2021年11月2日火曜日

弾道を描け:忘れ去られたティグレの対エチオピア・エリトリア 「ミサイル戦争」


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 ティグレ戦争の序盤である2020年11月、中国製の「M20」短距離弾道ミサイル(SRBM)がエチオピア北西部にあるバハルダール空軍基地のエプロンに着弾した際に、エチオピア国防軍(ENDF)が受けた衝撃は計り知れないものだったに違いありません。

 ティグレ防衛軍(TDF)がいくつかの弾道ミサイルシステムを鹵獲した後にバハルダールを標的にしたことは遅かれ早かれ発生する流れでしたが、ミサイルが着弾した際に示したとてつもない命中精度は基地の人々を驚かせたはずです。

 ほぼ同じ頃に、約450km離れたエリトリアの首都アスマラを何度かの大きな爆音と衝撃が揺り動かしました。この都市もバハルダールと同様にティグレ軍によるミサイル攻撃を受けたのです。

 エチオピアとエリトリアがどのようにして弾道ミサイル攻撃を受けたのかが、この記事のテーマとなります。

 軍事力を大幅に増強して長年の宿敵であるエリトリアに対して決定的な優位性を得ることを目指し、おそらくはスーダンやエジプトに対する抑止力も確立しようと試みていそうなエチオピアは、この地域の軍事バランスを最終的に自国に好都合なものに変えることを追い求めて、2010年代に野心的な軍の再装備プログラムに着手しました。

 その爆買いの中心となったのは、これまでエチオピアではまだ導入されていなかった分野の戦力: 短距離弾道ミサイルと長距離誘導ロケット弾でした。エチオピアと中国の温かい軍事的な関係を考慮すれば、エチオピアがそのような戦力の入手先として中国に目を向けたことは少しも驚くことではありません。

 中国はこのような兵器をエチオピアに提供する意思がある数少ない国の1つであることに加えて、短距離弾道ミサイル(SRBM)と誘導ロケット弾発射システムを1つのモジュールにまとめた2種類のシステムを製造しています。

 それらの1種(SRBMの「BP-12A」と誘導ロケット弾発射システムの「SY-400」を使用したもの)はすでにカタールによって導入されており、同国ではこれまでにこのシステムに関連する「BP-12A」だけが公開されています。

 それに直に競合するシステムは、「M20」SRBMと「A200」誘導ロケット弾発射システムを使用しており、(「ポロネーズ」の名で)ベラルーシとアゼルバイジャンに、そしてエチオピアに採用されています。ベラルーシはロケット弾の生産ラインを設立しており、「A300」の改良型が「ポロネーズM」として公開されています。

 これまでのところ、エチオピアだけが「M20」SRBMの運用者であることが確認されており、アゼルバイジャンは誘導ロケット弾発射システムを入手したのみで、ベラルーシはミサイルを公開したものの、まだ現役として採用されていない点が注目されます(注:「ポロネーズM」は2019年に受領が開始されたと報じられています)。

        

 「M20」SRBMは、現在のアフリカ大陸で運用されている弾道ミサイルの中では最も現代的ものです。このSRBMは400kgのHE弾頭を搭載して少なくとも280km以上の距離まで飛ばすことができるため、敵の基地や兵力の集結地点を狙うのに完璧に適しています。また、慣性誘導だけでなく「北斗」を用いた衛星誘導方式も組み込んでいる「M20」は、約30mの半数必中界(CEP)も誇ります。[1]

 「A200」誘導ロケット弾発射システムも同様にGPS誘導と慣性誘導方式を併用しているため、CEPは約30~50メートルであり、150kgの弾頭を200km先まで飛ばすことが可能です。[2]


