2022年6月18日土曜日

拒否権の勝利:イスラエルがウクライナへの(武器)援助を阻止


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

   「象が鼠の尻尾を踏んでいるときに中立だと言っても、鼠はあなたを決して中立と思 
  わないでしょう(デズモンド・ムピロ・ツツ、南アフリカ)」

 ウクライナ全土に及ぶロシアの激しい攻勢の阻止を手助けするため、西側諸国はウクライナ軍に膨大な軍事装備や弾薬を供与するべく奔走しています。

 供与される兵器システムの多くは比較的使いやすい上に西側諸国のストック品から容易に入手可能ですが、一方でより複雑な兵器もあり、ウクライナの軍人がそれを使いこなすために数週間の訓練が必要なケースもあります。これにはオランダとドイツから供与された「PzH 2000」自走榴弾砲(SPG)だけでなく、イギリスとドイツ、そしてアメリカから供与された「M270」や「HIMARS」多連装ロケット砲システム(MRL)といったものも含まれまれていることは周知のとおりです。[1] [2]

 多くの国がウクライナの窮状を支援するための呼びかけ以上のことをした一方で、 ロシアとの関係を壊さないために軍事支援という手段をほとんどせずに人道支援にとどめることを好む国もあります。

 そのような国のリストにドイツが含まれていると思われがちですが、オーラフ・ショルツ首相はすでに送られた大量の対戦車兵器などに加えて最新型の地対空ミサイル(SAM)と長距離MRLを供与することを発表しました。したがって、ドイツは今や他国による支援の大部分を凌駕する側となったのです。[2] 

 これらのシステムの供与については期待外れなほどに時間をかけて行われることが判明したものの、ドイツはオランダが5台以上の高度なドイツ製「PzH 2000」を供与するといった他国の支援も認めるだけではなく、自身も7台を供与しています。[1] 

 ドイツとは際立って対照的に、イスラエルとスイスはウクライナへの軍事装備の供与を差し控えるのみならず、他国が軍事援助として自国製兵器をウクライナへ送ることも積極的に阻止しています。イスラエルやスイスのような武器生産国は、彼らから武器を調達する国に対してエンドユーザーに関する厳しい制限を課すことが常であり、購入した武器や装備を第三者へ売却や寄贈する前に許可を得ることを義務付けているのです。

 ただし、この政策は前述の国々独特のものではありません。最近の例として、ドイツによる榴弾砲をめぐる失敗が挙げられます。

 エストニアが2000年代後半にフィンランドから入手した「D-30」榴弾砲9門をウクライナに供与しようとした際には、ドイツ政府の許可を得るなければなりませんでした。そもそもこの「D-30」自体が旧東ドイツからドイツが受け継ぎ、フィンランドに供給していたものだったためです。

 ウクライナに危険が迫っているにもかかわらず、ドイツはロシアを刺激してはいけないという無駄なことに尽力していたため、2月下旬まで供与の許可を出すことを拒否する自体が続きました。[3]

ドイツ軍の「スパイク-LR」ATGM。ドイツ政府は少なくとも2022年3月初頭からこうした高度なATGMをウクライナへ供与する許可を求めていますが、今のところ実現していません。

 その一方でイスラエルは、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争の前後や戦争中におけるアゼルバイジャンのような紛争当事国に「スパイク」対戦車ミサイル(ATGM)から徘徊兵器、さらには弾道ミサイルまで何でも供給することについて、ほとんど躊躇していなかったように見えます。

 実際、アゼルバイジャンの勝利はトルコ製の「バイラクタルTB2」無人戦闘航空機(UCAV)の活躍だけに起因があるとされることが多いですが、この戦争では(徘徊兵器を含む)イスラエル製の武器もTB2とほぼ同等の重要な役割を果たしました。

 現時点でアゼルバイジャンが運用している21種類のUAVのうち19種類以上がイスラエル製(90%)であり、トルコ製はたった2種類(14%)にすぎません。[4] [5] [6]
 
 2014年にウクライナが同様にイスラエル製UAVを導入しようと試みた際、イスラエル政府はロシアの圧力を受け、結果的に同国の「エアロノーティクス」社はウクライナとの取引の中止を余儀なくされてしまいました。[7]

 その僅か数年前の2009年には、イスラエルの「IAI」社がロシアに多数の「サーチャーII」無人偵察機を供給し、「フォルポスト」という名称でそれらの組み立てと最終的な製造ライセンスをロシア側に与えました。そして、ロシア空軍は後日にこれらの大部分を武装ドローンに改造し、ウクライナ侵攻作戦で投入したことが知られています。[8] 

 ウクライナからしてみれば、イスラエルの無人機を調達できない一方でイスラエルが設計した無人機が投下した爆弾を受ける側となっているわけですから、ひどく腹立たしい状態にあることには間違いないでしょう。

今やウクライナ軍への攻撃に使用されるイスラエル起源の「フォルポスト-R」UCAV

 2014年にウクライナへの無人偵察機の販売を拒絶をしたことは、同年からイスラエルがウクライナに事実上の武器禁輸を課したことの始まりを示しました。

 その年以来、イスラエルは自国製兵器の納入に関する全てのウクライナからの要請を断ってきました。これにはウクライナのゼレンスキー大統領がロシアのウクライナ侵攻の前後で繰り返し求めていた、「スパイク」ATGMと「アイアンドーム」防空システムが含まれています。[7] [9]

 ロシアがウクライナに侵攻した後の今でさえ、ポーランド・イタリア・ドイツ・アメリカがウクライナ軍にイスラエル製の「スパイク」ATGMを供与することに関する許可を求めた場合も、イスラエル政府から否定的な反応が返ってくることが十分に予想されます。

 伝えられているところによれば、イスラエルが供与の承諾をしたがらない理由は、そのような動きがロシアとの関係に悪影響を及ぼすことに対する懸念にあるとのことです。具体的には、イスラエルは自国製兵器によってロシア兵が殺害されることがシリアにおける同国の安全保障上の利益をロシアが害することに至る可能性を懸念しているのです。[10]

 また、イスラエルは仲介役として行動できるようにするべく今次戦争では中立を保つことを望んでいるようです。[11]

 ただし、ロシアはイスラエルによる挑発を避けるための慎重な取り組みを手本にすることにはほとんど関心がないようであり、外相のセルゲイ・ラブロフが「ヒトラーはユダヤ系である」旨を主張してイスラエルで激しい反発を引き起こしてたことは記憶に新しいでしょう。[12] 

 自国の戦略について、イスラエルの政策立案者は間違いなく入念に計画されたものを考え出したとみなしていますが、武器供与禁止策もある程度はロシアに対する恐怖に基づいた政策でもあると理解するにはそれほど困難なことではありません。

 皮肉なことに、複数回の和平交渉を主催し、仲介役として主導的な役割を担ってきたのはトルコです。イスラエルと同様にトルコもロシアとの強固な関係の維持に向けて多大な努力を払っている一方で、同国はすでにロシアの支援を受けている組織や支援の拡大が予想される組織からの内外の脅威に直面しています。

 それにもかかわらず、トルコはウクライナへの関与に熱心であり、ロシアからの侵略の脅威が国全体に強く迫ってきたマイダン革命後の年月を通じてウクライナとの友好を強固なものにしてきたのです。

 トルコによるウクライナへの軍事援助はどの国よりも最も価値のあるものと言えます。トルコが納入したUCAVはロシア国内の目標に対する攻撃に使われ、ロシア海軍の艦艇を沈め、黒海艦隊の旗艦である「モスクワ」の撃沈を支援したことまであるのです 。[13] [14]

