著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
中国製の無人航空機(UAV)の品質については、今までに多くのことが書かれ、議論がなされてきました。
中国のドローンにはアメリカのUAVを代替するコストパフォーマンスに優れた実績があるという主張がある一方で、イスラエル、アメリカ、そしてトルコの競合機種と比較した場合の墜落発生率の高さや信頼性の問題を指摘する意見もあります。
これらの問題を抱えているにも関わらず、中国製UAVは現在のマーケットで非常に高い人気を維持し続けています。これは特に中国の武器販売には制約がほとんど存在せず、UAEのような国が中国製無人戦闘航空機(UCAV)をアメリカで生産されたドローンの運用が認められていない地域に投入することを可能にしているという事実によるものと思われます。さらに、中国のUAVは導入コストが明らかに低いことが、予算が限られた国にとって理想的な選択肢にしていると主張することもできます。
逆に、いくつかの中国製UCAVの価格は、実際には西側諸国の競合機種に近いか、場合によってはそれを上回っているものがあります。
ほんの一例を挙げると、海外の顧客が1機の「翼竜Ⅱ」UCAVを購入する際に要するコストは約1500万ドル(約17億円)とみられており、これはトルコの「バイラクタルTB2」の約3倍の価格に相当するものです。そのうえ、信頼性よりも低価格での購入を優先した場合、最終的には最初から信頼性の高いUAVを購入するよりも高いコストがかかる可能性すらあります。
仮に「翼竜Ⅱ」とTB2の信頼性が全く同じだとすると、前者のコストはTB2の約3倍程度になってしまいます。しかし、「翼竜Ⅱ」の信頼性がTB2の半分しかないと仮定した場合は、損失分の交換コストも考慮すると実質的には6倍もの価格になってしまうのです。
仮に「翼竜Ⅱ」の墜落率がTB2の2倍(15,000飛行時間に1回)だとすると、1時間あたり1,000ドル(約11.5万円)のコストを要することがわかります。その一方で、TB2の墜落率は30,000飛行時間に1回と報告されており、これは突き詰めていくと1飛行時間あたり約166ドル(約19,000円)のコストに相当します。[1]
つまり、総所有コストは運用コストを考慮しない場合であっても、初期(取得)費用だけで終わらないのです。ヨルダンなどの国々は結果としてこの事実を身をもって知ることになり、同国は「CH-4B」UCAV飛行隊の全機を購入してから2年足らずで売りに出してしまいました。[2]
イラクでの同型機も同じようなもので、導入した20機のうちの8機は僅か数年の間に墜落し、残りの12機はスペアパーツが不足しているために現在も格納庫で放置され続けています。[3] [4]
ほかの国の例を挙げると、アルジェリアでは数ヶ月の間に3機の「CH-4B」を墜落で失い、ナイジェリアとモロッコ、そしてトルクメニスタンの3カ国は以前に中国製のUCAVを調達したものの、後にトルコ製のUCAVを購入しました。[5]
彼らの不完全な運用記録は、中国メーカーによって提供されたアフターサービスが不十分であることを示唆しています。
それにもかかわらず、トルクメニスタンのような国が(中国製)UAVの損失を公表することはありそうもないため、中国製ドローンの損失の正確な概要を提示することは困難を極めます。
同様に、サウジアラビアの砂漠地帯に墜落したドローンは、民間人が残骸を撮影する機会を得るよりずっと前に撤去された可能性があり、これは多くの損失が発見されずに済むことが多いことを意味します。
彼らの不完全な運用記録は、中国メーカーによって提供されたアフターサービスが不十分であることを示唆しています。
それにもかかわらず、トルクメニスタンのような国が(中国製)UAVの損失を公表することはありそうもないため、中国製ドローンの損失の正確な概要を提示することは困難を極めます。
同様に、サウジアラビアの砂漠地帯に墜落したドローンは、民間人が残骸を撮影する機会を得るよりずっと前に撤去された可能性があり、これは多くの損失が発見されずに済むことが多いことを意味します。
1つの注目すべき事例として、2019年か2020年にリビアのどこかで墜落したUAEの「翼竜Ⅰ」の残骸が2021年8月になってようやく発見されたことがあります。これも全くの偶然の出来事でした。[6]
あえて言うならば、UAVの損失は、激しい紛争地帯であっても記録することが難しいことで悪名高いのです(注:上記の理由に加えてUAV自体が無人で機数も多く存在ため。これに伴ってファクトチェックも困難度が上がります)。
あえて言うならば、UAVの損失は、激しい紛争地帯であっても記録することが難しいことで悪名高いのです(注:上記の理由に加えてUAV自体が無人で機数も多く存在ため。これに伴ってファクトチェックも困難度が上がります)。
- この一覧は、中国製の無人航空機(UAV)の損失を(世界中の運用国と共に)可能な限りリスト化することを目的としています。
- この一覧は、視覚的に損失が確認されたか、公的に損失が認められたものだけを掲載しています。
- したがって、実際に損失したUAVの実数はここに記録されているものよりは著しく多いと思われます。
- この一覧は、新たな墜落や撃墜が確認された場合に更新されます(最終更新は2022年2月22日)。
喪失機の種類と数
- CH-4B UCAV: 23
- 翼竜II UCAV: 8
- 翼竜Ⅰ UCAV: 6
- スカイ-09P: 3
- UV10CAM: 2
- CL-4: 2
- CL-11: 2
- DB-2: 2
- スカイ-02A: 1
- CH-3A UCAV: 1
- CH-92A: 1
- BZK-005: 1
- ASN-209: 1
- シー・キャバリー「SD-60」: 1
喪失機の運用国と機数
- サウジアラビア: 17
- アラブ首長国連邦: 12
- イラク: 8
- 北朝鮮: 5
- リビア: 4
- アルジェリア: 3
- スーダン: 2
- 中国: 2
- エチオピア: 1
- ナイジェリア: 1
- ミャンマー: 1