 2020年11月にティグレ軍がENDFの北部コマンドへの強襲を開始すると、彼らは即座にエチオピア軍が持つ弾道ミサイル・誘導ロケット砲部隊の全体を掌握しました。その運用要員の多くがティグレ側に離反したようで、それがティグレ軍にこのシステムを元の所有者に対して使用を開始する機会を与えたようです。そして実際、ティグレ軍はそれをすぐに文字通り実施し、エチオピアの2つの空軍基地に弾道ミサイルを発射して、さらに3発をティグレ戦争に介入した報復としてエリトリアの首都に撃ち込みました。[3]

 これらの弾道ミサイル・ロケット弾攻撃のほとんどは発射映像や攻撃を受けた標的の画像が見当たらないために独自に検証することはできませんが、相当にきちんと記録されていた攻撃として2020年11月のバハルダール空軍基地への攻撃があります。[4]

 この攻撃が物的損害をもたらしたのかは不明ですが、エチオピア空軍は弾道ミサイル攻撃を予期して、すでに航空機を近くの対爆シェルター(HAS)に移動させていた可能性があります。確かなことは、「M20」の400kgの弾頭が、通常はエプロンに位置しているMiG-23BN戦闘爆撃機のかなりの部分を破壊した可能性があるということです。

2020年12月2日に撮影された、バハルダール空軍基地で「M20」弾道ミサイルが着弾した状況。

攻撃を受ける数か月前に撮影された、攻撃されたエプロンに展開している8機のMiG-23 (少なくとも別に2機がハンガー内にいます)。

 エチオピアにとって不幸なことに、国軍はティグレ軍によって鹵獲された後の発射機を発見・無力化に使える兵器システムを全く保有していませんでした。

 とはいえ、ティグレに配備された8x8の大型移動式発射機(TEL)と再装填車にとって最大の脅威は、上空で待ち伏せしている飛行機や武装ドローンではなく狭い道路や通路であり、すぐに少なくとも1台のTELを使い物にならなくさせました。

 どうやらティグレ防衛軍は重量級トラックを回収できる資機材を保有していなかったらしく、この車両は8発の「A200」誘導ロケット弾と一緒にその場に放置されてしまいました。



 その少し前の2020年12月には、エチオピア軍がティグレ州にあるミサイル基地の1つを奪回しており、ここではいくつかの「M20」SBRMと、少なくとも4個の空となった「A200」のキャニスターが発見されました。[5]

 持ち出すのに十分な時間や適した装備が無かったため、ティグレ軍がこの地域から追い出された際に置き去りにされたものと思われます。

 基地が奪回された時点までに全弾が発射し尽くされていなかったという事実は、その地域における全てのTELがすでに失われていたという可能性も示しています。



 また、TELと同じ車体をベースにした再装填車も、少なくとも1台が奪還されました。

 「A200」誘導ロケット弾を8発か「M20」弾道ミサイルを2発搭載するこのトラックの後部にはクレーンが備えられているため、発射システムに次の射撃任務を開始することを可能にする迅速な装填能力を有しています。

 この再装填車の存在は、(弾薬を補充するための場所に戻る必要が生じる前の段階における)攻撃準備ができた発射機と合計して、各部隊の火力を「A200」ロケット弾16発か「M20」弾道ミサイル4発と実質的に2倍にさせます。



 2台目の再装填車は、ティグレ軍が慌てて放棄したのとほぼ同時に奪還されました。

 面白いことに、「A200」ロケット弾キャニスターのうち少なくとも3つは空であり、どうやら発射機から撃ち出された後に再装填車に積み戻されたように見えます。これは、決して(キャニスターの投棄による)環境破壊からこの地域を守ろうとしたのではなく、ティグレ軍によってこのシステムが使用された痕跡を隠そうと試みたのかもしれません。

 もちろん、この努力は後に無駄であることがわかりました。ティグレ軍が弾薬と一緒に車両も放棄してしまったからです。

 エチオピアの新たな内戦における過酷な状況下では、高度な装備を維持することが困難なことから、残りの発射機や再装填車も、この時点で同様の運命にさらされた可能性が高いとみられています。

