2022年1月1日土曜日

【独占・長編記事】リビア国民軍への違法な武器移転に関する追跡調査(2014~)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

※LNA(リビア国民軍)に供与された武器や装備類を包括的にまとめた一覧は、この記事の下の方にあります

 2014年にリビアで内戦が再開されて以来、ゆっくりと燃え上がる中で時には驚くほど激しい展開を見せる紛争は、この国の将来を不確かなものにしています。なぜならば、この内戦では複数の陣営が主導権を争い、国際的な支援者は好ましい結果を得るために多額の資金を投じることを躊躇していないからです。

(2011年2月から課している)国連による武器禁輸措置は双方が武器や装備の入手を阻止することを目的としていますが、外国の支援者によって露骨かつ一貫して無視されてきました。

 最近(注:2020年3月)公表された国連安全保障理事会の専門家パネルによる報告書は、禁輸措置が発動されてからの違反行為を記録化することを目的としており、主に航空機による武器・装備の国際的な輸送の分析に焦点を当てています。[1]

 結果として得られた資料は入念かつ詳細に記されていますが、この調査手法の欠点の証しにもなっています。全体的に十分な画像分析がなされていないため、無数の兵器システムや弾薬の引き渡しを記録できず、ほかのものを誤認しているなどのミスが散見されるものとなってしまいました。したがって、その結論はUAE、ロシア、ヨルダン、そしてエジプトなどの常習犯を完全に無視して、地域の外国勢力としてトルコを犠牲にするという、ひどく的外れなものでした。

 当記事は、その内容に反論することではなく(ただし、簡潔な反論はこちらにあります)、前述の当事者による2014年以降のLNA(リビア国民軍)への武器移転の実際の包括的な概要を提示することによって、国連安保理の報告書の対比資料として機能することを目的としています。

 この紛争の背景を考えてみることは読者に当記事を読み進めるうえでの見識をもたらすでしょうから、最近の展開を取り上げる前にこの内戦の経緯から説明していきます。

 (投票率が僅か18%だった)2014年のリビア議会選挙の結果に続いた政治的な内紛の後、リビアは事実上、2つの陣営に分断されてしまいました。[2]

 リビア東部では、トブルクに代議院(HoR)が設置され、HoRに忠実であるリビア国民軍(LNA)の司令官としてハリーファ・ハフタル将軍が任命されました。後にLNAは、UAE、ロシア、ヨルダン、エジプト(そして度合いは低いがフランス)から大幅な軍事的支援を受けることになりました。

 一方のリビア西部では、国民議会のメンバーが首都トリポリで独自の政府を樹立し、後に「国民救済政府」と知られるようになりました。一般的に「リビアの夜明け」と呼ばれる国民救済政府は、最終的に2016年1月に設立された国民統一政府(GNA)に政権を譲渡し、2016年3月にトリポリで正式に発足しました。

 国連が承認したファイズ・アル・シラージュ首相率いるGNAがリビアの新たな統治機関として機能することになっていましたが、HoRは2017年3月にGNAの承認を撤回し、GNAを打倒して自らがリビア唯一の合法的な政府を樹立することを宣言しました。[3]

 LNAとは異なり、「リビアの夜明け」と後のGNAは2019年の夏にGNAのためにトルコが軍事介入するまで、世界中からの政治的な支援だけでやりくりしなければなりませんでした。

 リビアが2つの敵対する陣営に別れた直後から、UAEとエジプト、そしてヨルダンは、LNAに大量の兵器類、車両、さらにはいくらかの航空機の供給さえも密かに開始しました。また、LNAのためにUAEが運用する中国製「翼竜」無人戦闘航空機(UCAV)を含む、より高度な装備も秘密裏にリビア国内に運び込まれ始めました。

 この目的のために、リビア東部のアル・カディム空軍基地は大規模な整備と改装が行われ、新しい航空機用シェルターと駐機場、弾薬庫、兵舎を得るだけでなく、MIM-23「ホーク」地対空ミサイル(SAM)の配備による「防空の傘」の恩恵を受けました。

 それにもかかわらず、有能な地上部隊を実際に訓練すのではなくLNAに大量の装備を与えるというこの戦略は、現場ではほとんど成果を上げていません。

 2019年までどこの国からもいかなる本格的な軍事支援を受けていなかったGNAに圧力を強める機会は有り余るほどあったものの、結果としてこの機会は実質的に無駄に終わり、両陣営が(イスラム国などの)過激派組織との戦いに重点を置いていた間、双方のパワーバランスはほとんど変化なく維持されました。

 LNA側に突破口を切り開こうとする努力がなかったわけではありませんが、紛争の進展に伴い悪名高いロシアのPMC「ワグナー」を展開させることを含め、外からの関与がエスカレートしていったにもかかわらず、結局は突破口にたどり着きませんでした。

 それどころか、UAEは投資をしたおかげで、移民収容センターに対する悲惨な攻撃のみならず26人の非武装の士官候補生を殺害したドローン攻撃への関与を含む、紛争当事者を取り巻くよくある議論の罠に引っかかってしまいました。[4] [5]

 結果的にUAEとロシアによる共同の取り組みは、LNAの旗の下に集まった寄せ集めの民兵たちがトリポリで勝利を収めるために必要となる適切な量と種類の支援を提供することに失敗しました。

 高度なロシアの防空システムでカバーされた下でロシアの砲撃支援を受け、UAEが運用するドローンが支援するロシアから供与された戦車などで構成される部隊は全てがUAEとロシアによって運用されています。理論上は見応えのある素晴らしい部隊ですが、実際には彼らが支援するLNAの兵士たちと同じくらいしか効果を発揮することができませんでした。

 非常に不規則で訓練を受けていないLNA兵士の根本的な欠点に対処しなかったことで、これらの乗数的戦力増強効果(フォースマルチプライヤー)の作用は大して影響を与えずに平凡に終わった結果は、イエメンにおけるUAEの一貫した戦略の欠如を反映したものと言えるでしょう(注:イエメンでの失敗を繰り返しているということ)。

 2019年夏に突如としてトルコがGNAのために介入した際には「バイラクタル外交」の効果でトリポリと西リビアの情勢はすぐに好転し、LNAはリビア西部における2大拠点であるアル・ワティーヤタルフーナを喪失しました。

 この新たな現実に直面したLNAの外国の支援者は、リビアの権力の座の確保が目の前にあったところから、突如としてLNAの支配地域に対するGNAの進撃を阻止するために奮闘しなければならなくなったのです(注:実際にタルフーナからトリポリまでは僅か60キロメートル程度しか離れていません)。

 UAEの次の行動方針が一体どのようなものになるのかは、すでにLNAがリビア西部から撤退した直後に明らかとなっていました。

左から:ハフタル将軍(LNA)、ムハンマド皇太子(UAE)、シシ大統領(エジプト)

 自分が知る最もベストな手法に固執するアブダビは、戦闘におけるLNAの無能さを補うために、PMCに紛争をさらにアウトソーシングする方法を模索し始めました。

 紛争における傭兵の度合いを増やすための土台は、2019年にLNAがトリポリ進軍に失敗した時点ですでに構築されていました。当時はロシアのワグネルの関与が著しく増加していたため、UAEは別の勢力に突破口を求め始めました。

 UAEの求めはエリック・プリンスに頼ることに至り、彼はクリスティアン・デュラントを介して2つの作戦を提案しましたが、いずれも最終的には実現しませんでした。 [6]

 ほかの傭兵にはチャド人、シリア人、スーダン人などの戦闘員が含まれていましたが、彼らの一部は「UAEで警備員として働かないか」という嘘の勧誘に引っかかり、結局その意に反してリビアに送り込まれてしまった人たちです。[7]

 こうして集められた傭兵たちは当然のことながら烏合の衆であり、UAEが求めていた攻勢の突破口を開くことができるどころか、単に防御陣地を維持するのに使えるだけという有様になるのは一目瞭然でした。

 リビアでの戦争をアウトソーシングできる勢力がほとんど存在しないことから、UAEは選択を迫られました。ワグネルへの支援を大幅に増やすことができますが、そうすることによってアメリカの最も信頼できる同盟国の1つとしての特恵的な立場を危険にさらされたり、場合によっては制裁を課されるという脅威に直面する可能性すらありました。あるいは、トリポリ攻勢の失敗を口実にしてリビアへの関与を徐々に縮小し、戦場ではなく交渉の席で打開策を実らせることができたかもしれません。

 アブダビは「行動する意思がないか、あるいは行動できない」アメリカ政府の態度に対する自信からか、大胆にも第1の選択に進んでワグネルへの支援を倍増させました。つまり、アメリカやNATOとの協調に専念してきたUAEの外交政策を大きく転換した動きの1つとして、アブダビは静かにロシアと提携を結んだということです。そうすることで、この動きは本質的にロシアに対してNATO諸国の南側に軍事拠点を築く自由を与えることを意味しました。

 その最初の影響については、UAEは残存していた自身の「パーンツィリ-S1」防空システムをLNAに(その後にワグネルにも)引き渡し、リビア東部のアル・カディム空軍基地をロシアのSu-24戦闘攻撃機に開放したことで、ほぼすぐに目立つものとなりました (ロシアは2019年11月に自軍の「パーンツィリ-S1」を使用してトリポリ付近を飛行する2機のMQ-9「リーパー」UAVを撃墜したことがあります。このうちの1機はイタリア軍機で、もう1機はアメリカ軍機でした)。[8]

