などの)天候からドローンを保護することに加えて、衛星から稼働していない「モハジェル-6」の存在を秘匿できるという別の利点もあります。



 2022年1月上旬に、当ブログはギダミ近郊で「ガーエム-5」PGMの残骸が発見されたことを最初に報じました。[1]

 アラブ首長国連邦がティグライ上空で運用する「翼竜Ⅰ」UCAVが、同地方のアラマタ近郊にある民間施設への一連の空爆に関与している可能性について、私たちがそれを暴露してからまだ1週間も経っていないのにこのような発見がなされたのです。[4]

オロミア州のギダミ近郊で発見された「ガーエム-5」PGMの残骸

 エチオピアのドローン飛行隊の急速な拡大は、今や政府軍にオロミア州を含む、従来よりも広範囲な国土を武装ドローンでカバーできるようにさせました。 

 オロミア州上空での「モハジェル-6」の投入は、敵を力づくで服従させるために武装ドローンを使用するエチオピア政府による最新の試みです。この戦術の成功は、衰えることのないドローン戦の圧力に屈したTPLFの軍隊がティグライ州の国境まで後退したことによって証明されています。 

 しかし、民間人の犠牲に対する国際的な懸念が高まっているため、エチオピア政府は近いうちに空爆の停止を余儀なくされるかもしれません。

「モハジェル-6」※イメージ画像であり、エチオピアとは無関係です

この記事の作成にあたり、Wim ZwijnenburgSaba Tsen'at Mah'derom に感謝します。

[1] Iranian Drone Munitions Found In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/iranian-drone-munitions-found-in.html
[2] https://twitter.com/wammezz/status/1482337749197856777
[3] https://twitter.com/Habtamu30820631/status/1479083838215274502[4] UAE Implicated In Lethal Drone Strikes In Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/uae-implicated-in-lethal-drone-strikes.html

※  当記事は、2022年1月17日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
  ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
  があります。

 

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2022年2月13日日曜日

ティグレ戦争:エチオピアに展開した秘密のUAE空軍機(短編記事)

著:Gerjon 氏が収集したデータを基にステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ が執筆 (編訳:Tarao Goo

 2021年11月、アラブ首長国連邦(UAE)はティグレ防衛軍との戦いで追い詰められたエチオピア政府を支援するため、同国のハラールメダ空軍基地に少なくとも6機の「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)を展開させました。[1]

 UAEの「翼竜Ⅰ」については2020年11月の時点でエチオピア上空での使用に関する噂が出ていましたが、この展開がUAEの武装ドローンがエチオピアでの作戦を開始したことが最初に確認された実例となります。[2]

 新たにリリースされたデータは、これらのUCAVがティグレ戦争でエチオピアに展開した最初のUAE機でないことを示唆しています。なぜならば、航空機トラッカーであるGerjon氏によって明らかにされた情報が、2021年8月からハラールメダ空軍基地に常駐している秘密めいたUAE空軍(UAEAF)機の存在を明らかにしたからです。[3]

 この機体は「ビーチクラフト」製「スーパーキングエア350」であり、同機はハラールメダに55日間も展開した後に別の同型機と交代されました。[4]

 とても偶然とは思えないことに、この機体はUAEがエチオピアへの空輸を開始したのと同じ日にハラールメダへの展開を開始しました。[5]

 この空輸はエチオピア軍に装備させる武器などを供与し続けることを目的としていましたが、最終的には2021年12月に119回の飛行の後からは停止しています。[6]

UAEの「スーパーキングエア350」(コード「UAF801」と「UAF802」)のエチオピアへの展開期間を示す年表

 UAEAFは「スーパーキングエア350」を5機保有しており、訓練や連絡用途で運用していると考えられています。

 一見すると無害な用途の機体にもかかわらず、そのキャリアを通じて目撃されたことはほとんどありません。したがって、数機がシギントやエリントといった任務に転用されていたとしても、実際に信じられない話ではないようです。