ウクライナ上空で撃墜されたロシアの「フォルポスト」無人偵察機から見つかったイスラエル製部品(3月11日)

 イスラエルによるウクライナへの軍事援助の拒絶や他国による自国製兵器を用いた軍事援助も許可しないことは、イスラエルが自国への侵略に直面した際に西側諸国の多くが味方に付き、補給を維持するために大規模な航空輸送を実施し、イスラエル兵のために献血運動を行ったという歴史的な援助とは明らかに著しく相反したものであると言えます。 

 もちろん、イスラエルが西側諸国の人々からこれほど強い支持と共感を期待できる時代はとっくに過ぎ去っています。そして、世界はイスラエルの怠惰とウクライナへの支援に対する意図的な妨害行為を忘れることはあり得ないでしょう。
 
 ラトビアのアルティス・パブリクス副首相兼国防大臣は、ウクライナにおける情勢があるにもかかわらずイスラエルが自国製兵器のエンドユーザーに関する制限を厳守していることについて、将来的に同国の兵器システムの調達に悪影響が及ぶであろうことをすでに認めています。

 このようなラトビアの反応は、ウクライナの窮状には同情していても、生存をかけた重大な闘いにおいてウクライナを少しも助けることにはならないことは言うまでもないでしょう。[15]



2022年2月以前にイスラエルによって阻止されたウクライナへの武器供与または販売


2022年2月以降にイスラエルによって阻止されたウクライナへの武器供与

[1] Beyond The Call - Dutch Arms Deliveries To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/beyond-call-dutch-arms-deliveries-to.html
[2] Answering The Call: Heavy Weaponry Supplied To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/answering-call-heavy-weaponry-supplied.html
[3] Germany to send Ukraine weapons in historic shift on military aid https://www.politico.eu/article/ukraine-war-russia-germany-still-blocking-arms-supplies/
[4] Convenient Ignorance: The U.S. Senate’s Approach To Israeli Arms Sales To Azerbaijan https://www.oryxspioenkop.com/2022/01/convenient-ignorance-us-senates.html
[5] American Duplicity: Who In Washington Is Targeting Turkey’s Drone Programme? And Why? https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/american-duplicity-who-in-washington-is.html
[6] Azerbaijan’s Emerging Arsenal Of Deterrent https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/azerbaijans-emerging-arsenal-of.html
[7] Israel treads a narrow tightrope, says no to Spike for Ukraine https://www.shephardmedia.com/news/landwarfareintl/israel-treads-a-narrow-tightrope-says-no-to-spike/
[8] Nascent Capabilities: Russian Armed Drones Over Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/nascent-capabilities-russian-armed.html
[9] The Problems with a Ukrainian ‘Iron Dome’ https://www.nationalreview.com/the-morning-jolt/the-problems-with-a-ukrainian-iron-dome/
[10] Israel refused US request to transfer anti-tank missiles to Ukraine — report https://www.timesofisrael.com/israel-refused-us-request-to-transfer-anti-tank-missiles-to-ukraine-report/
[11] Why Israel Refused to Help Ukraine Defend Itself From Russian Missiles https://theintercept.com/2022/03/23/ukraine-russia-peace-negotiations-israel/
[12] Israel outrage at Sergei Lavrov's claim that Hitler was part Jewish https://www.bbc.com/news/world-middle-east-61296682
[13] Defending Ukraine - Listing Russian Military Equipment Destroyed By Bayraktar TB2s https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/defending-ukraine-listing-russian-army.html
[14] Neptune’s Wrath: The Flagship Moskva’s Demise https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/neptunes-wrath-flagship-moskvas-demise.html
[15] https://twitter.com/Pabriks/status/1532034118061522945

 ※  この記事は、2022年6月10日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳したもので
   す。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があり
   ます。



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2022年6月15日水曜日

孤立した中での創意工夫:沿ドニエストルの自家製「ハンヴィー」


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 トランスニストリア、正式には沿ドニエストルモルドバ共和国(PMR)は、この過去10年間で非常に面白いデザインの装甲戦闘車両(AFV)を次々と生み出してきました。

 1990年代初頭に独立を一方的に宣言して以来、この未承認国家は旧式化したソ連製兵器のストックを新型に置き換えることができないため、その代わりとして自国で開発した多数の車両で戦力のギャップを補おうと試みています。

 独自兵器の大部分は、全く新しい用途に適合させるために既存のAFVをベースに改造したものであり、この最も良い例を挙げるならば、ほぼ間違いなく自走対空砲型「MT-LB」「BTRG-127 "バンブルビー"」装甲兵員輸送車(APC)でしょう。後者はもともとソ連で「GMZ-3」地雷敷設車として開発されたものです 。[1]

 沿ドニエストルで登場した最新の独自兵器は、古いトラックの車体をベースにした四輪式の軽多用途車です。この車両は明らかにアメリカの「ハンヴィー」からインスピレーションを得ているように思われるため、(制式名称やより良い仮称が思いつかないことから)今後は「トランスヴィー」と呼称することにします

 「トランスヴィー」は、2022年2月に行われた特殊部隊のデモンストレーションで初めて目撃され、同車は自身のベースとなった四輪駆動の「GAZ-66」オフロード軍用トラックと一緒に登場しました。[2]

 この新型車両の性能は、メンテナンスのしやすさと戦場での頑丈さが評価されている1960年代の「GAZ-66」と同等であると思われます。

 生産性を容易にしたり、コストを最小限に抑えるため、沿ドニエストルの技術者たちは「GAZ-66」のコンポーネントを可能な限り多く取り入れることに努めたようです。面白いことに、そのコンポーネントには「GAZ-66」の車体だけでなくキャビン前部も含まれています(注:キャビンの天井や窓などがそのまま流用されているのです)。

 「GAZ-66」のキャビンは1台の「トランスヴィー」につき2つ使用されており、2つ目のキャビンは前部と反対方向にして溶接され、車両のフレームを形成しています(注:よく見ると前後のドア自体も「GAZ-66」そのままで観音開き式となっています)。

 「GAZ-66」は大量に現地部隊で用いられていますが、それらの少なくとも一部を、過去10年で商用トラックとしてロシアから輸入した「ウラル-4320」や「カマズ 6x6」トラックで更新することに成功しました。

 「トランスヴィー」について、見た目から判明した設計の特徴以外やこれまでの生産台数は一切わかっていません。しかし、「GAZ-66」トラックの数は沿ドニエストル軍の運用で必要とされる数を超過しているため、生産台数が初期ロットにとどまらず、いつか相当な数に達する可能性は決してあり得ないものではないでしょう。

 仮にさらなる生産がされる場合には、予備的な導入時に浮上した問題点を解決するために設計の修正が行われる可能性があるため、「トランスヴィー」の外観や特徴はまだ流動的である可能性を示しています(つまり現デザインが変更される可能性があること)。


「GAZ-66」4x4軽汎用トラック

 「トランスヴィー」は主に前線後方への人員や軽貨物の輸送任務用に設計されたものであり、車体後部に幌付きの貨物室を備えています。実際、2月の演習で「トランスヴィー」は特殊部隊の展開に使用されました。

 初期型の「ハンヴィー」同様に「トランスヴィー」も装甲防御力が無いことから、危険を回避するにはスピードと未舗装路における機動性に頼らざるを得ません。つまり、この車両は実質的な装甲なしで任務にうまく対処する必要があるわけですが、機銃手席の天井には 「PK(M)」7.62mm軽機関銃(LMG)が装備されています。