 UAEがワグネルのリビア展開に直接的に資金を提供しているかどうかという質問が頻繁にありますが、そもそもUAEがリビアへ介入したことが彼らの展開をもたらしたので、全く関係ありません。

 もちろん、ワグネルへの高度なSAMシステムの引き渡しとリビアにおけるUAEの空軍基地へのSu-24の配備は、広大な地政学的ゲームにおけるいくつかの新たな動きがあることを完全に暗示しています。リビアは北アフリカにおけるUAEの野心のターニングポイントとなっているのです。

 興味深いことに、この一連の出来事は西欧やアメリカではほとんど無視されてきたようです。実際、トルコがロシアの「S-400」SAMシステムの導入を決定して厳しく罰せられた一方で、UAEがNATO諸国南側の玄関先である場所へ事実上のロシア軍を配備させ、装備を与え、資金を提供したことについては、今のところ何の結果も発生していません。それどころか、最近の事例ではUAEは2020年11月にF-35ステルス戦闘機を50機購入することにゴーサインが与えられたのです。

 それでも、この出来事はアメリカが同盟国への対応に一貫性があるかどうかについて深刻な疑問を投げかけています。

        

 UAEは「行動する意思がないか、あるいは行動できない」アメリカ政府の態度に自信を抱いていましたが、2020年12月にユセフ・アル・オタイバ駐米大使によってなされた数々のコメントによって、その自信がさらに強調されました。[9]

 UAEによるリビアの関与についてアメリカ上院議員から批判を受けて、同大使は明らかに虚偽の発言をしましたのです。以下の発言には、(客観的に見ても)信じられないほど利口としか言いようのない風評を否定することも含まれていました。
 
 2021年の時点で、UAEは米露双方の作戦機を同時に自国の空軍基地に配備させている世界で唯一の国です。Su-24とMiG-29は公式にはワグネルが運用していることになっていますが、彼らがロシア軍の非公式な部隊として機能していることは今や公然の秘密です。

 これは装備だけを見ても明らかなことです。なぜならば、(ロシアが引き渡した)MiG-29、Su-24、「パーンツィリ-S1」などの高度な装備をリビア国内で現実的に運用できる陣営がほかに存在しないからです。もちろん、ロシア空軍の「IL-76」や「Tu-154」がLNAの空軍基地にほぼ定期的に離発着している事実だけでも、事実上ロシア政府の関与があることを強く示唆しているはずです。



 引き渡された武器や装備の大部分は最終的にLNAの手に渡ったものが目撃されたり、GNAに鹵獲された後に撮影されることになるのが常です。ただし、UAEは幅広い国々から武器を調達する傾向があるため、結果としてLNAやイエメンの傀儡部隊に使用させるための武器の入手に関する情報が長い間にわたって安定的に流れています。

 著者が入手した情報のいくつかには秘匿すべき情報源から得たものがありますが、空港のグランドスタッフが武器や弾薬を満載してUAEに向かう輸送機や内部を撮影したというようなシンプルなものもあります。

 これらの航空機の貨物の大多数にはUAE軍では使用されていない兵器類の弾薬が含まれているため、最終的にはほとんど全ての弾薬がリビアやイエメンで使用されていると考えても差し支えないでしょう(注:下の画像の貨物にはUAE行きのT-55用戦車砲弾と記載されていますが、当然ながらUAEはT-55を運用していません)。

 この慣行は、その過程においていくつかの西欧諸国も関与させています。なぜならば、制裁措置が課されているリビアやイエメンに行き着くことが明らかな兵器類が自国の港や空港を経由して運ばれていくにもかかわらず、その行き先を調査することには驚くほど全く関心を示していないようだからです。

行き先:アブダビ、積載物:T-55用100mm榴弾、数:20発

 別の事例では、リビアに供給された弾薬の木箱に記載された文字を消す消すことについて、UAEが無能すぎたか、あるいは単に無頓着だったことを示しました。[10]

 UAEが関与した痕跡が(一見して)絵筆で容易に塗り隠すことができたという事実は、同国のリビアにおける冒険的行為に対する考えの甘さを物語っています。

 ペイントで隠された貨物の詳細項目ほど自身が「違法な武器取引き」であることを認めるものはありませんが、少なくともUAEに僅かな程度の「もっともらしい否認」をもたらしてくれることは間違いないでしょう。



 同様に無能だったのは、リビア内戦の成り行きを激変させるためにエリック・プリンスによって考え出された数々の企てでした。

 2007年に17人の民間人を殺害した「ニソール広場の虐殺」を含むイラクで深刻な人権侵害を犯したことでその悪名を世に知らしめたPMC「ブラックウォーター(現在はアカデミに改称)」社の創設者であるエリック・プリンスの取り組みには、UAEのビン・ザイード・ムハンマド皇太子の支援によって支援された、構想が不十分に練られていない民間軍事事業を立ちあげることが含まれていました。[11]

 このような事業プロジェクトの1つから「オーパス」が誕生し、プリンスの同僚であるデュラントと彼が経営する「ランカスター6」社によって担当されました。

 プロジェクト「オーパス」はUAEが探し求めていたリビアで突破口を開くためのものでしたが、その中身は非現実的で壮大なものでした。これは空中機動作戦を中心とした小規模な傭兵部隊を要するものであったため、結果としてデュラントは南アフリカからAS332L「シュペルピューマ」輸送ヘリを3機、ヨルダンからMD530FFを6機、AH-1F「コブラ」攻撃ヘリを3機購入することに行き着きました。[11]

 しかし、AH-1とMD530の取引については国連の制裁(そして米国の法律)を履行するつもりの厄介なヨルダンによって最終的に失敗に終わり、GNAの支援者による武器輸送を追跡する任務を負った海上部隊など、ありとあらゆる支援作戦を含んだワイルドな計画は阻止されてしまいました。[11]

 当時、こうした貨物(や積載した船)は一般的にトルコ海軍のフリゲートに守られており、彼らは軽機関銃程度の武装しかないRHIB(複合艇)で対決するつもりでしたが、この計画の段階ではその事実はごまかされました(注:デュラントが当初からこの不都合な事実を知っていていたのか、単に無知だったのかは不明です)。

 おそらくさらに衝撃的だったのは、デュラントがハフタル将軍に彼らのチームが殺害を申し出た10人のリビア人のリストを提示したことでしょう。リストにはヨーロッパの市民やリビアに住んでいない人々が含まれていました。しかも親ハフタル派である数人の人物さえもリストに載っていたという事実は、デュラントの取り組みがいかに情報不足で見当違いであったのかを示しています。[12]

 しかし、適切な装備が欠けていることが「オーパス」を中止させるには至りませんでした。2019年半ばに傭兵部隊がベンガジに到着した後、デュラントらはヨルダンのAH-1やMD530の代替機として南アフリカから調達した3機のヘリコプターを加えることに成功しました。そのヘリコプターは非武装のSA341「ガゼル」であり、ガンシップとして使用するためにはリビアで改造する必要がありましたが、仮にそうしても攻撃能力はAH-1やMD530が持つごく僅かな程度しかありませんでした(注:実際に改造されたかは不明)。

 傭兵たちが持ってきたのが、ハフタル将軍が8000万ドル(約91億円)を支払って調達を約束された9機の攻撃ヘリではなく3機の非武装ヘリであることを知った将軍は激怒して彼らを脅しました。[11]

 結局、傭兵たちはリビアに到着後から僅か数日で2隻の複合艇に乗ってマルタに逃亡してしまいました。皮肉にも、彼らが使用した複合艇はGNA支配下のリビアに海上封鎖を課すために活用を想定していたはずのものでした。

 このようにして、その厚かましさと潜在的意義において、計画案の傲慢さと愚かさだけが超越した事件は終わりを告げたのです。

 クリスティアン・デュラントはその後、「私たちは制裁に違反していません:私たちは軍事的なサービスを提供していません。私たちは銃も扱っておらず、傭兵でもないのです」と主張する声明を発表しましたが、私たち著者はデュラントが2019年3月にジョージアの「トビリシ航空機製造(TAM)」からSu-25攻撃機を獲得するための入札を含む、軍用機の調達をさらに数回試みたことを示す情報や写真を入手しています。[13]

 もちろん、国際的に承認されているリビア政府を転覆させようとした彼の役割を立証するには、すでにいくつかの調査報告書で提示されている証拠で十分ですが、行った先々で証拠を残していく彼の傾向は国連の調査官が彼の不法行為の全貌を明らかにするのに必ず役立つに違いありません。

 有罪となった場合、デュラントは祖国のオーストラリアで海外への渡航禁止令、全資産の凍結、そして最大で10年の懲役刑を受ける可能性があります。

 最終的にSu-25の調達は実現しませんでしたが、これらの全機が紛争地帯に行き着くことに疑いの余地がないことを考慮すると、仮に実現して持ち込まれた場合は複数の制裁措置に違反することになったでしょう。

2019年3月、ジョージアのトビリシにあるTAM社の工場ホールの一角で同社のCEOヴァジャ・トルディア氏(左)と握手を交わすクリスティアン・デュラント氏(右)。

 エリック・プリンスとクリスティアン・デュラントがリビア内戦の推移に与えた影響はハリーファ・ハフタル将軍の血圧を一時的に急上昇させた程度に過ぎなかったようですが、ほかの国々はLNAの軍事組織としての無能さを補うために、(増え続けていく)装備類の供与を始めました。