 これらの用途では、この機体はティグレ防衛軍の幹部の通信を傍受してエチオピア空軍(ETAF)に情報を提供したり、地上作戦を支援するために空爆の目標を指示するといった役割を担っていた可能性があります。

 もう一つ考えられるものについては、「UAF801」と「UAF802」がUAEAFによってUAE各地にいる専門家を運ぶために使用されていた可能性が挙げられます。

 UAEが空輸を通じて供与した装備類に関する正確な種類はほとんど知られていませんが、エチオピアはUAEが供与したVTOL型UCAVを運用していることが知られています。[7]

 これらのUCAVやほかにUAEから提供された兵器類は、それ自体を運用したり、使用方法についてエチオピア兵に訓練するための要員を必要とします。つまり、供与した兵器類のエキスパートの存在が必然的に必要不可欠となることから、問題の機体が彼らの輸送に用いられた可能性があるわけです。

 自国軍の機体を使用することはエチオピア機を使用するよりも大柔軟性が多いに高まりますが、航空機トラッカーによって発見されるリスクが生じるという代償も伴います。

ハラールメダ空軍基地の駐機場を撮影した衛星画像(2021年11月2日撮影)。右側の「スーパーキングエア350」と2機の「Il-76」輸送機に注目。この「Il-76」ちょうどUAEから飛来したばかりです。画像:Gerjon

 ティグレ戦争でエチオピア政府がどの程度外国から支援を受けたかについては、その大部分が依然として不明のままです。しかし、この支援が現在記録されているものよりはるかに大きいということだけは確実と言えます。

 ティグレ軍によるほぼ確実視された敗北からエチオピア政府を救ったUAEとイランの真の役割を明らかにする情報がさらに出てくるのか、歴史に埋もれたままになるのかは現時点では不明です。

「スーパーキングエア350(コード:UAF802)」。エチオピアへ派遣される前に所属国を示すマークやナンバーが消された可能性があります。

ヘッダー画像: Stelios Loannou(敬称略)

[1] The UAE Joins The Tigray War: Emirati Wing Loong I UCAVs Deploy To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/the-uae-joins-tigray-war-emirati-wing.html
[2] Are Emirati Armed Drones Supporting Ethiopia from an Eritrean Air Base? https://www.bellingcat.com/news/rest-of-world/2020/11/19/are-emirati-armed-drones-supporting-ethiopia-from-an-eritrean-air-base/
[3] https://twitter.com/Gerjon_/status/1475933414666772482
[4] https://twitter.com/Gerjon_/status/1475933421390241798
[5] UAE Air Bridge To Ethiopia Continues Unabated - Surpassing 100 Flights https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/uae-air-bridge-to-ethiopia-continues.html
[6] Iran Is Still Resupplying The Ethiopian Military https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/iran-is-still-resupplying-ethiopian.html
[7] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html

2022年2月2日水曜日

ティグレ戦争:エチオピアでイラン製UCAV用誘導弾の部品が発見された(独占・短編記事)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 UAEがティグライ上空に展開させた「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)が数十人の民間人を死亡させたアラマタへの一連の空爆に関与した可能性について、私たちがそれを暴露してからまだ1週間も経っていませんが、現時点でイラン製UCAVが同じ空爆に関与した可能性が新たに判明しました。[1]

 新たに撮影された画像は、エチオピア・オロミア州のギダミ近郊で発見されたイラン製「ガーエム-5」精密誘導爆弾(PGM)の残骸を映し出しています。ドローンによる攻撃は民間施設の破壊や民間人の殺害をもたらしたと報告されていますが、これらは独立して検証されたものではありません。[2]

 エチオピア空軍(ETAF)は2021年8月に少なくとも2機の「モハジェル-6」UCAVをイランから導入して運用しています。[3]

 当時の追い詰められたエチオピア軍にとって不運なことに、この機種には制御システムに問題があったようで、「モハジェル-6」がようやく通常の戦闘任務を開始できるようになったのは2021年10月下旬になってからのことでした。[4]

