2025年11月14日金曜日

ロシアの戦争:第二次チェチェン戦争で両陣営が損失した兵器類(一覧)


著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2022年11月21日に当ブログの本国版である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです(本国版はリンク切れ)。

 2年間も続いた第一次チェチェン戦争が1997年に終結しましたが、アスラン・マスハドフ大統領が率いる政府がチェチェン・イチケリア共和国を再建できず、増加するイスラム原理主義勢力を抑えることができなかったため国内で混乱が生じました。イスラム原理主義勢力をなだめるため、マスハドフは将来的にチェチェン議会を廃止することと、シャリーア(イスラーム法)の一部を導入する決定を下したにもかかわらず、シャミル・バサーエフやサウジアラビア出身のイブン・アル・ハッターブなどの人物は、マスハドフの支配を事実上弱体化させ続けたのです。

 1998年4月、バサーエフとアル・ハッターブが率いるイスラム国際戦線は、チェチェンとダゲスタンにイスラム首長国を樹立してコーカサス全域からロシア人を追放するとの目標を公に宣言しました。これが、第2次チェチェン戦争(1999年~2009年)の火種となったわけです。1999年8月、バサーエフとアル・ハッターブ率いる約1500人ものチェチェン戦闘員が隣接するダゲスタン共和国に侵攻し、続く9月初旬にも2度目の侵攻が行われました。これらの侵攻に伴う戦闘により、数百人が死亡し、数万人が避難を余儀なくされるという結果がもたらされました。

 チェチェン侵攻のアイディアについては、この時点ではロシア国内で未だに極めて否定的な意見が多数を占めていました。しかし、9月初旬にモスクワで発生した一連のマンション爆破事件で307人の民間人が死亡したことで、世論はチェチェン問題の「解決」を支持する方向に傾いたのです。チェチェンの武装勢力は爆破事件の犯行を否定したものの、この事件はウラジーミル・プーチン大統領にとってチェチェン侵攻を正当化する絶好の口実となったことは言うまでもありません。現在では、これらの攻撃は実際にはプーチン大統領の命令でFSBが実行したもので、大統領自身の地位の維持か、極めて不評だったはずの戦争を正当化する理由を作るために実行を命じたという説が有力視されています。

 ロシアは1999年8月下旬から9月にかけてチェチェン上空で大規模な空爆作戦を実施した後、10月5日に地上侵攻を開始しました。初期の攻勢では、ロシア軍と親ロシア派のチェチェン民兵は戦闘でチェチェン治安部隊(CSF)から抵抗を受けずに掃討に成功しています。というのも、第一次チェチェン戦争と対照的に、CSFはこれと言った重火器を全く保有していなかったのです。また、ロシアはチェチェン指導部とその隠れ家を攻撃とするべく、新型機(Ka-50?)と精密誘導弾を初めて実戦投入しました。

 チェチェンの首都グロズヌイは冬の包囲戦を経て2002年2月に陥落し、都市は廃墟と化したことは記憶に新しいかもしれません。ロシア軍への組織的抵抗は2000年5月に終了しましたが、国内全体での抵抗は2009年まで9年間も続きました。その後、(外国から来たイスラム原理主義の義勇兵:ムジャヒディーンを含む)残存するチェチェン部隊はゲリラ戦に移行しましたが、そのほとんどが殲滅されるという最期を迎えています(バサーエフ、アル・ハッターブ、マスハドフ元大統領を含む)。

 プーチン大統領は2003年10月5日にチェチェンで選挙の実施を命じ、元独立派のアフマト・カディロフが最終的に勝利を収めました。しかし、彼が権力の座に長く留まる運命になかったのは容易に想像できます。実際、2004年に暗殺されたことがその運命を物語っていると言えるでしょう。現在では、彼の息子であるラムザンが現在に至るまでチェチェンの統治を続けています。