これらの供与品は、陸(エジプト経由)・海・空を通ってリビアに届きました。空輸では、UAEとロシアの両国が主にチャーターしたIL-76とロシア空軍のIL-76、UAE空軍のC-17A「グローブマスターIII」輸送機を用いて航空輸送を維持しました。多くの便は、リビアとの国境近くにあるエジプト西部のシディ・バラニ空軍基地やリビアのアル・カディム空軍基地に着陸しました。
  1. 供給された武器、車両、弾薬、装備品に関する包括的なリストは以下のとおりです。
  2. このリストには、LNAに大量に供給された「(装甲強化型)トヨタ・ピックアップ」トラックや、リビアに装備類を引き渡すために用いられても通常はリビアで使用されていない輸送機は含まれていません。
  3. 供与されたAFVは追跡調査が容易ですが、弾薬のような物品の場合はそれを突き止めることが困難であるため、このリストには少数しか掲載されていません。
  4. 各装備類の名称の後に記された年号はそれらが最初にリビアで視認された年です。しかし、多くの場合はそれが実際に実際に供与された年を意味しません。
  5. 装備類がLNA以外の勢力で運用されている場合は、実際の運用者を太字で追記しています。
  6. 各装備類のサプライヤーについては、各項目の左端にある小さな旗で示しています(右の凡例を参照)。ただし、プロジェクト「オーパス」の過程で得た(または失敗した)ものについては、担当した「ランカスター6」社の所在地であるUAEの旗を使用しています。
  7. 出所が不明な装備類については、サプライヤーを示す旗はクエスチョンマークのもので表示されています。
  8. 各装備名をクリックすると、リビアで使用されている当該装備の画像が表示されます。


戦車


装甲戦闘車両
  • BRDM-2 [2017] [UAEがウクライナから調達]


装甲兵員輸送車


耐地雷・伏撃防護車両(MRAP)


歩兵機動車


迫撃砲(自走式を含む)


牽引砲


多連装ロケット砲


対戦車ミサイル


対空砲


地対空ミサイルシステム
  • S-125(SA-3) [2020] (UAEがベラルーシから調達)
  • 「パーンツィリ-S1」 [2019] (当初はUAEがLNAのために運用していたが、現在はLNAとワグネルが運用)
  • MIM-23「ホーク」 [2019] (リビア東部のアル・カディム空軍基地の防空用としてUAEが2019年後半に配備 )
  • MIM-104「パトリオット」 [2020] (リビア東部のアル・カディム空軍基地の防空用としてUAEが2020年1月に配備したが、アメリカの圧力を受けて撤収)
  • 「パーンツィリ-S1M」 [2019] (ワグネルが運用しており、2019年11月にアメリカ軍とイタリア軍のMQ-9「リ-パー」UAV2機を撃墜 )


レーダー・電子妨害装置


無人航空機


ヘリコプター


戦闘機・攻撃機


ISR(情報収集・警戒監視・偵察)機
  • PC-6 ISR [2019] (偵察・情報収集用としてランカスター6が運用 )


輸送機・VIP専用機


艦艇


トラック・ジープ、各種車両


小火器


弾薬類


その他の装備品など


入手過程にある装備類


入手に失敗した装備類

 これらは確かに理論上では見応えのあるリストですが、掲載されているどの兵器もLNAとその支援国が切実に探し求めていた突破口を切り開くことには成功しませんでした。

 GNAがシルトの手前で進撃を止めた後に戦線のバランスは急速に膠着状態に逆戻りしましたが、リビアの内戦をおそらくもっとも特徴づけているこの状態が紛争の政治的解決を実現するための新たな呼びかけに至らせることになったのです。

 双方による協調した取り組みは、2021年3月16日にGNAが暫定国民統一政府(GNU)に正式に政権を譲渡したことで結実しました。そして、長年の内戦を終結させ、2021年12月に予定されている選挙を実施するための複雑なプロセスが開始されました。

 しかし、国内に多く存在する勢力は過去数年間に築き上げた権力や影響力の放棄を嫌っていると思われます。それに加えて、依然として外国がこの根付いた紛争に深く関与していることから、GNUがリビアに安定を回復する上でどれほどの成功を収めることになるのかは現時点では不明です。また、リビアの紛争当事者に対する国際的な支援の意味合いは、すでにリビア内戦の範囲をはるかに超越したものと化しています。

 トランプ政権時代の政策を急速に覆そうとするバイデン政権が誕生したことで、この紛争における外国の当事者は、過去の自身の行動による結果のために、新たな政治的エスカレーションのリスクを冒すことになるでしょう(注:バイデン政権がリビア介入でUAEに制裁を課す可能性すらあるということ)。

 UAEにとって、これまでに何度もアメリカ軍と衝突したことのあるワグネルを公然と支援していることが今や明るみとなったという事実は、自身がアメリカに対して強く出過ぎてしまったことを意味しているかもしれません(注:ワグネルとアメリカ軍の戦闘については、特に2018年のシリアにおける「カシャムの戦い」が有名)。

 伝統的な同盟国にして現在も地域で最も影響力のある国家からの恩恵を失うことは、劇的な結果をもたらす可能性があります。少なくとも、それにはバイデン大統領が就任する数時間前に確保した50機のF-35の調達への悪影響が含まれることは誰でも容易に想像できるはずです。

 今のところ、UAEはリビアでの冒険的行動に費やすコストを価値あるものと見なしている可能性があります。しかし、現在の地政学的情勢は予測不可能で不安定なものであることから、単なる金銭的コスト以上のものが危機に瀕するという現実にUAEはすぐに直面することになるかもしれません。

[1] Letter dated 8 March 2021 from the Panel of Experts on Libya established pursuant to resolution 1973 (2011) addressed to the President of the Security Council https://undocs.org/Home/Mobile?FinalSymbol=S%2F2021%2F229&Language=E&DeviceType=Mobile
[2] Libyans mourn rights activist amid turmoil https://www.aljazeera.com/news/2014/6/26/libyans-mourn-rights-activist-amid-turmoil
[3] Libya’s eastern parliament quits UN peace deal with Tripoli https://english.alarabiya.net/News/north-africa/2017/03/08/Libya-s-eastern-parliament-quits-UN-peace-deal-with-Tripoli
[4] Libya migrant attack: UN investigators suspect foreign jet bombed centre https://www.bbc.com/news/world-africa-50302602
[5] UAE implicated in lethal drone strike in Libya https://www.bbc.com/news/world-africa-53917791
[6] The fighter pilot, the mercenary boss, and the warlord: a modern Libyan war story | Four Corners https://youtu.be/yVc7cHG0ATs
[7] Recruited as Security Guards in the UAE, Deceived into Working in Conflict-Ridden Libya Instead https://www.hrw.org/news/2020/11/01/recruited-security-guards-uae-deceived-working-conflict-ridden-libya-instead
[8] Lead Inspector General for East Africa And North And West Africa Counterterrorism Operations I Quarterly Report to the United States Congress | July 1, 2020 - September 30, 2020 https://www.dodig.mil/Reports/Lead-Inspector-General-Reports/Article/2427451/lead-inspector-general-for-east-africa-and-north-and-west-africa-counterterrori/ (page 40)
[9] https://twitter.com/UAEEmbassyUS/status/1334547777293078528
[10] Chinese GP6 guided artillery projectiles in Libya https://armamentresearch.com/chinese-gp6-guided-artillery-projectiles-in-libya/
[11] Erik Prince and the Failed Plot to Arm a Warlord in Libya https://theintercept.com/2021/02/26/erik-prince-jordan-libya-weapons-opus/
[12] Mission Implausible: The Harebrained (Alleged) Erik Prince-linked Operation in Libya https://libyamatters.substack.com/p/mission-implausible-the-harebrained?r=e0mx3
[13] The fighter pilot, the mercenary boss, and the warlord: a modern Libyan war story | Four Corners https://youtu.be/yVc7cHG0ATs?t=2446
[14] 緊張高まるリビア紛争Ⅰ-トルコ、ロシアの軍事介入(翻訳における参考資料)

特別協力: Calibre Obscura(敬称略)

※  当記事は、2021年3月23日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳したも
 のです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所が
 あります。

2021年12月28日火曜日

ウクライナ版ターミネーター:「ストラーシュ」BMPT



著:ステイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo)

 21世紀の変わり目はウクライナ軍の衰退期の始まりを際立たせました。大量の装備が早期退役に直面し、生き残った旧式装備の後継を導入する見通しが立たなかったのです。

 2014年のロシアによるクリミア併合とドンバスでの戦争はこの流れを劇的に逆転させ、それ以前に余剰の戦車で埋め尽くされていた工場のヤードは、疲弊したウクライナ軍を強化するために空になり始めました。その結果として、これまでに数百台のT-64T-72T-80主力戦車(MBT)やBMPシリーズの歩兵戦闘車(IFV)が復活させられました。

 少し前までは、これらの同じヤードは設計者らの創造力の範囲内で独創性があった装甲戦闘車両(AFV)のコンセプトの舞台でした。「BMT-72」歩兵戦闘戦車「BMPT-K-64」として知られるT-64をベースにした装輪式APCやさらには英国のセンチュリオン戦車をIFV化した「AB-13」といったコンセプトを含む、これらのプロジェクトのいくつかの風変わりさはとても誇張できるものではありません。