 当初、これらはエチオピア北東部のセマラ空港に配備されていましたが、最近になって現在9機の中国製「翼竜Ⅰ」UCAVが配備されているハラールメダ空軍基地で少なくとも1機の「モハジェル-6」が目撃されました。[5]

 「モハジェル-6」は最大で40kgの兵装を搭載することが可能であり、2~4発の「ガーエム-5」PGMもUCAV用の兵装として含まれています。

 「モハジェル-6」の滞空性能は12時間で最大飛行高度は約5,500mとされており、このUCAVのメーカーは戦闘行動範囲(最大航続距離か行動半径なのかは不明)が200キロメートルに及ぶと主張しています。[6]

 この航続距離ではハラールメダ空軍基地やセメラ空港からギダミに到達できないため、「モハジェル-6」はより近い地域にある飛行場に前進配置されている可能性があります。

イランで展示された「ガーエム-5」(下段)。挿入されている2つの画像はティグライで発見された「ガーエム-5」の残骸。

 アビー・アハメド政権と紛争中であるオロミア州の一部で、「モハジェル-6」が明らかに活動的になっているようです。2021年8月に、オロモ解放軍(OLA)はティグレ人民解放戦線(TPLF)と同盟を結び、エチオピア政府に対抗する統一戦線を形成しています。

 現在も続くエチオピアの紛争については、一般的にエチオピア政府とTPLFの間で起きているものと考えられていますが、実際のところは国内各地に存在するさまざまな勢力が互いに争っているのです。

 国内各地での争いは総合的な状況を複雑化し、和平合意が実現する可能性を低くすることに多大な悪影響を与えることは火を見るよりも明らかでしょう。

ギダミ近郊で発見された「ガーエム-5」の部品

 ティグレ防衛軍がアムハラ州とアファール州から全兵力を撤退させた今こそが、まさに和平交渉の絶好の機会であるといえます。

 しかし、空爆の継続はエチオピアにおける和平プロセスの将来にとって良い前兆ではありません。空爆を即座に停止することは、エチオピアの平和に至る長い道のりの第一歩となるかもしれません。

セマラ空港の「モハジェル-6」用地上管制ステーションの前に立つアビー・アハメド首相

この記事の作成にあたり、Saba Tsen'at Mah'derom 氏に感謝を申し上げます。

[1] UAE Implicated In Lethal Drone Strikes In Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/uae-implicated-in-lethal-drone-strikes.html
[2] https://twitter.com/Habtamu30820631/status/1479083838215274502
[3] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[4] Unfit For Service: Ethiopia’s Troublesome Iranian Mohajer-6 UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/unfit-for-service-ethiopias-troublesome.html
[5] Iranian Mohajer-6 UCAVs Deploy To Harar Meda Air Base In Ethiopia #Shorts https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/iranian-mohajer-6-ucavs-deploy-to-harar.html
[6] https://twitter.com/brokly990/status/1256994704568258562

※  この翻訳元の記事は、2022年1月7日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事
  を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇    
  所があります。




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ティグレ戦争:UAEが非人道的なドローン攻撃に関与した(独占記事)

2022年1月30日日曜日

ティグレ戦争:いまだにエチオピア軍への物資輸送を続けるイラン機


著:Gerjon 氏が収集したデータを基にステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ が執筆 (編訳:Tarao Goo

 (6機の「翼竜Ⅰ」UCAVを輸送した後で)エチオピアへ武器や装備類を運ぶUAEの貨物便が停止したように見えるにもかかわらず、同種の貨物を運んでいると思しきイランの航空便はこの国に到着し続けています。[1] [2]