 すでに沿ドニエストル軍は、ありふれた「UAZ-469」やオフロード車である「ラーダ・ニーヴァ」さえもベースにした数多くの襲撃車の設計と改造の経験を有しています。

 これらの車両はこの未承認国家全域で簡単に入手可能であり、民間の車両として輸入することすら可能です。したがって、現地の部隊が攻撃的なものを含めた想像できる限りのあらゆる用途において、未だにこうした車両に依存していることは少しも驚くには値しません。

 商用車改造型襲撃車の大部分は1門の軽機関銃か重機関銃を装備していますが、驚くべきことに「9M111 "ファゴット"」対戦車ミサイルを装備した派生型さえも存在します。



 沿ドニエストルの自家製ハンビーは孤立している中で創意工夫を凝らした完璧な例、つまり、使えるものが本当に僅かしかないときに利用できるもので何とか間に合わせた例です。

 未承認国家という沿ドニエストルの立場は当面にわたって解決されそうにないため、この地域はより型破りな改造兵器の舞台となり続けることは間違いないでしょう。


[1] DIY On The Dniester: Russia’s Transnistrian SPAAG(s) https://www.oryxspioenkop.com/2020/09/a-poor-mans-anti-aircraft-vehicle.html
[2] A Forgotten Army: Transnistria’s BTRG-127 ’Bumblebee’ APCs https://www.oryxspioenkop.com/2017/02/a-forgotten-army-transnistrias-btrg-127.html
[3] Праздник защитников Отечества https://youtu.be/c7UM1XS-_JQ

 ※  この記事は、2022年6月11日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳したもので
   す。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があり
   ます。


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2022年6月10日金曜日

沿ドニエストルのDIY式兵器: 沿ドニエストル駐留ロシア軍の自走対空砲


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 おそらく、ロシアの対空砲兵部隊は見るからに強そうな「2K22 "ツングースカ"」及び「96K6 2パーンツィリ-S1"」自走対空砲システム(SPAAG)を大量に運用していることで広く知られています。ただ、少数の「ZSU-23 "シルカ"」も運用が続けられており、今回のロシアのウクライナ侵攻作戦で少なくとも4台が失われました。[1]

 このカテゴリーにおける新型戦闘車両とそれらの近代化パッケージについては、「パーンツィリ」と「ツングースカ」の新バージョンを含めて今も開発され続けています。

 したがって、ロシアの対空兵器に最も新しく加わったものが、実のところ未承認国家である沿ドニエストル(トランスニストリア)の「ロシア軍作戦集団(OGRF)」に配備されているDIY式自走対空砲ということは、なおさら滑稽に思えるかもしれません。
 
 このDIY戦闘車両について、より正確には火力支援車と表現することができます。しかし、ロシアのテレビ局が駐沿ドニエストルOGRFの将校に行ったインタビューで、対空戦闘車両という明確に意図された役割の存在が確認されました。[2]

 この新型自走対空砲は2門の「NSV」12.7mm重機関銃(HMG)を装備した改修型「BTR-70」の砲塔を標準的な「MT-LB」汎用軽装甲牽引車に搭載したものであり、OGRFと沿ドニエストル軍向けとして2020年初頭に少数が生産されたようです。[2]

 同車両が装備する双連の12.7mm重機関銃は低空を飛行するヘリコプターに対してはある程度有効ですが、専用の対空照準器や暗視照準装置は備えられていないように見えます。

 公式には沿ドニエストル・モルドバ共和国(PMR)と呼ばれるトランスニストリアは、1990年にソビエト社会主義共和国として独立を自称し、続く1992年にモルドバから武力的に離脱して以来ずっと陰に隠れた存在であり続けています。

 同年に武力紛争が終結したにもかかわらず、沿ドニエストルの状況は依然として複雑なままです。この未承認国家はロシア連邦への加盟を望む一方で、経済生産の面ではモルドバへの僅かな商品の輸出に大きく依存し続けていることがそれを浮き彫りにしています。

 本物の国家としての地位には疑問があるものの、沿ドニエストルは独自の陸軍や航空戦力、さらには自前の軍需産業まで有する事実上の国家として機能していることは注目に値します。
 
 ロシアは今でも沿ドニエストルに限定的な兵力を駐留させ続けており、駐留部隊は公式には平和維持活動に従事しているとされています。1995年4月、沿ドニエストルの支配地域に駐留していた旧ソ連地上軍第14軍はOGRFとなり、その間にたった2個大隊にして僅か1500人以下の兵力に縮小されてしまいました。

 一方はモルドバに、もう一方はウクライナに囲まれたOGRFは老朽化した車両群を更新できないままでいます。なぜならば、2014年にウクライナがロシアの軍用輸送機の自国領通過を禁止し、その1年後には以前にロシアに許可されていたそれらの条約を正式に破棄したからです。これは、OGRFが「BTR-60」装甲兵員輸送車(APC)、「BRDM-2」偵察車、「MT-LB」汎用軽装甲牽引車といった、ロシア本国ではほとんど退役したAFVに今後も依存し続けることを意味します。


 沿ドニエストル軍も同様に少数の「MT-LB」を運用し続けており、ごく最近の例であれば2020年9月に「首都」ティラスポリの街中をパレードした様子が確認されています。[3]

 しかし、大規模な数の「MT-LB」砲兵牽引車は運用上の必要性がほとんどなく、現在ではその大部分が保管庫で放置されているか、OGRFへ譲渡されているようです。また、DIY式自走対空砲に改修された「MT-LB」群はすでにOGRFが所有していたものであり、最近になって新用途に活用されたという可能性も考えられます。

 沿ドニエストル軍とOGRFが実際に使用できるMT-LBの数は不明のままですが、より多くの車両を改修するには十分な数が存在する可能性は高いと思われます。


 1992年のトランスニストリア戦争では砲兵用牽引車という本来の役割は余剰気味で、いくらかの「MT-LB」すでに両軍で即席の装甲戦闘車両として使用されており、大抵は兵員/貨物区画の直上に「ZPU-2」14.5mm対空機関砲や「ZU-23」23mm対空機関砲が搭載されていました。

 非常に薄い装甲しか備わってなかったことから、これらの簡易AFVは1992年の戦争で多用されたRPG(対戦車擲弾発射機)や対戦車砲の恰好の餌食となってしまったものの、ベンデルなどでの市街戦では有効活用されました。



 おそらく1992年の戦争で得た有用な経験の結果として、沿ドニエストルの軍隊はAFVの数を強化するため、その約20年後に再び各種AFVのプラットフォームとして「MT-LB」に目を向けたのかもしれません。

 「MT-LB」は今や外付けの対空砲が備え付けられているのではなく、2門の「NSV」12.7mm機関銃を装備した専用の銃塔が搭載されています。

 双連の重機関銃塔に加え、この改修型「MT-LB」は通常型と同様に、車体側面と後部に合計4基の銃眼、車体前部に1門の「PKT」7.62mm軽機関銃を装備した小型銃塔が備えられていることも特徴です。このAFVは小火器による射撃や爆発の破片に耐えうる防御力も有しています(注:ただし、必要最低限のレベルの装甲であることは先述のとおりです)。

 DIY式自走対空砲の銃塔は有効射界を広げるために文字どおり塔に搭載され、その結果として「MT-LB」の投影面積が大幅に増加したことは一目瞭然でしょう。

 銃塔は現地で設計されたものと思われますが、その見た目はロシアの「Muromteplovoz」社が「BTR」や「MT-LB」系統のAFVに搭載するために開発した「BTR-80」ベースの「MA9」銃塔に酷似しています。

「MA9」も12.7mm重機関銃を2門装備していますが、重機関銃自体は「NSV」よりも新しい「コルド」です。ロシアやウクライナの軍隊では「BRDM-2」や「BTR」の銃塔を搭載した同様の火力向上型「MT-LB」を運用しており、ウクライナの戦場でも活躍する姿が目撃されています。[5] [6]