 当然のことながらこれらの設計案はどれもが輸出用の発注に成功したことはなく、その代わりとして大部分の顧客は単にオーバーホールされた戦車やBMPに興味を持っていましたようです。機甲戦でより従来型のアプローチを図った設計案でさえT-72AVやT-72Bといった安価な代替品に太刀打ちできず、結果としてそのうちの500台以上がアフリカとアジアのさまざまな国に渡りました。

 この事実はAFV市場での厳しい競争と同じくらいに、これらのプロジェクトの多くがT-64をベースにしていたことが大いに関係していると思われます。この戦車はソ連以外に輸出されたことがなかったことから、多くの国が望んで手に入れたくない運用と維持面でのリスクを抱えていたためでしょう(結局はアンゴラとコンゴ民主共和国だけがT-64を購入した唯一の非ソビエト系国家となるはずです)。

洗練されたデザインでしたが、BMPV-64(左)やT-64E(右)のようなコンセプトは本質的に最初から成功の見込みがありませんでした。

優先順位の調整

 2014年に勃発したウクライナ東部での戦闘が通常の戦争レベルにまでエスカレートしたことから、ウクライナの軍需産業は自国軍からの需要に対応するため、輸出用プロジェクトの開発への関心を別に向けるようになりました。

 もはや貴重な資源をどこの国も購入する可能性がないT-64の改修プロジェクトに投入することはなくなり、その代わりとして、熱画像装置や新型無線機などの追加で戦車の元の能力に改良を加えたT-64BV(2017年型)のような、よりシンプルなプロジェクトに重点的に取り組んでいます。手頃な価格で効果的なものであるため、おそらくウクライナが保有する全てのT-64BVがいずれはこの規格に近代化改修されるでしょう。[1]

 比較的控え目な改修範囲に収まっている別のプロジェクトが、今回紹介する「ストラーシュ」BMPTです。T-64BVの車体に本来IFV用に設計された既存の砲塔を組み合わせることによって、「ストラーシュ」は全く新しいコンポーネントを開発することなく新しい戦闘能力を導入するシンプルかつ効果的な方法を実現しています。重装甲で2門の機関砲砲、4発の対戦車ミサイル(ATGM)、自動擲弾銃を装備した「ストラーシュ(センチネル)」は、戦場で交戦する全ての人にとっては手強く見えるに違いありません。
    
       

 ウクライナはロシアと中国に次いで世界で3番目にBMPT(戦車支援戦闘車)を開発した国ですが、現時点でこのような車両を運用しているのは、ロシア、アルジェリア、カザフスタンだけです。

 ロシアや中国の設計と同様に、「ストラーシュ」BMPTは既存の戦車(T-64)の車体をベースにしています。

 ソ連時代のアフガニスタン戦争や第一次チェチェン戦争で得た経験から誕生したBMPTは、機械化部隊に追従して市街戦で部隊に防御力をもたらすだけでなく、開けた地形にて速射性のある連装式機関砲や長距離ATGMを用いて歩兵やAFVと交戦することを目的に開発されました。



 「2A46」125mm戦車砲を搭載した砲塔の代わりに、「ストラーシュ」BMPTはジトーミル装甲工場によって開発された「デュプレット」戦闘モジュール(砲塔)を装備しています。

 「デュプレット」最大の特徴は、おそらく砲塔から突き出た2門の 「ZTM-2」30mm機関砲(BMP-2に搭載されている「2A42」のウクライナ版)でしょう。これらの機関砲は互いに独立して射撃することができるため、「ストラーシュ」は1門のみを装備した砲塔よりも射撃時間を持続させることや、各砲から異なる種類の砲弾を発射することが可能となっています(注:装備された二門の機関砲を同時射撃以外にも独立した射撃が可能であることから、BMP-2よりも多くの射撃時間を稼げるということ)。

 「ストラーシュ」が持つ真の重武装にして必殺パンチとなる可能性を秘めているのが、砲塔の両側に搭載された4発(左右に各2発)のATGMです。この砲塔が披露された時点では9M113/AT-5「コンクールス」系ATGMが搭載されていましたが、これらを最大射程5kmのR-2「BARYER」ATGMに置き換えることができます。このATGMは、30mm機関砲の基部上に設置されている、(赤外線)画像装置とレーザー測遠機を内蔵した射撃統制システム(FCS)によって誘導されます。[2]

 小火器による攻撃でも無力化することができる可能性があるため、大型で繊細な光学機器を内蔵したこのFCSが「ストラーシュ」の最大の弱点かもしれません。

 砲塔上部には対人用に「KBA-117」30mm自動擲弾銃が、30mm機関砲の間には(同軸機銃として)2丁の7.62mm軽機関銃が装備されており、砲塔の武装はこれらと合計で6基の発煙弾発射機で構成されています。

 前述のFCSの脆弱性に加えて、小火器からの射撃や砲弾の破片しか防げない可能性がある砲塔の軽装甲とむき出しのまま装備されているATGMは、戦闘に入る前の段階でも「ストラーシュ」の重要な機能を停止させるおそれのある深刻な弱点であると考えられます。ロシアのBMPTも同様の弱点がいくつかありましたが、後のバージョンでは改善されています。

 「ストラーシュ」の場合では、FCSやATGM、30mm機関砲の基部を保護シールドで覆うことが小火器や砲弾の破片に対する脆弱性の軽減に貢献するでしょう。




 「デュプレット」戦闘モジュールは、もともとIFVであるBMPシリーズ用に設計されたウクライナ産のモジュール式砲塔システムの最新モデルです。(BMP-1と2の砲塔がたった1名用だったことに比べると)この新型砲塔は、ZTM-2機関砲の真下にある2つの大きなハッチから出入りする2名の乗員によって操作されます。砲塔の後部には、ZTM-2用30mm機関砲弾を再装填するための小さな二つのハッチが設けられています。

 この重武装のおかげで「デュプレット」を装備したあらゆるIFVはほとんどの(装甲化された)脅威に対処できるようになりますが、IFVの任務と複雑さを増大させるものであり、多くの軍隊はこのような武装が彼らのニーズ以上の過度なものと簡単に判断するかもしれません。



 「ストラーシュ」の試作型はまだT-64BVの車体をベースにしていますが、量産型では試作とは異なって「コンタークト1」爆発反応装甲(ERA)が標準装備となっておらず、T-64BVよりも高度な能力を持たない、より簡単に入手しやすいT-64B(1)をその代わりに使用する可能性があります。

 とは言うものの、何百台ものT-64BVが依然として保管状態にあるため、その供給はこれから先の10年間でウクライナ軍が必要とする量よりもほぼ確実に長持ちします(注:「ストラーシュ」用に使用されるT-64BVが枯渇する可能性が皆無ということ)。

 

 その機能と実用的な設計の両方に関して有望に見えますが、このAFVが実際に軍に就役したり輸出注文を受けることになるかどうかは、現時点ではよく分かっていません。

 「ストラーシュ」BMPTは現代の軍隊のニーズを満たすための(おそらく)より現実的なアプローチの1つであるという事実にもかかわらず、2017年に発表されたことを考えると、そのどちらも実現する可能性が徐々に低くなってきています。

 西側諸国の大部分が少数の戦車でさえ運用するのに苦労している中で、BMPTのコンセプトは今のところ非常に限られた国のグループに独占されたままであり、まだ実戦における正確な検証を受けていません。

 ウクライナがこのグループに加わることになるかどうかは、BMPTのコンセプトに対する評価と当面の運用上の要求次第です – しかしながら、財源が最終的な制限要素であることは言うまでもないでしょう(注:2021年の軍事パレードで「ストラーシュ」が登場することはありませんでした)。



[1] ЛБТЗ налагодив серійну модернізацію Т-64 до зразка 2017р. https://www.ukrmilitary.com/2019/08/t64-mod2017.html
[2] COMBAT MODULE "DUPLET": PUBLIC PREMIERE AT “ARMS AND SECURITY” https://ukroboronprom.com.ua/en/media/bojovyj-modul-duplet-publichna-prem-yera-na-vystavtsi-zbroya-ta-bezpeka.html※リンク切れ
         
※  当記事は、2021年5月16日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります



2021年12月24日金曜日

パンドラ文書:阻止された中国によるウクライナの航空エンジンメーカー買収計画の経緯とその背景



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 ウクライナは過去数十年間にわたって、(あなたがイメージできる)あらゆる種類の武器を購入に関心を寄せるどんな国にも供給しているという怪しげな評判を得てきました。

 購入したいと思っている国を問題視することなく、ウクライナは射程2500キロメートルの巡航ミサイル(イラン)、「S-300」地対空ミサイルシステム(アメリカ)、「Tu-95」と「Tu-160」戦略爆撃機(ロシア)、さらには(ほぼ完成品の)空母とそれを増産するための設計図(中国)など、あらゆる国を手助けすることができたのです。

 これらの取引には政府レベルで国際法に基づいて行われたケースもある一方で、ナイトクラブで賄賂と大量のアルコールを使って成立させたケースもあります。[1]

 別の事例では、ウクライナがソ連から引き継いだ膨大な量の武器を売却しようとしたことが、同国をとある紛争において敵対する両陣営の武器供給者にさせるという特異な事態に至らせたこともありました。