  1. 当一覧は、2022年11月22日に当ブログの本国版である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです(翻訳者は損失の精査には関与していません)。
  2. 第二次チェチェン戦争における両軍の兵器類の詳細な一覧を以下で見ることができます。
  3. この一覧は、写真や映像によって証明可能な撃破または鹵獲された兵器類だけを掲載しています。したがって、実際に喪失した兵器類は、ここに記録されている数よりも多いことは間違いないでしょう。
  4. 迫撃砲、トラックや以前から用廃となっている兵器類はこの一覧には含まれません。
  5. ロシアの巨大なスクラップ置き場で見つかった(部品が剥ぎ取られた)装備については、修理が不可能なレベルで損傷しているか、共食い整備に使用された場合にのみ含まれます。記載されている日付は、その装備が失われた正確な日付を示しているとは限りません(あくまでも概算です)。1991年以前に製造されたものについては、ソ連国旗を付しています。
  6. 第一次チェチェン戦争における両軍の兵器類の詳細な一覧はこちらで見ることができます。
  7. 各兵器類の名称に続く数字をクリックすると、破壊や鹵獲された当該兵器類の画像を見ることができます。

ロシア (292, このうち撃破: 289, 損傷: 1 鹵獲: 2)

戦車 (23, このうち撃破: 23)

装甲戦闘車両 (33, このうち撃破: 33)
  1. 3 BRDM-2 偵察車: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破)
  2. 2 BRM-1K 偵察車: (1, 撃破) (2, 撃破)
  3. 20 MT-LB 汎用軽装甲牽引車: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破) (7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (14, 15, 16, 17, 18 と 19, 撃破) (20, 撃破)
  4. 5 MT-LBu 汎用軽装甲牽引車: (1, 撃破) (2 と 3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破)
  5. 1 RKhM “カシャロット” 化学偵察車: (1, 撃破)
  6. 2 形式不明のAFV: (1, 撃破) (2, 撃破)

歩兵戦闘車 (110, このうち撃破: 108, 鹵獲: 2)
  1. 23 BMP-1: (1 と 2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6 と 7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (10, 撃破) (11, 撃破) (12, 撃破) (13, 撃破) (14, 撃破) (15, 撃破) (16 と 17, 撃破) (18, 撃破) (19, 撃破) (20, 撃破) (21, 撃破) (22, 撃破) (23, 撃破)
  2. 1 BMP-1P: (1, 撃破)
  3. 72 BMP-2: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破) (7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (10, 撃破) (11, 撃破) (12, 撃破) (13, 撃破) (14, 15 と 16, 撃破) (17, 撃破) (18, 撃破) (19, 撃破) (20, 撃破) (21, 撃破) (22, 撃破) (23, 撃破) (24, 撃破) (25, 撃破) (26, 撃破) (27 と 28, 撃破) (29, 撃破) (30, 撃破) (31, 撃破) (32, 撃破) (33, 撃破) (34, 撃破) (35, 撃破) (36, 撃破) (37, 撃破) (38, 撃破) (39, 撃破) (40, 撃破) (41, 撃破) (42, 撃破) (43, 撃破) (44, 撃破) (45, 撃破) (46, 撃破) (47, 撃破) (48, 撃破) (49, 撃破) (50, 撃破) (51, 撃破) (52, 撃破) (53, 撃破) (54, 撃破) (55, 撃破) (56, 撃破) (57, 撃破) (58, 撃破) (59, 撃破) (60, 撃破) (61, 撃破) (62 と 63, 撃破) (64, 撃破) (65, 撃破) (66 と 67, 撃破) (68 と 69, 撃破) (70, 撃破) (1, 鹵獲) (2, 鹵獲)
  4. 12 形式不明のBMP-1/2: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破) (7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (10, 撃破) (11 と 12, 撃破)
  5. 2 BMD-2: (1, 撃破) (2, 撃破)

装甲兵員輸送車 (58, このうち撃破: 58)
  1. 6 BTR-60PB: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破)
  2. 12 BTR-70: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 7, 8 と 9, 撃破) (10, 11 と 12, 撃破)
  3. 38 BTR-80:(1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破) (4, 撃破) (5, 撃破) (6, 撃破) (7, 撃破) (8, 撃破) (9, 撃破) (10, 撃破) (11, 撃破) (12, 撃破) (13, 撃破) (14, 撃破) (15, 撃破) (16, 撃破) (17, 撃破) (18, 撃破) (19, 撃破) (20, 撃破) (21, 撃破) (22, 撃破) (23, 撃破) (24, 撃破) (25, 撃破) (26, 撃破) (27, 撃破) (28, 撃破) (29, 撃破) (30, 撃破) (31, 撃破) (32, 撃破) (33, 撃破) (34, 撃破) (35 と 36, 撃破) (37, 撃破) (38, 撃破)
  4. 2 BTR-D:(1, 撃破) (2, 撃破)