 ティグレ戦争の結果、エチオピアはサハラ以南のアフリカで最強の誘導ロケット弾と弾道ミサイル部隊を持つ国からボロボロで機能しない抑止力の残骸を持つ国となってしまいました。かつてはエチオピア軍の誇りだったこれらのアセットについて、おそらく紛争が猛威を振るっている間か武力衝突が終結した直後に、この国は再導入を追い求める可能性があるでしょう。

 トルコから「バイラクタルTB2」を購入する可能性があるという噂を考慮すると、エチオピアはTB2との相乗効果によって威力が増加する別のトルコ製システムにも目を向けたくなるかもしれません。そのようなシステムには「TRLG-230」「T-300」 MRL、「ボラ」戦術弾道ミサイルが含まれており、特に前者はTB2との協力で得られたメリットが十分に証明されています。

[1] 国产A200远程制导火箭武器射程200公里火力猛 http://mil.news.sina.com.cn/2010-11-19/1424619881.html
[2] Multiple launch rocket systems “Polonez”/missile system “Polonez-M” https://ztem.by/en/catalog/mlrs/
[3] Ethiopia’s Tigray leader confirms firing missiles at Eritrea https://apnews.com/article/international-news-eritrea-ethiopia-asmara-kenya-33b9aea59b4c984562eaa86d8547c6dd
[4] https://twitter.com/wammezz/status/1339370865096572930
[5] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1343979723207049217

※  当記事は、2021年9月15日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。



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2021年11月1日月曜日

イタリアの魅力:トルクメニスタンの「M-346」戦闘攻撃機


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 ソ連崩壊から約30年が経過した今でも、多くの旧ソ連諸国の空軍の保有機は、彼らが引き継いだソ連時代の航空機で構成されていることが大きな特徴となっています。これは特に戦闘機に当てはまることであり、高額であることが、多くの国に現在運用中である旧世代機を代替するための新型戦闘機の導入を躊躇させています。

 その代わり、「MiG-29」や「Su-25」といった実績のある機種は単に飛行能力を維持させるためだけでなく、21世紀の戦争の時代に適切な機体であり続けるために何度もオーバーホールを受けています。ベラルーシやカザフスタンなどの国は、近年に「Yak-130」や「Su-30SM」の導入を通じてこの知見に異議を唱えようとしていますが、中央アジアの大部分ではジェット機の運用が徐々に減少しつつあります。

 トルクメニスタンはこの状況の注目すべき例外であり、新型ジェット機の導入や従来から運用している「MiG-29」や「Su-25」のアップグレードによって空軍を強化しています。その導入した新型機の1つが、これまでに世界中の9つの空軍から発注を受けているイタリアの「M-346」です。2020年5月、イタリア上院は、トルクメニスタンが2019年に4機の「M-346FA(戦闘攻撃機型)」と2機の「M-346FT(訓練機型)」を2億931万ユーロ(約388億円)で発注したことを明らかにしました。[1]

 トルクメニスタン向けの最初の「M-346」は、同国への納入直前の2021年7月にイタリアのレオナルド社の施設で目撃されています。[2]

 この機体は空対空ミサイル(AAM)のイナート弾(または模擬弾)を4発と外部燃料タンク(増槽)を2個搭載しており、トルクメニスタンでのデモフライトでもこの搭載スタイルが維持されていました。


 トルクメニスタンが「M-346」用に購入した実際の兵装は不明のままですが、同国の「A-29B」のために調達されたことが知られている兵装の種類を踏まえると、「M-346」用の精密誘導兵器は(まだ)購入されていない可能性があります。

 その代わり、無誘導爆弾、AAM、そして増槽がトルクメニスタンにおける「M-346」の(初期の)標準装備となるかもしれませんが、彼らの高度な兵装運用能力のために、将来のある時点で誘導式の空対地兵器が導入される見込みがあることはもっともらしいように思われます。その空対地兵器には「マルテ Mk2」対艦ミサイルや、トルコやイスラエルのさまざまな種類の精密誘導爆弾が含まれるかもしれません。
 