 そのような具体的な出来事の1つとして、ウクライナの教官によって訓練された南スーダン人の乗員が乗ったウクライナ製T-72AV戦車と、同じくウクライナの教官が訓練したスーダン人の乗員が乗ったウクライナ製T-72AVが戦ったことがありました。アビエイ地区をめぐるスーダンと南スーダンとの戦いで最終的に勝者となったのはたった1人:ウクライナの武器産業だけでした。

 しかし、近年のウクライナは単なる中古兵器の手頃な供給源から高品質な兵器の生産者として徐々に変化してきており、その間にそれら兵器は世界の多くの軍隊に行き着きました。

 ウクライナの装甲戦闘車両(AFV)はアフリカやアジアで商業的成功を収めており、同国の短距離弾道ミサイル(SRBM)プロジェクト:「グロム2」にはサウジアラビアから多額の投資がなされています。

 ウクライナの軍事技術のもう一つの主要な顧客はトルコです。同国は「アクンジュ」UCAVに「イウチェンコ・プロフレス」社「AI-450S」エンジンを採用しており、無人ジェット戦闘機プロジェクト:「MİUS(ミウス)」「ATAK-II」攻撃ヘリコプターにもウクライナ製エンジンが搭載される予定になっています。

 
 これらのような最近の受注はウクライナの武器産業を著しく後押ししている一方で、かつては非常に異なる状況を過ごした時代もありました。

 すでに当ブログでもいくつかの記事で取り上げたように、ウクライナの多くの兵器プロジェクトの起源は、顧客の需要を満たすというよりは取引を成立させるために必死になって生み出そうとしたことにあり、改修プロジェクトは国際的な買い手を見つけることに幾度も失敗しています。

 一例を挙げると、ウクライナの海軍産業はフリゲートやコルベット、ミサイル艇といった豊富な品ぞろえの商品を外国の顧客に売り込んでいるにもかかわらず、唯一の輸出成功例はアフガニスタンとの国境警備のために2隻の「ギュルザ級」哨戒艇をウズベキスタンに売却したことしかありません(注:ウズベキスタンには河川艦隊があります)。おまけにこの事例も560万ドルの代金が米国によって支払われたおかげで輸出の契約が成立したのです。[2]

 商業活動を維持するための十分な受注がなかったことは、一部の企業に財務的に生き残るためのより抜本的な対策を講じさせるまでに至らせました。

 その一つの実例として、世界最大の航空機・ヘリコプター用エンジン製造企業の1社である 「モトール・シーチ」持株会社(JCS)が、会社の半分以上の株を秘密裏に中国の投資家に売却したことが知られています。[3]

 (中国政府と人民解放軍の両方と関係がある)「スカイリゾン」社:北京天驕航空産業投資有限公司への売却は、いつかアメリカを脅かす可能性のある重要な軍事能力を向上させるために、中国が知的財産と軍事技術の獲得を試みているのではないかという懸念をアメリカに抱かせました。[3]

 「モトール・シーチ」社はウクライナのザポリージャにあり、数種類の航空機やヘリコプター用エンジンの設計・製造を手がけています。

 エンジンは航空機の中でも間違いなく最も複雑な部分の1つであるため、エンジン技術は航空機産業の発展を模索する国々にとって極めて人気なものとなっています。もちろん、中国もその国々の1つに含まれています。

 2017年、「モトール・シーチ」社は中国空軍・海軍の新型ジェット練習機「JL-10」の動力源となる「Al-322」ジェットエンジンの納入について、将来的には同エンジンやその他のエンジンを中国で共同生産する可能性を視野に入れた中国から8億ドル(約913億円)の発注を受けました。[4]

 中国との取引については、2014年のウクライナ・ロシアの関係断絶後に最も重要な顧客だったロシアの航空業界を失った同社にとっては歓迎すべき好機でした。

 「モトール・シーチ」社は幅広い種類のエンジンやその関連技術、さらにはヘリコプターの開発・製造に加えて、約12機の旅客機や貨物機をウクライナ国内や海外に向けて運航している独自の航空会社も運営しています。同社はこれによってある程度の利益を得ている可能性が高いですが、この航空事業で得た資金をロシアとの関係断絶で失われた収益に置き換えることは決してできません。



 先述の理由から、「モトール・シーチ」社はエンジンを販売する新たな大口顧客がいないか各方面に目を光らせていました。しかし、同社は「An-124」戦略輸送機や「Mi-8」ヘリコプター及びその近代的な発展型といったソ連時代のさまざまな機体で使用されるエンジンの事業に重点を置いていたため、米国や西ヨーロッパで製品の買い手が見つかることはありませんでした。

 その一方で、中国は「JL-10」練習機用の「Al-222/Al-322」シリーズのジェットエンジンや、将来の「国産」大型輸送ヘリコプターの動力源として役立つ可能性のある「Mi-26」用イウチェンコ・プロフレス製「AI-136T」エンジンを含む、いくつかのエンジンに大きな興味を示していました。[5]

 2017年5月、ウクライナのステパン・クービウ第一副首相によって、「モトール・シーチ」社と「スカイリゾン」社が中国の重慶にエンジン工場を建設することが明らかにされました。さらに、「スカイリゾン」社は「モトール・シーチ」の企業支配権を取得し、同社の過半数の株式を取得することと引き換えに2億5000万ドル(約285億円)を出資することを約束したのです。

 当初の報道では、企業支配権は「スカイリゾン社」によって直接取得されたと伝えられましたが、 「OCCRP(組織犯罪・汚職報道プロジェクト)」によるパンドラ文書の調査は取引の背後に多数のオフショア・カンパニー(租税回避に用いられる海外の投資家向けの会社)が存在していたことを明らかにしており、「スカイライゾン」社による買収の契約書草案では、実際にはアメリカの大手法律事務所「DLAパイパー」のウクライナ事務所(注:現在は撤退)が手助けした可能性が示されています。[6]

 この計画は、3つのオフショア企業 – 英領ヴァージン諸島に登記している「スカイリゾン・エアクラフト・ホールディングス」社、そしてキプロスに登記している「レコナー・インヴェストメント」社と「Argio・インヴェストメント」社 – が、「モトール・シーチ」社の企業支配権を共に所有している6つのオフショア・カンパニーの買収を伴うものでした。[6]

 この狡猾な計画は、ウクライナの独占禁止法の観点から同国政府による調査を回避するために特別に考案されたようです。

 「DLAパイパー」による提案では、計画に沿って買収を進めても、ウクライナ当局による反独占審査のきっかけに必要な25%以上の株式を所有する企業は存在しません。[6]

2基の「モトール・シーチ」製「AI-222」ジェットエンジンを搭載する中国の「JL-10」練習機

 この協定は、実質的に中国がウクライナの最も重要なエンジン製造会社を買収することを同国政府に気づかれないようにするためのものだったかもしれませんが、アメリカ政府は何が起こっているのかを十分に認識していたようです。

 (中国のエンジン技術が10年かそれ以上進歩させる可能性がある)「モトール・シーチ」の製品や専門知識を自らの軍事プロジェクトに取り入れることを可能にする、中国に同社の株式の過半数を取得させないという決意の下でなされたトランプ政権によるウクライナ政府への圧力は、結果的に国家安全保障上の理由で取引を凍結するという同政府による決定の有力な動機となったと考えられています。

 すでに「モトール・シーチ」は、ロシアへ便宜を図ったことに関する罪でウクライナ政府の悪党になっていましたが、2021年3月にはついに政府の同社に対する堪忍袋の緒が完全に切れたようです。 キエフの裁判所は同社の全財産と株式を差し押さえる判決を下し、同社は汚職やその他の犯罪によって得た資産を管理する政府機関に移管されました。[7]

 その2週間後、ウクライナのヴォロディーミル・ゼレンスキー大統領は、自国の航空宇宙分野の企業支配権を得ようとしていた「スカイリゾン」社を含む中国企業4社に制裁措置を課す大統領令に署名しました。 [7]

 結果として、中国が(自らの目的のために)大々的に取り組んでいた会社の乗っ取り計画は完全に阻止されてしまいました。



 もちろん、中国はこの出来事を少しも快く思っていませんでした。2020年12月に「スカイリゾン」社のバックにいる中国の投資家たちは、キエフが2018年に「モトール・シーチ」社の株式を一時凍結した後、ウクライナ政府がその投資を没収したことを非難し、ウクライナ政府を相手に35億ドルの仲裁を提起したのです。[7]

 また、この仲裁ではおなじみの顔として「DLAパイパー」の名前が報道記事で登場しました。というのも、ウクライナ政府によって凍結された資産を取り戻すために命じられた「北京スカイリイゾン・アビエーション」社を代理する3つの国際法律事務所のうちの1つが同事務所だったからです。

 したがって、アメリカの法律事務所が手助けしている中国によるウクライナのエンジン企業の買収を阻止するために、アメリカ政府がウクライナに圧力をかけているという実に奇妙な話が続いています。



 「モトール・シーチ」社の中国への売却、つまり中国による最新の航空機やヘリコプターのエンジンに関連する重要な技術へのアクセスは最終的に阻止されましたが、ほかの企業が自社の技術を敵対国やいわゆる「ならず者国家」に売却するという(少なくともアメリカにとっての)脅威は常に存在しています。