工兵車両 (2, このうち撃破: 2)

  1. 1 IMR-2 戦闘工兵車: (1, 撃破)
  2. 1 PTS-2水陸両用輸送車: (1, 撃破)

砲兵支援車両 (2, このうち撃破: 2)
  1. 2 1V13 中隊指揮・前進観測車:(1, 撃破) (2, 撃破)

自走砲 (7, このうち撃破: 7)
  1. 1 2S1 "グヴォジカ" 122mm自走榴弾砲: (1, 撃破)
  2. 3 2S3 "アカツィヤ" 152mm自走榴弾砲: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破)
  3. 3 2S19 "ムスタ" 152mm自走榴弾砲: (1, 撃破) (2, 撃破) (3, 撃破)

航空機 (6, このうち撃破: 6)

ヘリコプター (51, このうち撃破: 50, 損傷: 1)
  1. 11 Mi-8MT 輸送ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落) (6, 墜落) (7, 墜落) (8, 墜落) (9, 墜落) (10, 墜落) (11, 墜落)
  2. 1 Mi-8MTV-1 輸送ヘリコプター: (1, 墜落または地上撃破)
  3. 5 Mi-8MTV-2 輸送ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落)
  4. 11 Mi-8 輸送ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落) (6, 墜落) (7, 墜落) (8, 墜落) (9, 墜落) (10, 墜落) (11, 墜落)
  5. 1 Mi-8 電子戦ヘリコプター: (1, 墜落または地上撃破)
  6. 3 Mi-26T 輸送ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落)
  7. 3 Mi-24V 攻撃ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落) (1, 損傷)
  8. 9 Mi-24P 攻撃ヘリコプター:  (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落) (6, 墜落) (7, 墜落) (8, 墜落) (9, 墜落)
  9. 2 Mi-24 攻撃ヘリコプター: (1, 墜落) (2, 墜落)
  10. 5 形式不明のMi-8/24: (1, 墜落) (2, 墜落) (3, 墜落) (4, 墜落) (5, 墜落)


チェチェン (14, このうち撃破: 5, 鹵獲: 9)

戦車 (1, このうち鹵獲: 1)

装甲戦闘車両 (2, このうち鹵獲: 2)
  1. 1 BRDM-2 偵察車: (1, 鹵獲)
  2. 1 MT-LB 汎用軽装甲牽引車: (1, 鹵獲)

歩兵戦闘車(5, このうち撃破: 3, 鹵獲: 2)

装甲兵員輸送車 (2, このうち撃破: 1, 鹵獲: 1)
  1. 2 BTR-80: (1, 撃破) (1, 鹵獲)

多連装ロケット砲 (1, このうち鹵獲: 1)
  1. 1 BM-21 "グラート" 122mm MRL: (1, 鹵獲)

航空機 (1, このうち撃破: 1)
  1. 1 An-2 汎用機: (1, 地上撃破)

トラック、ソフトスキン車両、ジープ (2, このうち鹵獲: 2)
  1. 1 ウラル-375D( 「 ZU-23」対空機関砲搭載型): (1, 鹵獲)
  2. 1 カマズ製6x6トラック(「2A42」30mm機関砲搭載型): (1, 鹵獲)

特別協力:Lost Armour.

[1] Azerbaijan buys the deadly Turkish Bayraktar TB2 mid-range strike UAV https://bulgarianmilitary.com/2020/06/27/azerbaijan-buys-the-deadly-turkish-bayraktar-tb2-mid-range-strike-uav/
[2] Statement from Minister Champagne on suspension of export permits to Turkey https://www.canada.ca/en/global-affairs/news/2020/10/statement-from-minister-champagne-on-suspension-of-export-permits-to-turkey.html


 2025年現在の情報にアップデートした改訂・分冊版が発売されました(英語のみ)

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2025年10月17日金曜日

救世主となるか:ティグレ戦争に投入されたUAE空軍の武装ドローン

「翼竜-Ⅰ」UCAV(イメージ画像でティグレ戦争とは無関係)

著:シュタイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 この記事は、2021年11月に本ブログのオリジナル(本国版)である「Oryx-Blog(英語)」で公開された記事を翻訳したものです(本国版ではリンク切れ)。 意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があります。

 ここ数か月でエチオピア政府をめぐる情勢は驚くべき逆転劇を見せました。

 2021年10月初旬、エチオピア軍がティグライ人勢力に対して行った大規模な攻勢が壮大な失敗に終わった後、ティグレ防衛軍(TDF)は反攻を開始し、一時は首都アディスアベバの安全さえ脅かす事態に陥りました。ところが、高高度を飛行する(武装)無人機に対抗できる防空システムを全く保有していなかったTDFは、結果として衰えることなく続くドローン攻撃の圧力に屈し、2021年12月中旬にティグレ州の境界線まで撤退したのです。[1][2]

 エチオピアが保有する無人攻撃機(UCAV)については、少なくとも中国製「翼竜II」が9機、イラン製「モハジェル-6」が2機、そして多数製のUAE製VTOL型UCAVが確認されています。これらのUCAVを支援するため、2種類のイスラエル製の無人偵察機も運用されています。[3][4]

 エチオピアは2021年9月に中国から最初の3機の「翼竜-I」を受領し、その2か月後の11月にはUAEがさらに6機を配備しました。エチオピア側によるトルコ製UCAVの取得も報じられているが、未確認のままです(注:後日に「バイラクタルTB2」と「バイラクタル・アクンジュ」を導入した)。[5] [6]

 UAEによるエチオピア政府側へのUCAV配備については、2020年11月のティグレ戦争勃発当初から推測されてきました。[8]

 それにもかからず、2020年11月にティグレ州上空での作戦を遂行するため、複数のUAE軍の「翼竜」がエリトリアのアッサブ空軍基地から出撃したという繰り返し主張されている説は、いまだに証拠によって裏付けられたことがありません。ただし、そのような動きがなかったとは断言できません。ティグレの重装備に対する精密爆撃(弾道ミサイル発射機や大口径多連装ロケット砲など)が何度も行われましたが、その使用自体が彼らの動きを説明できるかもしれません。
 
 UAEが武装ドローンをエチオピアに送った最初の事例は、2021年夏に確認されました。当時、UAE製のVTOL型UCAVが、エチオピア・ティグレ州のマイチュー地区で運用されているのが確認されたのです。これらのUCAVは市販ドローンを改造したもので、120mm迫撃砲弾2発を搭載可能という特徴があります。ちなみに、以前にUAEがイエメンに投入したものと同型です。[9]

 しかし、無誘導の迫撃砲弾は「翼竜-I」や「モハジェル-6」が搭載する誘導弾に比べて精度が著しく低く、機動性を有する敵どころか静止目標に対しても限定的な効果しか及ぼさないことは言うまでもないでしょう。

 UAEによるアビー・アハメド政権への支援の質が大幅に向上したのが2021年11月のことで、この時点でUAEが少なくとも6機の「翼竜-Ⅰ」を自国の操縦要員と共にハラール・メダ空軍基地に配備しました。[6]

 エチオピア政府がティグレ人勢力の脅威に屈服する可能性があるとの情報が、UAE空軍のストックから「翼竜-Ⅰ」をエチオピアへ即時展開させた真の理由だった可能性があります。

2021年11月に撮影されたハラールメダ基地の「翼竜-Ⅰ」。画像はWim Zwijnenburgによるもの。

 急速に拡大するUCAV部隊の受け入れ体制を強化するため、エチオピア空軍は現在9機の「翼竜-Ⅰ」が配備されているハラールメダ空軍基地において、新たなインフラ整備を既に開始しています。[10]

 この整備では複数の格納庫が整備される予定であり、最終的にはハラールメダに配備されている武装ドローンの全機を収容する見込みです(注:2025年現在で新しい格納庫は滑走路東側に1棟建てられたのみである)。

 現時点の「翼竜-Ⅰ」は、基地内の格納庫や複数の強化シェルター(HAS)から運用されていると見られています。

最近の衛星画像が示すとおり、ハラールメダでは新たなインフラ建設が進んでいる。右下隅にある青い格納庫には一部の「翼竜-Ⅰ」が格納されているほか、右端には専用の地上管制局(GCS)が展開している。