沿ドニエストルDIY式銃塔は「KPV」14.5mm重機関銃と7.62mm軽機関銃を装備した「BTR-70」の銃塔をベースに改修を加えたものです。

ロシアの「Muromteplovoz」社が「BTR-80」の銃塔をベースに開発した「MA9」はまだ販売実績がありません。

 銃塔と(一部車両に)泥よけを追加したことを除けば、基本的には設計自体に全く変更が加えられていないように見えます。車体後部の油圧式ドーザーブレード用のアクチュエーターはそのまま残されているため、改修前と同様に「MT-LB」本来の目的である多目的用途で使用可能です。


 当分の間、沿ドニエストル軍もOGRFも旧式AFVのストックを置き換える新しい装備を手に入れることができないため、この未承認国家は今後もDIY兵器の温床となり続けるかもしれません。

 少なくとも8台の「GMZ-3」地雷敷設車の「BTRG-127 "バンブルビー"」APCへの設計と改造、そして「プリボール-2」多連装ロケット砲の生産は、沿ドニエストルの技術者が(おそらくロシアの援助を受けて)国産の代替品をある程度提供するのに確実に手際が良いことを示しています。

[1] Attack On Europe: Documenting Russian Equipment Losses During The 2022 Russian Invasion Of Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/attack-on-europe-documenting-equipment.html
[2] https://youtu.be/_asTzuOXVks
[3] The Victory Day Parade That Everyone Forgot https://www.oryxspioenkop.com/2020/09/transnistria-shows-off-military.html
[4] Башенная установка МА9 https://muromteplovoz.ru/product/mil_cs_ma9.php
[5] https://twitter.com/LostWeapons/status/1272104995383472128
[6] https://twitter.com/oryxspioenkop/status/1500263763064336384

この記事の作成にあたり、Ilya.A.氏に感謝を申し上げます。

 ※  この記事は、2022年6月7日に本国版「Oryx」に投稿された記事を翻訳したもので
   す。当記事は意訳などにより、本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があり
   ます。

2022年6月7日火曜日

ギリシャからの興味深い贈り物:ウクライナ軍の抵抗に対するギリシャの支援


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 これまでに、EUとNATOのほぼ全加盟国がロシア軍と戦うウクライナを支援するために、程度の差はあるものの軍事的な支援を行ってきています。

 スロバキアによる「S-300PMU」地対空ミサイル(SAM)システムの譲渡のほか米英による「ジャベリン」や「NLAW」対戦車ミサイル(ATGM)の供与が大いに注目されていますが、そのほかにも多くの国が独自のやり方で貢献していることは見落とされがちです。

 その国の1つが早くも2月27日にウクライナへの軍事支援を表明したギリシャです。その支援の内容は、「カラシニコフ」アサルトライフル2万丁、「RPG-18」使い捨て対戦車擲弾発射器815個、そして数が未公表の122mm無誘導ロケット弾で構成されていました。[1] 

 その直後に少なくとも飛行機2機分の積載量に相当する武器と弾薬がウクライナに送られ、今やロシア軍との戦闘に用いられているようです。[2]

 それ以来、ギリシャが追加の兵器に関する供給源の有力な候補として何度も言及されるようになったことはよく知られています。

 特筆すべきポイントとして、ギリシャはウクライナ軍が(現在供与されている大部分の西側諸国の兵器とは逆に)すでに使い慣れているソ連製の膨大な兵器群を運用していることが挙げられます。これらには「S-300PMU-1」、「9K331 "トール-M1"」、「9K33"オーサ"」SAMシステムに加え、多連装ロケット砲(MRL)、装甲戦闘車両(AFV)などが含まれます。

 この理由から、アメリカがただちに実戦投入可能なソ連製兵器の供給源としてギリシャに注目し、キプロスに対して「9K37M1 "ブーク-M1"」や「トール-M1」SAMシステムなどの供与を要請したことと同じ取り組みを行ったことは確実です。[3] 

 それにもかかわらず、4月初頭にギリシャ政府は「自国の防衛力を落とすようなことはしない」という理由でそのような兵器の供給を公式に拒否し、その後にウクライナへ追加の軍事装備を送る計画がないことを明らかにしました。[4] [5]

 「トール」や「ブーク」といった(西側諸国が供与したMANPADS)より長射程のSAMシステムを入手する手段がほかに全く存在しないウクライナにとってギリシャ政府の声明に失望したに違いありませんが、ギリシャからすると「オーサ」や「トール-M1」といった高度な兵器の供給がトルコに対する自国の態勢を著しく弱体化させる可能性があることにも注目すべきでしょう。

 各国がウクライナへのハイレベルな装備の供給を決定した場合、アメリカはそれに対する補償や実施国へのアメリカ製システムの一時的な配備を約束していますが、現在ギリシャで使われている兵器を相応しく代替できる西側製のシステムは僅かしか存在しません。

 資金不足のおかげでギリシャ軍は代替システムを調達できない可能性が高く、アメリカによるそれらの供与はトルコから激しい抗議を引き起こすことが予想されます。

 ギリシャは「トール」を運用している有一のNATO加盟国であることに加えて特に「S-300PMU-1」は同国にとって(少なくとも書類上は)最も貴重な防空戦力の1つです。この事情とポーランドとブルガリア、そしてルーマニアはいずれも相当な数の「9K332"オーサ"」を運用していることを考えると、これらの国々がより賢明な防空システムの調達先であることを示しています。

 ギリシャの「S-300PMU-1」は1990年代後半に発生したキプロスのミサイル危機の結果として同国から引き継いだものですが、ミサイル発射機などのシステムは一般的な「S-300」で見られる重装軌車両や「MAZ-543M」トラックに搭載されているのではなく、「KrAZ-260B」セミトレーラー車で牽引されているのが特徴です。

 したがって、「PMU-1」のレーダーシステムだけでも展開に最大で2時間を要する可能性があることで戦術的な機動性が著しく低下するため、システムの展開場所を地上発射型の対地兵器に指示可能なロシアのUAVにさらされるリスクが高くなってしまうのです。

 ウクライナはすでにこのことを痛感していると思われます。なぜならば、ウクライナ軍は戦争の最初の数日間で(「S-300PT」 で使用される)「5P851A」セミトレーラー式発射機12基を失っているからです。[6]

現在はクレタ島に配備されているギリシャの「S-300PMU-1」SAMシステム

 最大2万丁にもなるAK型「カラシニコフ」アサルトライフルと815発の「RPG-18」、そして(「BM-21」または「RM-70」MRL用)122mm無誘導ロケット弾の供与は、先述の「S-300」のような重装備の供与に比べるとかなり見劣りしますが、ギリシャからの武器に注目すべき点がないとは言い切れません。

 例えば、ギリシャが2万丁のAK型アサルトライフルを保有するに至った経緯は少なからず皮肉的な要素が含まれているので興味深いものがあります。

 革命前のヤヌコビッチ政権下ではウクライナはいかがわしい武器取引から収益を上げることに熱心であり、その相手を全く選びませんでした。

 シエラレオネの国旗を掲げてウクライナのムィコラーイウ港からトルコに向かっていた貨物船「Nur-M」が実際にはシリアやリビア向けの兵器を積載しているという情報をギリシャ当局が得たとき、これらの国々における受取先が何者であったのかは判断できませんでした。おそらくこのことが、ある匿名のウクライナ当局者がこの取引をリークしたのは実はロシアだったと語ったとされる理由の一つなのでしょう。[7]