 別の事例では、中国はウクライナから未完成の「An-225 "ムリーヤ"」戦略輸送機を購入し、さらに同機を製造するための設計図の入手を試みたことがありました。しかし、最終的にトルコが自身を(「An-225」を設計・製造した)「アントノフ」社との航空プロジェクトに協力するための、より関心を引く候補者としてオファーしました。[8]

 実際、「アクンジュ」UCAVや「ATAK-II」攻撃ヘリコプター用にトルコからウクライナ製エンジンのさらなる発注が、結果的に「モトール・シーチ」社や別のウクライナの防衛企業を存続させる決定的な要因となるかもしれません。[9]

 ウクライナの急進党の元党首であるオレグ・リャシュコは、「もしアメリカが『モトール・シーチ』社に中国と協定を結ばせたくないのであれば、十分な数の航空機エンジンを購入する必要がある」と語っています。[10]

 アメリカの圧力は中国による「モトール・シーチ」社の買収を阻止するのに十分だったかもしれませんが、トルコのウクライナ企業に対するはるかに積極的な関心は、結果的に同社やほかの企業が外国の手に落ちるのを防ぎ、将来的にこのような出来事を予防することになるかもしれません。



[1] Mission impossible: How one man bought China its first aircraft carrier https://www.scmp.com/news/china/article/1681710/sea-trials-how-one-man-bought-china-its-aircraft-carrier
[2] Ukraine Resumed Construction of Gyurza-M (Project 58155) River Armored Artillery Boats https://www.navyrecognition.com/index.php/naval-news/naval-news-archive/year-2014-news/december-2014-navy-naval-forces-maritime-industry-technology-security-global-news/2293-ukraine-resumed-construction-of-gyurza-m-project-58155-river-armored-artillery-boats.html
[3] ‘Predatory’ Chinese Takeover of Ukraine Defense Firm Was Facilitated by a U.S. Law Firm https://www.occrp.org/en/the-pandora-papers/predatory-chinese-takeover-of-ukraine-defense-firm-was-facilitated-by-a-us-law-firm
[4] Ukraine’s Motor Sich Awarded $800 Million Contract to Support Chinese Hongdu JL-10 Trainer Aircraft https://defence-blog.com/ukraines-motor-sich-awarded-800-million-contract-to-support-chinese-jl-10-trainer-fleet/
[5] In China, "Motor Sich": "We managed to intercept the United States and Russia gem of engine" https://weaponews.com/news/65357779-in-china-motor-sich-we-managed-to-intercept-the-united-states-and-russ.html
[6] ‘Predatory’ Chinese Takeover of Ukraine Defense Firm Was Facilitated by a U.S. Law Firm https://www.occrp.org/en/the-pandora-papers/predatory-chinese-takeover-of-ukraine-defense-firm-was-facilitated-by-a-us-law-firm
[7] Ukrainian Court Seizes Aerospace Company Motor Sich From Chinese Investors https://www.rferl.org/a/ukraine-seizes-motor-sich/31161801.html
[8] Antonov Sells Dormant An-225 Heavylifter Program to China https://www.ainonline.com/aviation-news/defense/2016-09-06/antonov-sells-dormant-225-heavylifter-program-china
[9] Turkish Aerospace, Motor Sich ink deal for heavy-class helicopter engines https://www.dailysabah.com/business/defense/turkish-aerospace-motor-sich-ink-deal-for-heavy-class-helicopter-engines
[10] Kievs new partner a betrayal of US interests https://calrev.org/2018/08/23/kievs-new-partner-a-betrayal-of-u-s-interests/?v=796834e7a283
[11] 中国の軍需企業買収阻止 米国の懸念受け―ウクライナ(翻訳時の参考資料)
[12] ウクライナ、航空エンジン大手を国有化 中国の買収阻止 対米関係強化狙う(同上)
[14] 中国、ウクライナの軍用エンジン技術に触手 訴訟警告で米中対立(同上)

※  当記事は、2021年11月4日に「Oryx」本国版(英語)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。



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2021年12月22日水曜日

悲劇の懸念:衛星画像が示唆するティグレ防衛軍によるSAMの継続的な運用



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 2021年10月19日に撮影された衛星画像は、ティグレ州の州都メケレ市の北東に位置するS-125(NATOコード:SA-3「ゴア」)地対空ミサイル(SAM)サイトが運用状態に戻ったことを示しています。[1]

  このSAMサイトの再稼働は、エチオピア空軍(ETAF)が新たに導入した「翼竜Ⅰ」無人戦闘航空機(UCAV)メケレ上空に展開させ、Su-27に地上攻撃目標を指示したものの、投下した爆弾が目標を外れて民間人の居住地域に着弾し、多くの民間人の死傷者をもたらした結果が原因である可能性があります。[2] [3]

 ある事例では、1機のSu-27による危険な飛行(高高度からの無誘導爆弾の投下)と投下した爆弾から立ち上る煙のために、メケレ空港に着陸することになっていた国連の飛行機がその中止を余儀なくされたことがありました。[4]

 この事例は非国家主体がの保有兵器にSAMが存在することの危険性も浮き彫りにしており、論理的には、彼らは自身の支配下にある領土に爆撃を行う敵機に対してSAMの使用を試みるでしょう。もしティグレ軍がSu-27を撃墜しようとした場合、同機に向けて発射されたミサイルが誤って近くを飛行していた国連機に命中していたかもしれません。

 メケレ上空を飛行する戦闘機やドローンを撃墜できるSAMをティグレ軍が今や再び運用するようになったことは、憂慮すべき動向です。 ティグレとその周辺の空域は依然として旅客機や(国連などの)民間機によって頻繁に使用されているため、誤認やミサイルが目標を外して民間機に当たるという脅威が常に存在しています。

 国連機着陸中止の事件を受けて、ティグレ防衛軍(TDF)のスポークスマンは「我々の防空部隊は国連機が着陸する予定だったことを知っており、部隊員の自制心のおかげで国連機が十字砲火を浴びることを避けられたのです。」と述べました。[5]

紛争地域における「誤射」と聞いて、2014年7月に発生したロシア軍がウクライナ東部の上空を飛行するマレーシア航空17便「MH17」を撃墜した事件を思い出す方もいるかもしれません。「ブーク」SAMのオペレーターはボーイング777型旅客機(乗客・乗員計298人)をウクライナ空軍のAn-26輸送機と誤認して攻撃・撃墜し、搭乗していた全員が亡くなるという悲惨な結果をもたらしました。

 MH17の大惨事は激しい紛争地帯の上空を飛行し続けることの危険性を浮き彫りにしましたが、このような事件を再び発生させないようにするための具体的な対策はほとんど講じられていません。

 さらに状況を悪化させているのは、ティグレ戦争は多くの人にとってドンバス戦争よりもはるかに世に知られていないままであり、それがすぐに本格的な予防措置が講じられる可能性を低くしているという事実です。

左:未装填の発射機(2021年9月17日)、右:各4発のミサイルが装填済みの2基の発射機(同年10月19日)

 9月にティグレ軍が公開した映像は同軍がいくらかのS-125用ミサイルコンテナを回収した様子が映し出されていました(下の画像)。このことは、彼らがもともと2020年11月に鹵獲した3つのS-125のSAMサイトについて、少なくともその1つを再稼働させようと試みていたことを最初に暗示した動きでした。

 同じ頃、36D6「ティン・シールド」対空レーダーがティグレの支配下にある村を通過する様子が撮影されました。このシステムはエチオピアで最も高性能なレーダーであり、S-125サイトとリンクして敵機の探知と照準を支援することが可能です。[5]

 これまでのところ、最低でも2基の36D6がティグレ防衛軍に鹵獲されたことが確認されています。 [6]

ティグレ軍によって回収されるS-125用ミサイルコンテナ。このコンテナに保管されていたミサイルがメケレ北部にあるSAMサイトの再稼働に使用されたかもしれません。

 2020年11月にティグレ軍がこの地域の制圧を開始した際、彼らは多数のレーダー基地に加えて、3つのS-125と1つのS-75(NATOコード:SA-2「ガイドライン」)のSAMサイトを即座に掌握しました。[6] 

 その後、彼らはティグレ側に離反した(運用が可能となる)十分な人員を工面して集め、S-75とS-125の双方を元の所有者:エチオピア政府軍(ENDF)に対して即座に使用することに成功したのです。[7] [8] 

 その後の数週間で、この地域を飛行中のエチオピア空軍機に対していくらかのミサイルが発射されました。しかし、双方から撃墜に関する報告がなされていないことから、ミサイルはどうやら全く命中しなかったようです。 [9]

 興味深いことに、エチオピア空軍(ETAF)は報復としてSAMサイトの破壊を少しも試みようとはしませんでした。このことは、おそらく空軍はTDFが将来的な使用に備えてSAMサイトを稼働状態に戻すどころか戻せる可能性が低いと考えていたことを示しています。

 ティグレ軍がSAMを使用した際、エチオピア軍は依然としてその脅威を無視してこの地域の上空に輸送機を飛ばしていました。輸送機の飛行は旧式のS-75やS-125にとっても格好の標的を提示したことを意味しましたが、純然たる幸運だけによって結果的に一機も撃墜されなかったと主張することができます。