 GBU-12「ペイブウェイⅡ」のような西側諸国の兵装の供給を受けることも可能でしょうが、それは供給する国の意向に左右される可能性が高いと考えられます。


 「M-346」がトルクメニスタンに到着して間もなく、グルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領(当時)がその1機に搭乗してカスピ海上空でテスト飛行を実施しました(下の画像)。

 機体の迷彩パターンは洋上での運用を念頭に置いて特別にデザインされたものと思われますが、トルクメニスタン空軍の機体の大半は、その運用地域を少しも考慮していないように思われるカラフルな塗装を施されています。

 もちろん、レーダーが航空機を検知するための主要な手段となった現代では、迷彩パターンが持つ重要性はやや薄れています。



 この国の「M-346」はまだ衛星画像で撮影されていませんが、これらの機体は首都アシガバート直近にあるアク・テペ・ベズメイン基地か、マル市に隣接するマル空軍基地/国際空港またはマル-2空軍基地に駐留するものと予想されています。後者の基地には、すでにトルクメニスタンが最近導入した5機の「A-29B "スーパーツカノ"」が配備されています。

 「C-27J "スパルタンNG" 」は、すでに2機の「An-74TK-200」と1機の「An-26」が拠点にしているアク・テペ・ベズメイン基地に配備されることになりそうです。(トルクメニスタン航空は3機の「IL-76」を運航していますが)これらの機体は空軍で唯一の現役にある輸送機ですが、「C-27J」はターボプロップ輸送機としての役割で「An-26」を完全に置き換えることになるかもしれません。


 ソ連崩壊が今や過去のものとなって新たに必要とされるものが明白な新しい世界で、西側の現代的なテクノロジーが「M-346」、「C-27J」、「A-29B」の導入を通じてようやくトルクメニスタン空軍に届きました。

 トルクメニスタンは老朽化したソ連時代の「Mi-24P」攻撃ヘリコプターを代替するための新型無人戦闘航空機(UCAV)と新型攻撃ヘリコプターの導入に傾いているとみられていることから、さらなる新型機の導入とサプライズが待っていることは間違いないでしょう。

 これらを導入するためにこの国がもう一度西側のサプライヤーに目を向け、トルクメニスタン空軍をこの地域で最も近代的な空軍としての地位を確固たるものにすることを疑う余地はありません。

[1] Turkmenistan's air force operating new M-346FA, C-27J, and A-29 aircraft https://www.janes.com/defence-news/news-detail/turkmenistans-air-force-operating-new-m-346fa-c-27j-and-a-29-aircraft
[2] https://vk.com/milinfolive?w=wall-123538639_1936960

 のです。



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2021年10月29日金曜日

火の洗礼:ウクライナの「バイラクタルTB2」が実戦デビューした



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2021年10月26日にアップロードされた動画は、武力紛争を観察する人々にとっては、あまりにも見慣れた光景:「バイラクタルTB2」が地上の無防備な敵を攻撃している状況を映し出しています。[1]

 TB2によって実施された過去のドローン攻撃との違いは、今回の攻撃がウクライナ東部で行われたことです。2019年にウクライナにTB2が引き渡されてされて以来、東部で最初に実施された攻撃です。

 ドローンの攻撃目標は特に目新しいものではありませんでした:分離主義勢力の部隊によって運用されている1門の「D-30」122mm榴弾砲です。この榴弾砲の破壊に成功したことで、ナゴルノ・カラバフ、シリアに続き、現在のウクライナでTB2によって破壊された「D-30」が56門となったことを記録しました。