 AK型アサルトライフル2万丁を含む56個の武器が満載されたコンテナは、最近までギリシャに保管されたままでした。ウクライナがこれらの輸出を否認したことによって、最終的にこれらの武器は終わりの見えないMENA(中東及び北アフリカ)諸国の内戦で用いられる代わりにロシア軍に対して使用するために...たった10年前には不可能と思えたに違いない結果:ウクライナ自身に戻す理由を見出されたというわけです。

 ギリシャはさまざまな種類のロシア製防空システムに加えて、「BMP-1A1 "オスト"」歩兵戦闘車(IFV)、100門以上の「RM-70」122mm MRL、「9M111 "ファゴット"」及び「9M133 "コルネット"」ATGM、「ZU-23」対空機関砲 などの多岐にわたるソ連製兵器を保有しています。「コルネット」ATGM以外は旧東ドイツ軍のストック品から調達したものであるため、ギリシャがそれらをウクライナに供与するにはドイツの許可を得なければなりません。

 ウクライナはすでにポーランドとチェコから大量の「BMP-1」と共に別の数か国から数百台の装甲兵員輸送車を受け取っていることから、ドイツの許可が供与の最大の障害とはならないでしょう。しかし、ギリシャ国内の事情やすでにウクライナ側に他国が支援しているので、実際に供与することが不要と判断されるかもしれません。

ギリシャ軍の「RM-70」MRL:同国は1990年代半ばに158基の「RM-70」を20万5千発の122mmロケット弾と共に旧東ドイツのストック品から調達しました[9]

 ギリシャ政府がSAMシステムを含む追加兵器の供与しないと決定したことはウクライナにとって失望を与えたことに疑いの余地はありませんが、同時に状況の全体像を考慮すると全く驚くことではないのです。

 ギリシャは、アサルトライフル、RPG、無誘導ロケット弾の提供を通じて、すでにウクライナへ軍事支援をした国の長いリストに加わっています。ギリシャの支援が世間からの注目を浴びることはないでしょうが、他国と合わせてウクライナの大義に大きく貢献することになるでしょう。


[1] Greek role within NATO is upgraded https://www.ekathimerini.com/news/1179620/greek-role-within-nato-is-upgraded/
[2] Greece Sends Military Aid to Ukraine https://greekreporter.com/2022/02/27/greece-military-aid-ukraine/
[3] The US asks Cyprus to transfer its Russian made weapons to Ukraine https://knews.kathimerini.com.cy/en/news/the-us-asks-cyprus-to-transfer-its-russian-made-weapons-to-ukraine
[4] Greece formally rejects US proposal to supply Ukraine with additional Russian-made weapon systems https://www.aa.com.tr/en/russia-ukraine-war/greece-formally-rejects-us-proposal-to-supply-ukraine-with-additional-russian-made-weapon-systems/2557146
[5] Greece says no more weapons for Ukraine https://www.euractiv.com/section/politics/short_news/greece-says-no-more-weapons-for-ukraine/
[6] Attack On Europe: Documenting Ukrainian Equipment Losses During The 2022 Russian Invasion Of Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/attack-on-europe-documenting-ukrainian.html
[7] What weapons did Greece send to Ukraine, and where did it come from https://en.rua.gr/2022/03/02/what-weapons-did-greece-send-to-ukraine-and-where-did-it-come-from/
[8] Answering The Call: Heavy Weaponry Supplied To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/answering-call-heavy-weaponry-supplied.html
[9] BMP-1A1 Ost in Greek Service https://tanks-encyclopedia.com/bmp-1-greece/

※  当記事は、2022年5月21日に本国版「Oryx」に投稿されたものを翻訳した記事です。
   当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇所があ
  ります。



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2022年6月4日土曜日

類稀なる偉業:リトアニアのジャーナリストが呼びかけたウクライナ用「バイラクタルTB2」調達クラウドファンディングの成功を受けてバイカル社がTB2を寄贈した


著:ヨースト・オリーマンズ と ステイン・ミッツアー (編訳:Tarao Goo

 ロシアによるウクライナへの侵略が始まってから100日が経過しました。

 目的は達成されるどころか投入された軍隊は反撃に遭い、攻め込まれた国は荒廃し、破壊の規模が絶えずエスカレートしていることから、この自称「特別軍事作戦」は決して戦うべきではなかった戦争 – ウクライナのみならず、ロシアどころかヨーロッパ全体の将来をも決する戦争にますます深入りする様相を呈しています。

 ロシア軍は今や自身が戦争の全く新たな局面に入ったことを悟っています。その局面でロシアの目標がはるかに限定的で現実的な性格を帯びてきたので運命を左右するサイコロが振り直されたわけですが、現代的な兵器のストックが枯渇する一方で、ウクライナはNATO諸国から供給されたより高度な兵器を投入し始めています。[1]

 20世紀に戦力を蓄えた最大級の侵略軍=ロシア軍に直面したウクライナの軍人と市民の驚異的な強靱力は称賛に値するものですが、継続的な抵抗のため、ウクライナは資金や軍事面で同盟国による支援にますます依存するようになってきています。

 しかし、民間の分野でもウクライナの窮状に対する支援は相当なものであり、外国人義勇兵や寄付、さらにはクラウドファンディングで得た装備品も提供などが、ウクライナの作戦に多大な影響を与えています。

 このような取り組みに、つい先日にあった現代戦で初となる異例の出来事を追加することができます:クラウドファンディングによって無人戦闘航空機(UCAV)が一国へ寄贈されることになったのです。

 5月25日、リトアニアのジャーナリストであるアンドリウス・タピナス氏が主催したキャンペーンで、トルコ製UCAV:「バイラクタルTB2」を購入できるように500万ユーロ(約7億円)を集めるべくリトアニア国民に支援を募りました。

 驚くべきことに、この目標額は早くも5月30日に到達し、その後も世界中から寄付が寄せられて最終的には590万15207ユーロ(約8.3億円)に達しました。これは目標とする兵器システムを購入するには十分な金額であり、資金にも余裕が生じました。[2] 

 しかし、TB2を製造するトルコの大手ハイテク企業「バイカル・テクノロジー」社との契約の場で、同社はこのUCAVをリトアニアに無償で譲渡することを公表し、同時に集まった資金をウクライナへの人道支援に充てるべきだと提案しました。

 後に、タピナス氏自身は440万ユーロ(約6.2億円)がウクライナへの人道支援・防衛あるいは復興プロジェクトに使われ、残りの150万ユーロ(約2.1億円)はTB2用の兵装に充てられることが決定されたことを公表しました。[3]

リトアニアのTB2と一緒に記念撮影をする同国のビリウス・セメシュカ副国防副相(中央)と「バイカル・テクノロジー」社のハルク・バイラクタルCEO(左)とセルチュク・バイラクタルCTO(右)

 TB2は、同機が実質的に戦場を支配した一連の武力紛争の過程を経て、現在販売されている戦闘システムの中で最も費用対効果の高いシステムの1つとして高い評価を得てきました。[4] 

 ただし、「バイラクタルTB2」はシリア、リビア、ナゴルノ・カラバフの上空で紛争の流れを本質的に変える能力を発揮しましたが、現代の大規模紛争におけるその性能はこれまで実証されておらず、論争の対象となっていました。[5] [6] [7] 

 トルコは今次戦争以前からウクライナの最も強力な支援国の1つであり、ウクライナ空軍と海軍に約18機のTB2システムを納入していたため、大国との大規模戦における同機の評価はすぐに一変しました。[8] [9] 

 TB2の威力と卓越した能力はロシアによる侵攻後も継続して発揮され、同機をウクライナの抵抗の象徴へと至らせました。ここ数週間だけでも、TB2はロシアやベラルーシ領のみならず有名なスネーク島とその付近で果敢な襲撃を何度も行っています。