 TDFは携帯式地対空ミサイル(MANPADS)の使用によってより多くの成功を収めたと考えられており、2020年11月の武力衝突の勃発以来、5機のETAF機・ヘリコプターをMANPADSで撃墜した可能性があります。[10]

ティグレ側の手に落ちたS-125用のSNR-125「ロー・ブロー」火器管制レーダー

 反政府勢力による地対空ミサイルの使用は、いつの日かエチオピアの戦闘機や、断じてあってはならないが民間の旅客機を撃墜する結果をもたらすことになるかもしれないという脅威を象徴しています。

 2014年のウクライナ上空で発生した事件や、2020年にイランで起きたもう1つの多くの人命が失われた大惨事:イラン・イスラム革命防衛隊(IRGC)の9K331「トール-M1」が旅客機を巡航ミサイルと誤認して撃墜、乗客乗員の176人全員が犠牲となった事件などは、まるで紛争時に生じる人命軽視につきもの出来事のように見えます。

 エチオピア空軍機が出撃するのと同時に、民間旅客機の定期便が依然として紛争地域であるティグレ州の上空を飛行しているため、このような大惨事が繰り返される全ての発生要因が存在しており、無意識のうちに別の悲劇を生む機会が残り続けています(注:11月にティグレ州の上空が飛行禁止区域に設定されました)。

 その結果として起こる大惨事は、終わりの見えないまま絶え間なく犠牲者をむさぼり続けているティグレ戦争自体よりも、国際的なメディアの注目を集めることは間違いないでしょう。



特別協力: The Fijian Armadillo(敬称略)

[1] https://twitter.com/FijianArmadillo/status/1460395498934870020
[2] Deadly Ineffective: Chinese-Made Wing Loong UAVs Designate Targets For Ethiopian Su-27 Bombers https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/deadly-ineffective-chinese-made-wing.html
[3] Su-27 Fighters Deployed As Bombers In Tigray War https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/su-27-fighters-deployed-as-bombers-in.html[4] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1451520179758899209
[5] UN suspends all flights to Tigray amid Ethiopian air raids https://www.aljazeera.com/news/2021/10/22/ethiopia-hits-tigray-in-fourth-day-of-air-strikes
[5] https://youtu.be/XVYKYLmqN8w
[6] The Tigray Defence Forces - Documenting Its Heavy Weaponry https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/the-tigray-defence-forces-documenting.html
[7] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1435607803427688453
[8] https://twitter.com/TheIntelLab/status/1326531558652702720
[9] https://twitter.com/TheIntelLab/status/1328242316339974144
[10] List Of Aircraft Losses Of The Tigray War (2020-2021) https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/list-of-aircraft-losses-of-tigray-war.html

※  当記事は、2021年11月21日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所
 があります。



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2021年12月21日火曜日

ティグレ戦争:ティグレ防衛軍が地対空ミサイルを披露した(短編記事)



著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo

 今年9月上旬に公開されたミュージックビデオには、ティグレ防衛軍(TDF)がエチオピア政府軍から鹵獲したS-75(NATOコード:SA-2「ガイドライン」)及びS-125(NATOコード:SA-3「ゴア」)地対空ミサイル(SAM)の輸送作業をしているカットが収められていました。

 これらは早くも2020年11月の時点には鹵獲されていましたが、その後のティグレ軍による使用についてはほとんど知られていません。鹵獲された時点でまだ稼働状態にあり、その運用要員の多くがティグレ側に離反したことで、エチオピア空軍(ETAF)に対するSAMの使用が可能となったのかおそれがあります。

 (今回の)SAMに関する最新の映像にはミサイル用の発射システムは含まれていませんでしたが、ティグレ軍が依然としてシステムのいくつかのコンポーネントを掌握していることが確認することができました。

 ティグレ軍がこの地域の制圧を開始した際、彼らは多数のレーダーステーションに加えて、1つのS-75サイトと3つのS-125サイトを即座に掌握しました。[1]

 おそらく、ティグレ軍は各サイトから十分な人員を工面して集め、S-75とS-125の双方を元の所有者:エチオピア政府軍に対してすぐに使用としたと思われます。[2] [3]

 しかし、いずれからの発射も撃墜に成功したとはみられておらず、TDFは携帯式地対空ミサイル(MANPADS)の使用によってより多くの成功を収めたと考えられています。2020年11月の武力衝突の勃発以来、おそらく3機ものエチオピア空軍の航空機やヘリコプターがMANPADSによって撃墜された可能性が指摘されています。

 興味深いことに、エチオピア空軍は敵SAMサイトの破壊を少しも試みようとはしませんでした。このことは、おそらく空軍はTDFが将来的な使用に備えてSAMサイトを稼働状態に戻せる可能性が低いと考えていたことを示しています。

 ティグレ軍がSAMを使用した際、エチオピア軍は依然としてその脅威を無視してこの地域の上空に輸送機を飛ばしていました。輸送機の飛行は旧式のS-75やS-125にとっても格好の標的を提示したことを意味しましたが、純然たる幸運だけによって結果的に一機も撃墜されなかったと主張することができます。




 2020年11月15日に撮影された衛星画像は、(ティグレ州の州都である)メケレの北に位置するS-125サイトがティグレ軍に鹵獲された後、ほぼ即座に使用されたことを示しています。[4]

 この地域を飛行中のエチオピア空軍機に対して、少なくとも4発のミサイルが発射されましたが、双方から撃墜に関する報告がなされていないことから、どうやら全く命中しなかったようです。

 エチオピア空軍機を撃墜しようとする試みは完全に成功していないようですが、ティグレ防衛軍による地対空ミサイルの使用は、いつの日か撃墜に成功するかもしれないという深刻な脅威を表しています。

 紛争が予測不可能な形で展開し続けているため、きっとティグレではさらなるサプライズが待ち受けているに違いありません。



[1] The Tigray Defence Forces - Documenting Its Heavy Weaponry https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/the-tigray-defence-forces-documenting.html
[2] https://twitter.com/MapEthiopia/status/1435607803427688453
[3] https://twitter.com/TheIntelLab/status/1326531558652702720
[4] https://twitter.com/TheIntelLab/status/1328242316339974144

※  当記事は、2021年9月14日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事を翻訳した
 ものです。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇所 
 があります。また、今の情勢が執筆時より大きく変化しているため、現状にそぐわない可
 能性もあります




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2021年12月19日日曜日

破滅した抑止力: ティグレ最後の弾道ミサイル装備


著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo


 ティグレによるエチオピア・エリトリアとのミサイル戦争は、非国家主体が短距離弾道ミサイル(SRBM)と長距離誘導ロケット弾を鹵獲し、それを用いてエチオピアと全く別の国:エリトリアの首都を攻撃したという珍しい出来事でした。[1]

 現代史の中でも注目すべき出来事であったにもかかわらず、このミサイル戦争は国際的なメディアから全く注目されていませんでした。

 この攻撃を受けてすぐに、エチオピアとエリトリアの軍隊は自走式発射機とミサイルを迅速に破壊・奪還したらしいので、ティグレによるミサイル攻撃の脅威度は低下しました。

 ティグレ防衛軍(TDF)は、2020年11月にティグレ州にあるエチオピア国防軍(ENDF)の基地を制圧した後にENDFの弾道ミサイル・誘導ロケット弾発射システムを鹵獲・掌握しました。このシステムに関する十分な数の運用要員がティグレ側に離反したことが、ティグレ側の軍隊が発射機を元の所有者:ENDFに対して使用し始める機会を与えたようです。

 そして実際、ティグレ軍はそれをすぐに文字通り実施し、エチオピアの2つの空軍基地に弾道ミサイルを発射し、さらに3発をエリトリアがティグレ戦争に介入した報復として同国の首都に撃ち込みました。[2]

 最近公開されたティグレのミュージック・ビデオは、TDFの弾道ミサイル・誘導ロケット砲部隊の一部がこの中国製の発射装置と関連装備を発見して無力化するという、エチオピアとエリトリアによる大規模な取り組みから回避できたことを示しています。[3]

 2021年10月21日に公開されたこの動画では、迷彩服を着たティグレの若者たちがラップを披露している背景として1台の再装填車が映し出されています。

 この動画が撮影された正確な日付を独自に検証することはできませんが、同じ動画には今年8月下旬に鹵獲されたT-72UA1戦車が登場していることから、少なくとも2020年12月にほかの発射システムと再装填車が捕獲・破壊された後に撮影された動画であることだけは間違いありません。[4]

 しかし、公開された動画からは「M20」SRBMや「A200」誘導ロケット弾が存在した形跡を見つけることができませんでした。専用の輸送起立発射機(TEL)がなければ、再装填車は実質的に何の役にも立ちません。

エチオピア軍が奪還した直後に撮影された「A200」誘導ロケット弾8発を搭載したTEL

 「A200」誘導ロケット弾を8発か「M20」弾道ミサイルを2発搭載するこのトラックの後部にはクレーンが備えられているため、発射システムに次の射撃任務を開始することを可能にする迅速な装填能力を有しています。この再装填車の存在は、(弾薬を補充するための場所に戻る必要が生じる前の段階における)攻撃準備ができた発射機と合計して、各部隊の火力を「A200」ロケット弾16発か「M20」弾道ミサイル4発と実質的に2倍にさせる効果があります。