 当初、エチオピア空軍は「翼竜-Ⅰ」を純粋な偵察任務に投入し、後に「TL-2」空対地ミサイル(AGM)を調達して武装ドローンとしての運用を可能にした一方で、UAE機は当初から相当量の空対地兵装を投下していました。[11]

 これらの誘導弾については、特に各「翼竜-Ⅰ」が「ブルーアロー7」を2発しか搭載できないことを考慮すると、戦場に分散したティグレ人戦闘員の集団に対しては効果が低いものの、TDFの急速に減少する火力支援アセットは、同軍の通常戦による戦闘遂行能力及び進行中の攻勢支援能力に重大な影響を与えたに違いありません。

 ドローン攻撃が与える心理的効果と、戦闘員が頭上を飛ぶ武装ドローンを目視しながらも攻撃目標にできなかった事実は、TDFが攻勢を放棄してティグレ州へ撤退する決断にも影響を与えたと思われます。


ドローン攻撃で撃破されたTDFの「T-72B1」。戦車に命中したミサイルが内部で大規模な爆発を引き起こし、砲塔を吹き飛ばしたようだ。

 UAE空軍の「翼竜-Ⅰ」6機がエチオピアに配備されて僅か1か月後、UAEはティグレ州アラマタ地区における民間インフラへの空爆を実施しました。この空爆では町の病院と市場が攻撃され、42名の民間人が死亡し、少なくとも150名が負傷したことが確認されています。[12][13][14]

 アラマタにおける被害地域を詳細に分析した結果、中国製「ブルーアロー7」AGMの残骸が発見されました。これはUAEの「翼竜-Ⅰ」に標準装備されているものです。この残骸は着弾後も充分に残存していたため、リビアで発見された同ミサイルの残骸と比較対照・特定することができました。最も識別しやすい部品は尾部にあるロケットモーター用の排気ノズルで、あらゆる衝撃に耐えて残存するケースが多いようです。アラマタにおけるこのAGMの残骸は、こちらで確認できます。[15]

アラマタで発見された「ブルーアロー7」AGMの排気ノズル(左)とリビアで発見された同AGMの残骸(右)。

アラマタで発見された「ブルーアロー7」AGMの残骸。挿入されている画像はリビアで回収された同ミサイルの残骸を示している。

[1] Ethiopia's Tigray crisis: Citizens urged to defend Addis Ababa against rebels https://www.bbc.com/news/world-africa-59134431
[2] Tigrayan Forces Retreat in Ethiopia https://www.crisisgroup.org/africa/horn-africa/ethiopia/horn-s3-episode-5
[3] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[4] The Israel Connection - Ethiopia’s Other UAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/the-israel-connection-ethiopias-other.html
[4] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[5] The UAE Joins The Tigray War: Emirati Wing Loong I UCAVs Deploy To Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/the-uae-joins-tigray-war-emirati-wing.html
[7] Ethiopia-Turkey pact fuels speculation about drone use in Tigray war https://www.theguardian.com/world/2021/nov/04/ethiopia-turkey-pact-fuels-speculation-about-drone-use-in-tigray-war
[8] Are Emirati Armed Drones Supporting Ethiopia from an Eritrean Air Base? https://www.bellingcat.com/news/rest-of-world/2020/11/19/are-emirati-armed-drones-supporting-ethiopia-from-an-eritrean-air-base/
[9] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[10] New Drone Infrastructure Emerges At Harar Meda Air Base https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/new-drone-infrastructure-emerges-at.html
[11] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html
[12] UAE Implicated In Lethal Drone Strikes In Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/uae-implicated-in-lethal-drone-strikes.html
[13] Daily Noon Briefing Highlights: Ethiopia https://www.unocha.org/story/daily-noon-briefing-highlights-ethiopia-34
[14] Ethiopia: Consecutive days airstrikes in Tigray’s Alamata kill 42 civilians, injure more than 150, cause massive destruction https://globenewsnet.com/news/ethiopia-consecutive-days-airstrikes-in-tigrays-alamata-kill-42-civilians-injure-more-than-150-cause-massive-destruction/
[15] ደብዳብ ድሮናትን ነፈርትን ከተማ ኣላማጣ https://youtu.be/CTgtrGqmXUg?t=204


 2025年現在の情報にアップデートした改訂・分冊版が発売されました(英語のみ)

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