 伝えられるところによれば、今回のドローン攻撃はその日の早い時点でドネツク州のHranitne村が「D-30榴弾砲」で砲撃されたことに対応したものでした。

 興味深いことに、TB2は陣地に配置された3門の「D-30」榴弾砲のうち1門しか攻撃していません。この事実ではっきりと判断できることは、ウクライナがこの地域にあるドネツク人民共和国(DNR)の砲兵部隊のストックを破壊・減少させるための本格的な試みを講じたというよりも、分離主義勢力の軍隊へミンスク合意に違反しないようになされた均衡を保った警告であるということです。

 同様に興味深いのはこの攻撃に使用された爆弾の種類であり、より一般的に使用されている「MAM-L」ではなく「MAM-C」だったたようです。「バイラクタルTB2」は最大で4発の「MAM-L」または「MAM-C」で武装可能です。

 これらの非常に機動性が高いスマート爆弾は、この地域の分離主義勢力が運用する防空システムの射程距離のはるか外側である15km以上離れた位置からピンポイントで目標に命中させることができます。

 「MAM」シリーズ誘導爆弾が誇る15km以上の射程距離は破壊した「D-30」榴弾砲のウクライナの最前線からの距離(13km)よりも上回っていたこともあり、この榴弾砲を攻撃するためにTB2は分離主義勢力が支配する空域に入ることを必要としませんでした。

「MAM-C」誘導爆弾が命中した直後の哀れな運命に遭った「D-30」榴弾砲

 ドローン攻撃は、DNRが現時点で支配している地域にある(ドイツの共産主義者エルンスト・テールマンにちなんでテルマノボと呼ばれていた) Boykivskeの集落付近で行われました。

 今回の空爆では、DNR側からTB2を撃墜しようとする試みは一切なかったようです。

 ウクライナ東部の分離主義勢力の軍隊はかなりの数の対空砲や地対空ミサイル(SAM)システム:特筆すべきものとしては9K35「ストレラ-10(NATOコード:SA-13)」を運用していますが、これらのほとんどは、高度約5kmの頭上を飛行する「バイラクタルTB2」のようなUCAVを標的とするための交戦能力が欠けてます。

 しかし、分離主義勢力の軍隊の防空戦力は短距離SAMシステムだけで構成されていると考えるのは誤りであり、現在、分離独立派が支配するウクライナ東部にはロシアの電子戦(EW)システムが多数配備されています。

 ただし、アルメニア軍で運用されていたロシアの最新鋭のEWシステムでさえ、ナゴルノ・カラバフ上空の「バイラクタルTB2」との戦闘で成功を収めなかったことを考えると、これらがTB2の運用に深刻な危険をもたらすことを示唆する理由はほとんどありません。

 将来的に状況がエスカレートした場合や、ウクライナが分離独立勢力の標的を攻撃するためにTB2を使い続けた場合、ロシア軍は独自のSAMシステムをこの地域に配備する可能性があります。実際、2014年の時点でロシアはすでに「パーンツィリ-S1」「トール-M1」と「ブーク-M1」をウクライナ東部に配備したことがあり、後者はSu-25攻撃機を含む数機のウクライナ空軍機を撃墜しました。

 ロシアの防空システムが東ウクライナに配備されたことについては、ロシアの「ブーク-M1」がマレーシア航空17便を撃墜し、乗客・乗員298名が死亡した結果をもたらした後で国際的な悪評を得ました。

今回のドローン攻撃はDNR支配領域の13km内側の地点で行われました [3]

 現在、ウクライナは空軍と海軍に均等に分けられた12機から構成される「バイラクタルTB2」飛行隊を運用しています。[4]

 2021年9月には、同国が今後の数年間でさらに24機のTB2を入手し、最終的には合計で54機を導入する予定であることが明らかになりました。[5]

 また、ウクライナは無人機自体を調達するだけでなく、国内に訓練・メンテナンスセンターを設立するための契約もバイカル・ディフェンス社と結びました。[6]