 過去1ヶ月で、「ファルス・エア・ケシュム」社の「ボーイング747-200FSCD」貨物機が5回もアディスアベバ・ボレ国際空港に着陸しました。「ボーイング747」の積載物の詳細については現時点では推測することしかできませんが、先述のフライトが2021年8月からセマラ空港に配備された2機のイラン製「モハジェル-6」UCAVに関連していることは考えられなくもないようです。[3] [4]

 ティグ戦争の流れを変えるために武装ドローン戦力を必死に求めたエチオピアは、期待を胸にして2機の「モハジェル-6」を入手することに成功しました。とはいえ、エチオピアでの運用には大きな問題があり、制御システムの問題で実際に用いることが阻害されたため、両機はすぐに駐機(放置)状態にされてしまいました。[3]

 「モハジェル-6」が抱える問題がやっと解決されたと思われるには2021年10月下旬まで時間を要したようです。2021年11月中には両機はセマラ空港の滑走路などで定期的に目撃されており、 ある程度は飛行していることが推測されています。 [5]

 「ファルス・エア・ケシュム」社は、2機の「ボーイング747-200」貨物機を世界中に数多く存在する送り先に飛ばしています。この航空会社はイラン革命防衛隊(IRGC)の傘下にある会社で、シリアに展開したイラン民兵に対する兵器類の輸送で2019年にアメリカから制裁を受けており、レバノンのヒズボラへの武器輸送にも関与していることが知られています。[6] [7]

 「ボーイング747」だけがエチオピアを頻繁に訪れるイランの航空便ではありません。「ポウヤ航空」も同様のフライトで「Il-76TD」を往来させています。この航空会社もIRGCが所有している企業であり、同様にエチオピアへの武器輸送に使用されたと考えられています。[8][9]

 私たち著者はエチオピア国防軍(ENDF)で使用されているイラン製兵器の痕跡を徹底的に調査しましたが、現時点では2機の「モハジェル-6」とその支援資機材及び弾薬だけがエチオピアで存在が確認されている唯一のイラン製兵器となっています。ENDFが空輸されたロケット砲といったほかのイラン製兵器を用いて作戦に活用していると考えるのも妥当な見方ですが、「モハジェル-6」が使用する「ガーエム」誘導爆弾の追加分を、まさにこれらの「ボーイング747」を用いて定期的に引き渡しているのでしょう。

 この数はティグレ戦争が勃発する前のイランからエチオピアへのフライト数と比較すると100%増加していますが、UAEからの119便と比較すると存在感が極めて薄いものとなっています(注:内戦前にはイランからの貨物便が全くなかった事を意味しています)。

 これまでに、UAEはエチオピアに最低でも6機に「翼竜Ⅰ」UCAVや迫撃砲弾で武装した大型のVTOL型UCAVをエチオピアに届けました。また、エチオピアも2021年10月にUAEから50台の救急車仕様のトヨタ・ランドクルーザーを供与されたことを公表しています。[11] [12][13]

エチオピア(ボレ国際空港とハラールメダ空軍基地)への貨物便の飛来回数

 この1ヶ月で現地の状況は劇的に逆転しました。衰えることなく続くドローン戦による圧力でティグレ軍部隊に首都アディスアベバへの侵攻を断念させ、拠点のティグレ州まで退却を余儀なくさせたのです。

 エチオピア側でのUCAVの配備と使用については依然として全くわかっていませんが、ティグレ戦争をUCAVが突破口を開いた紛争のリストに追加できることを示唆する理由は十分にあります。

 この偉業は少なからずエチオピア軍に(UCAVを含む)必要な武器や装備の供給を維持するため、UAEとイランによって行われた大規模な空輸を通じて達成されたものと言っても差し支えないでしょう。

 アフリカのこの地域におけるイランの武器と多岐にわたる支援の急激な拡散は、アメリカを大いに動揺させるかもしれません。イランから武器を調達した代償について、エチオピアは後でアメリカの制裁という形で支払うことになるのでしょうが、まだ目に見えてはいないようです。