- エジプト: 1
- パキスタン: 1
喪失場所 (国)と機数
- リビア: 19
- イエメン: 18
- イラク: 14
- 韓国: 5
- アルジェリア: 3
- スーダン: 3
- 中国: 1
- ミャンマー: 1
- ナイジェリア: 1
- エジプト: 1
- パキスタン: 1
- カンボジア: 1
UAE (12機喪失)
- 4 翼竜 I: (1, 2020) (2, 2020) (3, 2020) (4, 2020)
- 6 翼竜 II: (1, 2019) (2, 2019) (3, 2020) (4, 2020) (5, 2020) (6, 2020)
- 2 翼竜 I: (1, 2016) (2, 2019)
サウジアラビア (17機喪失)
イラク (8機喪失)
北朝鮮 (5機喪失)
リビア (4機喪失)
アルジェリア (3機喪失)
スーダン (2機喪失)
エチオピア(1機喪失)
ミャンマー (1機喪失)
ナイジェリア (1機喪失)
エジプト(1機喪失)
パキスタン (1機喪失)
- 2 翼竜 I: (1, 2019) (2, 2021)
- 2 翼竜 II: (2, 2021) (2, 2022)
- 12 CH-4B: (1, 2018) (2, 2018) (3, 2018) (4, 2019) (5, 2020) (6, 2020) (7, 2021) (8, 2021) (9, 2021) (10, 2021) (11, 2022) (12, 2022)
イラク (8機喪失)
北朝鮮 (5機喪失)
リビア (4機喪失)
アルジェリア (3機喪失)
スーダン (2機喪失)
エチオピア(1機喪失)
- 1 CL-11: (1, 2021)
ミャンマー (1機喪失)
- 1 スカイ-02: (1, 2021)
ナイジェリア (1機喪失)
- 1 CH-3A: (1, 2015)
エジプト(1機喪失)
- 1 ASN-209: (1, 2021)
パキスタン (1機喪失)
- 1 翼竜 I: (2, 2016)
[1] HALUK BAYRAKTAR İNGİLİZ DÜŞÜNCE KURULUŞU RUSI'NIN PANELİNDE KONUŞTU https://youtu.be/jKj-FOMQlNw
[2] Jordan Sells Off Chinese UAVs https://www.uasvision.com/2019/06/06/jordan-sells-off-chinese-uavs/
[3] OPERATION INHERENT RESOLVE LEAD INSPECTOR GENERAL REPORT TO THE UNITED STATES CONGRESS https://media.defense.gov/2021/May/04/2002633829/-1/-1/1/LEAD%20INSPECTOR%20GENERAL%20FOR%20OPERATION%20INHERENT%20RESOLVE.PDF
[4] Iraq’s Air Force Is At A Crossroads https://www.forbes.com/sites/pauliddon/2021/05/11/iraqs-air-force-is-at-a-crossroads
[5] Chinese CH-4B Drones Keep Crashing In Algeria For Technical Fault https://www.globaldefensecorp.com/2021/03/11/chinese-ch-4b-drones-keep-crashing-in-algeria-for-technical-fault/
[6] عاجل| العثور على حطام طائرة بدون طيار جنوب مدينة بني وليد https://www.lj-bc.net/2021/08/138928.html
特別協力: Lost Armour(敬称略)
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[3] OPERATION INHERENT RESOLVE LEAD INSPECTOR GENERAL REPORT TO THE UNITED STATES CONGRESS https://media.defense.gov/2021/May/04/2002633829/-1/-1/1/LEAD%20INSPECTOR%20GENERAL%20FOR%20OPERATION%20INHERENT%20RESOLVE.PDF
[4] Iraq’s Air Force Is At A Crossroads https://www.forbes.com/sites/pauliddon/2021/05/11/iraqs-air-force-is-at-a-crossroads
[5] Chinese CH-4B Drones Keep Crashing In Algeria For Technical Fault https://www.globaldefensecorp.com/2021/03/11/chinese-ch-4b-drones-keep-crashing-in-algeria-for-technical-fault/
[6] عاجل| العثور على حطام طائرة بدون طيار جنوب مدينة بني وليد https://www.lj-bc.net/2021/08/138928.html
特別協力: Lost Armour(敬称略)
※ 当記事は、2021年11月19日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳した
ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
があります。
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