 戦争の勃発はさらなるUCAVを迅速に納入することを最優先なものとし、トルコは3月に16機以上のTB2と「バイラクタル・ミニ」を送って再び重装備の納入で主導権を握ることになったのです。[10] 

 TB2の実質的なコストは500万ユーロという価格よりもいくらか高くなる可能性がありますが、さらなる納入のための真のボトルネックとなるのはほぼ間違いなく生産量の増強と思われます。

 TB2はUCAV市場で今までで(おそらく)最大の成功を収めており、少なくとも20の国がこのシステムを運用または購入したことが確認されています。[11] 

 これが戦争勃発時における「バイカル」社の迅速な対応の背景にあると思われ、自社の在庫か多くの輸出先から流用されたであろう製品を大量に供給したのでしょう。

 このことは、今後の納入については同型機を運用する国が譲渡する(自国の納入を遅らせる)意思を持っているか、「バイカル社」の非常に速い製造スピードに左右されることも意味しています。

 より多くの「バイラクタルTB2」UCAVがヨーロッパの防衛に多く携わることは確実です。
ちょうど昨年にリトアニアの隣国であるラトビアもTB2に関心を示しており、ポーランドとアルバニアの双方がTB2を調達するための予算を計上し、前者は今年後半に24機のうちの最初の1機を受領する予定となっています。[11] [12] 

 さらに、クラウドファンディングで購入されるTB2の納入を協議するためのトルコへの代表団を率いたリトアニアのビリウス・セメシュカ副国防副相は、(6機のTB2で構成される)システムを導入する可能性も協議されたと述べました。[13] 

 このことは、特に見込まれるラトビアのTB2調達と連動して、この地域におけるロシアの侵略に対するバルト諸国の抑止力が形成されることを意味するかもしれません。
 
 ウクライナにもたらされた被害や現代で最も破滅的な戦争の1つを継続するコストを踏まえると、590万ユーロはバケツの僅か一滴にすぎないかもしれません。しかし、今回の取り組みには、戦いに投入されゆく単なる1機の戦闘システムの以上の価値があることを忘れてはいけないでしょう。

 これは、それ自体が無関心で残酷に見える世界でむき出しの侵略に対して人々が団結し、より良い方向へ変化をもたらす能力がまだあることを示しているのです。どちらかというと、今回の出来事はウクライナが孤立した存在ではないことを再び示していると言えるのではないでしょうか。


[1] Answering The Call: Heavy Weaponry Supplied To Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/answering-call-heavy-weaponry-supplied.html
[2] https://twitter.com/AndriusTapinas/status/1531575225552355328
[3] https://twitter.com/AndriusTapinas/status/1532313492073619457
[4] A Monument Of Victory: The Bayraktar TB2 Kill List https://www.oryxspioenkop.com/2021/12/a-monument-of-victory-bayraktar-tb2.html
[5] The Idlib Turkey Shoot: The Destruction and Capture of Vehicles and Equipment by Turkish and Rebel Forces https://www.oryxspioenkop.com/2020/02/the-idlib-turkey-shoot-destruction-and.html
[6] An Unmanned Interdictor: Bayraktar TB2s Over Libya https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/an-unmanned-interdictor-bayraktar-tb2s.html
[7] The Conqueror of Karabakh: The Bayraktar TB2 https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/the-conqueror-of-karabakh-bayraktar-tb2.html
[8] The Fate Of Nations: Turkish Support To Ukraine’s Plight https://www.oryxspioenkop.com/2022/03/the-fate-of-nations-turkish-support-to.html
[9] Defending Ukraine - Listing Russian Military Equipment Destroyed By Bayraktar TB2s https://www.oryxspioenkop.com/2022/02/defending-ukraine-listing-russian-army.html
[10] New Bayraktar UAVs Spotted In Ukraine https://www.oryxspioenkop.com/2022/04/new-bayraktar-uavs-spotted-in-ukraine.html
[11] An International Export Success: Global Demand For The Bayraktar TB2 Reaches All Time High https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/an-international-export-success-global.html
[12] Business In The Baltics: Latvia Expresses Interest In The Bayraktar TB2 https://www.oryxspioenkop.com/2021/06/business-in-baltics-latvia-expresses.html
[13] Lithuania and Turkey sign agreement on Bayraktar drones purchase https://www.lrt.lt/en/news-in-english/19/1708436/lithuania-and-turkey-sign-agreement-on-bayraktar-drones-purchase

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。



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2022年6月2日木曜日

大空へ飛び上がった夢:自家製UAV「アルプクシュ」



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2021年の「テクノフェスト(注:トルコ最大の航空宇宙分野のイベント)」では多数の著名なUAVが展示されていましたが、それらと一緒に型破りで好奇心をそそる見た目のUAVも展示されていました。

 この2つの離れ業を組み合わせたのが、トルコ人エンジニアのアルペル・サリサン氏によって設計された小型UAV「アルプクシュ」です。

 もともと「アルプクシュ」は、世界最小の双発有人機という興味深い栄誉を持つ娯楽用の自家製機「コロンバン・クリクリ」シンプルなコピー機としてキャリアをスタートさせました。ところが、アルペル氏はこの数年のどこかの時点で自分の「クリクリ」を無人型に改造し、この国で増大しつつあるUAVのリストに加えました。

 住宅のテラスで組み立てられた世界初のUAVとして「アルプクシュ」は2021年に開催された「テクノフェスト」でデビューしましたが、すでにそれ自体が成果となっていることを疑う余地はありません。[1]

 このUAVは翼の下に爆弾やミサイルを搭載するのではなく、作物の生長のモニタリングといった農作業や山火事への対応などの広範囲に及ぶ民生用途での使用を目的としたものです。

 この機体は近い将来に最初のテスト飛行を実施する予定であり、ついに自家製UAVに改造された飛行機の将来が試されることになります(注:2022年4月14日に初飛行を成功裏に終えました)。[1]

 「アルプクシュ」は軍用ではなく民間市場を対象としていますが、すでにトルコの危機管理部門で使用されているUAVや、同じ目的で大手企業によって開発されているUAVが多数存在しています。したがって、「アルプクシュ」の開発の継続については、サリサン氏のビジョンを分かち合う投資家の存在に左右される可能性が高いと思われます。

 すでに飽和状態のマーケットに新たなコンセプトのドローンが入る余地があるかどうかは定かではないものの、低い導入コストが主要なセールスポイントになるかもしれません。反対に、双発機であることや機体の大きさが、同クラスの単発機よりも運用コストを高いものにする可能性があることは否定できません。


性能諸元
  1. 速度: 150km/h/ 92mph / 80 ノット[2]
  2. 運用高度: 4500m / 15.000 フィート
  3. 滞空時間: 最大11時間(各フライトの概要に左右される)
  4. 全幅: 5 メートル
  5. 全長: 4 メートル
  6. 最大離陸重量t: 160kg
  7. ペイロード: 最大50kg (主に機首下部に搭載されたEO/IRセンサーで占められている)


 アルペル・サリサン氏は、2016年のトルコで発生したクーデター未遂で負った傷を自宅で療養している間に、「コロンバン・クリクリ」のデザインに興味を持ったと伝えられています。[3]

 ほかの人たちは単に夢を見続けるだけで終わりますが、彼の夢は空へ飛び上がりました。というのも、サルサン氏はこの後に自宅のテラスでクリクリのコピーを作り始めたからです。

 彼は全費用を自分で負担したと延べており、UAVに改造されるまでに機体の約70パーセントの組み立てが完了していました。[3]

 自家製飛行機とUAV化という2つのプロジェクトのDIY性は、機体の外装構造を形成するアルミパネル上に残った(工場で施された製造番号などの)印字にはっきりと表れています。