 2020年12月には、エチオピア軍がティグレ州にあるミサイル基地の1つを奪回しており、ここではいくつかの「M20」SBRMと、少なくとも4個の「A200」のキャニスターが発見されました。[1]

 持ち出すのに十分な時間や適した装備が無かったことから、ティグレ軍がこの地域から追い出された際に置き去りにされたものと思われます。また、この基地が奪回された時点までに全弾が発射し尽くされていなかったという事実は、その地域における全てのTELがすでに失われていたという可能性も示しています。


 「M20」SRBMと「A200」誘導ロケット弾発射システム用の再装填車も、少なくとも1台がこの基地でエチオピア軍に奪還されました(下の画像)。


 また、別の再装填車もティグレ軍が慌てて放棄したのとほぼ同時に奪還されました(下の画像)。

 面白いことに、「A200」ロケット弾キャニスターのうち少なくとも3つは空であり、どうやら発射機から撃ち出された後に再装填車に積み戻されたように見えます。これは、決して(キャニスターの投棄による)環境破壊からこの地域を守ろうとしたのではなく、ティグレ軍によってこのシステムが使用された痕跡を隠そうと試みたのかもしれません。


 ティグレのヒップホップの舞台として使われている「M20」/「A200」用再装填車は、かつてエチオピア軍が誇った強大な弾道ミサイル・誘導ロケット砲部隊構成した装備で最後に残されたものかもしれません。

 今や本来の用途で役に立たなくなってしまったこの車両は、こういったより穏やかな役割での新たな使い道を見いだされたようです。

 TDFの抑止力は失われたかもしれませんが、最終的に彼らを打倒することを目的とした最近のENDFの攻勢に対するTDFの強い抵抗は、彼らが過小評価されるべき存在ではないことを示しています。そして、ティグレ戦争が予測不可能な形で展開し続けていく中で、彼らがさらなるサプライズを用意していることは間違いないでしょう。

特別協力: Saba Tsen'at Mah'derom.

[1] Go Ballistic: Tigray’s Forgotten Missile War With Ethiopia and Eritrea https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/go-ballistic-tigrays-forgotten-missile.html
[2] Ethiopia’s Tigray leader confirms firing missiles at Eritrea https://apnews.com/article/international-news-eritrea-ethiopia-asmara-kenya-33b9aea59b4c984562eaa86d8547c6dd
[3] Yaru Makaveli x Narry x Yada sads x Ruta x Frew x danay x donat - CYPHER WEYN 2 / Tigray Music https://youtu.be/0LPa4xIuBXo
[4] The Tigray Defence Forces - Documenting Its Heavy Weaponry https://www.oryxspioenkop.com/2021/09/the-tigray-defence-forces-documenting.html

  事です。当記事は意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しが異なっている箇
    所が存在する可能性があります。



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2021年12月18日土曜日

運用に不向き?:エチオピアの面倒なイラン製「モハジェル-6」UCAV

イランにおける「モハジェル-6」UCAV(エチオピアとは無関係の画像です)

著:ステイン・ミッツアー と ヨースト・オリーマンズ(編訳:Tarao Goo
 
 エチオピアの首都アディスアベバに対するティグレ防衛軍の野心的な反攻は、ついに停止したようです。ただし、この状況は少なくともエチオピア政府側に中国製UCAVが大々的に配備されたことによって実現に至らせたわけではありません。

 これまでにエチオピアによって導入が確認されているUCAVとして、中国の「翼竜Ⅰ」、UAEが供与したVTOL型ドローン、そしてイランの「モハジェル-6」があります。[1] [2] [3]

 エチオピアは長年にわたって軽視されてきた空対地戦力を補うために新しく導入したUCAVに大きく依存しており、この流れは2021年の夏になって空軍に性急なUCAVの調達に乗り出すことを余儀なくさせました。

 当ブログは2021年8月初旬にエチオピアがイラン製「モハジェル-6」UCAVを入手したことについて世界で最初に報じました。 [3]

 「モハジェル-6」はエチオピア側が期待を胸にして導入されたものの、この国における運用キャリアは引き渡されてからほぼすぐに終えました。なぜならば、導入された2機は制御システムの問題で実際にエチオピア上空での飛行することが阻害されたため、すぐに駐機(放置)状態にされてしまったからです。

 この失態は間違いなくエチオピア空軍を大いに幻滅させたことでしょう。彼らのUCAVの導入が次に確認されたのは、2021年9月中旬のことでした。[1] [4]

 エチオピアが新たに導入した中国製UCAV用の武装をかろうじて手に入れるまでには、さらに1ヶ月半を要してしまいました。結局、彼らが真の武装ドローンの配備が実現したのは、それを最初に試みてから約3ヶ月後のことだったのです。[5]

 UCAV用のいかなる兵装もまだ存在しなかったことは、空軍に「翼竜Ⅰ」を用いて(代わりに爆撃する)Su-27の目標を指示させることに至りました。Su-27はさまざまな種類の無誘導爆弾しか搭載できないため、これらによる著しく精度の低い空爆で多くの民間人の犠牲がもたらされてしまいました。[6]

 注目すべき事例としては、ティグレ州の州都メケルの上空でSu-27が投下した爆弾が狙った目標を1キロメートルも外れ、何もない野原に着弾したということがありました。残念なことに、別の空爆で投下された爆弾が本来の目標を外れて民間人の居住地域に着弾するという悲劇も発生しました。[6]

 「モハジェル-6」が抱える問題がやっと解決されたと思われるには2021年10月下旬までの時間がかかったようですが、それはエチオピアに到着してから約2ヶ月半も後のことでした!

 2021年9月から11月初旬にかけて、1機または2機の「モハジェル-6」がセマラ空港の滑走路や駐機場で定期的に衛星画像で確認されており、駐機場におけるイラン製ドローンの頻繁な再配置は、今やこの機体が定期的に飛行している可能性も示しています。[7]

 ほぼ同じ頃、ティグレ軍は傭兵や技術者としてエチオピア政府を支援している外国人を追討すると脅迫しましたが、これは間違いなくエチオピアで「モハジェル-6」を運用しているイラン人オペレーターのことを言及していると思われます。[8]

2021年8月初旬、セマラ空港で新たに導入された「モハジェル-6」と地上管制ステーション(GCS)を視察するエチオピアのアビー・アハメド首相(右)

 「モハジェル-6」は最大で40kgの兵装を搭載することが可能で、これにはそれぞれ2~4発の「ガーエム-1」,「ガーエム-5」,「ガーエム-9」精密誘導爆弾(PGM)が含まれます。

 これらのPGMの軽量性がこのUAVの最大飛行高度約5,500mや12時間の滞空性能を実現させており、このUCAVの製造者:コッズ航空産業社(イラン革命防衛隊傘下の企業)は運用範囲が200キロメートルに及ぶと主張しています(注:軽いPGMの搭載は機体の性能に大きな悪影響を及ぼさないということ)。[9]

 標的探知・獲得や偵察任務用として、「モハジェル-6」には「EOAS-I-18A」FLIR装置が装備されています。[10]

「ガーエム-5」。「モハジェル-6」には最大で4発が搭載可能。

 しかし、運用可能な高度が低いために地上からの対空砲火に脆弱であり、FLIRの品質が低いことや、「モハジェル-6」自体の戦闘における実績が皆無に近いという事実から、実戦では乏しい効果をもたらす可能性があります。

 おまけに、これまでに把握されている生産数が少ないため、2年目に突入したこの戦争で「モハジェル-6」が実際に効果を発揮できるかどうかは現時点では不明です。

イランにおける「モハジェル-6」UCAV(エチオピアとは無関係の画像です)

特別協力: Wim Zwijnenburg

[1] Wing Loong Is Over Ethiopia: Chinese UCAVs Join The Battle For Tigray https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/wing-loong-is-over-ethiopia-chinese.html
[2] UAE Combat Drones Break Cover In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/uae-combat-drones-break-cover-in.html
[3] Iranian Mohajer-6 Drones Spotted In Ethiopia https://www.oryxspioenkop.com/2021/08/iranian-mohajer-6-drones-spotted-in.html
[4] Tigray War: Chinese-Made Armed Drones Spotted Over Mekelle https://www.oryxspioenkop.com/2021/10/tigray-war-chinese-made-armed-drones.html
[5] Ethiopia Acquires Chinese TL-2 Missiles For Its Wing Loong I UCAVs https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/ethiopia-acquires-chinese-tl-2-missiles.html
[6] Deadly Ineffective: Chinese-Made Wing Loong UAVs Designate Targets For Ethiopian Su-27 Bombers https://www.oryxspioenkop.com/2021/11/deadly-ineffective-chinese-made-wing.html
[7] Ethiopia now confirmed to fly Chinese armed drones https://paxforpeace.nl/news/blogs/ethiopia-now-confirmed-to-fly-chinese-armed-drones
[8] Tigrayan forces say they will 'hunt down' foreign mercenaries https://www.reuters.com/world/africa/tigrayan-forces-say-will-hunt-down-foreign-nationals-aiding-ethiopia-war-2021-11-12/
[9] https://twitter.com/brokly990/status/1256994704568258562
[10] https://twitter.com/L4RB1/status/1192650551814742016

※  この翻訳元の記事は、2021年11月18日に本家Oryxブログ(英語版)に投稿された記事
  を翻訳したものです。意訳などにより、僅かに本来のものと意味や言い回しを変更した箇    
  所があります。


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