 TB2の導入は、1991年の創設以来でウクライナ軍にとって最も重要な新装備の追加であり、経済的かつ現実的な実戦能力をこの国にもたらすことは間違いありません。



 今回の空爆は、ウクライナが示す新たな規範の最初の兆候となる可能性があります。これは、将来的にDNRとルガンスク人民共和国(LPR)の目標への(報復的な)ドローン攻撃への下地作りをし、必要に応じてミンスク合意を「バイラクタルTB2」で遵守させるというものです。

 「バイラクタルTB2」が未だに真の脅威に満ちた環境に直面していないという主張もありますが、TB2のようなUCAVに対抗するために特別に設計された多数のSAMや電子戦システムの中で「トール-M2」「ブーク-M2」や「パーンツィリ-S1」を無力化した今までの経験は、リビアやナゴルノ・カラバフで記録された成功がいつの日かウクライナ東部でも繰り返される可能性があることを暗示しています。

 ウクライナの東部でほとんど休止状態にある紛争がエスカレートすることはその可能性からもかけ離れていますが、この国でのTB2の活躍はきっと並外れたものになるでしょう。

 将来的な武力侵攻の有無に関係なく、TB2はキル・リストに新たな刻みを加えることができるのです。



[1] Перше застосування "Bayraktar" на Донбасі проти артилерії найманців https://youtu.be/XEY4qPO1ffU
[2] https://twitter.com/oryxspioenkop/status/1453043861115256839
[3] https://twitter.com/rexiro3/status/1453042688140394507
[4] Black Sea Hunters: Bayraktar TB2s Join The Ukrainian Navy https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/black-sea-hunters-bayraktar-tb2s-in.html
[5] Ukraine to buy 24 more Turkish Bayraktar TB2 UCAVs https://www.dailysabah.com/business/defense/ukraine-to-buy-24-more-turkish-bayraktar-tb2-ucavs
[6] UAV magnate Baykar to build centers for Turkish drones in Ukraine https://www.dailysabah.com/business/defense/uav-magnate-baykar-to-build-centers-for-turkish-drones-in-ukraine

※  当記事は、2021年10月28日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿されたものを翻訳した
 記事です。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている 
 箇所が存在する可能性があります。




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翼を付けたオリックス:カタールを飛ぶ「バイラクタルTB2」

2021年10月26日火曜日

人命の犠牲と引き換えに:イエメン内戦で喪失した有志連合軍のUAV一覧



著:ステイン・ミッッアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)
  1. この一覧は、2015年3月に開始されたサウジアラビア主導のイエメン介入において、視覚的に確認された有志連合軍が運用する無人航空機(UAV)の損失を記録することを目的としています。
  2.  この一覧には実際に視覚的に確認されたものだけを掲載しています。したがって、実際に戦場で失われたUAVの数はここに記録されたものよりも著しく多い可能性があります(例:サウジアラビア領内で墜落したが残骸が撮影されなかったもの)。
  3.  この紛争は現在も継続中であるため、新たな喪失が発生するたびに一覧は更新されます。(日本語版の最終更新日:2022年10月5日、本国版の最終更新日:10月5日


喪失年と機数
  • 2015: 4
  • 2016: 5
  • 2017: 4
  • 2018: 5
  • 2019: 10
  • 2020: 3
  • 2021: 19
  • 2022:11


喪失機の運用国と機体数
  • サウジアラビア: 42
  • アラブ首長国連邦: 15
  • アメリカ合衆国: 7


喪失したU(C)AVの製造国 
  •  アメリカ合衆国: 22
  • 中国: 20
  • オーストリア: 10
  • 南アフリカ: 4
  • トルコ: 4
  • ドイツ: 2
  • イタリア: 1


  • 各機体名に続くリンクをクリックすると、失われた当該U(C)AVと撃墜・墜落した日付が表示された画像を見ることができます。


無人偵察機 (32機)

無人戦闘航空機 (31機)


このリストの作成にあたり、Lost Armour氏とYuri Lyamin氏に感謝を申し上げます。