飛行中の「コロンバン・クリクリ」(イメージ画像であり、「アプルクシュ」とは無関係です)

 「アルプクシュ」UAVの起源が「MC-15 "クリクリ" 」の自家製コピー機であることは、2つを並べて比較すると容易にわかります(下の画像)。

 小型双発機をUAVに改修するには、いくつかの設計上の課題があったはずです。 最も注目すべきポイントは、「アルプクシュ」の主な質量がエンジンとEO/IRセンサーが搭載されている機首に集中していることでしょう。このことは、飛行中や離着陸時に安定した飛行特性を維持させるために、その重量を胴体の後部で相殺する必要が生じることを意味しています。

「アルプクシュ」(UAV改造前)

「アルプクシュ」(UAVに改修後)

 「アルプクシュ」が今の形状で実用化される可能性は低いですが、サリサン氏のプロジェクトは個人の創意工夫と夢を実現する可能性を証明しています。

 もちろん、個人的な野心や(特に)資金面ではできることに限界があります。しかし、テクノフェストでの展示は、おそらく「アルプクシュ」の短いキャリアの中で最も重要な晴れ舞台であり、開発を継続するための資金を確保する最も現実的な機会でもあります。

 このUAVはまだ最初のテスト飛行が実施されていないことから、同機に興味を持つ投資家はまずは最初の成功を待つことになるでしょう。

 それでもなお、トルコは近年でこのようなプロジェクトを積極的に支援している世界でも数少ない国の1つであり、それが自国の技術基盤と軍需産業を今日の快進撃が続く巨人に成長させることを可能にしていることを忘れてはなりません。このような投資にはリスクが伴いますが、過去にそれをしっかりと受け入れたことで、この分野でトルコは報われたのです。

追記
 2022年4月14日、この「アルプクシュ」は遂に初飛行に成功しました。これを機会に当記事の編訳者はサリサン氏にコンタクトをとり、当記事をより理解しやすくするための簡単なインタビューを行いました。

 Q:あなたは有人機を作成していたはずですが、途中でUAV化に方向転換しました。その理由は何ですか?
 A:初飛行に伴う事故などでの人命の損失をゼロにしたかったので、変更しました。

 Q:このUAVの操作方法はどのようなものですか、遠隔操作かプログラム飛行ですか?
 A:今回の初飛行ではRCの手動飛行でしたが、プログラム飛行も可能です。

 Q:機首に装備されたEOターレットは実際に動作可能なのでしょうか?
 A:初飛行では実現していませんが、後に使用可能となります。

 Q:初飛行の成果をどう思いますか?また、今後も飛行試験は続けられますか?
 A:強風の中の初飛行にしては大成功だったと思います。神がお許しになれば、今後に再飛行が実施されるでしょう。

 Q:今後のプロジェクトの成功には資金が必要と思われますが、あなたはクラウドファンディングや支援サイトの立ち上げは考えていますか?
 A:現時点では考えていません。



[1] July 15 Veteran exhibits the plane he built on the terrace of his house at TEKNOFEST https://www.sabah.com.tr/yasam/2021/09/25/15-temmuz-gazisi-evinin-terasinda-yaptigi-ucagi-teknofest-te-sergiliyor
[2] https://twitter.com/SavunmaTR/status/1440940749823021064
[3] 15 Temmuz gazisi evinin balkonunda kendi uçağını yapıyor https://www.bursadabugun.com/haber/15-temmuz-gazisi-evinin-balkonunda-kendi-ucagini-yapiyor-1175458.html

 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。



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2022年5月27日金曜日

来たるべきUAVの「スウォーム戦」時代に備えよ :その実現に向けたトルコの取り組み



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 「あなた方がわざわざ不可能な夢の実現に全力を尽くすことはない。私たちと彼ら(欧米の防衛装備製造メーカー)の間の架け橋を築き、私たちの通訳として行動してくれるだけで十分だ。」 (2000年代半ば、トルコ国防産業局の官僚が、現「バイカル・テクノロジー」社の最高技術責任者であるセルチュク・バイラクタル及びCEOであるハルク・バイラクタル兄弟に向けて発した一言)[1] ※「バイカル社」はあの「バイラクタルTB2」のメーカーです

 いわゆる「スウォームUAV」のコンセプトは戦争における戦い方を激変させる可能性があります。なぜならば、機敏なUAVの群れ(スウォーム)が地上と空中の目標を攻撃し、偵察や電子戦の任務を遂行し、互いに密接に交信し合いながら、これまでの戦場では見られなかった独立した戦争の階層をもたらすことになるからです(※スウォームUAV:飛行制御技術等により、鳥や蜂の群れのように、あたかも1個体のごとく密集しながら同時に動いたり、分散・集合することができるUAV。自動プログラミングやAIで制御される場合が多い)。

 その全てが斬新であるため、近年にテストされている大部分の「スウォームUAV」のコンセプトが実践的な運用の域に達するには、まだ何年もかかると思われます。

 とはいえ、「スウォームUAV」が近接状態で連携して相乗効果的に機能できることは、すでに数々の国際的なイベントで知られているドローンで演出された、見応えのある「光のショー」によって証明されています。

 しかしながら、民生用のアプリケーションを敵の電子妨害やなりすまし攻撃に直面しても実戦投入可能な軍事技術に変えることは、依然として大きな課題のままとなっています。
特に、最近の中国で200機のドローンが同時に衝突した事故は、ドローンの運用を一本化した際に何か問題が生じた場合は、全機が一斉に衝突・喪失する可能性を意味することを痛々しく思い出させてくれる事例となるはずです。[2] [3]

 同様に、2018年には個人が市販のドローン・ジャマーを用いて香港のドローンによる光のショーを妨害し、46機ものドローンを地上に落下させるという事件があったことにも注目する必要があることは言うまでもありません。[4]

 近年では、いくつかの国が軍事利用を目的とした「スウォームUAV」関連の技術開発中であり、その国々には中国やロシアといった予想され得る大国だけでなく、スペインや南アフリカも含まれます。[5] [6] [7] [8]

 これらの国々がどこまで多重使用の運用システムを実用化できるのかは未知数であり、現在続行されているプロジェクトの多くが完全に単なる技術実証にとどまる可能性があります。

 一方、アメリカでは、陸・海・空軍、海兵隊、そしてDARPA(国防高等研究計画局)の全てが各自に「スウォームUAV」プロジェクトを推進しており、中には同時に複数のプロジェクトに取り組んでいる軍種もあります。[9]

 「スウォームUAV」に大きな関心を持って注目しているもう1つの国があります...トルコです。現時点でトルコ軍は「STM」社製の回転翼型徘徊兵器「カルグ」を運用していますが、能力向上型である「カルグ-2」が、急速に拡大しつつある無人機戦力の一部として、近いうちに導入される予定となっています。

 技術的には「スウォームUAV」ではないものの、「カルグ」シリーズの大規模な実戦投入で得られた運用経験は、今後の「スウォームUAV」の研究において非常に有益なものとなるでしょう。

 「カルグ」はこれまでに、シリア、リビア、そしてナゴルノ・カラバフでの戦いに投入されています(注:特にリビアにおいては「自立型AI兵器」が初めて実戦投入されたということで、我が国でも悪名高い兵器として広く知られています)。 [10] [11] [12]

「STM」製「カルグ」徘徊兵器は、リビアやシリア、そして2020年のナゴルノ・カラバフに投入されて絶大な効果を発揮しました。

 トルコの防衛産業を管理する機関であるトルコ国防産業局(SSB)は、現在、トルコにおける「スウォームUAV」の技術基盤を徐々に構築することを目的として、数多くのプロジェクトを支援しています。