[1] https://twitter.com/Gerjon_/status/1475778475663544321
[2] The UAE Joins The Tigray War: Emirati Wing Loong I UCAVs Deploy To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/the-uae-joins-tigray-war-emirati-wing.html
[3] Unfit For Service: Ethiopia’s Troublesome Iranian Mohajer-6 UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/unfit-for-service-ethiopias-troublesome.html
[4] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[5] Ethiopia now confirmed to fly Chinese armed drones https://paxforpeace.nl/news/blogs/ethiopia-now-confirmed-to-fly-chinese-armed-drones
[6] U.S. lands sanctions on Iranian cargo airline https://www.freightwaves.com/news/u-s-lands-sanctions-on-iranian-cargo-airline
[7] Iran's secret weapons-smuggling air routes to Lebanon revealed by intel sources https://www.foxnews.com/world/irans-secret-weapons-smuggling-air-routes-to-lebanon-revealed-by-intel-sources
[8] https://twitter.com/search?q=%40gerjon_%20pouya&src=typed_query
[9] Pouya Air (Yas Air) https://www.iranwatch.org/iranian-entities/pouya-air-yas-air
[10] https://twitter.com/Gerjon_/status/1475778475663544321
[11] The UAE Joins The Tigray War: Emirati Wing Loong I UCAVs Deploy To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/the-uae-joins-tigray-war-emirati-wing.html
[12] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[13] The Cargo Cleared For Print: UAE Wartime Deliveries To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/the-cargo-cleared-for-print-uae-wartime.html

※  この翻訳元の記事は、2021年12月28日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事
  を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇    
  所があります。



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2022年1月26日水曜日

ティグレ戦争:UAEがティグライ州での非人道的なドローン攻撃に関与した



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 UAEの「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)6機とそのオペレーターがエチオピアに配備されてから僅か1カ月しか経過していませんが、彼らがすでにティグライ州の町アラマタの民間施設に対する一連の空爆に関与していることが明らかとなりました。

 この空爆では町の病院や市場に着弾し、民間人に42人の死者と少なくとも150人の負傷者をもたらしました。[1] [2]

 死者の大半は、エチオピア空軍(ETAF)の「Su-27」戦闘機が投下した無誘導爆弾によるものと考えられています。「Su-27」は空中戦のために導入された機体ですが、エチオピアでは無誘導爆弾やクラスター爆弾を搭載した即席の爆撃機として活用されているからです。[3]

 しかし、アラマタの被害地域を注意深く分析した結果、UAEの「翼竜Ⅰ」に装備されている標準的な兵装である、中国製「ブルーアロー7」空対地ミサイル(AGM)の残骸も発見されました(注:「ブルーアロー7」は「AKD-10」の輸出型)。ETAFも同様に「翼竜Ⅰ」を運用していますが、これらの搭載兵装としては2021年11月初旬に第1陣が納入された「TL-2」AGMしか知られていません。[4]

 当初、エチオピアは「翼竜Ⅰ」を無誘導爆弾を搭載した「Su-27」の目標を指示するための索敵機としての運用を試みたようですが、後になってこれらを最大で4発の誘導弾を搭載した対地攻撃機として活用することにしたようです。[5]

 (最低でも、より多くの情報が得られるまでは)「ブルーアロー7」の残骸と民間人の犠牲に因果関係があるのかは確実視できませんが、UAEがイエメンやリビアでの無人機作戦の一環として、民間施設を頻繁に空爆してきたことは知られています。

 2020年には、アムネスティ・インターナショナルはUAEが武装ドローンを使用して「民間人の住宅、野戦病院を含む医療施設と救急車を標的にした」ことを理由に、アメリカにUAEへのドローンの販売を停止するように要請しています。[6] [7] [8]

 また、同年にはUAE「翼竜Ⅰ」がリビアのトリポリにある士官学校に対する無残な空爆を実施し、非武装の士官候補生26人を殺害されるという出来事もありました。[9] 