 SSBのスマイル・デミール局長によると、これらのプロジェクトは、中小企業が「スウォームUAV」の運用で必要とされるソフトウェアやアルゴリズムの開発を手助けすることを目的としたものです。[13]

 これらのプロジェクトにおいて中小企業に焦点を当てることは、小規模な防衛関連企業を開花させるための環境を構築するというトルコ政府による幅広い取り組みに合致しており、これまでのところ、この政策は同国にとてつもない効果をもたらしています。

 2020年9月には、自身でUAV専用の飛行空域を有するアンカラ近郊の「カレジックUAV試験センター」にて、初の「スウォームUAV」競技会が開催されました。[13] [14]

 このコンペは、それぞれ複数のステージから成る全4つのフェーズで構成されています。第1フェーズでは、合計で26社が参加し、固定翼型「スウォームUAV」が屋外環境下における目標の探知と破壊のシミュレーションを実施しました。より多くの企業が参加できるようにするため、このコンペでは競技者が技術開発費に関する補助金を申請することができる仕組みを採用しています。[13]

この「スウォームUAV」競技会の模様はここで視聴することができます



 トルコは、既存の企業に「スウォームUAV」技術に取り組むことへ誘い入れ、それを可能にする財政支援をするだけではなく。世界でも類を見ない規模で、子どもたちや若者の間でテクノロジー分野のあらゆるものに対する関心を高めようと試みています。

 これを成し遂げようとする方法の1つが、毎年開催されるトルコ最大の航空・宇宙技術展覧会「テクノフェスト」というイベントです。

 今の若者は明日の未来であり、彼らはいつか軍用レベルの「スウォームUAV」の設計を担ったり、ほかの分野のハイテク産業で働くかもしれません。

 したがって、「テクノフェスト」では、高校生や大学生を対象とした「スウォームUAV」の競技会も開催されています。このコンペの主要な目的は、与えられた課題を遂行できるUAVのスウォームを組織するために必要なソフトウェアやアルゴリズムを開発し、実際の環境下でその性能を実証することにあります。[15]

 このコンペでは、参加チームがヴァーチャルと現実の両方で「スウォームUAV」を飛行させます。

 コンペで実施されるミッションには、編隊を組んでの離陸、同時操作の実施、スウォームへの機体の追加や離脱、そして各ドローンの一体化的な集結・散開が含まれます。[15]



 (アメリカなどを除くと)トルコはUAVの使用に関してパイオニア的存在であり、かつてはUAVの使用が不可能とされてきた戦闘シナリオにUAVを投入してきました。

 今やほぼ全てのカテゴリーのUAVを開発しているトルコが世界で最初に「スウォームUAV」を実用化し、最終的に使用面での高い信頼性と価格面での手頃なシステムを創出する国の1つとなる可能性については、考えられないことではないように思われます。

 「テクノフェスト」で競い合う学生たちは、明日のパイオニアです。(「バイラクタルTB2」などを生み出した)「バイカル・テクノロジー」社と同様に、彼らも小さいことから始めるでしょう。しかし、彼らの技術基盤の支援を決意していると思われる国家の姿勢と「テクノフェスト」のようなイベントがあれば、技術的なブレークスルーが起こり得ることは間違いなくあるでしょう。

彼らの成功は、いつの日か当記事冒頭の引用文に対する激しい反証を示すことになるに違いありません。

"私たちは状況を見極め、私たち自身で義務を果たしました"(オズデミル・バイラクタル:1949年 - ∞バイカル・テクノロジー」社の創業者

[1] SELÇUK BAYRAKTAR - BAYRAKTAR AKINCI TESLİMAT VE MEZUNİYET TÖRENİ KONUŞMASI https://youtu.be/dGETmeQXemc?t=144
[2] Drone show in China goes horribly wrong: dozens of drones crashed https://dronexl.co/2021/07/07/drone-show-drones-crashed/
[3] Watch Drones Rain Down From the Sky During a Failed Light Show https://interestingengineering.com/drones-rain-down-from-the-sky-during-failed-light-show
[4] HK$1 million in damage caused by GPS jamming that caused 46 drones to plummet during Hong Kong show https://www.scmp.com/news/hong-kong/law-and-crime/article/2170669/hk13-million-damage-caused-gps-jamming-caused-46-drones
[5] China Conducts Test Of Massive Suicide Drone Swarm Launched From A Box On A Truck https://www.thedrive.com/the-war-zone/37062/china-conducts-test-of-massive-suicide-drone-swarm-launched-from-a-box-on-a-truck
[6] Russia’s latest combat drone to control swarm of reconnaissance UAVs https://tass.com/defense/1265961
[7] Escribano designs a swarm system of UAVs for Surveillance and Recognition missions https://www.edrmagazine.eu/escribano-designs-a-swarm-system-of-uavs-for-surveillance-and-recognition-missions[8] Paramount Group pitches new drone swarm amid region’s lack of countermeasures https://www.defensenews.com/digital-show-dailies/idex/2021/02/22/paramount-group-pitches-new-drone-swarm-amid-regions-lack-of-countermeasures/
[9] What Are Drone Swarms And Why Does Every Military Suddenly Want One? https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2021/03/01/what-are-drone-swarms-and-why-does-everyone-suddenly-want-one/?sh=5eca88062f5c
[10] STM’nin yerli kamikaze İHA’sı KARGU PKK/YPG’li teröristleri vurdu https://www.defenceturk.net/stmnin-yerli-kamikaze-ihasi-kargu-pkk-ypgli-teroristleri-vurdu
[11] Indigenous kamikaze drone KARGU by STM appears in Libya https://en.defenceturk.net/indigenous-kamikaze-drone-kargu-by-stm-appears-in-libya/
[12] STM’s KARGU spotted in Azerbaijan https://en.defenceturk.net/stm-kargu-spotted-in-azerbaijan/
[13] First Stage Left Behind in SSB’s Swarm UAV Competition https://www.savunmahaber.com/en/first-stage-left-behind-in-ssbs-swarm-uav-competition/
[14] UAV and Drone Test Center Opens in Ankara https://en.rayhaber.com/2020/07/ankarada-iha-ve-drone-test-merkezi-aciliyor/
[15] Swarm UAV Competition https://teknofest.org/en/yarisma-detaylar-17.html
[16] What Are Drone Swarms And Why Does Every Military Suddenly Want One?https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2021/03/01/what-are-drone-swarms-and-why-does-everyone-suddenly-want-one/?sh=449d08e2f5c6(これ以降の引用記事は日本語へ翻訳した際の参考資料)
[18] 1000機の「群れ」が一斉突撃? 米のマイクロドローン群実験成功で空戦は一変するか https://trafficnews.jp/post/63639
[19] 群制御の手法を応用した 無人機の編隊飛行 - 防衛省 https://www.mod.go.jp/atla/research/dts2011/dts2011.files/low_pdf/P.pdf
[20] 無人機とエア・パワー戦略 - 防衛省 https://www.mod.go.jp/asdf/meguro/center/img/03_mujinki_to_airpwr1.pdf
[21] 米海兵隊、いよいよスウォーム攻撃対応の自爆型UAV調達検討に着手 https://grandfleet.info/us-related/u-s-marine-corps-considers-self-destruct-uav-to-respond-to-swarm-attacks/
[22] 五輪のドローン演出と軍事用ドローン・スウォーム戦術の違い https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20210724-00249601
[23] 誤解:「イージス艦ですらドローン攻撃に対処できない?」と論文の読み方 https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20210805-00251713
[24] 殺人AI兵器、世界初使用か https://nordot.app/779997234987859968