アラマタで発見された「ブルーアロー7」のロケットモータの噴出ノズル部

 アラマタでのドローン攻撃の後、リビアで発見された「ブルーアロー7」の残骸と比較するのに十分な数の同AGMの部品が爆発から生き残りました。リビアで発見されたものは、やはりUAEが国際的に承認されたリビア政府との4年以上にわたる戦争で使用したものです。[10]

 これによって両者が完全に一致していることが確認されました。最も識別しやすい部品は「ブルーアロー7」の尾部に位置するロケットモーターの噴射ノズルであり、通常はほとんどの衝撃を受けても四散することなく残存しているようです。そのため、この部品は比較対象としては最適なものとなっています。

 アラマタで発見されたAGMの残骸に関する映像はここで視聴することができます。 [11]

 「ブルーアロー7」AGMの残骸については、リビアで発見されたものはこちらこちらで、モロッコで発見されたものはこちらで見ることができます。[12] [13] [14]

アラマタで発見された「ブルーアロー7」のロケットモータの噴出ノズル部(左)とリビアで発見された同ミサイルの残骸(右)。クリックすると画像が拡大表示されます。

アラマタで発見された「ブルーアロー7」の残骸。挿入されている画像はリビアで発見された同ミサイルの残骸です。クリックすると拡大表示されます。

 UAE軍のエチオピアへの関与がイエメンやリビアへの過去の介入と同じようになるのであれば、ジャーナリストは注意を払うことを余儀なくされるかもしれません。

 リビアやイエメンと同様になる場合、病院や救急車といった非軍事的な民間施設などに対する攻撃が例外ではなくなって常態化し、発生した人権侵害の責任を問われる者が全くいないという可能性すらあります。ただし、イエメンやリビアのように、アラマタで発見された「ブルーアロー7」の残骸がその責任を明らかにするでしょう。

「翼竜Ⅰ」(イメージ画像であり、UAEやエチオピアとは無関係です)

特別協力: Saba Tsen'at Mah'derom(敬称略)

[1] Daily Noon Briefing Highlights: Ethiopia https://www.unocha.org/story/daily-noon-briefing-highlights-ethiopia-34
[2] Ethiopia: Consecutive days airstrikes in Tigray’s Alamata kill 42 civilians, injure more than 150, cause massive destruction https://globenewsnet.com/news/ethiopia-consecutive-days-airstrikes-in-tigrays-alamata-kill-42-civilians-injure-more-than-150-cause-massive-destruction/
[3] Su-27 Fighters Deployed As Bombers In Tigray War https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/su-27-fighters-deployed-as-bombers-in.html
[4] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html
[5] Deadly Ineffective: Chinese-Made Wing Loong UAVs Designate Targets For Ethiopian Su-27 Bombers https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/deadly-ineffective-chinese-made-wing.html
[6] Libya migrant attack: UN investigators suspect foreign jet bombed centre https://www.bbc.com/news/world-africa-50302602
[7] UAE implicated in lethal drone strike in Libya https://www.bbc.com/news/world-africa-53917791[8] US urged to stop drone sales to UAE over civilian deaths in Yemen and Libya https://www.middleeasteye.net/news/amnesty-demands-us-halt-sale-drones-uae
[9] https://twitter.com/Oded121351/status/1213852209038987268
[10] Tracking Arms Transfers By The UAE, Russia, Jordan And Egypt To The Libyan National Army Since 2014 https://www.oryxspioenkop.com/2020/06/types-of-arms-and-equipment-supplied-to.html
[11] ደብዳብ ድሮናትን ነፈርትን ከተማ ኣላማጣ https://youtu.be/CTgtrGqmXUg
[12] https://twitter.com/jumaa_adn_adel8/status/1215352639808069632
[13] https://twitter.com/Oded121351/status/1213893498103123968
[14] Morocco's Missiles https://actualcontrol.substack.com/p/moroccos-missiles

※  この記事は、2022年1月3日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳し
 たものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇
 所があります。